同じ店に2回足を運ぶこと自体少ない自分が、3日と置かずに再訪したというのは、我ながらほとんど記憶にないほど珍しい。訪れたのは、芝にある「亭久五(テイクファイブ)」という居酒屋だ。

場所は、都営三田線の三田駅をA10出口から出て、日比谷通りからNEC本社ビルの裏手へと回る。隣の高層マンション「芝パークタワー」の裏道を芝公園の方へ進むと、左側にある。三田駅からは約300m、JR田町駅からだと直線距離で400mほどだろうか。
亭久五_外観開店は1977年12月15日。当初は、「テイクファイブ」というジャズ喫茶だったが、後に店を拡張して居酒屋「亭久五」に生まれ変わった。
マスターはレコード600枚を所有するJAZZ好きで、「Take Five」はお気に入りの曲だ。元々、このタイトルは「5拍子」と「(5分程度の)休憩をしよう」という2つの意味を掛けているので、なるほど喫茶店にピッタリだ

今でこそ店の入口に提灯と暖簾が下がっているが、そのたたずまいは喫茶店の名残りを感じさせる。入口のガラス扉を開けると、左側に4人用テーブルが5卓、5人用テーブルが1卓あり、右側に巨大な日本酒の冷蔵庫、その奥に5席ほどのカウンターがある。

マスターの杉山光敬さんはカウンター奥で調理を担当し、利き酒師である長女の彩さんがお酒とサービスを担当、バイトの男性がカウンター内に立つ。状況によって、これにママのたみえさんも加わるという、家族経営が基本の店だ。

70種類ほどが並ぶ日本酒は、グラス1杯が約140ml。頻繁に銘柄が入れ替わるため、日本酒のメニューはない。綾さんに好みを伝えておススメを挙げてもらうか、冷蔵庫の前で実物とPOPを見て注文するのだ。
酒瓶のラベルに小さな丸いシールが貼ってあって、その色が1杯の価格を示している。値段は、 が680円、が750円、が850円、がそれ以外(525円~)となる。

8割以上は黄シールだそうだが、たまに王禄「意宇(おう)」純米大吟醸(1,200円)などの高額品もあるので、その点はご注意。
冷酒は木製コースターを敷いたグラスに注がれ、冬場のお燗は徳利とぐい飲みで提供される。

冷蔵庫の中には凡百の銘酒居酒屋を圧倒する見事なラインナップが勢揃いしている。
一部の銘柄を挙げると、王禄、而今、作、房島屋、鍋島、長珍、開運、悦凱陣、陸奥八仙、宗玄、獺祭、田酒、黒龍、飛露喜、くどき上手、酔鯨、磯自慢、出羽桜、喜久酔、天青、奈良萬、一白水成、秋鹿、鶴齢、雅山流、醸し人九平次、久保田、七田、旭興、澤の花、亀泉、阿櫻、山法師、天遊琳、七本槍、阿部勘、山和、松の寿、喜正、三芳菊、新政「やまユ」、春霞、ダルマ正宗…など。

全国から満遍なく集められているのはもちろん、あらゆる好みに応えられる多様さを備え、なおかつ本物の日本酒と呼べるクォリティの高いものばかり。これらのほとんどが1杯680円で味わえるというのは、家族経営ならではのコスト・パフォーマンスだろう。

亭久五_店内焼酎も約200種(380円~)、泡盛も48種(350円~)。いわゆる幻の焼酎も普通にあり、1杯680円程度でいただける(「泡波」だけは1,600円)。
ほかに、シングルモルト、バーボン、国産の各種ウィスキー類もけっこう揃っているから、店の規模を考えても驚異的な種類の多さだ。「お酒のワンダーランド」というキャッチフレーズも伊達ではない。
ただし、ビールはヱビス生ビール(600円)のみ。サワー類(380~480円)はあるものの、ソフトドリンクはない。

料理メニューは大きなボード1つだけなので、客はこれを回覧して注文する。焼鳥系や豆腐ようなど、現在休止中の料理もあるので、確認が必要だ。人気があるのは、ボリュームの多さで知られるニラ玉(680円)、焼きギョーザ(580円)、牛たんのトロトロ煮(1枚280円)…など。価格はほとんんどが380~680円。
個人的に残念なのは、馬刺し(850円)以外のお刺身類がない点だ。近いところで、炙り〆鯖(580円)をいただいている。

調理はマスター1人でこなしているため、混み合うと時間が掛かってしまうのは仕方のないところ。比較的空いているのは週の始めだが、金曜には椅子が足りなくなる

平日は、1種類だけの曜日別ランチも営業している。(月曜のコロッケ付きハンバーグのみ750円、ほかは700円)
余談だが、彩さんは土日にボーカルスクールの教師を務めており、本人によるとそちらが「本業」だそうだ。

→酒遊 亭久五