千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

お酒コラム

世界最優秀ソムリエコンクール (13/4/12)

2013年3月29日、東京国際フォーラムで行われた第14回世界最優秀ソムリエコンクール公開決勝を観戦して来た。
世界最優秀ソムリエコンクールは、1969年から3年に1回開催されているソムリエのオリンピックだ。選手たちのトレーニングは、冗談抜きでトップアスリートに匹敵するレベルで、それは角野史比古さんの著書「たたかうソムリエ/世界最優秀ソムリエコンクール」(中央公論新社)を読むとよく分かる。

日本で開催されるのは、田崎真也さんが優勝した1995年の第8回以来、18年振り2回目
前回は、それまでフランス人とイタリア人以外の優勝者がいなかった中で田崎さんが優勝し、世界的にも話題になった。以降も、第9回でドイツ代表が、第12回でスウェーデン代表が、第13回でイギリス代表が優勝したものの、いまだ欧州以外の覇者は田崎さんのみだ。

これは、ワイン文化の歴史的な差という面もあるかもしれないが、実技試験で英語・フランス語のどちらかしか使えないという条件が大きなハンデになっているようにも思う。(ただし、母国語は選択できないので、フランス人は英語、イギリス人はフランス語を使用する。)
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ワインの飲み頃

料理や飲み物は作りたてが最も美味しく、時間が経つにつれて味が落ちていくもの。だが、その常識が当てはまらないのがワインだ。
ワインを寝かせておくと、より美味しくなるというのは周知の事実だ。だが、何でもただ寝かせておけば美味しくなるというものではない。今回は、上手なタイミングでワインを味わうためのポイントをご紹介しよう。
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ボジョレ・ヌーボーを選ぶなら (12/11/2)

早いもので、またボジョレ・ヌーボーの季節がやって来た。今年は11月15日(木)が解禁日だ。
例年、「最高の出来」が決まり文句のヌーボーだが、今年は珍しく「世紀の不作」というニュースが飛びこんで来た。天候が不順で、ブドウが想定の半分程度しか収穫できなかったらしい。今年のフランス内陸部は、冷夏で雹(ひょう)まで降ったそうだ
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違いが分かると、ちょっとイイ話 (12/7/18)

食事やお酒の席で、よく耳にする似たような言葉。その違いをちゃんと分かっていると、ちょっとカッコいいかもしれない。

今回は、そんな言葉たちを4つほど紹介する。ウンチク臭くならない程度に、ちょっとした話の種にしてもらえれば幸いだ。
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お酒にまつわる面白ニュース (12/5/15)

今回は、連休明けに入って来た、お酒にまつわるニュースを3本お伝えしようと思う。

 ・170年前のビールを再現?
 ・16年ぶりに日本酒の出荷量が増加!
 ・世界一高価なワインの騒動記


…単なる偶然だが、いずれも醸造酒が主役だ。
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今宵はいくら?一合壱円プロジェクト! (11/12/12)

mark33週間ほど前から、日本名門酒会が新たな東日本大震災の支援プロジェクトを始めた。名付けて「一合壱円プロジェクト」。
ネーミングはどうやら「一期一会」に引っ掛けたダジャレらしいが、中身はなかなかいい。

企画はとてもシンプルで、プロジェクトのマークが付いた日本酒や焼酎を購入すると、1合(180ml)あたり1円が被災地への義援金に充てられるというもの。
つまり、1升瓶1本なら10円が義援金となる。そのうち蔵元が5円、日本名門酒会が5円を負担するそうだ。

1合1円とは言え、全国という規模で考えればバカにならない。10ヶ月も続ければ、かなりの金額になるだろう。
義援金を負担する蔵と日本名門酒会も大変かもしれないが、これもプロモーションの一環と考えればメリットはある。知名度も上がるし、売上アップにも貢献しそうだ。

消費者側も、どうせ飲むなら社会貢献できる酒を…という考えは悪くない。義援金を名目に地酒を購入しやすくなるような気もする

日本名門酒会は、加盟する蔵元の市販酒について、年2回ブラインド・テイスティングによる品質チェックを実施している。つまり、一定の品質以上の酒を造っている蔵ばかりが揃っていると思っていいだろう。

実施期間は、とりあえず2012年9月末日までだが、状況によって延長も考えているようだ。
参加している蔵元は、現在のところ日本酒71蔵、焼酎7蔵。銘柄リストは、下のページから確認できる。

→日本名門酒会:一合壱円プロジェクト

日本酒業界ニュース4連発/11月イベント編 (11/10/28)

昨日に続いて、日本酒関連の耳寄りニュースをご紹介。
2日目の今日は、11月に都心で開催される日本酒テイスティング・イベント情報を2つお伝えしよう。
興味のある人は詳細を各ホームページで確認して、参加を検討してみてはいかがだろうか?(地方の方はゴメンナサイ…。
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日本酒業界ニュース4連発/10月トピックス編 (11/10/27)

食欲の秋は、日本酒も美味しくなる季節だ。

酒造業界で新年度となる10月1日は「日本酒の日」でもあり、それに前後して「冷やおろし」と呼ばれる生詰め酒が市場に出回る。
そんな季節のせいか、日本酒にまつわる催しもあちこちで開催され、業界ニュースに事欠かない時期でもある。

そこで今週は、お店紹介はちょっとお休みして、この秋の日本酒関連ニュースを2日続けて計4本ご紹介したい。
まず今日は、「10月トピックス編」の2本
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チャンピオン・サケ決定! (11/9/29)

今月上旬、ロンドンで開催された「IWC 2011」で、今年の「チャンピオン・サケ」が選ばれた。
2011年度のチャンピオンには、「鍋島 大吟醸」(佐賀県・富久千代酒造)が輝いたそうだ。

IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)は、世界最大規模・最高権威とされるワインコンペティションで、世界中のワイン関係者から注目されているイベントだ。

ワインならフランスというイメージがあるだろうが、ワインを愛する点ではイギリスもフランスに負けていない。あのボルドーも、1154年から300年間もイギリス領だった歴史があり、イギリスへの輸出が今日のボルドーの栄華を築いたと言えるのだ。
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世界一のバーテンダー誕生! (11/07/24)

世間は、いまだ女子サッカーのワールドカップ優勝の余韻が覚めやらぬ感じだが…。彼女たちが決勝進出を決めた頃、一足先に「世界大会初優勝」の栄誉を手にした日本人がいる。渋谷のセルリアンタワー東急ホテル40階にあるバーベロビスト」に勤務する大竹学さんだ。
彼が日本人として初優勝したのは、「ディアジオ ワールドクラス 2011」という大会だ。
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酒蔵の被災状況 (11/3/29)

東北地方太平洋沖地震での酒蔵の被災状況が明らかになって来たので、改めてここでご報告したい。

全国卸売酒販組合が24日までに確認できた限りでは、被災した蔵は東京以北に119社あるとのこと。
以下、各県の概況をざっとお伝えする。
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立って飲むべし、座って飲むべし! (11/3/22)

現在、東日本は危機的な状況だが、首都圏の居酒屋も例外ではない。
震災を免れた店でも、市場は品薄だし、計画停電に節電、極めつけは消費者の一斉自粛…。
何とか店を開けても、宴会は軒並みキャンセルされ、フリーのお客もほとんど入らない
休業に追い込まれる店も多く、営業している店は祈るような気持ちで客を待っているのが現状なのだ。

多くの居酒屋にお世話になった者として、こんな時こそ飲みに行かなくては義理が立たない。しかも、それが被災者の支援につながるなら、言い訳も立とうというものだ。
ということで、今回は震災チャリティー営業を行っている2店をご紹介する。続きを読む

頑張れ、東北の醸造家たち! (11/3/15)

未曽有の大震災と津波で、東北地方、特に沿岸部に大変な被害が出ている。
被災したと思われる酒蔵やワイナリーを以下にリストアップしてみた。
かなり名の通った酒蔵も含まれていて、その苦境を思うと胸が痛む。
もし、これらの銘柄を店で見かけることがあったら、ぜひ飲んでやろうじゃないか

