さいたま市の中でも、わりと影が薄いような気がする与野。この駅で降りたことがないという人も多いに違いない。
だが、こんな小さな駅にも、ちゃんといい店はある。東口駅前の「千八寿司」はしっかりした味の寿司を提供してくれるし、西口の居酒屋「田舎家 旬」では美味しい魚と地酒が味わえる。

「旬」の場所は、JR与野駅・西口の階段を降りたら、Uターンして線路沿いに北浦和方面へ進み、最初の角を右折すると左側2軒目にある。駅から歩いて1~2分という近さだ。
田舎家・旬_外観入口の内側にたたきがあるので、まずそこで靴を脱いで下駄箱に入れる。
店内は、その名の通り田舎の家のようなイメージだ。天井には魚網を模したディスプレイが施され、照明には一升瓶の底を切った手造りの笠が使われている。

板の間のフロアには、囲炉裏が右側に2つ、左側に1つ。それぞれ8~12人で囲める掘り炬燵式の席になっており、天井から自在鉤も下がっている。突き当たりには、6席ほどの掘り炬燵式カウンターもある。

ご主人はカウンター内で調理とサービスを受け持ち、奥の厨房ではちょっとコワモテの板前さんが料理を担当している。フロアでサービスに当たっているのは若い男女2名だ。

日本酒は、いずれも片口と切子グラスで1合ずつ供される。
メニューに載っている銘柄は、陸奥八仙・特別純米(850円)、十四代(850円~)、飛露喜(750円~)、神亀・純米(750円)、磯自慢(850円~)、醸し人九平次(900円~)、・純米吟醸(850円)、勝駒・純米(900円)、立山・本醸造(600円)、天狗舞・山廃純米(750円)、池月・吟醸(950円)、常きげん・山廃吟醸(950円)、手取川(750円~)、黒龍・純米吟醸(800円)、早瀬浦・純米(750円)…の15種類。このあたりでこれだけ銘酒を揃えた居酒屋は貴重だろう。

価格に「~」とあるのは、その日によって異なる仕込みのお酒が入る銘柄だ。訪れた時は、十四代が「純米吟醸・山田錦」(1,200円)と「純米吟醸・雄町」(1,250円)の2種類あった。どうやら実質は20種類近い日本酒が揃っているようだ。

焼酎は、芋「さつま司」(400円)「富乃宝山」(500円)、麦「井田萬力」(400円)、米「とき」(400円)、黒糖「朝日」(450円)の5種類。芋と麦については、ボトル(飲みきり)でも注文できる。

田舎家・旬_店内料理は、北陸直送の海の幸が自慢で、これが目当ての客も多い。
能登かき(生・焼・蒸いずれも2個380円)、のどぐろ一夜干し(1,580円)、鯖のいしる干し(1,280円)、イカのいしる干し(680円)、ゲンゲの一夜干し(630円)、能登もずく(330円)、イカの黒作り(480円)、ホタルイカの沖漬け(530円)、甘えびみそ(580円)、鯖のへしこ(780円)、白海老の天ぷら(680円)、加賀野菜の天ぷら(880円)、加賀太きゅうり(630円)、魚の骨せんべい(480円)といった、首都圏の居酒屋では珍しい能登料理が並ぶ。

いくつか簡単に解説すると、いしる干しは、北陸に古くから伝わる「いしる(=魚醤)」に魚を漬け込んで干したものだ。醤油より香りが香ばしく、旨味が豊富でコクのある味になる。
イカの黒作りは、スルメイカの塩辛にイカ墨を入れたもの。イカ墨には塩辛独特の臭みを和らげる効果もあるので食べやすくなり、健康にも良いとされている。
ゲンゲは日本海沿岸で獲れる深海魚の一種。見た目の悪い魚に限って美味しいとは良く言われることだが、これもその例に漏れない。ここでは干物だが、天ぷらでも楽しめる。
へしこは、魚を天然塩で樽に2~3週間漬けこみ、更に糠・唐辛子などを加えて半年ほど寝かせたもの。多くは焼いて食べるが、そのままいただく場合もある。
加賀太きゅうりは、普通の5倍はありそうな太いキュウリ。肉厚で柔らかく、舌触りもなめらかで、ほのかな甘みと苦味が特徴だ。

能登料理以外にも、刺身5点盛(1,500円)、田舎家ばくだん(1,050円)、手造りコロッケ(230円)、地鶏のたたき(780円)、馬刺のユッケ(730円)、もつ煮込み(580円)…など、お酒に合いそうな肴が各種揃っている。

訪れた日は、たまたまかもしれないが、男性客が4人に女性客が12人。向かいにイタリアンの店がありながら女性客をしっかり掴んでいるのは、やはり美味しい店の証かもしれない。
なお、隣の北浦和駅にも、同じコンセプトの姉妹店「田舎家、炉(いろり)」がある。

→yahoo!グルメ:田舎家 旬