普段は手頃なお店で、それなりに美味しい料理とお酒をいただければ十分幸せになれるが、たまにはちょっと贅沢したい時もある。
黙って座れば、美味しい和食と美味しいワインが次々と出て来る、そんな至福の店が六本木の裏通りにある「小田島」だ。

最近でこそ和食にワインという組み合わせも珍しくないが、35年以上前からそれを提唱してきた草分け的な存在が、オーナー・シェフの小田島稔さんだ。
都内の料亭などで修業したあと25歳で渡仏し、パリの和食店で修業したのをきっかけに、ワインの魅力に開眼
帰国後の76年、元麻布で割烹「有栖川」を開店すると、和食とワインというコンセプトが注目され、一躍話題をさらった。雑誌「an-an」誌上では、向田邦子のエッセイに取り上げられたこともある。(随筆集『夜中の薔薇』に収録)
88年に同店を売却した後、信州、渋谷、三軒茶屋、沖縄、六本木…と店の出退店を重ねた末、10年ほど前からここ六本木に落ち着いた。

小田島_外観場所は、「六本木ヒルズ」と六本木通りをはさんでほぼ向かいにあるファミリーマートの角を入り、100mほど先にある「ホテル六本木」の角を左折した左側2軒目。地下鉄日比谷線の六本木駅からは、2番出口を出て5分ほどだ。
いかにも和食店らしい品のある入口だが、足元にはワインのボトルが並べられている。入ると、フロアの左右にテーブルが4卓ほど並び、一番奥に厨房を囲む8席ほどのカウンターがある。

食事のコースは7,000円、ワインも7,000円~8,000円くらいが中心なので、割烹としては高い方ではないが、飲みに行くと考えると贅沢に思えるだろう。しかし、提供される料理とワインのクオリティを考えれば、この値段は相当お得なのだ。

コースは、前菜からデザートまで10品前後の和食で、店のホームページに献立例が掲載されている。
特に凝った料理というわけではないが、素材は和洋折衷で、どれも美味しい。名物は、元祖・フォアグラ大根。締めの食事は稲庭うどんが定番だ。

ワインは基本的にグラスで提供され、食事が進むのに合わせて、1杯空くごとに別のワインが注がれるというスタイル。
ちょっと意外なワインが料理と絶妙のマッチングを見せてくれたり、ブルゴーニュのプルミエ・クリュが惜しげもなく開けられたりするので、ワインが好きな人ほど楽しめる。(小田島さんは、板前として初めてブルゴーニュ利き酒騎士団に叙任されている。)

小田島_店内なんせ、ワインのほかにはビールと日本酒1種類くらいしかない店だから、お客は程度の差こそあれワイン好きがほとんど。小田島さんの見立てに身を委ねるのが一番楽しめると、良く分かっている。また、誰もがおまかせにするからこそ、クオリティの高いワインでもグラスで提供することが可能なのだ。

料理が引きつワインを、料理人自身が1皿ずつセレクトして提供する。そんな小田島流のスタイルが、ワイン選びに頭を悩ませることなく楽しみたい客たちの共感を呼ぶのだろう。席は予約客でほとんど満席となるのが常だ。

訪れた日は、おそらくほかのどの客より多く飲んだと思うが、(深夜まで居座ってしまった…。)それでも勘定は1万8千円ほどだった。シャンパンから貴腐ワインまで、何種類飲んだか分からないほどの美味しいワインと、フルコースを堪能してこの価格なら、再訪したくなるのは当然だろう。
ワイン好きなら、仲間を連れて来たくなること請け合いの店だ。

→割烹 小田島