●岩手県
二戸市/(株)南部美人 「南部美人」 →現在、蔵の復旧作業中
宮古市/(株)菱屋酒造店 「千両男山」 →建物1階が床上浸水、従業員は無事
大槌町/赤武酒造(株) 「浜娘」「海龍」
釜石市/(株)浜千鳥 「浜千鳥」 →工場、蔵、商品に些少な損傷
陸前高田市/酔仙酒造(株) 「酔仙」 →社員の半数が行方不明のため休業
花巻市/(株)エーデルワイン 「夜空のカノン」「五月長根葡萄園」 →70本が破損、駐車場が一部隆起
紫波郡/(株)紫波フルーツパーク 「自園自醸ワイン 紫波」 →畑の一部が隆起、ワインと貯蔵庫に軽い被害

●宮城県
仙台市/勝山酒造(株) 「勝山」 →一部の社員の家が崩壊、3/15から搾り再開
大崎市/(株)一ノ蔵 「一ノ蔵」 →土蔵の壁が倒壊、現在復旧作業中
大崎市/(名)寒梅酒造 「宮寒梅」 →仕込み蔵など全蔵の半分が倒壊、3/28から営業再開
大崎市/(株)新澤醸造店 「伯楽星」「愛宕の松」 →倒壊は免れたが酒蔵・びん貯蔵酒の被害大
大崎市/森民酒造店 「森泉」 →酒蔵の壁1/3崩落、在庫商品の破損多
気仙沼市/(株)男山本店 「蒼天伝」「伏見男山」 →事務所兼店舗は津波で倒壊。蔵は軽い被害
気仙沼市/(株)角星 「亀鶴」「喜祥」「福宿」 →店舗全損。酒蔵は浸水なし。発電機で搾りを再開
石巻市/(株)平孝酒造 「日高見」 →冷蔵貯蔵庫が壊れ貯蔵中の酒の被害大
石巻市/墨廼江酒造(株) 「墨廼江」 →酒蔵の1階が浸水し、もろみ廃棄。今年の造りは困難
塩竈市/(株)佐浦 「浦霞」 →土蔵の壁の一部が崩落、製品の一部が破損
名取市/(有)佐々木酒造店 「浪庵」「浪の音」 →津波により被害甚大、酒は全滅
岩沼市/(株)小野酒造店 「旭」「武隈」
村田町/(有)大沼酒造店 「乾坤一」 →仕込蔵等の被害大、醪数本被災するも搾り再開
山元町/桔梗長兵衛商店 「わたりワイン」「桔梗長兵衛ワイン」 →ワイナリー全壊、社長が亡くなり廃業

●福島県
浪江町/(株)鈴木酒造店 「磐城壽」
浪江町/(株)馬場酒造本店 「楽實」
浪江町/(株)上田善治郎商店 「磐城 天王山」
双葉町/(株)冨沢酒造店 「白富士」
いわき市/(名)豊田酒造場 「松の友」
いわき市/山宗酒造(株) 「天宅」
いわき市/太平桜酒造(資) 「太平桜」
いわき市/(名)四家酒造店 「又兵衛」
いわき市/清水屋(名) 「清世界」
いわき市/鷺酒造店 「清福」「勿来の関」
いわき市/(資)小野酒造店 「四時川」
いわき市/(資)御代酒造 「勇冠」
いわき市/(資)赤津酒造 「酔乃郷」
いわき市/花井之誉酒造(株) 「花井之誉」

●茨城県
日立市/菊乃香酒造(株) 「菊乃香」「流氷」
日立市/(資)椎名酒造 「富久心」
日立市/森島酒造(株) 「大観」 →建物と商品の一部に被害があった模様

少しでも早い復興を祈りつつ、杯を傾けたい。

埼玉の地酒 (10/3/29)

生まれたのは皇居のお堀端だったが、生後10ヶ月からずっと現在のさいたま市内に住んでいる
埼玉の県南部は、東京のベッドタウンとして定着していることもあり、昔から「埼玉都民」などと呼ばれていた。埼玉県の昼間人口は、夜間人口の87.8%と、全国最低だそうだ。100万人もの県民が都内に通勤・通学している状況では、地元・埼玉への愛着が薄くなっても仕方がない。自分自身、これだけ住んでいながら、正直あまり愛着を持っているとは言えないだろう。

それでも、埼玉の地酒の知名度の低さは、やはり残念に思う。
埼玉県の清酒生産量は、灘で有名な兵庫、伏見をかかえる京都、全国一の蔵数を誇る新潟、米どころ秋田…といった銘醸地を向こうにまわして、全国7位なのだ。消費量でも、東京、大阪、神奈川、愛知、新潟に次ぐ全国6位と、堂々たる地酒大国と言える。(順にはいずれも08年度)
昨年度1~9月のデータでは、全国の清酒出荷量が-4.4%と減少を続ける中、埼玉は+2.2%と、全国トップの伸び率を記録している。

江戸後期から明治にかけては「東灘(あずまなだ)」と呼ばれるほど酒造りが盛んで、明治30年代には350も酒蔵があったという埼玉。現在は県内に35蔵なので、100年余りで9割が消えたことになる。
それでも、全国的に見れば中程度の蔵数だ。いずれの酒蔵も自前の井戸を持ち、荒川や利根川の豊かな伏流水を仕込み水に使っている。

環境省が2008年に選定した「平成の名水百選」では、埼玉県から4箇所が選ばれた。これは、新潟や長野などと並ぶ最多認定数になる。昔から、寄居や秩父あたりは水が美味しいことで知られていた。
「全国新酒鑑評会」でも埼玉の地酒の評価は高く、08年度は出品12点のうち8点が金賞を受賞した。受賞率66.7%は、全国平均26.6%を大きく上回っている。

それでも認知度が低いのは、強力なアピール・ポイントや、有名ブランドが不足しているためだろう。
埼玉の地酒銘柄と言えば、蓮田の「神亀」が唯一最強の存在になっている。1987年、全国に先駆けて全量純米酒造りを実現した蔵として知られ、「酒なら神亀!」と心酔する熱烈なファンが大勢いる。(神田「新八」店主の佐久間達也さん、『闘う純米酒~神亀ひこ孫物語』の著者・上野敏彦さん、フリーライターの藤田千恵子さん…等々)地方の酒蔵から神亀酒造へ修行に来る後継者も多いらしい。
個人的には、昔の飲兵衛志向というイメージで、今ひとつ好みではないのだが…。

最近注目されているのは、羽生の南陽醸造だ。約140年続く酒蔵だが、7年前に脱サラして蔵を継いだ3人が素人同然から精進を重ね、現在は新酒鑑評会でトップクラスの評価を得るまでになった。
彼らが醸す「花陽浴(はなあび)」は、手頃な価格とその美味しさとで、急速にその名を上げている。こちらは自分も好きな銘柄の一つだ。

埼玉の酒を一層レベルアップするため、埼玉県酒造組合は「彩の国酒造り学校」を2005年5月に開校した。県内の若手酒造技術者を集めて、醸造技術に関する講義や実技指導などを2年間かけて行い、技術向上を図ろうという研修会だ。第1期生は2級酒造技能士試験に全員合格するという見事な成果を出し、現在は第2期生が研修中だそうだ。

地酒に関するイベントも定期的に開催されている。
来週4月8日(木)には、さいたまスーパーアリーナで「関東信越きき酒会」が開催。今年で6回目を迎える春恒例の大イベントで、昨年は茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、長野の6県から219蔵が1,051銘柄の酒を出品した。
入場無料ということもあって、県内の飲兵衛も多数集結するはず。自分も、仕事さえなければ馳せ参じるところなんだが…。

一方、県内の若手蔵元や醸造技術者など25名で構成する埼玉県吟友会は、「埼玉の地酒を楽しむ会」を主催する。浦和パルコの和創だいにんぐ「やおまん」で4月24日(土)に開かれるが、こちらは残念ながら既に満席だそうだ。
「やおまん」はスタッフにきき酒師もいて、埼玉県35蔵の地酒をほぼ全て常備しているという、地元志向の居酒屋だ。

こうした活動が徐々に実を結べば、埼玉の地酒が見直される日も近いに違いない。
考えてみれば、ウィスキー界の新星「イチローズ・モルト」も、醸造所は秩父だ。やっぱり埼玉には、意外に美味い酒がある。
あとは、この「意外に」という言葉が、いつか消えてくれることを期待したい!

