千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

おいしい銘柄

ボジョレ・ヌーボーを選ぶなら (12/11/2)

早いもので、またボジョレ・ヌーボーの季節がやって来た。今年は11月15日(木)が解禁日だ。
例年、「最高の出来」が決まり文句のヌーボーだが、今年は珍しく「世紀の不作」というニュースが飛びこんで来た。天候が不順で、ブドウが想定の半分程度しか収穫できなかったらしい。今年のフランス内陸部は、冷夏で雹(ひょう)まで降ったそうだ
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世界最強のウィスキー「GEORGE T. STAGG」 (10/3/2)

日本酒業界も低迷しているが、ウィスキー業界もかなり厳しい状況が続いている。最近は強いお酒が敬遠される傾向にあるから、度数の高いウィスキーは分が悪い
それが昨年度、前年対比10.6%もの販売増に転じたのは、某メーカーの「ハイボール販促キャンペーン」のたまものだろう。ほとんど死語と化していた「ハイボール」を復活させるとは、けっこう思いきったキャンペーンだ。

だが、ハードなお酒の愛好者も、少ないながら間違いなくいる。最近、イチローズ・モルトを見かける機会が増えてきたのも、潜在需要があるからこそだろう。(イチローズ・モルトは、度数の強い原酒が多い。)
ハードな酒が嫌いじゃないという人に、おすすめのバーボンがある。それが、「ジョージ T スタッグ」だ。

製造は、ケンタッキー州のバッファロー・トレース蒸溜所。1999年6月までは「エンシェント・エイジ蒸溜所」という名前だったと言えば、ご存じの方も大いはずだ。
同蒸溜所の創業は1869年だが、酒造り自体は小規模ながら18世紀末から始めており、実質は220年近い歴史がある。樽熟成には、優に百年を超えるレンガ倉庫も、いまだ現役で使われているという。

アメリカの禁酒法時代でも、薬用として製造を認可されていた数少ない蒸溜所のひとつであり、近年ではイギリスの「ウイスキー・マガジン」誌から「2005年No.1蒸留所」に選ばれている。
昔から「エンシェント・エイジ」や「ブラントン」で評価が高く、自分も20代の頃によく飲んだ。
ここから2002年度以来、ほぼ年1回のペースで限定発売されるプレミアム・バーボンが「ジョージ T スタッグ」だ。

同社の無数にあるバーボン熟成樽の中から、木目の詰んだフレンチ・オーク樽で15年ほど寝かされた、その年最高の1樽が選ばれる。それを、カスク・ストレングス&ノンチルフィルター(濾過も加水もしない原酒)でボトリング。従って、度数はその年により異なるが、ここ5年ほどは70度を超えるものばかりで、2007年物などは72.4度という強烈な度数になっている。

だが、アルコール度数のみならず、その旨さもまた強烈だ。重厚感のある濃厚な味わいで、ほのかな渋みと甘みが心地よい。これまで自分が飲んだバーボンはいいとこ60~70種程度だと思うが、少なくともその中ではベストの味と感じた。ちなみに、飲んだのは2006年物だ。
ただ、なんせウィスキーとして世界最高の度数なだけに、飲みすぎにはくれぐれも気を付けてほしい。(実は自分も、これを飲んで旨さに感激した後の記憶が飛んでいる…。

年にわずか300~400本という超限定品のため、本国アメリカでもなかなかお目にかかれない。日本の価格でボトル2万円前後が相場だが、年度によっていはその倍近い値段が付けられていることもある。
ショット・バーでの価格は、シングル2,000~2,500円といったところ。確かに高価だが、もし見つけたら1回飲んでみる価値はある。参考までに、各年度の度数を挙げておこう。

・2002年/68.8度
・2003年/71.35度
・2004年/65.9度
・2005年/ロットA=65.45度、ロットB=65.9度、秋物=70.6度
・2006年/70.3度
・2007年/72.4度
・2008年/70.9度
・2009年/70.7度

2009年度はまだ発売されたばかりだ。
なお、同蒸溜所の看板商品は、蒸留所と同じ名前のバーボン「バッファロー・トレース」で、こちらも人気が高い。そのほか、「ロックヒル・ファーム」「ハンコックス・リザーブ」「イーグルレア」、ライ・ウィスキーの「サゼラック ライ」や「トーマスHハンディー」、ウォッカの「レイン」…なども作っている。

→バッファロー・トレース蒸溜所(英語)
http://www.buffalotrace.com/


手頃で旨い純米無濾過生詰酒「裏・雅山流」 (09/5/21)

山形は、名酒の里として余りにも有名だ。「十四代」や「くどき上手」をはじめとして、「山形正宗」「出羽桜」「鯉川」「上喜元」「杉勇」「秀鳳」「初孫」「麓井」「楯野川」「惣邑」…など、秀逸な銘柄が実に多い。
昨年、都内の銘酒居酒屋を対象に行われた「日本酒好感度調査」アンケートでは、山形県がぶっちぎりの1位に輝いたというのも無理はない。

山形の酒は、昔の広告コピーではないが、「コクがあるのにキレがいい」。
香り高い新潟の吟醸酒が「香り吟醸」と表現されるのに対し、山形の吟醸酒は「味吟醸」と評される。
そんな山形県のお酒で、最近特に注目度が高いのが、(有)新藤酒造店の「九郎左衛門 雅山流」だ。

新藤酒造店は、米沢市にある老舗の酒蔵。江戸中後期から庄屋の副業として酒造りを始め、明治3年、五代目・新藤九郎左衛門の代から本職となった。
地元では、「富久鶴」というめでたいネーミングの酒で昔から知られている。

八代目の時、山田錦で仕込む純米大吟醸で全国新酒鑑評会に出品するようになる。それを市販したのが「九郎左衛門」という銘柄。九郎左衛門は、新藤家で代々の当主が襲名するという由緒ある名前だ。

更に、次期当主であり杜氏でもある十代目の新藤雅信さんは、「本物の地酒・人の求める酒」を目標に掲げ、地元の原料を使って米から自社生産する一貫造りに挑んだ。この新しい銘柄が「九郎左衛門 雅山流」だ。

自らの名前から1字取り、それに「動かぬ山」「流れる川」の2字を合わせ、大自然の中で何にもとらわれることなく技を磨き上げたいという心をこめた酒名だ。
蔵の前の田で育てた山形特産の酒造好適米「出羽燦々」に、山形酵母、吾妻山系の伏流水と、地元にこだわった原料で醸された吟醸酒で、保管設備の整った地酒専門店だけが契約を交わして販売を許される。

一方、「雅山流」のコンセプトはそのままに、もっと自由な発想で造られる「裏・雅山流」というシリーズも誕生した。こちらの原料米は美山錦が中心で、中には、山田錦や山酒86号(山形県独自の限定品種)を使ったものもある。ラインアップには純米大吟醸や本醸造もあるものの、中心となっているのは純米無濾過生詰酒。
「雅山流」もコストパフォーマンスは高いが、純米の「裏・雅山流」は更に安くて旨いと人気がある。(ほとんどが1升で2千円少々)

更にレアなシリーズとして、「雅山流・影の伝説」という銘柄もある。これは、貯蔵されているお酒の出来具合を見計らって、不定期に発売される限定商品。発売ごとに銘柄の末尾にローマ数字が付けられ、現在「Ⅵ」まで発売されている。
原料米も精米歩合もまちまちなため、「新藤さんのきまぐれで発売される」という冗談まで囁かれているユニークな商品だが、「雅山流」や「裏・雅山流」のいずれかの酒がベースになっている。これは本当に流通数が少ないので、見ることはほとんどない。

気鋭の酒蔵が仕込む注目の地酒「裏・雅山流」。最近は都内の銘酒居酒屋でも、時おり見かけるようになった。
値段を超えたその味を、ぜひ確かめてみてほしい。

→有限会社 新藤酒造店
http://www.kurouzaemon.com/

全国新酒鑑評会の金賞酒を飲んでみる? (09/3/18)

前回の記事で、久保田が好きな日本酒といった人気投票で常に3位以内にランクしていると書いた。蛇足かもしれないが、これについてちょっと補足しておく。

というのは、別に久保田が日本屈指の旨い酒という意味ではないからだ。
紹介した通り、久保田の出荷量はとても多く、人気も高い。従って、飲んだことがある愛飲家の人数も非常に多いのだ。久保田より旨い酒も少なからずあるのだが、多くは出荷量が少なく、知名度にも開きがある。
どれほど旨い酒でも、飲んだ人の数が少なければ、こうしたランキングで上位に入るわけはないのだ。

もちろん、あの出荷量で品質を保つことは、なかなかできることではない
だが、はるかに少ない出荷量ながら、旨さでは久保田を凌ぐ酒が数多くあることも忘れないでほしい。

ところで、やはり前回の記事で、久保田の「紅壽」は原料米に山田錦が使われている、と書いた。
今更ながら、日本酒に余り詳しくない方のために補足しておくと、山田錦とは日本酒の原料として最高とされているお米の品種名だ。もちろん、値段の方も最高

たまに、「全国新酒鑑評会金賞受賞酒」といった肩書きのついたお酒を見かけることがあると思う。全国新酒鑑評会というのは、日本酒業界で最も権威ある吟醸酒のコンテストで、酒蔵はここで金賞を受賞するために技術を磨いていると言っても過言ではない。

この鑑評会は2部に分かれているのだが、第1部が山田錦を使っていない(またはその使用割合が半分以下の)吟醸酒、第2部が山田錦を使用した(またはその使用割合が半分超の)吟醸酒、となっている。
山田錦を使用したお酒は、ほかと同列で比べられないほど旨い、ということなのだ。

