KATZ_看板地下にあるBARは珍しくないが、地下2階となると、さすがに少なくなる。客にそこまで足を運んでもらうには、店にかなりの魅力が求められるからだろう。

「ここを気に入ってくれた人だけが来てくれればいい。」--そう言ってはばからないのが、渋谷の和酒BAR「KATL(カタル)」の笹岡さんだ。

KATLの場所は、渋谷駅の東急南口を出て、歩道橋を渋谷警察署側へ渡り、六本木通りを100mほど歩いた右側の地下2階。渋谷警察署から数えて5軒目ほどだから、駅から至近距離だ。BARに詳しい人には、石垣忍さんの名店「BAR 石の華」の下と言った方が早いかもしれない。
KATZ_入口地下2階へ降りると、写真の入口が現れる。扉を開けると奥に伸びる7席のカウンターと、入口の横に4人テーブルが1卓。店の一番奥には6人が定員の個室もあるらしい。
造りは洋風ながら、インテリアのあちこちに和のテイストが用いられており、独特の和洋折衷モードとなっている。

あちこちに盃やぐい飲みといった酒器が飾られており、気に入ったものがあれば、それで飲むことができる。カウンターの中には、西郷隆盛が好んだ言葉「敬天愛人」や「」といった書も飾られている。

店主は、俳優の生瀬勝久にちょっと似た笹岡史佳さん。帽子を被ってカウンターに立つ日もある、なかなかの洒落者だ。バーテンダー歴は14年。
普通のバーテンだった笹岡さんが和酒専門に転じたのは、外国人から「美味しい日本のサケを飲んでみたい」と請われながら、それに応えられる知識がなかった友人の体験がきっかけだったそうだ。それを聞いて、自国の酒を知るべく勉強を重ね、やがて利き酒師の資格を取得。遂に和酒専門のBARを開店してしまったのだ。

店では、ビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウィスキー、リキュールなど、カクテルの材料以外は全て国産銘柄が並ぶ。
ビールは質の高い地ビールが中心。ためしにイギリスの国際品評会で銀メダルを受賞した、常陸野ネストビールの「賀正エール」を飲んでみたが、ビール好きとは言えない自分にも香りの豊かさ・複雑さは魅力的だった。

メニューに書かれた日本酒は10種類ほど。梅錦・旨純米(800円)、梅錦・特別純米「夢人」(1,000円)、浦霞・辛純米(1,000円)、田酒・山廃純米(1,000円)、司牡丹・特選純米(900円)、開華・特別純米原酒「みがき竹皮」(1,200円)、黒牛・純米(900円)、諏訪泉・純米吟醸「満点星」(1,200円)、鳴門鯛・山廃純米吟醸「撫養街道」(1,000円)、幻の瀧・大吟醸(1,200円)…といった定番だけが記載されている。

KATZ_店内メニューに書かれていない臨時入荷品も何種類かあるので、笹岡さんに聞けばおススメしてもらえる。訪れた日は、「作田」や「春鹿」などがあった。仕入れが重なる火曜と金曜は、30種類ほどに増えるので狙い目だ。

日本酒カクテルも豊富で、スタンダードなレシピのカクテルを日本酒に応用したものから、緑茶ダシを使ったオリジナリティあふれるものまで、引き出しが多い。

笹岡さんとコンビを組み、もっぱら料理を担当している我孫子進さんも本来はバーテンらしいが、その料理の腕は半端ではない。バーでは軽くつまむ程度の自分が言うのも口幅ったいが、率直に言ってこの店ほど美味しい料理を出すBARは記憶にない。
料理メニューはペラ1枚と素っ気ないのだが、ゆめゆめ軽んじるなかれ。「本日の魚料理」や「出汁巻き卵」など、とさりげなく書かれた品を頼んでみれば、おそらくその美味しさに目をみはるはずだ。

美味しい日本酒に、美味しい肴。上の名店とは異なる特長を活かして、お客を地下2階まで引き寄せる個性的なBARだ。

→和酒BAR KATL