→埼玉県酒造組合
http://www1.ocn.ne.jp/~saisake/

美酒が日本酒を救う!? (09/11/30)

最近の若者は、お酒を飲まなくなったと言われている。車にも恋愛にも消極的な「草食系男子」は、お酒にも興味が薄いようだ。
少し前に、あっきさんがブログで日本酒消費の低迷について書かれていたので、この機会に自分もちょっとだけこの問題に触れておこうと思う。

日本酒の消費量が減ってきたのは、最近の話ではない。最も飲まれていたのは70年代前半で、1973年には全国で10億升近い日本酒が消費されていた。単純に当時の成人人口で割ると、1人当たり年13.2升。すべての大人が毎月1升以上は清酒を飲んでいた計算になる。

それ以降、消費はゆるやかな下降線をたどり、2008年時点で1973年の約36%にまで落ち込んでいる。人口は逆に増えているため、消費量を成人1人当たりに換算すると、年3.4升にしかならない。ピーク時の1/4近い消費量では、蔵も激減するはずだ。

国税庁のデータによると、清酒の酒造免許を持つ業者は1970年に3,533蔵あった。それが2007年度には1,845蔵と、半分近くまで減少しているのだ。免許を持っているだけで稼動していない蔵や、他の蔵に製造を委託している蔵もあるため、稼動実数は既に1,500蔵を割っているという推計もある。

ワインと比べるのは酷かもしれないが、フランスのワイン生産業者数は約42,000軒だ。(2003年データ
ワインは世界が市場ということが大きいが、フランス国民自身、1人当たりワイン消費量が世界一という飲みっぷりなのだ。たとえ普段は安いワインばかりという庶民でも、フランス人はワインの素晴らしさを良く知っているし、自国のワインに誇りを持っている。

ひるがえって日本を考えてみると、日本酒の消費量が減り続けている最大の原因は「美味しい日本酒の存在があまりにも知られていない」ことにあるのではないだろうか。

「日本酒は苦手」「悪酔いする」といった意見は、誰もがよく耳にする。昨今の不景気では無理もないかもしれないが、飲み会では「飲み放題」がすっかり定着し、安物の日本酒しか知らない若者が増産されている気がする。
一概に安い日本酒を否定はしないが、本物の日本酒は素晴らしく旨いことも、しっかり伝えていかなくてはならないだろう。

あるソムリエが、「生ガキには、やっぱりシャブリが合いますか?」と聞かれて、「僕なら日本酒を合わせるけどね」と答えたという話を聞いたことがある。少なくとも和食に合わせるなら、日本酒の相性はやはり抜群だ。

日常的に接する機会がありながら、日本酒の本当の魅力を知らない人が、あまりにも多い。
だが、高い志を持った蔵や酒販店・飲食店が存在していることも良く知っているし、そうした人たちの努力は、少しずつでも確実に実を結ぶものと信じている。

1973年から35年間、下降線をたどっている日本酒消費量も、いつか必ず上向きに転じるはずだ。日本の人口推移がマイナスに転じた現在、生易しいことではないのは承知しているが、いつか必ず来るだろうその日を、美味い酒でも飲みながら楽しみに待つことにしよう。

日比谷の「街蔵」に行ってみた。 (09/9/25)

日比谷シャンテの斜向かいに、日比谷パティオというオープンスペースがある。よくミニイベントが実施されたりしているのだが、そこで今「街蔵」というイベントが開催されている。

菊正宗酒造創業350年を記念して行っているもので、神戸にある「菊正宗酒造記念館」から、いくつか歴史的な資料を運んで展示しているほか、菊正宗の「生もと(きもと)」原酒などが試飲できる。

自分も初めて知ったのだが、菊正宗は今月からほとんどの製品を生もと造りにしたそうだ。
「生もと」の「もと」とは、「酉」偏に「元」と書く酒造用語。文字通り、清酒造りで一番最初のベースとなるもので、別名「酒母(しゅぼ)」とも呼ばれる。具体的には、麹に水と蒸し米を加えて醗酵させたものだ。

このもとにはいくつかの種類があり、大きく「生もと系」と「速醸系」の2つに分かれる。
「速醸系」は、約100年前に発明された近代的な製法で、現在の日本酒のほとんどはこちらの方法で造られている。一方、「生もと系」は、古来の伝統的な製法で、労力も時間も多くかかるため、ごく一部の蔵が伝統技術の継承などを目的に造っていることが多い。

両者の違いを一言で言ってしまえば、人工的に乳酸を添加するかどうか。「生もと系」の場合、蔵の空気中に存在する乳酸菌が、自然に乳酸を作り出すのを待つ。「速醸系」は、人工の乳酸を添加して造る。
当然、「速醸系」の方が速く造れるし、品質も安定している。しかし、「生もと系」の自然派とも言える造り方は、コクのある味わいと力強さをもたらし、支持する酒飲みも少なくない。熱燗や熟成といった変化にも強く、味が崩れない。
ちなみに、よく耳にする山廃というのも「生もと系」の一種で、「生もと」のやや簡略版の製法だ。

「上撰」(昔で言う一級酒レベル)以上の清酒を、全てこの「生もと造り」にしたという菊正宗。
しかし、菊正宗は、日本で第6位にランクする大規模な清酒メーカーだ。この手間のかかる方法で大量の酒を安く造れるわけはない。そのあたりを聞いてみると、長年のノウハウで生もと造りの自動化に成功したらしい。ただし、吟醸酒など上位のお酒は手造りだということだ。

自分はこうした大手の酒はあまり飲まないのだが、生もとの生原酒(1日100杯限定)を試してみたところ、思ったほど悪くない。これで上撰だそうだが、1杯200円で量は120mlくらいだ。
このほか、3種類のお酒がセットになった「Aセット」「Bセット」がある。
「Aセット」は、「菊正宗」本醸造・超辛口と、「嘉宝蔵」特撰本醸造、「嘉宝蔵」特別純米がセットになったもの(各60mlくらい)。「Bセット」だと、超辛口の代わりに「樽酒」となる。それぞれセットで300円と、格安だ。

上撰であれなら、本醸造や純米は更に期待できるかと、こちらも試してみたのだが…結果は少々残念。特撰本醸造は山田錦を、特別純米は兵系酒18号を原料米にしているらしいが、米と造りの良さを活かしているとは言い難い。ただ、300円という値段を考えればお得なのは間違いない。

お酒のほか、「酒蔵の酒カレー」や「美人酒風呂」という入浴剤など、お酒以外の商品も販売されている。酒造りのビデオなども流されているので、多少の勉強にもなる。仕事帰りに格安で1杯ひっかけるには、いいスポットだろう。開催は10月9日まで。

→菊正宗 酒ミュージアム「街蔵」
http://www.kikumasamune.co.jp/machigura/

紹介しないが、ちょっと面白い店 (09/8/21)

なるべく「いい店」で飲みたいと思っている自分だが、毎回そんな店ばかりではなく、オヤジの聖域みたいな大衆居酒屋や、どこの街にもあるようなチェーン居酒屋で飲むこともある。
そんな店が悪いわけではないし、決して嫌いでもない。ただ、このブログで紹介するタイプの店ではないというだけだ。

平凡に見える店でも、思わぬ面白さが隠れていることもある。先日入った店では、特に目立った点はなかったのだが、女将さんのキャラクターが光っていた。

周囲がお盆休みだったこともあって、平日にも関わらずその店はほぼ満席の、てんてこまい状態だった。
店はカウンター10席、小上がりに座卓4つの、計26席。店を切り盛りするのは、女将さんと男性の料理人、若い女の子の3人だ。