この鑑評会では、出品酒の1/4ほどが毎年金賞を受賞する。金賞イコール「1位」という意味ではないので、そこは誤解しないでほしい。
昨年度の実績では、第1部に129点、第2部に828点の計957点が出品され、特に優秀と認められた255点が金賞酒として選出されている。

鑑評会は毎年5月に行われており、今年(第97回)は5月12日~13日が決審日。6月17日(水)には公開きき酒が開かれるので、興味のある人は行ってみるといいだろう。会場は池袋サンシャインシティ・ワールドインポートマート展示ホールだ。
開催時間は10~13時/16時~20時の2部構成。入場料は、前売り3,000円、当日3,500円と、ちょっといいお値段だ。


居酒屋は、「久保田」で試せ (09/3/12)

居酒屋の価格を比較したい時、目安となる銘柄がある。新潟・朝日酒造の人気銘柄「久保田」だ。
兵庫や京都の大手メーカーが上位を占める日本酒業界で、朝日酒造の出荷量は全国15位、新潟では1位。しかも、「好きな日本酒」といったランキングでも、「久保田」は常に3位以内にランクされている。

1985年に誕生して以来20余年、今や質・量ともに日本を代表する銘柄となった「久保田」。それだけに、日本酒にある程度配慮している居酒屋なら、大抵の店に置かれている。つまり、「久保田」の値段を比べてみれば、その店の価格帯がほぼ分かるというわけだ。

一口に久保田と言っても、6種類ある。「百寿」「千寿」「萬寿」という数の名が付けられた3つが有名だが、このほかの名が付いたものも3つあるので、簡単に紹介しておこう。
左から、商品名:特定名称、精米歩合、メーカー希望小売価格の順だ。

 百壽:本醸造、63%、2,026円(一升)/934円(四合)
 千壽:特別本醸造、57%、2,446円(一升)/1,092円(四合)
 紅壽:特別純米酒、55%、3,339円(一升)/1,512円(四合)
 翠壽:大吟醸生酒、42%、2,835円(四合)※4~9月限定
 碧壽:純米大吟醸山廃仕込、50%、5,071円(一升)/2,247円(四合)
 萬壽:純米大吟醸、35%、8,169円(一升)/3,664円(四合)

昔は「百壽」も多く見掛けたが、最近は「千壽」にシフトしてきており、単に「久保田」と言った場合は、千壽を指すことが多い。ただ、大衆居酒屋では百壽の場合もあるので、注意が必要だ。
ちなみに、紅・翠・碧という色名は、それぞれ「玉」を付けると宝石の名前になる。(紅玉=ルビー、翠玉=エメラルド、碧玉=サファイア)

旨さで言えば、やはり萬壽の評価がダントツで、かつて「おいしい日本酒」人気投票で1位だったのを見た記憶がある。その分価格も高く、1杯1,500円以下で出している居酒屋は、まずお目にかかれない。

コスト・パフォーマンスが高いのは、紅壽だと思う。紅壽は純米な上に、6種の中で唯一、原料米に山田錦が使われている。(ほかは五百万石。)ただ、翠・碧より多いとは言え、萬壽の半分以下、千壽の1割以下の出荷量なので、出会えることは少ない

付け加えておくと、朝日酒造では「久保田」の上位に「得月(とくげつ)」「洗心(せんしん)」「呼友(こゆう)」という限定酒がある。価格はいずれも4合瓶で4,294円、4,935円、6,720円。もし、これらの1つでも置いてあれば大したものだが、1杯2千円以上は確実にする。

価格を比較する場合、店によって1杯の量は微妙に違うので、そこは注意が必要だ。1杯が0.7合の店だったら、価格を約1.5倍しなければ1合の店とは比較できない

朝日酒造は、新工場を建設して仕込を増やすと共に、05年には翠寿の酵母を変更したり、06年には千壽の麹精米歩合を50%に高めるなど、より質の高い酒造りを心掛けている。海外にも19ヶ国に出荷しているそうだ。
どこかの名酒のように、人気と反比例して質を落とすことのないよう、今後ともぜひ頑張ってほしい。

→朝日酒造
http://www.asahi-shuzo.co.jp/

家呑みの理想的な1本、秋田「白瀑」 (09/1/26)

酒呑みと言われる人は、意外に吟醸酒をそれほど飲まない。
1杯ならまだいいが、何杯も飲み続けることを考えると、吟醸酒は意外に飽きが来てしまったり、予算的にもったいないところがある。
1本の酒を呑み続けるなら、呑み飽きしない上質な純米酒が一番、という酒呑みは多い。
言うのは簡単だがいざ探すとなかなか難しい。オススメを1つ挙げるなら、秋田の「白瀑(しらたき)」を挙げたい。

白瀑は、青森県境に位置する秋田県最北の町・八峰町にある、山本合名会社の銘柄。
世界遺産の白神山地と日本海とにはさまれた八森地区は、日本でも有数の自然に恵まれた地域だ。その世界最大のブナ原生林である白神山地のふもとに、山本合名会社はある。
酒の名前は、蔵の近くの薬師山の麓にある白瀑という滝から付けられた。

蔵では、その白神山地から湧き出る天然水を、自然の傾斜を利用した3Kmほどの自家水道で直接酒蔵まで引き込んでいる。それをろ過も加工もせず、仕込みを始めとする全ての工程にそのまま使用しているそうだ。こんな贅沢な蔵はほかにない。ブナ林が育んだきめの細かい天然の湧水は、鉄分が少なく酒造りに最適な水だという。

米も、地元の酒米(酒造好適米)にこだわっている。
「山田錦」「備前雄町」「美山錦」といった王道の酒米を使った酒も少数醸してはいるが、多くは「酒こまち」「めんこいな」「吟の精」といった秋田産の米を使っているのだ。
2008年からは、自家水道沿いの田7反で酒米作りを始め、自家製米での酒造りへの挑戦も始めた。
平均精米歩合は53%と、県内でも随一。醸造している酒は全て特定名称酒だ。

搾られた酒の加熱殺菌(火入れ)も、通常のタンクではなく、瓶詰めした後に火入れをしている。それを一気に冷水シャワーで冷まし、冷蔵貯蔵庫で瓶貯蔵しているそうだ。こうすることで、搾り立てのような華やかで新鮮な味わいを維持できるのだという。

この蔵では、近年酒造り体制を改革し、2006年には杜氏制を廃止。2007年から若き6代目・山本友文さんが杜氏を兼ね、酒造りに精魂を傾けている。その効果か、近年急速に酒質が向上しているように思う。
「どこにも負けない最高の日本酒を造りたい」という山本さんの情熱は熱く、今後が一層期待される蔵だ。

白瀑の酒はどれも間違いないが、最近飲んだのは純米の山田錦(四合・1,380円、1升2,625円 )。昔ながらの製法で丁寧に造られた酒は、ほのかに上品な香りがあり、まろやかな味わい。料理の味を引き立てながらも、つい「もう1杯」が止まらなくなる旨さだった。
価格も1升2千円台が中心で、たとえ大吟醸でも手頃な値段なのが嬉しい
家呑み用として、理想的な1本だ。

→山本合名会社
http://www.osake.or.jp/kuramoto/n161.html

イギリス王家秘伝のリキュール「ドランブイ」 (08/9/22)

お酒には、その発祥にまつわる逸話が残されているものが少なくない。
その中でも、最も良く知られたものの1つが、スコットランドのリキュール「ドランブイ」の逸話だろう。

ドランブイは、平均熟成15年のハイランド・モルト・ウイスキーを中心とした約40種類のスコッチと、スコットランドの原野に咲くヒースの花のエキスや蜂蜜、各種ハーブ、水、シロップなどを配合した、英国産リキュールの傑作。まともなショットバーで、この酒を置いていない店は、まず無いと言ってもいいだろう。

洋酒好きな人なら知っている人も多いと思うが、その発祥はイギリスの王位継承戦争にさかのぼる。
1745年、ステュアート王家のチャールズ・エドワード・ステュアート王子は、フランスの支持のもと、王位継承権を争う戦いを起こした。
エジンバラ・ダービーまで進撃するが、インバネス州カロデン・ムーアで大敗し、フランス王家との連絡も途絶え、王子は敗走する。3万ポンドの賞金までかけられたが、それでも王子への忠誠を守って、スコットランド北西のスカイ島からフランスまでの亡命に尽力したのが、ハイランド貴族のジョン・マッキノンらの勇士だった。

亡命は成功し、王子は褒美としてジョン・マッキノンに王家秘伝の酒の製法を授けた。これがドランブイというわけだが、マッキノン家は王家秘伝の酒に敬意を表し、それを製造販売することなく、しばらくは一族の間だけでその製法を伝えていった。

160年以上経過した1906年、マッキノン家の子孫であるマルコム・マッキノンがついにエジンバラでドランブイの製造販売を開始する。
ドランブイという名前は、ゲール語の「dram(飲む)」と「buidheach(満足な)」を合わせて、満足できる酒という意味を込めたネーミングらしい。
日本でも容易に飲めるようになった現在でも、そのラベルには「Prince Charles Edward's Liqueur(チャールズ・エドワード王子のリキュール)」の文字が記されている。

スコッチウイスキーに、複雑な香りと甘さが加わった味は、女性にもおすすめ。
飲み方もかなり自由に楽しめ、ストレートやロックはもちろん、「ボギーズ」と呼ばれるソーダ割、ジンジャーエール割、トニックウォーター割、冬はお湯で割ってもおいしい牛乳やクリームで割るのが好みという人もいる。(度数は40度なので、ウィスキー並)
カクテルのベースとしても使われ、特に有名なものに「ラスティ・ネイル」(スコッチ+ドランブイ)がある。

