2013年3月29日、東京国際フォーラムで行われた第14回世界最優秀ソムリエコンクール公開決勝を観戦して来た。
世界最優秀ソムリエコンクールは、1969年から3年に1回開催されているソムリエのオリンピックだ。選手たちのトレーニングは、冗談抜きでトップアスリートに匹敵するレベルで、それは角野史比古さんの著書「たたかうソムリエ/世界最優秀ソムリエコンクール」(中央公論新社)を読むとよく分かる。

日本で開催されるのは、田崎真也さんが優勝した1995年の第8回以来、18年振り2回目
前回は、それまでフランス人とイタリア人以外の優勝者がいなかった中で田崎さんが優勝し、世界的にも話題になった。以降も、第9回でドイツ代表が、第12回でスウェーデン代表が、第13回でイギリス代表が優勝したものの、いまだ欧州以外の覇者は田崎さんのみだ。

これは、ワイン文化の歴史的な差という面もあるかもしれないが、実技試験で英語・フランス語のどちらかしか使えないという条件が大きなハンデになっているようにも思う。(ただし、母国語は選択できないので、フランス人は英語、イギリス人はフランス語を使用する。)
大会は50カ国から53人が出場し、3日間かけて争われた。筆記試験、テイスティング、サービス実技を経て、決勝へ出場できるのはわずか3名。今年のファイナリストは、ベルギーのアリスティード・スピエスさん、カナダのヴェロニック・リヴェストさん、スイスのパオロ・バッソさんの3人だった。
前回に続いて日本代表に選出された、トゥールダルジャン東京の森覚(もり・さとし)さんは、残念ながら14位で決勝進出を逃した

ソムリエコンクール公開決勝では、3人がステージ上で出される数々の課題に挑戦する。審査員は全員、過去の優勝者だ。
1問目は、バーカウンターで3人の男性客それぞれの好みに合ったシャンパンをグラスでサービスするもの。シャンパンは、大会パートナーであるモエ・エ・シャンドン社のグラン ヴィンテージ3種類が用意されており、各ビンテージの味わいの違いを把握していなければ、適切な1本を選べない。

2問目は、テーブル席の男性客4人がオーダーした7皿のコース料理に合うワイン5種を提案するもの。白ワインは2本までという制限が設けられている。これは、ソムリエとして最も基本的な知識の広さを問われる問題だろう。

3問目からハードルはぐっと上がる。2人の女性を含む8人のテーブル客に、高級ワインをデキャンタージュして制限時間内にサーブする課題だ。脇のテーブルには、既にボトルを立てて澱を沈ませたワインが2本用意されている。
ワインをホストに確認してもらうと、ホストはボトルを取り上げ、わざと揺らして澱を舞わせてしまう。ここで、澱が混ざっていないもう1本のボトルに取り換えてからデキャンタージュすることに気がつくか、更に短い制限時間内で8人にワインを注ぐことが出来るかが勝負の分かれ目だった。これをクリアできたのは、パオロ・バッソ氏のみ。

4問目は、ワインリストから間違いを探す恒例の難問。白ワインはスペイン、米カリフォルニア州、オーストリア、米ワシントン州の4種、赤ワインは南アフリカ、中国、ニュージーランド、ポルトガル、タイ、メキシコの6種類のワイン名が記載されており、スペルミスや、産地、品種などの間違いをいくつ指摘できるかが問われた。

5問目は、白1種、赤3種のワインと、ワイン以外の蒸留酒6種のブラインド・テイスティング。
出されたワイン4種は、インド、スペイン、イスラエル、ブルゴーニュ。蒸留酒は、日本のトマト・リキュール、フランスのアメール・ピコン、メキシコのハイビスカスのリキュール、エストニアのヴァナ・タリン・リキュール、キプロスのコマンダリア、フランスのマスネ・オードヴィー・キルシュ。これは相当な難問だ

最後は、かつて出題されたことのないサプライズ問題。15人のワイン醸造家たちの顔写真を見て、名前を当てるというもの。ファイナリストが3人とも正解できたのはロバート・モンダヴィぐらい、あとはミゲル・トーレスを2人が正解したようだ。

世界一のソムリエ以上の結果、優勝はスイスのパオロ・パッソ氏に決定した。前回の準優勝者であり、ヨーロッパ最優秀ソムリエでもある彼は、素人目にも別格のパフォーマンスだった。史上初の女性ファイナリストとなったヴェロニック・リヴェスト氏が2位に輝いたのも画期的。

世界最優秀ソムリエの栄冠を手にすると、人生が変わる。活動の場が一気に世界へと広がり、ソムリエという職業を象徴する存在として、多くのチャンスが訪れるのだ。田崎真也さんも、今や大会を主催する国際ソムリエ協会の会長になっている。

大会のダイジェスト・ムービーは、ネットでも観られる。また、大会後に日本代表の森覚氏がニュース番組に出演したムービーもあるので、興味のある方はご覧いただきたい。
余談だが、森さんの隣で解説している横山武信さんは、自分とワイン・スクールの同級生で、共にワインエキスパートの資格を取ったワインマニアだ。

→第14回世界最優秀ソムリエコンクール決勝ダイジェスト(8'02")

→日テレNEWS24/日本代表・森覚氏(9'45")