お酒の種類も少ないし、料理もごく普通。特に目立つところのない、よくある街の小さな居酒屋だ。
料理担当の男性は、料理はともかく接客は苦手そうな感じ。若い女性も、まだ慣れていない様子で、女将さんのキャラだけが際立っていた。

一言でいうと、下町のおっかさんタイプ。てきぱきしていて、きっちり店を仕切っている。歯に衣着せぬ物言いなのだが、どこか温かみがあって憎めない。男性スタッフにも、お客の酔っ払いにも、言うべきことをピシッと言って、なかなか気持ちがいい。「一本筋が通っている」というのは、こんな性格を言うのだろう。

「ごめんね~、今日はすごい混んじゃってて。いつもこんなに混まないんだけど…」と、調理の手を休めないまま、料理が遅れがちなことを気にしてくれる。「これツマミながら、あと5分待って」と、軽い肴をサービスしてくれたり。

女の子を名前で呼んで遠慮なく叱りつけていたので、最初は女将の娘かと思ったのだが、聞けばまだ入って3日目のバイトの女子大生だった。
その子は、前の2日もたまたま忙しい日に当たってしまい、「これが普通なのかと思ってました」と苦笑していた。女将によると、やることがないほど暇な日もあるらしい。

常連がまた個性的だ。普段は無口なのに、酔うと普段の8倍も喋りまくる男性。70歳は超えていそうなのに、男性の前だとシナを作る婆さん…。
そんな客たちを相手にしながら、女将さんは全然負けていない。
今時は、こういうタイプの女将さんも珍しい。通いつめると、本当の母親みたいに親身になってくれそうだ。

客には年配のオヤジも多いので、酒が入るとバイトの子にセクハラまがいの話を振ってくる輩もいる。思わず固まってしまうような彼女が、女将さんの下でこの先どう鍛えられるか、それもちょっと見ものだ。

居酒屋というのは、色々な楽しみ方がある。
を楽しむ、料理を楽しむというのはもちろんだが、店主や常連客とのお喋りを楽しんだり、店が持っている雰囲気自体を楽しむというのもあるだろう。

テレビドラマにでも出てきそうなこんな店に足を運んで、登場人物の成長ぶりを見守るといった楽しみも、それはそれで面白そうだ。1人で飲みながらそんなことを想像して、思わずニヤニヤしてしまった。

冷酒の楽しみ (09/7/7)

夏はビールというのが相場だが、冷酒もなかなかイケる。特に、春から夏にかけては生酒の人気が高い。フレッシュな生酒をキリリと冷やして、胡瓜と若布の酢の物なんかをつつきながら飲んでいると、夏の暑さが飛んでいくような気にさせる。

本来はしっかりした味わいの酒が好きな自分も、暑い時期(特に最初の1杯)は、軽快な味わいの冷酒を飲みたくなる。とは言え、お酒の風味が分からなくなってしまうほどギンギンに冷やしてしまうのは考えものだ。

好みにもよるが、普通の酒なら冷やしても10℃前後、生酒でも5~10℃くらいを目安にするといいだろう
この生酒の適温は、白ワインやビールでもほぼ同じ。要は、特別な酒を除いては(※)冷やしてもこのあたりまでと思っておいた方がいい。

ビールも、よく「ギンギンに冷やして!」などと言うが、やはり冷やしすぎれば泡立ちが悪くなり、風味を損なうのは日本酒と一緒だ。ビールの適温は、夏で6~8℃、冬で10~12℃くらいと言われている。

ちょっと気の利く店だと、砕いた氷を敷いた器に冷酒の徳利を入れて出してくれることもある。ワインクーラーの日本酒版といった感じだ。
見た目も涼しげだし、風情もあって嬉しいんだが、氷が溶けるに連れて次第に徳利が水びたしになってしまうことがある。手拭いを添えてくれたり、氷の上に巻き簾でも敷いてくれたりすると、なお気が利いているだろう。

白ワインで使うワインクーラーも、同じ理由でちょっと気になる。ボトルが水びたしになってしまうのはスマートとは言えない。
自分の場合、自宅では保冷材タイプのワインクーラーを使っている。氷ではなく、保冷材を冷蔵庫で冷やしておき、飲む際にワインクーラーの内側にセットするのだ。内側が水びたしにならないので、ワインボトルが濡れることもなく、最後まで快適に注げる。

自宅で日本酒を飲む時に使っているのが、冷酒カラフェだ。
冷酒カラフェとは、通常のカラフェの胴体に、アイスキューブを2~3個入れられるポケット状の窪みがあるもの。ここに氷を入れ、お酒を移して5分も冷やしておけば、程よく冷えた日本酒が味わえるというわけだ。お酒を瓶から移すことで空気が混じるので、多少は味の向上も期待できるかもしれない。
ただし、注ぐ時に酔ってポケットを下向きにしてしまわないよう、くれぐれも注意したい。

夏とは言っても、ビールばかりでは少々味気ない。ワインや日本酒を程よく冷やして、爽やかな夏酒をぜひ楽しんでほしい!


※ここで言う特別な酒とは、日本酒の凍結酒、ワインの白甘口、ビールのハイネケン・エクストラ コールドなどだ。

→【参考】河淳(株):ワインクーラー
http://www.keyuca.com/products/table/tea/iceberg.htm

→【参考】東洋佐々木ガラス(株):冷酒セット
http://www.toyo.sasaki.co.jp/products/gift/syuki-gift/

全国新酒鑑評会の金賞酒を飲んでみる? (09/3/18)

前回の記事で、久保田が好きな日本酒といった人気投票で常に3位以内にランクしていると書いた。蛇足かもしれないが、これについてちょっと補足しておく。

というのは、別に久保田が日本屈指の旨い酒という意味ではないからだ。
紹介した通り、久保田の出荷量はとても多く、人気も高い。従って、飲んだことがある愛飲家の人数も非常に多いのだ。久保田より旨い酒も少なからずあるのだが、多くは出荷量が少なく、知名度にも開きがある。
どれほど旨い酒でも、飲んだ人の数が少なければ、こうしたランキングで上位に入るわけはないのだ。

もちろん、あの出荷量で品質を保つことは、なかなかできることではない
だが、はるかに少ない出荷量ながら、旨さでは久保田を凌ぐ酒が数多くあることも忘れないでほしい。

ところで、やはり前回の記事で、久保田の「紅壽」は原料米に山田錦が使われている、と書いた。
今更ながら、日本酒に余り詳しくない方のために補足しておくと、山田錦とは日本酒の原料として最高とされているお米の品種名だ。もちろん、値段の方も最高

たまに、「全国新酒鑑評会金賞受賞酒」といった肩書きのついたお酒を見かけることがあると思う。全国新酒鑑評会というのは、日本酒業界で最も権威ある吟醸酒のコンテストで、酒蔵はここで金賞を受賞するために技術を磨いていると言っても過言ではない。

この鑑評会は2部に分かれているのだが、第1部が山田錦を使っていない(またはその使用割合が半分以下の)吟醸酒、第2部が山田錦を使用した(またはその使用割合が半分超の)吟醸酒、となっている。
山田錦を使用したお酒は、ほかと同列で比べられないほど旨い、ということなのだ。

この鑑評会では、出品酒の1/4ほどが毎年金賞を受賞する。金賞イコール「1位」という意味ではないので、そこは誤解しないでほしい。
昨年度の実績では、第1部に129点、第2部に828点の計957点が出品され、特に優秀と認められた255点が金賞酒として選出されている。

鑑評会は毎年5月に行われており、今年(第97回)は5月12日~13日が決審日。6月17日(水)には公開きき酒が開かれるので、興味のある人は行ってみるといいだろう。会場は池袋サンシャインシティ・ワールドインポートマート展示ホールだ。
開催時間は10~13時/16時~20時の2部構成。入場料は、前売り3,000円、当日3,500円と、ちょっといいお値段だ。


居酒屋は、「久保田」で試せ (09/3/12)