男っぽい映画俳優として有名なハンフリー・ボガードは、マティーニだけでなく、このドランブイも大好きだったという。

また、ちょっと意外だが、70年代のドランブイには、カレーに使われる香辛料・ターメリックが多く含まれていたため、ほのかにカレーっぽい香りがしたらしい。確かに、17世紀~19世紀にかけて、イギリスは東インドと香辛料貿易を盛んに行っていたので、その影響かもしれない。

現在、ドランブイは750ml瓶で3,930円、375ml瓶で1,970円程度(消費税別)。ディスカウントショップなら、もっと安く手に入る。
ぜひ1度、イギリス王家秘伝の味をお試しあれ。

→DRAMBUIE
http://www.drambuie.com/

新潟なれど淡麗ならず、「鶴齢」純米大吟醸 (08/7/17)

昔は淡麗な日本酒が好きだったが、最近はそれなりに飲み応えのある、しっかりしたタイプが好きになってきた。
淡麗なお酒は呑みやすい一方、どれも似たような味わいになりやすく、呑み慣れてくると少々物足りなさも感じてくる。もちろん、それはそれで美味しいのだが(特に夏などは)、蔵の個性や米の個性が感じられるお酒には日本酒の面白さがあるような気がして来たのだ。

料理との相性もある。
吟醸酒のように、スッキリしていて薫り高いお酒は、それだけで充分おいしい。だが、京料理などと合わせると、その味わいや風味を邪魔してしまうことも少なくないのだ。

吟醸酒として素晴らしい味わいを持ちながら、料理と合わせてもなお美味しいというお酒が、ないわけではない。例えば「鶴齢」はそんな貴重なお酒のひとつだ。

「鶴齢」は、米どころ新潟県の南魚沼市にある、青木酒造の代表銘柄だ。1717年創業というから、既に291年を経た由緒ある蔵になる。
越後杜氏による冬だけの手造りという、伝統的な製法を守り続ける一方、品質向上のために変えるべき部分は大胆に変えるという革新性も持ち合わせている。(全国に数台しか導入されていない最新製麹機をいち早く導入したりしている。)

代表銘柄である「鶴齢」は、鈴木牧之の命名だという。
鈴木牧之は江戸時代の越後を代表する文化人で、魚沼の生活や文化を克明に紹介した『北越雪譜』という著作が、当時の江戸でベストセラーになっている。
青木酒造は、その子孫によって経営されているのだ。

魚沼の料理は、伝統的に冬の間保存が効く甘醤油で味付けされたものが多い。また、雪国での労働は意外と汗をかくことから、そんな地元の食生活に合った米本来の旨味を引き出す味を「鶴齢」は目指して造られている。
そのため、淡麗辛口イメージが強い新潟の地酒にも関わらず、米の美味しさをしっかりと感じさせる旨口の酒に仕上がっているのだ。

その純米大吟醸(1升・6,116円)は、最高級の酒米である山田錦の中でも、更に最高品質を誇る兵庫県東条町特A地区産のものを使用し、それを40%まで磨いている
ほのかにフルーツを思わせるような吟醸香はするものの、決して強すぎず、口に含むとしっかりとした米の旨味が広がってくる。
普通の純米大吟醸酒とは一味違う、越後の骨太さを感じさせてくれるような魅力的な酒だ。

現在、鶴齢の酒は地元で約75%が消費されているそうだが、都内で仕入れている店も徐々に増えてきている。単に「人気のある酒」ではなく、本当に美味しい酒を選んでいる店なら、置いてあっても不思議ではない。
逆に鶴齢がラインナップされている店だったら、他の銘柄もまず間違いのないものが揃えられていると見ていいだろう。
池袋の「坐唯杏」、新板橋の「ST」、築地の「ねこ屋」、新橋の「うさぎ」、大宮の「仁左衛門」あたりで見た記憶があるが(5店とも紹介済み)、さすがに常時飲める店はなかなかない。

鶴齢は純米大吟醸酒に限り、黒っぽいすりガラス瓶が使われている(普通は緑や茶色の瓶)ので、これが純米大吟醸の目印になる。
更に上位酒として、純米大吟醸生原酒・斗瓶取り(1升8,400円)や、290周年記念純米大吟醸酒(4合18,900円)といった超レア物もあるが、これこそ見かけることのほとんどない、幻の酒だ。

→青木酒造
http://www.kakurei.co.jp/index.shtml

福島の蔵が醸す国産マッコリ「虎マッコルリ」 (08/6/1)

昔はよく焼肉屋に出かけたものだが、最近は自宅近くのおいしい焼肉屋が次々と姿を消してしまったこともあって、焼肉屋とはだいぶ疎遠になってしまった。
焼肉やホルモンの店には韓国系の店が多いので、お酒にマッコリが置いてあることがある。

マッコリは韓国の大衆酒で、日本のどぶろくに似ている。どちらも米を主原料とし、簡単な濾過しか行わない酒なので、発酵されなかったでんぷんや糖が残って白く濁っているのが特徴だ。
「どぶろく」を含む日本酒には米麹が使われるが、通常マッコリには麦麹が使われる点が最大の違い。
サツマイモ(コグマ)を原料に使うものもあり、その場合は「コグマ・マッコリ」と言うらしい。

マッコリのアルコール度数は6~8%なので、ビールより少し強い程度だ。甘口なこともあって、グイグイ飲めてしまうので、うっかり飲み過ぎないよう気をつけたい。
マッコリは「マッカリ」または「マッコルリ」と言う場合もある。

日本人には今ひとつ馴染みのないマッコリだが、最近は焼肉屋を中心に徐々に人気が出て来ている。
その中でも、ひときわ美味しいのが「虎マッコルリ」というレアな銘柄だ。

「虎マッコルリ」は、福島県の有賀酒造で作られている、国産マッコリだ。
そのためか、通常の麦麹ではなく、日本酒と同じ米麹が使用されている。
古来の製法を守って一切添加物を使わず、純粋に米と米麹だけを原料として作られていて、加熱殺菌処理をせず生のまま搾って出荷されている。従って、保存は冷蔵が必須。

瓶の中で発酵が進むため、毎日味が変わっていく面白さがある。
注ぐとポコポコと表面がはじけ、乳酸菌が活きているのが分かる。
ビタミン群、必須アミノ酸、タンパク質が含まれているので、体にも良さそうだ。

こうした活性の濁り酒を開ける際は、ゆっくり瓶を引っくり返して軽く混ぜてから、少しづつ時間をかけて開けるようにしなければならない。いきなり開けると噴き出してしまうからだ。
「虎マッコルリ」はほかのマッコリと違って甘味がなく、さっぱりとした味わいで、いくらでも呑めてしまう。

ただ、出荷量が限られているため、都内でもあまりお目にかかれない。販売している店が1軒だけあると聞いたのだが、残念ながら自分もどこなのか知らない。
焼肉・ホルモンの店だと、たまに置いてあることがある。特に、マッコリに力を入れている店なら、お目にかかれる確率も高くなるだろう。

例えば、元Jリーグ大分トリニータの選手だった李久和(リ・クファ)さんが、八重洲に昨夏オープンした炭火焼ホルモンの店ぐぅは、そのひとつ。
ほかにも何軒かあるので、マッコリが好きという人や、試してみたいという人は探してみて欲しい。
マッコリの甘さが苦手という人でも、「虎マッコルリ」なら、きっと気に入ってもらえるはずだ。

→有賀醸造合資会社
http://www.arinokawa.com/

黒革を着たバーボン、ジャックダニエル・モノグラム  (08/3/21)

ジャックダニエルは、現在世界最も売れているウィスキーだ(年間約890万ケース/2006年)。分類としてはバーボン・ウィスキーに入るが、「バーボンではなく、テネシー・ウィスキー」だと主張しているのは、有名な話。

バーボンというのは、原料にトウモロコシを半分以上使用して、(ただし、8割以上になると「コーン・ウィスキー」と呼ばれる。)連続蒸留器で造られたアメリカ産ウィスキーだ。熟成には、内側を焼き焦がしたホワイトオークの新樽が使われることが多く、独特の芳香がつく。
生産の中心地がケンタッキー州バーボン郡だったことから、「バーボン・ウィスキー」という呼称が生まれた。

ジャックダニエルの醸造所は、ケンタッキー州ではなく、その南隣のテネシー州にある。1866年にアメリカで初めて政府登録された蒸溜所だが、当時の責任者ジャスパー・ニュートン・ダニエル氏は、若干16歳だったと伝えられている。
1904年にセント・ルイスで開催された世界博覧会で唯一金賞を獲得し、一躍その名を知らしめた。

他の州で造られても、製法が規定通りなら「バーボン」に分類されるのだが、テネシーでは「バーボンより上」というプライドを込めて「テネシー・ウィスキー」と称しているのだ。
テネシー州には、ジャックダニエル蒸留所以外にジョージディッケル蒸留所もあるが、現在こちらは操業休止中のため、事実上、ジャックダニエルが唯一の「テネシー・ウィスキー」となっている。

製法はバーボンとほとんど同じだが、蒸留直後に原酒をサトウカエデの炭(チャコールフィルター)で濾過してから熟成させている点が最大の特徴。それだけとは言え、ジャックダニエルでは1滴ずつ10日間もの時間をかけて濾過している。これによって、アルコールに含まれる雑味を取り除き、マイルドな味わいを実現しているのだ。

バーボンの中にも、ジョニー・ドラムのようにヒッコリー(北アメリカ原産のクルミ科の樹木)の炭などで濾過しているものはあるが、蒸留直後に、テネシー州産サトウカエデの炭で行うところが、テネシー・ウィスキーたる所以だ。
サトウカエデは、樹液から砂糖(メープルシュガー)が取れるカエデ科の樹木。そのためか、ジャックダニエルにも甘い風味がある。

