早いもので、またボジョレ・ヌーボーの季節がやって来た。今年は11月15日(木)が解禁日だ。
例年、「最高の出来」が決まり文句のヌーボーだが、今年は珍しく「世紀の不作」というニュースが飛びこんで来た。天候が不順で、ブドウが想定の半分程度しか収穫できなかったらしい。今年のフランス内陸部は、冷夏で雹(ひょう)まで降ったそうだ
フランスのボジョレ・ワイン委員会では、「品質そのものは、よく熟すことができて健全」とアナウンスしている。8月以降になってようやく天候に恵まれ、収穫は遅れたものの、残ったブドウは良く熟したようだ。
これはボジョレ以外の生産地でも同様で、シャンパーニュもブルゴーニュも、生産量は減ったが出来は優良と発表している。
ただ、ボジョレ・ヌーボーは解禁日が決まっているので、収穫が遅れれば品薄になり、価格にも影響する。

日本は、世界で最も早く解禁の瞬間を迎えることに加え、初モノ好きの国民性もあって、ボジョレ・ヌーボーの人気が異様に高い。生産量の約半分を消費している事実からいっても、日本はフランス以上にヌーボー好きと言えるだろう。

ブドウは農作物だから、年によって作柄に差が出るのは仕方がない。ワイン好きなら、ヴィンテージ・チャートで「当たり年」や「ハズレ年」をチェックするという人も多いはずだ。

誤解している人も多いと思うが、「当たり年=美味しいワイン」「ハズレ年=まずいワイン」という図式は、必ずしも成り立たない。これについては詳しく説明したいが、話がそれるので次の機会に回すとして…。
1つ言えるのは、当たり年とハズレ年とでは、飲み頃が違ってくるということ。当たり年のワインは寿命が長いので、美味しさのピークは10~20年先になる。ハズレ年のワインは寿命が短いので、早い時期に美味しさのピークを迎えるのだ。

ヌーボーはフレッシュさを楽しむ新酒なので、寝かせて美味しくなるタイプのワインではない。出来たてを味わうものだから、不作の年でもきちんと作られていれば大した問題ではないのだ。(品薄で値段が高くなっては問題だけど…。)
その独特の製法から、ほかのワインにはない苺キャンディーのような甘い香りがするはずだから、探ってみるのも面白いだろう

一口にボジョレと言っても、種類は多い。いいものを選びたければ、「ボジョレ・ヴィラージュ」と表示されているものを選ぶのが手っ取り早い。ボジョレの96村の中でも、上質のブドウを産する46村で作られたワインを意味している。製法上の基準も、普通のボジョレより厳しい。

特に上質な北部10村では、村名をラベルに記載することが許されている。中でも「ムーラン・ナ・ヴァン」や「モルゴン」あたりは評価が高く、これらの村名が表示されたものなら、品質は十分期待できる

ラピエールもっとも、同じ村でも造り手の腕はまちまちだから、より信頼性を求めるなら銘柄で選ぶのがいいだろう。
ジョルジュ・デュブッフ」「ジョゼフ・ドルーアン」「ルイ・ジャド」「ルロワ」といった名を冠したボジョレなら、まず間違いない。これらはいずれも通が一目置く、ワイン造りの名手たちの銘柄だ。このあたりになると、価格も1本3,000~4,000円くらいになる。

敢えて1つ挙げるとすれば、自分は「マルセル・ラピエール」をオススメしたい(写真は昨年のボトル)。今でこそ大ブームとなった“自然派”ワインの礎を築いた人物で、モルゴン村の名手だ。本人は2年前に亡くなったが、奥さんのマリーと、息子のマチューがしっかりと跡を継いでおり、甥っ子の「フィリップ・パカレ」も既に伯父に負けないほど有名になっている。

ただのお祭りと言ってしまえばそれまでだが、どうせ飲むなら美味い酒だ。そこらの居酒屋で適当に飲んでも3,000~4,000円かかる。同じ価格で最上のボジョレ・ヌーボーを味わえるなら、迷う余地は充分にあるだろう。