居酒屋の価格を比較したい時、目安となる銘柄がある。新潟・朝日酒造の人気銘柄「久保田」だ。
兵庫や京都の大手メーカーが上位を占める日本酒業界で、朝日酒造の出荷量は全国15位、新潟では1位。しかも、「好きな日本酒」といったランキングでも、「久保田」は常に3位以内にランクされている。

1985年に誕生して以来20余年、今や質・量ともに日本を代表する銘柄となった「久保田」。それだけに、日本酒にある程度配慮している居酒屋なら、大抵の店に置かれている。つまり、「久保田」の値段を比べてみれば、その店の価格帯がほぼ分かるというわけだ。

一口に久保田と言っても、6種類ある。「百寿」「千寿」「萬寿」という数の名が付けられた3つが有名だが、このほかの名が付いたものも3つあるので、簡単に紹介しておこう。
左から、商品名:特定名称、精米歩合、メーカー希望小売価格の順だ。

 百壽:本醸造、63%、2,026円(一升)/934円(四合)
 千壽:特別本醸造、57%、2,446円(一升)/1,092円(四合)
 紅壽:特別純米酒、55%、3,339円(一升)/1,512円(四合)
 翠壽:大吟醸生酒、42%、2,835円(四合)※4~9月限定
 碧壽:純米大吟醸山廃仕込、50%、5,071円(一升)/2,247円(四合)
 萬壽:純米大吟醸、35%、8,169円(一升)/3,664円(四合)

昔は「百壽」も多く見掛けたが、最近は「千壽」にシフトしてきており、単に「久保田」と言った場合は、千壽を指すことが多い。ただ、大衆居酒屋では百壽の場合もあるので、注意が必要だ。
ちなみに、紅・翠・碧という色名は、それぞれ「玉」を付けると宝石の名前になる。(紅玉=ルビー、翠玉=エメラルド、碧玉=サファイア)

旨さで言えば、やはり萬壽の評価がダントツで、かつて「おいしい日本酒」人気投票で1位だったのを見た記憶がある。その分価格も高く、1杯1,500円以下で出している居酒屋は、まずお目にかかれない。

コスト・パフォーマンスが高いのは、紅壽だと思う。紅壽は純米な上に、6種の中で唯一、原料米に山田錦が使われている。(ほかは五百万石。)ただ、翠・碧より多いとは言え、萬壽の半分以下、千壽の1割以下の出荷量なので、出会えることは少ない

付け加えておくと、朝日酒造では「久保田」の上位に「得月(とくげつ)」「洗心(せんしん)」「呼友(こゆう)」という限定酒がある。価格はいずれも4合瓶で4,294円、4,935円、6,720円。もし、これらの1つでも置いてあれば大したものだが、1杯2千円以上は確実にする。

価格を比較する場合、店によって1杯の量は微妙に違うので、そこは注意が必要だ。1杯が0.7合の店だったら、価格を約1.5倍しなければ1合の店とは比較できない

朝日酒造は、新工場を建設して仕込を増やすと共に、05年には翠寿の酵母を変更したり、06年には千壽の麹精米歩合を50%に高めるなど、より質の高い酒造りを心掛けている。海外にも19ヶ国に出荷しているそうだ。
どこかの名酒のように、人気と反比例して質を落とすことのないよう、今後ともぜひ頑張ってほしい。

→朝日酒造
http://www.asahi-shuzo.co.jp/

普通酒は日本酒にあらず (09/1/14)

少し前に、吟醸酒がどういうお酒なのかをご紹介した。今回は、吟醸酒以外のお酒についても、簡単にご紹介したい。

日本酒の分類にはいくつかの方法があるが、最もポピュラーなのが酒税法で使われている特定名称だ。これは、日本酒をその造り方によって大きく3種類に(細かくは8種類に)分けたもの。それは、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の3タイプだ。

吟醸酒は、60%以下に精米した米と米麹を原料とし、醸造アルコールの添加はお米の重さの1割以内までとされている。(精米歩合や醸造用アルコールについては、吟醸酒の記事を参照)更に「吟醸造り」と呼ばれる手の込んだ方法で造られていることは、前に説明した通り。

純米酒は、精米歩合を問わず、醸造アルコールを添加しないで米と米麹(と水)だけで造られたお酒のこと(注)。
自分もそうだが、日本酒好きには「純米酒」にこだわる人が多い。醸造アルコールは一種の蒸留酒なので、日本酒(醸造酒)にこれを混ぜたら「混成酒(リキュール)」になり、日本酒とは言えないというものだ。ワインでも、ブランデーを添加したものは「酒精強化ワイン」などと呼ばれ、通常のワインとは区別されている。

本醸造酒の精米歩合は70%以下で、醸造アルコールの添加は吟醸酒と同じくお米の1割以内。ただし、こちらはいわゆる「吟醸造り」ではない通常の醸造方法で造られたお酒だ。

細かく分けると、これ以外に大吟醸酒(精米歩合50%以下の吟醸酒)、純米吟醸酒(醸造アルコールを添加していない吟醸酒)、純米大吟醸酒(醸造アルコールを添加していない大吟醸酒)、特別純米酒(特別な製造法であることを明記した純米酒)、特別本醸造酒(特別な製造法であることを明記した本醸造酒)の5種類が加わり、計8種類に分類される。

このどれにも当てはまらない日本酒は普通酒と呼ばれる。普通酒には、精米歩合が70%超のものや、醸造アルコールをお米の重さの1割を超えて添加されたもののほか、糖類を添加したものが含まれている。飲んだ後にベタつくような感じが残るお酒がこれで、二日酔いにもなりやすい安酒と言える。
大量生産されている日本酒の多くが「普通酒」だが、正直言ってこれを日本酒とは思ってほしくない。それを普通酒と称するのは、確かに変な話だ。

昔の「特級」「1級」「2級」は、いずれも普通酒だった。級は蔵の自己申告で認定され、一応、国の審査はあったものの旨い/旨くないといったあいまいなものだ。級が上なら税金も高くなるため、「特級」を申請してきた酒をわざわざ却下するケースがどの程度あったのか、かなり疑わしい。
高い税金を払える大手メーカーはイメージを重視して特級や1級を申請し、小さいメーカーは2級に甘んじるというのが実情だったようだ。

1992年に「特定名称酒」が制定され、それまでの級は廃止されたものの、灘・伏見などの大手メーカーでは、かつての級の代わりに「特撰」「上撰」「佳撰」という呼称を使用していたりする。そうした序列を付けないと、価格の違いを説明し辛いのか…。

特定名称酒なら必ずラベルに種別が書かれているはずなので、逆に「吟醸」「純米」「本醸造」のいずれも記載がなければ、それは「普通酒」と思ってまず間違いない。そういうお酒は、酔えれば何でもいい人以外にはお勧めできないので、あしからず!


(注)2004年まで「純米酒」の精米歩合は70%以下と定められていたが、精米歩合の表記や3等以上の原料米を使用することなどを条件に、この制限がなくなった。これにより、粗悪な米でも精米歩合だけで「純米酒」と名乗ることはできなくなった。だが、「純米酒」と表記できなくなった酒でも、「米だけの酒」といった表現は可能なのでご注意。


お燗の楽しみ・その2/実践編 (08/12/21)

お燗を付ける方法は色々あるが、ベストと言われているのが湯煎
徳利が肩くらいまで入る深さに水を入れた鍋を温め、80℃程になったら火を止めて、日本酒を入れた徳利を浸ける方法だ。常温の日本酒だったら、1~2分(好みの温度による)で温まるだろう。

をよく伝えるためにも、使用するのは薄手の徳利が望ましい。
徳利を浸して少し経ったら、お湯の中で徳利を何回かグルグルと回すと、中の温度差を少なくできる。

慣れるまで、できれば温度計を使うと理想的だ。温度計がない場合は、1分くらい温めたところで徳利を一旦出し、両手で包んで温度を見る。もう少し熱い方が好みだと思ったら、再度お湯に浸ければいい。
鍋を直接火に掛けると熱くしすぎるおそれがあるし、湯煎の方がずっとまろやかで優しい味わいのお燗ができるはずだ。