ジャックダニエル本社のあるムーア郡は、いわゆるドライ・カウンティで、禁酒法以来、お酒の販売が禁止されている郡の一つ。ケンタッキー州もおよそ3分の2がドライ・カウンティと言われており、世界に冠たるウィスキーの産地で酒が飲めない、という皮肉な状況になっている。

自分もジャック・ダニエルは昔からお気に入りの銘柄で、今でもたまに飲んでいる。
2年前、六本木のBARで初めて飲んだのが、ジャックダニエルの上級バージョンであるモノグラムだ。黒革を着たボトルは、高級感があっていかにもカッコいい。
ボトルのデザインは、「ジャック・ダニエル・シルバー・セレクト」もデザインしている、サンフランシスコ在住のマイケル・オズボーン氏。

アルコール度は47度。通常のジャックダニエルが2004年以降、それまでの43度から40度に軟化したのに対し、こちらはあくまで硬派路線。ジャック・ダニエルやジェントルマンジャックに比べ、香りも味わいもより深味があり、上品に仕上がっている。

モノグラムは、本来アメリカ本国とシンガポール向けに限定発売されたものだが、ネットでは5,500円くらいで入手できる。

→JACK DANIEL'S
http://www2.jackdaniels.com/home.asp

見つけたら即、呑むべし!安くて旨い「風の森」 (08/1/30)

日本に美酒は数あれど、美味しければ美味しいほど値段も高いのが普通だ。
しかし、探せば安くて旨い酒が無いわけではない。例えば「風の森」のコストパフォーマンスの高さは、かなりのものだ。

造っているのは、奈良の油長酒造(株)。
全国でも有数の、こだわりを持って酒造りをしている蔵のひとつだ。

創業は享保4年(1719年)。290年近くにわたって、地下百メートルの深井戸から汲み上げた湧水を仕込み水として使い続けている。
2001年以降は純米酒だけしか造らず、それも吟醸と大吟醸が中心。酵母は7号酵母しか使わない。

酒米は、最高の酒米として知られる山田錦や雄町を使ったものもあるが、奈良県産の食用米であるアキツホやキヌヒカリを主力としている。お酒を醸すのに適した米と、食用に適したお米とはタイプが違うため、食用米で美味しいお酒を醸すのは難しいのだが、この蔵ではあくまで地元の米と水で造ることにこだわっているのだ。

更に凄いのが、全て無濾過生原酒で出荷されていること。こんな蔵はほかに聞いたことがない。
日本酒は、濁りなく仕上げるために濾過するのが普通だが、その際にお酒が本来持っている旨味も多少失ってしまう。
また、なるべく長期間品質を保持するため、一般的な日本酒は加熱殺菌してから出荷される。加熱していない「生酒」だと、300mlの瓶を良く見ると思うが、この小ささは開栓したら残さず全部飲み切ってもらいたいからだ。

味を第一に考えるなら、「無濾過生原酒」は理想だが、実際に製品化するのはなかなか難しい。保存のきく冬に限定して出荷することはあるが、この蔵は通年なのだ。
これを実現するために、ここでは麹造りから搾り方、保存の仕方にいたるまで、様々な工夫をしているという。
その甲斐あって、「風の森」は生酒でありながら、常温で保存しておいても劣化するどころか、逆に旨さを増すことすらある。

「風の森」のラインナップは、3種類の搾り方と4種類の酒米によって分かれているが、最も安い「純米しぼり華(アキツホ)」は1,995円。純米大吟醸でも、なんと2,730円からある。最高クラスの「純米大吟醸斗瓶とり」ですら、3,150円~。
言っておくが、これはすべて1升の税込み価格だ。(約半額で4合瓶もある。)この価格でこの美味しさを実現した努力には、惜しみない拍手を送りたい。

生酒は通常、冷やしてフレッシュな味わいを楽しむものだが、「風の森」は温めるとひときわ旨さが増す。いわゆる燗上がりする酒だ。できれば、ぬる燗(40度前後)でぜひ試してみて欲しい。

これまでに自分が「風の森」を見かけた店は、新橋「晒柿」(07年11月26日紹介)、池袋「半蔵」(次回紹介予定)、浦和「月の岩」(未紹介)…などだ。
ただし、この先も常備されているとは限らないので、その点は注意してほしい。

なお、油長酒造では「火の鳥」という米焼酎も醸している。

油長酒造株式会社(情報は今ひとつ古い…)

超高級ワインを試すなら、DRCエシェゾー (08/1/14)

1月も半ばになって正月の話題というのも気が引けるが…今年の正月、東武百貨店池袋店で「2003年ロマネ・コンティ福袋」が発売されたのをご存知だろうか?1点限りの福袋で、価格はなんと120万円
言っておくが、中身は750mlの赤ワイン1本だけである。

ロマネ・コンティと言えば、「ワインの王様「ブルゴーニュの宝石」などと評される世界一の高級ワイン。高いのも当然かもしれないが、それにしても2人で1時間もあれば飲めてしまう酒1本が120万円…そんな金があったら、ハーレーのスポーツスター1200を買う人の方が多いだろう。(たぶん)
グラス1杯20万円では、もはや飲み物の値段ではない。

「ロマネ・コンティ」の畑は、小さな畑の多いブルゴーニュ地方でも特に小さく、1.8ヘクタールしかない。ちょっとした野球場と大差ない広さだ。
現在、この畑を醸造・管理しているのは、DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)社。世界最高と言われる畑で、完熟しただけを手作業で選り分ける徹底した品質管理を行い、伝説のワインを作り上げた。

2003年のブルゴーニュは、記録的な猛暑でぶどうの成長が著しく進み、通常は開花から100日で収穫するところを、80日で収穫したと言う。
そのため、美味しいワインになるのか賛否両論だったのだが、結果的には1990年、1999年に次ぐ歴史的なビンテージとなった。
ただし、全ての生産者が成功したわけではなく、DRC社を含めて、土壌と樹齢に恵まれ収穫を遅めにした生産者たちが成功を手にしたようだ。

ロマネ・コンティは、決して濃厚でパワフルなワインではなく、色も比較的淡い。バランスが素晴らしすぎるがゆえに、むしろ目立たない味わいとも言われる。
そのため、飲み慣れない人には価値が分かりにくいようだが、バラのような華やかな香りと透明感、キメ細かさでは他を圧倒している…らしい。(実は自分もまだ飲んだことがない。誰か飲ませて~!

もともと生産量が少なく、多くても年間7千本ほどしか造られないワインだが、2003年にいたってはわずか3,575本しか造られなかった。
日本に入ったのが何百本かは知らないが、100万円で発売されるや瞬時に売り切れたらしい。現在の市場価格は既に150万円に迫っている。200万円を軽く超える85年や78年に比べればまだマシだが…。

昔からロマネ・コンティは高いワインの代名詞だったが、近年の価格高騰ぶりはちょっと異常ではないだろうか。
2003年のDRCワインでは、「エシェゾー」のコスト・パフォーマンスが最も高いと思う。DRCの中では早飲みに向いたワインだし、栓を空けてから開くのも早いので、ワインをそれほど飲み慣れていない人でも、その美味しさが分かりやすく伝わるはずだ。自分なら、こちらをおすすめしたい。

もっとも、エシェゾーもこれまで5万円程で買えたのが、近年9万円以上にまで値上がりしているから、こちらもおいそれと飲めるワインではない。

最近、中国あたりの成金たちが、石油やマグロだけでなくワインの価格高騰にも世界的に影響を及ぼしていると聞く。
できれば中国の方々には、今一度伝統的な黄酒を見直していただけるよう、切にお願いしたい…!

本物のお屠蘇とお銚子 (08/1/4)

今日から仕事始め。そろそろお屠蘇気分から脱する頃だ。
ところで、本物のお屠蘇を飲んだことのある人は、関東では少ないのではないだろうか?

お屠蘇は、正月に、無病長寿を願っていただく酒のことだ。
もともとは中国で始まった習慣で、日本には嵯峨天皇の頃に宮中の正月行事として始められ、江戸時代に一般に広まったとか。

東日本では、単に正月に飲む酒を「お屠蘇」と称する場合も多いが、本来は日本酒に本みりんを加えたものに、屠蘇散を7~8時間浸して作るものだ。
屠蘇散とは、漢方薬に使われる生薬を5~10種類配合したもので、薬局などで入手することができる。

屠蘇散には、白朮(ビャクジュツ)の根、山椒(サンショウ)の実、桔梗(キキョウ)の根、肉桂(ニッケイ)の樹皮、防風(ボウフウ)の根などが含まれていて、胃腸の働きを盛んにし、血行をよくし、風邪を予防する効果があると言われている。ただし、正月にお屠蘇をちょこっと飲んだくらいでは、効果は期待できない。

自分で作るのが面倒な人は、お屠蘇を購入する手もある。
たとえば、奈良の春鹿が出している「延寿 屠蘇酒」(300ml・735円)。
春日大社の御神酒造りを千年来担ってきた「春鹿」の蔵元と、平安時代の創業以来、春日大社の警護や奈良市中の治安を守る家柄であった菊岡漢方薬。この2社の奈良の老舗が協力して造った、由緒あるお屠蘇だ。

そう言えば、お屠蘇をいただく際に使われる、取っ手が上についた急須のような形の酒器はお銚子と呼ばれる。
「お銚子」は、元々は神前結婚式の三々九度の時、巫女がお神酒を注ぐのに用いる柄杓のような酒器が原型。急須のような酒器は、本来「提(ひさげ)」が正式名称なのだが、普及するにつれて江戸前期頃からこちらも「お銚子」と呼ばれるようになったらしい。
よく、燗徳利のことを「お銚子」と呼ぶ人がいるが、あれは酒器の名称を混同した結果で、本来は誤用。自分は居酒屋でも必ず「徳利」と呼ぶようにしている。