電子レンジで温めると温度ムラが激しいと言われるが、これもやり方次第。厚めの徳利なら、むしろこちらの方が向く
徳利の上半分をアルミホイルで覆えば、お酒が対流して温度ムラをほとんどなくすことができる。
アルミホイルが電子レンジの内壁に触れると火花が出ることがあるので、ホイルの端は徳利に密着させるようにするのがポイント。

ただし、電子レンジの機種によっては、アルミホイルが使用できないものもある。(説明書で確認しよう。)その場合は、徳利に割り箸を一本差しておくと、マイクロ波が反射して温度ムラを少なくできる。

なお、お酒は温めると膨張するので、徳利の口一杯まで入れないよう注意しよう。徳利の首よりも下にしておけば大丈夫

燗酒を頻繁にしたい人は、「ミニかんすけ」(17,000円)といった家庭用卓上型お燗器を購入してしまう手もある。銘酒居酒屋でもたまに見かける製品なので、手軽に優れモノの燗酒を楽しめる。ふた付の錫チロリが使われているため、燗酒を楽しむには理想的な酒器になる。
ちょっと高いが、温度計付きのタイプならなお良い。(21,000円)

どうしても自分で付けるのが面倒なら、燗付けのうまい居酒屋に行ってしおう!
自分の知っている燗付け名人は、錦糸町「井のなか」の工藤卓也さん、 阿佐ヶ谷「善知鳥」の今悟さん、築地「やまだや」の山田佳延さん…等々。もちろん、ほかにもいい店はたくさんあるはず

さあ、これでお燗についてはちょっとした通になったはず。年末年始は、ゆっくり燗酒を楽しもう!

お燗の楽しみ・その1/知識編 (08/12/19)

そろそろ寒さも本格的になってきた。こういう季節には、お燗で日本酒というのも、風情があっていいものだ。

最近は燗酒に馴染みのない人も多いが、お燗を付けると体が温まるだけでなく、お酒の味がまろやかになったり、旨みがふくらんで味のバランスが良くなったりするのだ。
また、アルコールは体温に近い温度の方が体内に早く吸収されるので、飲みすぎの予防にもなる。
肴の風味を引き出したり、口の中をさっぱりさせたりする効果もあるらしい。

日本酒なら何でも燗付けすればいいというわけではなく、やはりお燗に向く酒と向かない酒がある。お燗した方がおいしくなるお酒のことを燗上がりする酒というのだが、大雑把に言ってしまえば、しっかりした純米酒、特に「山廃」や「生もと」とラベルにあるお酒は燗上がりするものが多い。

一方、お燗に向かないのは、大吟醸酒や生酒だ。香り高い大吟醸酒は、温めるとせっかくの香りが飛んでしまうし、新鮮さを楽しむ生酒も冷やして飲むのが普通。
新潟に象徴されるような淡麗系の日本酒も、水っぽくなってしまうことが多いようだ。

ただし例外もあって、香りより旨みに重点を置いて造られた大吟醸酒や純米吟醸酒だと、お燗で美味しくなる銘柄もあるし(代表格は黒龍の「九頭竜」)、生酒も同様。
だが、こうした飲み方を試すのは、お酒に精通した人か実験好きな人以外、やめておいた方が無難だ。

よく「人肌」「ぬる燗」「熱燗」などと言うように、一口にお燗と言っても様々な温度がある。
下に、酒造業界での一般的な目安をご紹介しよう。
別に厳密な定義はないので、これよりやや高めの温度を想定している蔵などもあるようだ。

 ・30℃近辺 = 日向燗(ひなたかん)
 ・35℃近辺 = 人肌燗(ひとはだかん)
 ・40℃近辺 = ぬる燗(ぬるかん)
 ・45℃近辺 = 上燗(じょうかん)
 ・50℃近辺 = 熱燗(あつかん)
 ・55℃以上 = 飛びきり燗(とびきりかん)

「飛びきり燗」以上に、飲めないほど熱くなってしまった酒は「煮え燗」というらしい。
エチルアルコールの沸点は78.32℃なので、それ以上熱くしてしまうとアルコールが気化して、荒れた味になってしまう。温めすぎには注意したい。

どの温度が美味しいのかはお酒によって異なるし、飲み手の好みにもよる。
一般的には、ぬる燗と言われる40~43℃程度が、最も美味しいと言われる。
だが、意外に「上燗」(44~48℃くらい)で味が際立つ銘柄も多いので、できれば自分で色々と試してみるといいだろう。

たまに、飛びきり燗でひときわ旨さを増す酒や、燗冷まし(一旦70℃くらいに熱してから適温までさましたもの)で旨くなる酒もあるので、なかなかお燗も奥が深い!

吟醸酒って、どういうお酒? (08/11/18)

少し前、ある居酒屋で、隣にいた大学生らしき若い男性3人組が、日本酒について話していた。
1人が「吟醸酒って、結局どういうお酒なの?」と、シンプルな質問をしたのだが、相手は「高級な日本酒でしょ?」というくらいしか答えられなかったようだ。

自分は、横から口を挟みたい衝動を抑えるのに苦労していたのだが、確かに良く飲んでいる割に何だか分からない人がほとんどだと思う。
というわけで、今回は吟醸酒について簡単に紹介したい。

吟醸酒は、その名の通り「吟味されて醸造された日本酒」のこと。
どのように吟味されているのかというと、まず原材料が吟味されている。
日本酒の醸造に使われるお米は食用のものとは違い、「酒造好適米(醸造用玄米)」と呼ばれる品種を使うのが一般的だ。
吟醸酒の場合は、その中でも特に素晴らしい味を期待できる最高品種、具体的には「山田錦」などを使うことが多い。(ほかには、五百万石、美山錦、雄町、八反錦…などが有名)

しかも、その米粒の外側部分を40%以上、多くは50%くらいまで削って捨ててしまう。
米粒は、外側に近い部分ほどタンパク質や脂肪などが多く含まれていて、これらはお酒の質を低下させる原因になるためだ。
削った後に残る割合を「精米歩合」と言う。吟醸酒の場合は40%以上削るため、精米歩合は60%以下になる。これが50%以下になると「大吟醸」と言われる。
鑑評会用の吟醸酒だと、精米歩合は35%前後。買ったお米の3/2近くを捨ててしまうわけだ。

食用のお米だと精米歩合は約92%、普通酒の場合で75%くらいなので、これがいかに贅沢なことか分かるだろう。
50%精米するには約3昼夜かかるので、原材料費だけでなく、手間も相当かかることになる。

次に、吟醸造りと呼ばれる高度な技術で醸造される。専用の酵母を使い、低温で長期間発酵させる造り方だ。
酒造りでは、発酵温度が高ければ早く発酵するが、味わいは荒くなりやすい。逆に発酵温度が低ければゆっくりと発酵し、繊細な味わいとなる。
通常のお酒は、15度前後で2~3週間発酵させるが、吟醸酒の場合は10度以下で1ヶ月以上かけて発酵させる。

醸造後、醸造アルコールを添加する場合も、吟醸酒は米の重さの10%以下に制限されている。
醸造アルコールとは、でんぷん質を糖化したものや、廃糖蜜(サトウキビやテンサイなどの糖蜜から砂糖を結晶させた後に残る液)を発酵・蒸留して造られる95%のエチルアルコールのことだ。吟醸酒の場合は、香りやキレを出すために添加される。
これを添加しない場合は、「純米吟醸」または「純米大吟醸」と呼ばれるが、それで美味しい吟醸酒を造るのは、より高度な技術が必要となる。まぁ、化粧せずにスッピンで勝負するようなものだ。

こうして、手間もお金も掛けて造った吟醸酒は、吟醸香と呼ばれるフルーツのような甘い香りを持ち、すっきりとした味わいの淡麗な日本酒に仕上がる。

お米を水に浸すにも秒単位、温度調整も0.5℃単位で管理する、まさに真剣勝負で造られた酒。
ぜひともじっくりと味わいましょう!