この際、本物のお屠蘇とお銚子で新しい年をスタートするというのも、日本の正月らしくて良さそうだ。

今西清兵衛商店/春鹿

田酒の蔵が醸す大吟醸「善知鳥(うとう)」 (07/12/19)

青森の酒と言えば、ほとんどの人が田酒を思い浮かべるだろう。
だが、青森には田酒のほかにも「豊盃」や「陸奥八仙」など、酒飲みを惹きつけてやまない銘酒が結構隠れている。
その中で、是非とも知っておいて欲しいお酒が「善知鳥」だ。

善知鳥は「ウトウ」と読む。元々は、チドリ目ウミスズメ科に属する海鳥の名前だ。かつて青森周辺でのみ観察された珍しい鳥だという。
青森が浪岡町と合併する2005年までは市の鳥に指定されており(現在はふくろう)、そもそも「青森村」自体が以前は「善知鳥村」という名前だったと言うから、郷土を象徴する鳥だったようだ。

「善知鳥」と書いてなぜ「ウトウ」と読むのかは、地元の伝説に由来しているのだが、それについては触れない。この酒が、田酒で知られる西田酒造の逸品だということだけ覚えておいて欲しい。

純米酒「田酒」が誕生したのは1974年。手間を掛けて丁寧に造られたバランスの良い味わいは、数々のコンテストで一位に輝き、特に女性に人気のある地酒として知れ渡っていった。
その蔵元である西田酒造店には「喜久泉」というブランドもあり、その中取り大吟醸が「善知鳥」だ。

「善知鳥」は、最高の酒造好適米といわれる山田錦を使った「大吟醸」と、青森産の酒造好適米華想いを使った「大吟醸・百四拾」の2種類がある。(「華想い」は、山田錦と華吹雪を掛け合せた酒米で、系統名が青系酒140号。)
いずれも40%まで精米され、メロンのような華やかな香りが立つ素晴らしい大吟醸酒に仕上げられている。スッキリと飲みやすいものの味わいは深く、大吟醸の魅力を余すところなく堪能させてくれる。

「大吟醸」は毎年5月に、「大吟醸・百四拾」は6月中旬にのみ少量発売される。価格は、「大吟醸」が8,156円(1800ml)、「大吟醸・百四拾」が2,400円(720ml)と、決して高くはない。
ただし、香り豊かな酒なだけに、これに肴を合わせるのは難しいかもしれない。

なお、阿佐ヶ谷に「善知鳥」という、燗付けの達人が営む銘酒居酒屋があるのだが、この店ではもちろん善知鳥が飲める。

西田酒造店

飲まずに飾りたい、ユニークなボトル「Rose's Cocktail Infusions」 (07/9/6)

お土産ネタをもうひとつ。今度はお酒だ。
グアムやフィリピンではトゥバと呼ばれる椰子酒が庶民に親しまれているが、酒屋に行くとほかにも面白いお酒が色々と置いてある。
(余談だが、椰子の実は果肉に山葵醤油をたらすとハマチ刺そっくりの味になって、いいつまみになる。)

写真のボトルは、アメリカの飲料メーカーが販売している、カクテル用飲料の「Rose's Cocktail Infusions」。
このシリーズには、CRANBERRY(クランベリー)、Blue Rasberry(ブルーラズベリー)、Sour apple(サワーアップル)、Mango(マンゴー)、Watermelon(スイカ)、Pomegranate(ざくろ)の6種類があって、写真はBlue Rasberry。
どれも鮮やかな色できれいなのだが、これが特に夏っぽかったので、お土産用に購入してみた。

ジンをこれで割ると、「ブルーラズベリー・マティーニ」というカクテルになるらしい。
味はかなりスイートという気がするが、お酒にあまり強くない女性にはピッタリのカクテルかもしれない。

この会社は、ほかにもボトルが斜めになった「Rose's Mojito Mixers」など、ユニークなボトルデザインで知られており、写真の波型ボトルは、2005年にGPI(米国ガラスびん協会)のClear Choice Awardを受賞している。

たまにはデザインでお酒を選んでみるというのも、お酒へのアプローチの1つとしてなかなか楽しいと思うが、どうだろう?

Rose's Cocktail Infusions(英語)
GPI Clear Choice Award

知る人ぞ知るシングルモルト、CLYNELISH Aged 32 Years (Finest and Rarest)

シングルモルト・ウィスキーが好きな人というのは、個性を愛する人だろう。万人に受け入れられるブレンデッド・ウィスキーより、好き嫌いがはっきり分かれるに惹かれるということだから。

そんなシングルモルト・ウィスキー好きの人に、1本だけを薦めようというのは難しい話だ。入門者だったら、「グレンモーレンジ」や「ザ・マッカラン」あたりをすすめるべきだろうが、それでは当たり前すぎて面白味がない。それなりに飲んでいる人なら、最近気に入っている「クライヌリッシュ」をおススメしたい。

クライヌリッシュ蒸留所は、スコットランドで最も北部に位置する蒸留所の1つ。ハイランド北部のブローラという町にある。

現在のクライヌリッシュ蒸留所が建てられたのは1967年。それ以前にも古い蒸留所があったのだが、そちらは新しい蒸留所の完成に伴って「ブローラ蒸留所」と改名し、それから16年ほどは全く同じ方法でウィスキーを造っていた。だが、ブローラ蒸留所は1983年5月に閉鎖され、現在はクライヌリッシュ蒸留所だけが操業を続けている。

シングルモルト好きの中には、「ブローラ」の方を好む者も多いようだが、なんせ新しいものでも24年前の出荷だ。残念ながらまだ飲んだことがないため、自分には比較できない。(万一、そちらの方が美味しかったとしても、入手困難なのでここではお勧めしないが。)

クライヌリッシュにも色々あって、どれも美味しいのだが、自分が特に気に入っているのは32年物の手書き風ラベル。
長期熟成ウィスキーとしては淡い色合いだが、黄金色で美しい。長期熟成による華やかで複雑な香りに、スモーキーなピート香と海の香りが混じって、魅力的な芳香を放っている。舌触りはなめらかでフルーティーだが、度数が53.4°とかなり強いので、喉を通り過ぎてからカッと効いてくる。

それだけで飲んでも充分おいしいが、水で割って食事と合わせても楽しめる。少しくらい水で割っても、かえって香りが立ち、美味しさは失われない。
ワインと同じように、ウィスキーも長期熟成を経たものは香りが開いてくるのに時間がかかる。ゆっくりと時間をかけて楽しんでもらえると、このウィスキーのポテンシャルをより味わえると思う。
美味しいシングルモルトを探している人には、ぜひ試してほしい銘柄だ。

クライヌリッシュ蒸留所(英文)

「而今」のある店にハズレなし! (07/7/18)

この1本があるなら、ほかにも美味しい日本酒ばかりが揃えられた店に違いない。そう信じて差し支えないような酒が、たまにある。最近では、三重県の「而今(じこん)」だ。

「而今」は、三重県の名張市にある蔵元、木屋正(きやしょう)酒造の銘柄。これまでは、「高砂」「幻影城」といった銘柄で、地元中心に出荷していた酒蔵だ。

この蔵の息子だった大西唯克(ただよし)さんは、1975年生まれ。上智大学理工学部を卒業後、乳業会社に就職。その後、東広島の酒類総合研究所で酒造りを学んで実家に戻り、但馬杜氏のもとで実際の酒造りに取り組んだ。3年後に杜氏になると、初めて作った「而今」で、いきなり平成17年全国新酒鑑評会金賞を受賞したのだ。まだ弱冠30歳だった。

「而今」というのは、道元禅師の『正法眼蔵随聞記』に登場する仏教用語。「今、この時を精一杯生きる」といった意味らしい。仏教用語としては、「にこん」と読むようだが、一般的には「じこん」と読まれることが多いようだ。
この銘柄名には、大西さんの酒造りに対する思いが込められている。常により良い方法を探りながら、改善を重ねていくのが、大西さんの姿勢だという。

「而今」は、酒米に五百万石、酵母に三重酵母を使用したものが中心で、特別純米酒純米吟醸酒がほとんどだ。
ただし、ほかにも酒米に山田錦、雄町、八反錦、千本錦を使用したものがあり、酵母も吟醸酒の標準である9号系を使用したものもある。そうした違いは、いずれも瓶の首に斜めに貼られた紙に大書きされているので、分かりやすい。

もちろん、酒米や酵母によって違いはあるが、「而今」には共通した味わいがある。最初にフルーツのようなほのかな甘みを感じ、それから次第に口の中で旨味が広がっていく。キレの良さも特徴的だ。
価格は、ほとんどが1升2千円台と、手頃なのも嬉しい。(3千円を超えるものは、山田錦や雄町の「純米吟醸無濾過生」3,570円、「大吟醸・生酒」8,400円、「大吟醸・斗瓶取り全国出品酒」3,150円/500ml)

わずか3人の蔵人で手がける、生産量120石(1石=100升)たらずの蔵だから、そう簡単に出会える酒ではない。だが最近、日本酒を愛してやまない店主のいる銘酒居酒屋には、「而今」が置かれている確率がとても高い
もし、幸運にもこのお酒に出会うことができたら、迷わず1杯味わってみてほしい。

木屋正酒造合資会社

安くてうまい!アイリッシュ・ウィスキー「ブラック・ブッシュ」 (07/6/11)

アイルランドという国で連想するのは、IRAとかU2、お酒だとギネスビールあたりか。
「ウィスキー」という連想はあまり一般的ではないかもしれないが、実はウイスキー発祥の地がアイルランドなのだ。

中世の頃、イスラムの国々では錬金術が流行していた。錬金術自体は夢物語で終わったが、その研究は様々な科学技術の進歩に貢献した。
その成果の一つが、ガラス製の蒸留装置だ。4世紀頃からアラビア人たちはこれを利用し、花を潰して香水を製造していた。6世紀頃、中東を訪れたアイルランドの修道士がその技術を持ち帰り、大麦を原料にして酒造りに応用したのがウイスキーの発祥と言われる。
ただの金属を「金」に変えることはできなかったが、ビールを「ウィスキー」に変えることには成功したわけだ。

1171年、英国のヘンリー2世の軍隊がアイルランドに遠征したとき、人々が「ウシュク・ベーハ」(Uisce Beatha)なるアルコール飲料を愛飲していたと記録に残されている。
「ウシュク・ベーハ」とは、アイルランド語(ゲール語)で「生命の水」のこと。それが英国へ伝わり、16世紀半ばに今日の「ウイスキー」になったという。
水とピートに恵まれていた英国が、やがてウィスキーの一大産地となったのはご存知の通りだ。
ちなみに、ウィスキーを製造している国は、アイルランドと英国、アメリカ、カナダ、日本の5ヶ国しかない。

アイリッシュ・ウィスキーは、大麦麦芽、未発芽大麦、ライ麦、小麦などの発酵液を蒸留し、樽熟成を3年以上させて造る。通常はピート香をつけず、蒸留は単式蒸留器で3回行われ、85度前後まで蒸留することですっきりとした味わいに仕上げる。(現在は、スコッチのように2回蒸留のものもある。)

アイルランドの蒸留所は、ブッシュミルズ、クーリー、ミドルトンの3ヵ所。
中でもブッシュミルズは、1608年にジェームズ1世から酒造免許を授かったという、現存する世界最古のウイスキー蒸留所だ。


そこで造られる「ブラックブッシュ」は、80%のモルト原酒にグレーン原酒をブレンドした長期熟成品。
白ラベルの「ブッシュミルズ」(正確な商品名は「オリジナル・ブッシュミルズ」)もあるが、それよりモルト原酒の含有量が多く、熟成年数も長い、いわばプレミアム版だ。とは言え、1本2千円台の手頃な価格で買えるのが嬉しい。
重厚なコクと甘いシェリーの香り、スパイシーなモルト香が特徴の、魅力的なウィスキーだ。

手頃な価格で美味しいウィスキーを飲みたい人に、自信を持っておすすめできる。

BUSHMILLS(英語)

ラムの中のコニャック、RON ZACAPA SENTENARIO (07/5/21)

実はこのブログで紹介していない店で、大変気に入っているBARが地元の宮原にある。小さな店のためお客は常連中心で、入れないことも多いので、申し訳ないが紹介はまだ控えておきたい。
その店で教えてもらったラムが、ロン・サカパ・センテナリオ。最初は常連の1人が気に入っていたのだが、その美味しさと目立つボトルとで、たちまち常連たちに広まってしまった。

ラム酒は、カリブ海の西インド諸島を中心に造られる、サトウキビを原料とした蒸留酒だ。通常は、サトウキビの絞り汁を煮詰めて砂糖を分離した後、残った糖蜜を薄めて発酵、蒸留して造られる。アルコール分は40%台で、独特の香りとコクが特徴だ。色は、無色透明のホワイトラムと、熟成した琥珀色のダークラムとがある。

ロン・サカパ・センテナリオは、グアテマラ産のラム(アルコール度40%)で、ラムの中のコニャックとまで称されている銘酒だ。甘くまろやかな味わいと豊かな香りが素晴らしく、ファンは多い。造っているのは、ホンジュラスの国境に近いサカパ町にあるリコレラ・サカパ社だ。

このラムは、サトウキビの絞り汁から砂糖を分離することなく、そのまま発酵、蒸留して造られている。かつてスペイン人の医師であり科学者でもあったアレハンドロ・ブルダレタが、上質なサトウキビの糖蜜を蒸留した20種類以上の原酒から、23年物を中心にブレンドして造り上げたと伝えられている。それをホワイトフレンチオーク樽に詰め、海抜約2,300メートルに位置するケツァルテナンゴの高台で4年熟成させてから、ボトルに詰められるのだ。

初めて飲んだ当時は、ボトル全体が椰子の葉で編まれた織物で包まれている、目立つデザインだった。2005年度出荷分からは、織物がボトル中程だけに巻かれた新デザインとなっている。
グアテマラはマヤ文明発祥の地であり、この織物はマヤ文明で最も高い文化を誇ったChorti族の王族のみが座ることを許された織物ペタテをモチーフにしたもの。千年の時を超えて、今もなおChorti族の人々によってペタテの織物は織られているという。

センテナリオとは100周年記念の意味で、同社の創立100周年を記念して1976年に発売された際に名付けられた。それから30年が過ぎたが、「センテナリオ」という名前はすっかり定着してしまっている。

香りはフレンチオーク樽らしく、アーモンドやバニラの香りとスパイス香が溶け合って、絶妙のバランスを呈している。ぜひ、ストレートかロックで味わいたい。

銘酒らしく、受賞歴も数多い。
1998年~2002年にかけて、インターナショナル・ラム・フェスティバルで5年連続金賞を受賞し、2003年には「Hall of Fame(殿堂入り)」を果たす。
2001年と2002年には「The Beverage Testing Institute」でベスト・スピリッツを受賞し、「Wine Enthusiast」スピリッツ部門では98ポイント(100ポイント満点)を獲得するなど、まさにラムの最高峰とも言える華々しさだ。

23年物に加えて、リーズナブルな15年物もあり、2004年には25年物の「XO」(入手困難)も発売された。
元は手頃な価格のお酒なのだが、最近はプレミア価格で売られていることも多い。購入の際は、あちこち見比べて探してみることをお勧めする。

●インドゥストゥリアス・リコレラス・デ・グアテマラ社(英語)
http://www.ronesdeguatemala.com/eng/index.php

蝶が寄り添う黒糖焼酎「南の島の貴婦人」 (07/5/1)

「朝日酒造(株)の酒」と聞けば、ほとんどの人は新潟の「久保田」を思い浮かべるに違いない。確かに、酒どころの新潟でもトップの酒蔵だから、その名は知れ渡っている。

しかし、今回ご紹介する「朝日酒造(株)」は、鹿児島から380km南下した奄美群島の一つ、喜界島(きかいじま)にある同名の別会社。
新潟の朝日酒造より年間平均気温が9℃も高い亜熱帯地域にあるため、こちらで造っているのは日本酒ではなく黒糖焼酎だ。
焼酎好きな人なら、「朝日」というラベルでお馴染みのはず。

実は、自分はあまり焼酎を飲む方ではないのだが、その中でも割と飲むのが、黒糖・麦・栗といった焼酎だ。
黒糖の名産地として知られる奄美群島だけが製造を認められている黒糖焼酎だが、実は原料の黒糖はほとんどが沖縄産。地元の黒糖は、その品質の高さから、ザラメや製菓用、コーヒーシュガーなどの需要が高く、焼酎にまで回せないという皮肉な状況なのだ。

朝日酒造の4代目・喜禎浩之さんは、喜界島産100%の黒糖焼酎を造るため、自ら無農薬有機栽培のサトウキビを育て、自前の製糖工場で黒糖を精製している。
仕込み水はサンゴ礁の地下から湧き出る硬水を使用。糖分やその他の添加物は一切使用していない。

同社の焼酎には、レギュラーの「朝日」以外に、黒糖を通常の2倍使った「壱乃醸(いちのじょう)朝日」、白麹を使って低温で仕込んだ「飛乃流(ひのりゅう)朝日」などがあるが、一番魅力的なのが、初留取りの限定品「南の島の貴婦人 OOGOMADARA」だ。
白い円筒にモノクロで蝶だけが記された外箱は、他に類を見ないシンプルなデザイン。

「OOGOMADARA(大胡麻斑)」とは、喜界島を生息北限とする白黒模様の大きな蝶の名で、その気品ある姿から、地元では「南の島の貴婦人」と呼ばれているのだ。
島を象徴するこの蝶が、香りに誘われて舞い降りてくるような酒、というイメージらしい。実際この焼酎は、甘い花や果物のような香りがする、独特の美酒になっている。

華やかな香りは、蒸留して最初に出て来る初垂れ(初留取り)といわれる雫だけを使った贅沢な造りのおかげ。アルコール度は44度と少々強いものの、この魅力あふれる香りとまろやかな甘さが特徴で、そのまま飲んで美味しいのはもちろんだが、食事と合せても実に相性がいい。
濾過を最小限にしているため、ボトルごと冷凍庫で冷やすと一部の成分だけが結晶化し、瓶の中を雪のように舞うそうだ。

年1回だけ少量出荷される限定品なので、手に入れたい方は9月の出荷を見逃さないように

●南の島の貴婦人 OOGOMADARA
 原材料:黒糖・米麹、容量:300ml、価格:2,100円

魅惑の香り!フランスのジン「エギュベル」 (07/4/17)

ジンと言えば、オランダ生まれでイギリス育ちのスピリッツだ。
17世紀の中頃、オランダのライデン大学のシルビウス教授が、利尿作用があると言われていたジュニパーベリー(ねずの実)をライ麦から作った蒸留酒に漬け、薬用酒として売り出した。これが、ジンの始まりといわれている。