新酒の季節 (08/11/3)

10月19日に受けた試験に合格し、無事フードアナリスト資格を取った。
一番下の4級なので、(厳密にはその下に「初級」があるが、初級は「フードアナリスト」を名乗れない。)こういうブログをやっている以上、合格するのが当前かもしれないけどね。

この先、3級、2級とステップアップしたいところだが、その前にクリアしたい目標が別にある。
それは、ワインエキスパート資格だ。
飲食系の資格としては最難関なので、これまでのような独学でのクリアはかなり難しい。1年くらいの受験勉強期間を設け、そのうち数ヶ月はワインスクールに通わないと、一次はともかく二次試験はまず通らないだろう。(二次試験は、口頭試問とテイスティングがある。)

自分の場合、スクールに通う時間を確保できるかも問題だし、あったとしても学費を貯めるところから始めなくてはならないんで、かなり悩ましい。とりあえず、少し飲み歩きを控えて、貯金を目指すか…。

そう言えば、今月の20日にはボジョレ・ヌーボーが解禁される。たまたまだが、「ミシュランガイド東京2009」発売の前日だ。
解禁直後は高い(とは言っても2~3千円くらいだが)ボジョレも、少し日が経てば価格も下がってくる。少し落ち着いて来てから飲んだ方が得策だ。

今やワインの新酒の代名詞となったボジョレだが、新酒はボジョレ地区だけではなく、その北側のマコネ地区や、コート・デュ・ローヌ、ブルゴーニュなどでも同日に解禁される。
赤が有名だが、数は少ないものの白やロゼの新酒もあり、特にロゼは希少品だ。

また、イタリアやドイツにも新酒はある。イタリアではノヴェッロと言い、11月6日が解禁日。ドイツではデア・ノイエと言い、更に早い11月1日からお目見えする。
日本でも、解禁日こそないものの、新酒ワインは同じくらいの時期から出回り始める。

ボジョレもいいが、これらそれ以外のヌーボーを試してみるというのもおすすめだ。知名度のあるボジョレに比べて割安に飲める上、知っている人が少ないだけに、通を気取れるかも 

お酒とのお付き合い (08/8/24)

このブログで紹介しているのは、自分が実際に入った店で、良いと思った店ばかり。当然、入ってみてハズレだったという店もあるわけで、そうした店は紹介していない。

掲載しない店も含めると、かなりの数の店に入っていることになるが、別に毎日呑んでいるわけではない。
これでも、2日連続では呑まないようなるべく心がけているのだ。

それは、経済的な理由と、健康上の理由から。
いくら安い店が中心とは言え、毎日呑んでいられるほど儲けていない。できれば週2回くらいに抑えたいところなんだが、正直なかなか難しい…。

また、100歳まで元気に呑み続ける目標を達成するためには、当然健康にも気をつけなくてはならない。毎年健康診断を欠かさないのはもちろん、なるべくベストに近い身体状態を保つよう、それなりに気を配っている。
お陰で、少なくともこれまで1度も内臓系の病気にかかったことはない。

昔は無茶な呑み方をすることも多かったが、今は翌日に響くほど呑むことは滅多になくなった。身体のこともあるが、翌日の予定を潰す価値があるほどの酒(の時間)は、さすがに多くなくなったということもある。

年齢を重ねて酒の飲み方が変わってくるのには、分別がつくとか、酒が弱くなるとか以外に、酒との付き合い方が分かってくるということがあると思う。自分にとって、楽しいお酒の時間とはどういうものなのかが分かってくると、無理して呑むようなことはなくってくるはずだ。

呑み友達にあまりお酒に強くないタイプの友人もいるのだが、彼らの呑み方を見ていると、お酒の楽しみ方にルールはいらないと心底思う。
日本酒を入れて呑む友人もいるが、自分はいいアイデアだと思った。
お酒に強い西洋人は、ウィスキーに氷を入れて呑むことはあまりしないが、日本では度数の強いウィスキーを楽しむ方法として定着している。それと同様に、お酒に弱い人が日本酒を楽しむ方法として、オン・ザ・ロックもあっていいと思っている。

お酒との付き合い方というのは、人との付き合い方と似ている。1人1人、考え方もやり方も違っていて、正解などない。
自分なりの付き合い方を、ゆっくり時間をかけて見つけていくしかないのだ。
失敗を重ねることもあるし、後悔することも多いだろうが、そうした紆余曲折を経て成熟した酒呑みこそ味があるというのも、人付き合いと一緒ではないだろうか。

酒呑み用語事典:生酒編 (08/7/23)

このところ真夏日が続いており、いよいよ夏本番だ。
こういう日にはビール!…という方も多いだろうが、冷たく冷やした生酒なんぞも似合うものだ。

ところで、一言で「生酒」と言われるものに、実は3種類あることをご存知だろうか
それは、「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」「生詰酒(なまづめしゅ)」「生酒(なまざけ)」の3つ。これらは一緒くたにされがちだが、実は意外と違う

日本酒は通常、冬に醸造された後しばらくの間、タンクに貯蔵して熟成させる。それによって味に丸みや深みが出て、より美味しくなるからだ。その際、貯蔵する前と、貯蔵が終わって瓶詰めする前の2回、火入れと呼ばれる低温加熱殺菌が行われる。(普通は65度前後)

1回目の火入れは、主に酵母の活動を止め、雑菌を殺して酒質を安定させるために行われる。
2回目の火入れは、お酒が出荷された後に変質(劣化)するのを最小限に留めるためだ。
ただ、昔はともかく、冷蔵技術や冷蔵庫が普及した現代では、ちゃんとした貯蔵・保管さえ行えば、火入れは必須の工程ではない。

そこで、1回目(貯蔵前)の火入れを行わずに出荷された日本酒を「生貯蔵酒」、2回目(瓶詰め前)の火入れを行わずに出荷された日本酒を「生詰酒」、両方とも行わなかった日本酒を「生酒」と呼んでいるのだ。

生貯蔵酒は、きちんとした温度管理や衛生管理ができる醸造所での火入れは省略するが、販売後の変質は最小限に留めたいということだろう。
生詰酒は、火入れをして酒質を安定させてから熟成させ、秋には美味しくなったお酒をそのまま届けたいということ。こちらは「冷やおろし」とも呼ばれる。これは、涼しい酒蔵で貯蔵したお酒を、火入れせずに冷えたまま卸したという意味だ。
生酒は、醸造したお酒本来の風味をそのまま味わってもらおうというお酒だ。

生貯蔵酒はまだしも、生詰酒と生酒は購入後必ず冷蔵庫で保存し、できるだけ早く呑んでしまった方がいい。こうしたお酒は300mlの小瓶で提供されることが多いが、これは1回で全部呑みきってもらうためだ。

「生貯蔵酒」や「生詰酒」は、いずれも1回は火入れを行っているので、本来の「生酒」とは区別されるべき。本当の「生酒」(他の2種と区別するため、「本生(ほんなま)」とか「生生(なまなま)」と呼ばれることもある。)は、保存や流通にもコストがかかるため、販売価格にも影響する。
もし「生貯蔵酒」や「生詰酒」を「生酒」と省略表示している店があったとしたら、それは今はやりの不当表示に当たるので、すぐやめてほしい。

初物好きの日本人は「生」の文字に惹かれるかもしれないが、生酒が火入れをしたお酒よりいいかと言えば、それは別問題だと思う。
生酒は瓶の中でも醗酵し続け、炭酸ガスを発生させるため、口に含むと少し舌がピリピリする。当然だが、フレッシュな味わいがある一方、熟成が足りないという見方もできる。

だが、夏場はこのフレッシュさと微発泡が、涼しげな刺激を与えてくれるのも確か。自分も、夏はなんとなく生酒に手を伸ばしてしまう。
ビールもいいが、この季節は生酒にもぜひトライしてみてほしい!