ねず(杜松)というのはヒノキ科の樹木で、その実を乾燥させると、特有の甘くすえたような芳香が出るため、肉料理のスパイスとしても使われていた。

オランダのオレンジ公ウイリアムがイギリス国王に迎えられたのをきっかけに、ジンはイギリスへ伝わり、18世紀になるとロンドンで大流行した。
19世紀に連続式蒸留機が開発されると、これを使用した独自の製法が発達し、「ロンドン・ジン」や「ブリティッシュ・ジン」などと呼ばれるようになる。

単式蒸留機を使用して作られるオランダのジンは、重厚でコクがあるヘビータイプ。
これに対しロンドン・ジンは軽い風味で、カクテルのベースとしてピッタリなこともあり、たちまち本家を凌ぐ人気となった。
ビフィーター、ゴードン、タンカレー、プリマスなど、有名なジンはすべてイギリス産だ。

もちろん、イギリスやオランダ以外にも美味しいジンはある。
ドイツで造られる蒸留酒「シュタインヘイガー」は、独自の製法で人気だ。
味は、オランダ・ジンとロンドン・ジンの中間的な風味。

アメリカには、日本でも人気の高い「ボンベイ・サファイア」がある。
世界中でたった4機しか存在しないカータヘッド・スチル蒸留機を使って、何度も蒸留を繰り返し、極限にまで磨き上げられた原酒に10種類にも及ぶ植物の香りを付けて、独自の華やかな香りと味わいを創り出している。

もし、この「ボンベイ・サファイア」が好きという人がいたら、ぜひおすすめしたいのが、ちょっと珍しいフランスのジン「エギュベル」だ。
これは、プロバンス地方のトラピスト派エギュベル修道院で作られたもの。
ドライジンにありがちな刺激的な感じや、薬っぽい香りが無く、柑橘系やバラ系の甘い香りと風味を持っている。マイルドで女性的な味わいのジンだが、アルコール度数は40度ある。

ジンやウォッカは、冷凍庫でギンギンに冷やしておくとストレートでも飲みやすくなる。
エギュベルもストレートかロックが最高だが、ジントニックにしても絶品
価格は、700ml瓶が2千円前後だ。

フランスには、ほかに「シタデール」というジンもある。こちらもボンベイ・サファイア系だが、更にその上を行く19種類もの植物から香りをつけている。
飲みやすさで言うと、ボンベイ・サファイアに一歩譲る気がするが・・・。

余談だが、エギュベル社はジン以外にもさまざまなスピリッツやリキュールを作っており、ベルモットなども大変美味しい。
同社は2001年6月にISO9002の認証を取得していて、意外な先端企業でもある。

●Eyguebelle
http://www.eyguebelle.fr/jp/

捨てられかけた原酒が日本一の美酒に!「イチローズ・モルト」 (07/4/7)

肥土伊知郎(あくと・いちろう)さんの実家は、埼玉県羽生市の「東亜酒造」という老舗酒造会社だった。
日本酒だけでなく地ウイスキーも手掛ける酒造メーカーで、国内では珍しく自社で銅製ポットスチルを持ち、スコットランドの伝統的な手法でシングルモルト・ウイスキーを造っていた。
しかし、主力だった日本酒部門の業績が悪化し、2004年5月に東亜酒造は他メーカーへ売却される。
そのメーカーはウイスキーを扱っていなかったため、熟成中の原酒は危うく廃棄されるところだったという。

伊知郎さんは、その原酒を引き取って、郡山の「笹の川酒造」に一時預かってもらう交渉をまとめる。
そして勤務していたサントリーを退社し、奥さんと2人で(有)ベンチャーウイスキーを設立。預けていた原酒のボトリングを開始し、2005年4月9日、「Ichiro’s Malt」と名付けて世に送り出した。

イチローズ・モルトを代表するラインナップが、トランプのカードをラベルのデザインにしたカード・シリーズ。原酒をホグスヘッド樽に貯蔵した後、最後の数ヶ月間だけ別の種類の樽に移し替えることで、原酒に複雑さと深みを与えたウイスキーだ。

これまでに発売されたのは、スペードのエース、10、キング、ハートのエース、9、クイーン、ダイヤの3、キング、そしてクラブの2とジャックの10種類。
いずれも加水、濾過、着色なしのシングルモルトで、価格は1本4,600~18,200円。短いもので6年、長いものだと22年熟成されている。

写真の「ツー・オブ・クラブ」は、カード・シリーズの中では2番目に熟成が短い7年物で、価格は5,985円(700ml)。ただし、製造された318本は既に完売しているので、モルトウイスキーの充実したBARで探すしかない。(300本以上販売されたのは2種類のみで、スペードのエースなどは122本しかない。)
2番目の樽として国産ミズナラが使われており、まろやかな甘みと渋みのバランスが素晴らしい。できればストレートで味わってほしいが、アルコールが56%とかなり強いので、少し水を加えてもいい。

今年度の「ワールド・ウイスキー・アワード」ジャパニーズ・シングルモルト12年以下の部で、この「ツー・オブ・クラブ」は1位を受賞した。サントリーとニッカ以外で1位を受賞したメーカーはほかにない。今月18日には、日本代表として世界大会に出品される。

●MALT DREAM(肥土伊知郎さんのサイト)
http://homepage3.nifty.com/venture-whisky/index.html

●ワールドウィスキーアワード日本部門結果発表
http://www.whisk-e.co.jp/news/2007022301.html

黒いウォッカ「BLAVOD」 (07/4/3)

ウォッカは、その無色透明で癖のない味質から、カクテルのベースによく使われる酒だ。
ロシアの国民酒として有名だが、実際ロシアでは12世紀から飲まれているそうで、西欧最古の蒸留酒とも言われている。(発祥については、11世紀にポーランドで生まれたという説もある。)長い間、ロシア国外ではまったく知られていない秘酒だったが、1917年のロシア革命以降、ようやく他国でもその存在を知られるようになった。

主にライ麦やトウモロコシなどの穀物を原料とし、それらを糖化・発酵させてから連続式蒸留機で蒸留して造る。最後に白樺の炭でろ過するのが特徴で、これによって色は透明になり、味も癖のないものになる。アルコール度数は40~60度と結構強い。

無味無臭が本来のウォッカだが、中には草や果物、香味料などを加えて、味や香りをつけたフレーバード・ウォッカと呼ばれるものもある。
ズブロッカ草が入ったズブロッカ、レモンを使ったリモナヤ、ペッパー類を使ったペルツォフカなどが代表だが、最近になって珍しい1品がこれに加わった。
真っ黒い色のウォッカ、ブラボドだ。

無色が特徴のウォッカを真っ黒にするという発想は、大胆でユニーク。
1996年に、ロンドンのマーク・ドーマンという人が造った製品らしい。
この色は、ミャンマー産のブラック・カテチューという椰子の木からとれる樹脂を漬け込んで着色されている。ブラック・カテチューは、沖縄にも街路樹として植えられているとか。胃薬や清涼剤としても利用される薬草のようだ。

色は真っ黒だが、味わいはマイルドでスムーズ。ストレートでも十分飲めるが、強いようならジンジャエールなどの炭酸系で割ると美味しい。
微かにズブロッカにも似たハーブっぽい香りや甘味も感じるので、ズブロッカが好みという人なら相性は良さそう。逆にそれが苦手という人には合わないかもしれない。

このウォッカの色は、様々な飲料で割ってみると更に面白くなる。
例えば、よく冷やした水で割ると、真っ黒だったのがなぜか深いグリーンに変化する。
ロックで飲んでいても、氷が溶けるにつれて下の方から徐々にグリーンがかってくるのだ。
色のきれいな果実系飲料で割ってみると、色も味も変化して楽しめるので、ウォッカベースのカクテルをこれで作ってみると面白いかも。(味は自己責任でね!)

■Blavod Black Vodka
http://www.blavod.com/

ハードでうまい!「ブラントン・ストレート・フロム・ザ・バレル」 (07/3/25)

学生時代、まずい酒ばかり飲んでいた自分が、初めて「ちょっと旨いかも」と思えた酒が、バーボンだった。そのため、20代の頃は良くバーボンを飲んだ。
最近は日本酒とワインがほとんどで、ハードリカーはあまり飲まないのだが、昨年、六本木のあるBARで、久しぶりにバーボンを飲んだ。

「バーボンがお好きでしたら、こんなものもありますよ」と、バーテンダーがすすめてくれた1杯が、ブラントンの「ストレート・フロム・ザ・バレル」だった。

ブラントンは、ダービー馬のキャップでご存知の方も多いはず。最近でこそ手頃な価格で飲めるようになったが、昔は「高級バーボン」の代表だった。

「ブラントン」という名前は、エンシェントエイジ社の蒸留所に40年間勤めたバーボン造りの名人、アルバート・ブラントン大佐に由来する。「ブラントン」の生みの親が大佐の愛弟子だったことから、尊敬する師の名前をブランド名にしたらしい。

その造り方には、独特のこだわりがある。通常のバーボンが、内側を焦がしたホワイトオーク(樫)の新樽で熟成させるのに対して、ブラントンはブランデーの古樽を使う。原酒は樽で蒸留後、まず4年間寝かされてから、ひと樽ごとにテイスティングされる。そこで選ばれた樽だけがH倉庫に移され、さらに4~6年寝かされる。

バーボンは普通、味を均一にするため複数の樽原酒をブレンドするが、ブラントンは全くブレンドしない。
更に、この「ストレート・フロム・ザ・バレル」は、加水も濾過も一切せずに、原酒をそのまま瓶詰めしている。従って、アルコール度数も66~67度と、かなり強い。(樽によって多少違うところも面白い。)おそらく、日本で購入できるバーボンとしては、最も度数が強いものだと思う。

ボトルのラベルには、ボトル番号、蔵出し日、樽番号、アルコール分などが手書きで書き込まれている。 かつて書き間違いがあったという逸話もあるが、それもご愛嬌だ。

その香りはとても華やかで、ほれぼれするほど味わい深い。
できればストレートかロックでじっくり楽しみたいが、どうしてもキツイようなら、同量の水で割るか、ソーダ割りにするのがおすすめだ。

プラントンの正規代理店である宝酒造でも「ストレート・フロム・ザ・バレル」はラインナップに無い。入手するには、並行輸入を扱っている酒屋や、インターネットなどを利用するといい。
価格は店によってかなり差があるが、大体4,000~6,000円ほどだ。
若い頃には到底買えなかったが、今なら何とかなる価格なのが嬉しい。

●Blanton's straight from the barrel
http://www.blantonsbourbon.com/CMS/index.php?option=com_content&task=view&id=20&Itemid=57

日本酒とは、これほど旨い!「醸し人九平次〈別誂〉」 (07/3/16)

おいしい日本酒は多々あるものの、お酒には個人の好みもあるので、なかなか1銘柄だけ挙げるのは難しい。
古くは「越の寒梅」、割と最近では「久保田・万寿」「十四代」「黒龍」あたりが「うまい酒」の代名詞という気がする。
そんな中で、今回自信を持ってご紹介するのが「醸し人九平次〈別誂〉」
以前ご紹介した大塚の居酒屋「こなから」で呑み、余りの旨さにのけぞった酒だ。

このお酒が登場したのは、10年前(1997年)。愛知県名古屋市の酒造メーカー、株式会社萬乗醸造(ばんじょうじょうぞう)の銘柄だ。
同社は寛政元年(1789年)創業の老舗蔵元。現在15代目の久野九平治さんは、若い頃モデルや役者をしていたらしい。それが、父親と杜氏が共に倒れたことから、急遽蔵に戻って15代目を継いだという。
まるで、どこかのマンガのようないきさつだ。
杜氏には、同級生でエンジニアだった佐藤彰洋さんを抜擢。
畑違いの二人が協力し合って、「気品・優しさ・懐かしさ」をテーマに酒造りに取り組んでいる。

「醸し人九平次〈別誂〉」は、無濾過・無加水の純米大吟醸酒だ。
米は、酒造好適米として最高の「山田錦」、それも兵庫特A地区産を、なんと35%まで磨き上げている。
仕込み水は、長野の300年来の湧き水を調達。
限られた量を手間暇をかけて仕込まれている。

その味は上品で、芳醇な香りが魅力的。味わいに透明感がありながら、日本酒らしい旨みと甘みが広がる。ともかくバランスが良い。日本酒の初心者にも、通の人にも分かる明快な旨さ
これを堪能するには、逆に冷やしすぎない方がいい。

〈別誂〉は、パリの3つ星レストランでも、ワインリストに載せられている。
それも、最近東京に出店して話題沸騰のピエール・ガニエール氏の店や、フランス料理界の大御所アラン・デュカス氏の「スプーン」など、超一流の店だ。

さぞや高い価格と思いきや、1升で7千円台、4合瓶はその半額程度から入手可能。
この味がこの価格とは・・・安い!安すぎる!
日本人で、本当に良かった・・・・。

●醸し人九平次 純米大吟醸 別誂
使用米:山田錦35%精米
使用酵母:協会14号酵母
日本酒度 ±0
酸度 1.7
アルコール度 16.0~17.0

幻の大人気ビール、サッポロ「赤星」 (07/3/9)

会社の先輩から聞いた話。
日本のビールを飲み尽くしているドイツ人の友達が、「これが一番うまい!」と唸ったビールがあると言う。
それが、サッポロラガービール、通称「赤星」だ。

普通のサッポロビールと違い、ラベルに描かれている星が赤いため、こう呼ばれている。販売は「大びん」「中びん」のみで、缶はない。
何を隠そう日本最長寿のビールで、生産開始はなんとサッポロビール創業の明治9年(1876年)と言うから、優に130年を超えている。(当時はサッポロビールではなく「開拓使麦酒醸造所」と称していた。)

北海道では今でも人気があると言うが、都内や関西では滅多にお目にかかれない幻のビールだけに、「目撃情報」を募集しているサイトもいくつか存在する。
流通量が少ないのは、99.9%が業務用ルートで販売されているため。昔からこのビールを扱っていた飲食店のためだけに製造されているようだ。
現在、このビールを生産しているのはサッポロビールの千葉工場だけらしい。

日経産業新聞によると、最盛期の1960~70年代には年に5千万ケース以上(1ケースは大瓶20本)販売していたが、80年代に「生ビール」ブームが勃発。1996年に最大のライバル「キリンラガービール」が生に切り替えてからは、国内唯一の熱処理ビールとなった。
しかし、1999年の時点で年間販売量は百万ケース弱にまで減少。これまで何度も生産中止が検討されたが、そのたびに契約飲食店から「生産をやめるなら他社に切り替える」と、存続を求める要請(脅迫?)が相次ぎ、なんとか生き延びてきたらしい。
販売量はこのところ前年比2割減のペースだが、ブランドマネージャーの立山正之営業部担当副部長は「採算ギリギリの50万ケースまでは続ける」と話していた。

ちなみに「ラガービール」とは、下面発酵酵母(発酵の終わりに酵母沈むタイプ)を使って低温で熟成させたビールの総称。ドラフト(生)ビールに対し、熱処理をしたビールが「ラガー」だと思っている人も多いようだが、厳密にはそれは間違い。確かにサッポロラガービールも熱処理を加えているが 、本来「ラガービール」とは、熱処理の有無を問わない。
なお、「ラガー」に対し、上面発酵酵母(発酵の終わりに酵母が浮かび上がるタイプ)を使ったビールは「エール」と言う。

熱処理ビールは、日ごとに熟成が進む生ビールと違い、時間的な味の変化が緩やかで、独特の風味があると言われる。サッポロラガービールも、ほのかな麦芽の風味とすっきりとした飲みやすさが人気のようだ。
なお、現在ほかの熱処理ビールとしては、2001年に復活した「キリンクラシックラガー」がある。

サッポロは、この「ラガービール」といい、「エーデルピルス(※)」といい、ビール通に評価の高い製品を世に送り出しながらも、いつしか姿を消してしまうというケースが目立ち、残念だ。
もし、幸運にも置いてある店を発見したら、ぜひ味わってみてほしい。

その後、サッポロは2008年9月10日と、2009年8月12日の2回、主要コンビニエンスストアでラガービールの缶を限定発売した。それが予想を大きく上回る売れ行きだったため、2009年9月9日から10月まで、全国すべての酒販店でも販売したが、現在は販売を終了している。

→サッポロラガービール
http://www.sapporobeer.jp/product/beer/lager/index.html

※エーデルピルス
ファインアロマホップを通常の3倍使用したビール。現在は業務用10リットル樽生のみで、店頭販売はない。
サッポロビール直営の「銀座ライオン」など、ごく限られた店で飲める。


本物の白酒 (07/3/3)

今日は桃の節句。古風に言うと「上巳(じょうし)の節句」、今風に言うと「ひな祭り」だ。
桃の節句には、昔から草餅や白酒をいただく習わしがある。

平安貴族は、中国の故事にならって毎年3月3日に宴を催し、盃に桃の花を浮かべた「桃花酒(とうかしゅ)」を飲むのが習慣だった。
それが白酒に替わったのは、江戸時代。神田にあった豊島屋が売り出した「白酒」が大ヒットしてからだ。

なんでも、初代・豊島屋十右衛門の夢枕にある晩お雛様が現れ、白酒の美味しい作り方を伝授されたという。どこかで聞いた風なエピソードではあるが、豊島屋の白酒は独特の粘りと甘みで女性にも飲みやすく、たちまち江戸中で大人気となった。“山なれば富士、白酒なれば豊島屋”とまで詠われたとか。
更に、白酒と桃の花との組み合わせが紅白でおめでたいということで、ひな祭りに白酒を飲む風習が全国に広がったらしい。
まさに「土用の鰻」に次ぐ、江戸時代の超ヒット・キャンペーンだ。

よく「白酒」を「甘酒」と混同している人がいるのだが、この2つはまったくの別物。
「甘酒」は、蒸米(もち米)に米麹と水を混ぜ、55℃前後で一昼夜保温することで、デンプンを糖化させた甘味飲料。一般家庭でも簡単に作れ、一晩でできることから一夜酒(ひとよざけ)とも呼ばれた。アルコール分はほとんど含まれないため、酒というのは名ばかりで、子供でも飲める。(酒税法上、アルコール分1%未満のものは「酒」とされない。)
酒粕に砂糖や水、生姜を加えて作ったものも甘酒と呼ばれるが、こちらは若干アルコールが含まれる。

一方「白酒」は、蒸米(もち米)と米麹に味醂または焼酎を混ぜて発酵させ、約1ヶ月間(豊島屋では2ヶ月以上)熟成させた後、石臼ですりつぶしたもの。糖質45%程度と甘味は十分だが、アルコール分も9~10%程度含まれる。一般家庭では作れないし、子供は飲めない立派なお酒だ。(酒税法ではリキュール類に該当。)

かつて豊島屋では、節句シーズンになると夜明け前から白酒を買い求める客が殺到し、けが人に備えて医者を待機させておくほどだったという。
現在でも、豊島屋は江戸時代とほとんど変わらぬ製法で白酒を造り続けている。
幸い、今ではインターネットで購入可能なので、けがをする心配はなさそうだ。ただし、1シーズン約6,000本限定のため、売り切れ御免と言う点は、昔と変わらない。

まあ、自分は辛党なんで、どちらかと言えば「桃花酒」の方が好みだけどね・・・

●豊島屋
http://www.toshimaya.co.jp/


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