恵比寿らしいオシャレな酒販店「紀伊国屋」 (08/6/12)

今回は、珍しく酒販店をご紹介したい。
酒屋さんも、いい店を紹介しているとキリがない。最近はディスカウント店やコンビニなど競争が激化している業界だけに、どこも特徴を出して生き残ろうと努力しているのだ。

今日ご紹介するのは、知る人ぞ知る恵比寿の紀伊国屋酒店だ。
場所は、JR恵比寿駅の西口を南側に出た駅前左前方。ガーデンプレイスとはちょうど反対側に当たる。

この酒屋は、まず店がオシャレ。昨年は、テレビ朝日のドラマ「警視庁捜査一課9係 season2」最終回のロケにも使われた。確かに入ってみたくなるような店舗デザインなのだ。

中に入ると、店の中央にレジを兼ねた四角形のカウンターがあり、その中にスタッフがいる。商品であるお酒は、その周囲を囲むように、壁全面の陳列棚に並べられている。

品揃えは、特別多いというわけではないのだが、セレクトがいい。
あらゆるジャンルのお酒がまんべんなく揃っていながら、種類が絞り込まれているため、店のセンスがよく出ている。店舗イメージ通りのオシャレなお酒が多いので、プレゼント用のお酒を探すには最適な店だ。珍しいお酒もけっこうあるし、包装もGOOD。

サービスも心得ていて、ワインのバースデイ・ヴィンテージも、注文の翌日には用意してくれるらしい。(日、祝日を除く)

更に、お酒まわりのグッズ(グラス、ソムリエナイフ、本…など)も色々置いてあって、これまた楽しめる。
自分は、ここで以前、サントリーのPR誌「クォータリー」を買ったが、かなり面白かった。

数年前はこのカウンターで何種類かのお酒を試飲できたのだが、この前行った時にはやっていなかったようだ。やめてしまったのだとしたら、大変残念なのだが…(料金的にはもちろん格安で、けっこういいお酒が試飲できた。

お酒好きなら、店内を眺めているだけでも楽しいはず。
恵比寿に行くことがあれば、ぜひ1度立ち寄ってみてほしい。

→渋谷LINKS/紀伊国屋酒店
http://www.shibuya-kushoren.com/contents/pickup/5.html

→紀伊国屋酒店 九州通信(ブログ)
http://sake-kinokuniya.seesaa.net/

酒呑み用語事典:お酒を飲む器編 (08/4/16)

普段お酒を飲む時、どんな器を使っているだろうか
「ボトルから一気飲み」といった飲み方は、昔のコロナビールくらいだと思うので、普通は何らかの器を使っていると思う。

日本酒に限れば、コップ、という人が多いかもしれない。だが、厳密にはどちらの名称もたぶん正確ではない。

(さかずき)というのは本来、神前結婚式で三々九度に使われる、お皿のように底が浅くて口の広い器を指す。
酒器としては最も古く、土器の時代から素焼きで作られていた。漆塗りのものが登場したのは平安時代だ。
お酒は元々「神に捧げる飲み物」だったため、結婚式や正月など、改まった行事の時に杯が使われることが多い。

居酒屋でよく出されるのは、おそらくおちょこぐいのみのはずだ。

猪口(ちょこ)は、杯が陶磁器で作られるようになってできたもので、普通は杯より口径が小さく、底も少し深くなっている。底に近づくに連れてすぼまる形状は一緒だ。通常、お揃いの徳利とセットになっている。
「普段使いの杯」という役割なので、改まった席で使われることは少ない。
江戸時代は、宴の最初に杯を使い、座がなごんで来ると猪口に替えたらしい。

具衣呑み(ぐいのみ)は、口径こそ小さいが底はしっかり深く、円筒形に近い。居酒屋で最もよく見かける酒器と言っていいだろう。本来、肴を盛り付ける向付の器が酒器に転用されたものらしい。

「具衣呑み」という言葉は、かつて武士たちが出陣の際に酒を呑む行為を指したのだが、やがてそれに使われる器もそう呼ばれるようになったと言われている。戦の具足や衣装を身に付けたままでさっと呑むため、普段用いる酒器よりも大きめの器が使われたようだ。
具衣呑みも改まった席で用いられることはなく、本来はお揃いの徳利もない。
よく、きき酒に使われる蛇の目猪口は、形から言えば「ぐいのみ」であり、「猪口」という呼び名は誤用だ。

「コップ」は一般的な呼び名ではあるが、厳密にはタンブラーと言う。
底が平らで、取っ手などが付いていないグラスを指す用語だ。ワイングラスのように脚が付いているものや、ジョッキのように取っ手がついているものは、タンブラーとは言えない。

グラスは古くから高級品として輸入されていたが、酒器として利用され始めたのは、江戸時代からだ。18世紀後半からガラス生産が広がり、全国各地でさまざまなグラスが作られるようになった。
現代では、切子クリスタル耐熱グラスなど、さまざまなグラスが酒器として使われている。

ほかに、も酒器として使われるが、これについては「お酒を注ぐ器編」で採り上げたので、2月12日の記事を参照してほしい。
可杯(べくはい)」といったユニークな酒器もあるが、特殊な物なので、同じくここでは割愛する。

ちなみに、自分が一番好きなのは「ぐいのみ」だ。飲むペースが割と速いため、このくらいのサイズでないと、忙しくてかなわない。磁器やガラス製では口当たりが少々物足りないので、陶器製、それも備前焼なら最高だ。

純米酒と、純米ではない日本酒 (08/4/1)

日本酒を選ぶとき、自分が最初に気にするのは「純米酒」であるかどうかだ。
純米酒とは、米麹だけから造られた日本酒を指している。

米と水は分かるとして、米麹とは何だろうか?
米麹とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたもの。麹菌には、デンプンを分解してブドウ糖を造り出す働きがある。そして糖分は、酵母(微生物の一種)を加えると、分解されてアルコールを発生させる。
糖分がないとアルコールが発生しないので、米麹を使って糖分を造り出しているのだ。

純米酒の仲間に純米吟醸酒純米大吟醸酒というものもあるが、これはとりあえず純米酒の高級バージョンと思っていていい。
この3種を除く全ての日本酒には、米・米麹・水以外の原料が含まれている。

それは何かと言えば、主に醸造アルコールだ。
「醸造アルコール」とは、サトウキビやトウモロコシ、イモ類などから醸造・蒸留して造られた、純度の高いアルコール(エチルアルコール)のことだ。
これを使うと、日本酒の醸造が安定して失敗しにくくなると同時に、スッキリとした味に仕上がったり、費用も安くなったり…といったメリットがある。

その一方で、醸造アルコール等を加えた酒はリキュールに近いのだから、「日本酒」と称するべきではない、といった批判もある。
ワインの場合、アルコールを添加したものは「フォーティファイド・ワイン」と言い、普通のワインとはっきり区別されている。シェリー、ポートワイン、マディラ酒などがそうだ。

醸造アルコールを入れたものが一概に粗悪品というわけではなく、少量を的確に使えば、普通の純米酒以上の味になる場合もある。例えば、「吟醸酒」や「大吟醸酒」では、少量の醸造アルコールを加えることで、爽やかな味わいとフルーティーな香りを引き出している。

しかし、多く使えば日本酒らしい味わいが薄くなるのは事実。それを補う(ごまかす?)ために、糖類グルタミン酸ナトリウム(うまみ調味料「味の素」の主成分)などの添加も認められている。
このようなお酒は「普通酒」と呼ばれ、最も安価に普及しているタイプの日本酒になる。普通酒は、どうもベタベタした味だったりして、美味しい日本酒にはなり得ない

では、醸造アルコールはどこまでが少量なのか?
線を引くのは難しいが、本醸造酒吟醸酒と名乗るには、醸造アルコールは米の重量の10%以内に制限されている。実際はそれよりずっと少ない量しか使っていないお酒も多い。
ほかのお酒は飲めるのに「日本酒は苦手」と言う人は、普通酒をはじめとした品質のあまり良くない日本酒を飲み、悪印象を持ってしまったのでは、という気がする。

自分は純米至上主義というわけではないが、常に肴をつまみながら呑むため、和食と相性のいい純米酒が一番気に入っている。
また、醸造アルコールの入った日本酒を呑むと、悪酔い二日酔いになりやすいことも経験上自覚している。

だから、居酒屋でメニューを見ると、真っ先に純米酒をピックアップしてしまうのだ。

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