宇木央_灯籠「今日は(もと)に飲みに行くぞ~!」と繰り出したものの、満席で入れず。(狭い店は予約しないとね…)ところが、代わりに入った近くの店が、意外な掘り出し物だったという幸運もたまにある。
そんな経緯で偶然みつけたのが、新橋の裏通りにひっそりとたたずむ居酒屋、「宇木央(うこう)」だ。

場所は、JR新橋駅の烏森出口を出て、烏森通りを虎ノ門方向へ直進し、リンガーハットの角を左折し、二本目の路地の右角のビル2階。まったくの偶然だが、前にご紹介した「大露路」の上にある。
外には看板のたぐいがほとんどなく、営業時間中に階段の下に置かれる小さな行灯とお品書きのボードがなければ、店の存在に気付く人はまずいないだろう。
狭い階段を昇り、左側の暖簾をくぐって扉を開けると、カギ型のカウンターに若い店主が1人いるだけの小さな店だ。カウンターは8席、右奥には小上がりもあって、そちらに4人用と2人用の座卓が1つずつある。

宇木央_入口開店は、2010年2月。当初から店主の鶴健司さんが1人で切り盛りしているが、水曜日と週末にはお手伝いの女性が加わる。
小さな店では、店主のキャラクターが重要だ。その点、鶴さんの穏やかな人柄は、初めての女性客でも安心できそうな気がする。女性スタッフも、和装が似合っていて好ましい。

この店の魅力は、燗上りする8銘柄の日本酒と、それを引き立てる肴だ。
日本酒は、酉与右衛門(よえもん・岩手)、小左衛門(岐阜)、不老泉(滋賀)、風の森(奈良)、克正(岡山)、鏡野(高知)、玉櫻(島根)、ヤマサン正宗(島根)の8つ。お燗向きのしっかりした日本酒ばかりなので、燗酒党には感涙もののランナップだろう。

これらの銘柄から無濾過生原酒を中心に、異なるバリエーションを随時仕入れている。つまり、同じ銘柄でも訪れる日によって、原料米が違っていたり、精米歩合が違ったものを飲めることが高いのだ。店には古酒も寝かせてあり、1年物から10年を超えるようなものまでストックしている。

お酒については、鶴さんに尋ねれば何でも丁寧に教えてもらえる。価格は120mlで800円前後が中心だ。
これらを、冷や、ぬる燗、熱燗、燗冷まし…等、様々な飲み方でいただける。冷酒用に用意されているガラス製片口には、立方体型のものもあってなかなかユニークだ。
お燗には、ちょっとだけ冷やを添えてくれて、味の変化を比較させてもらえたりするのが嬉しい。

宇木央_店内2生ビール(560円)は、新潟ビールの「ヨーロピアンケルシュ」。鶴さんイチオシの地ビールだそうだ。

料理は、定番と日替わりが半々といったところ。種類はさほど多くないが、いかにも日本酒に合いそうなものが色々ある。やはり築地で仕入れた魚が魅力的だが、軽いおつまみや肉料理もある。
メニューの詳細は、ホームページに写真入りでいくつか紹介されている。

訪れた日の日替わりメニューには、芹と三つ葉と水菜のグリーンサラダ(690円)、焼き茄子の出汁あんかけ(680円)、湯豆腐(580円)、エリンギの豚ロース焼き玉葱のマリネのせ(580円)、豚バラ肉のマスタード炒め(790円)、美桜鶏もも肉の唐揚げ(920円)、男爵芋の照り煮(550円)、牛バラ肉の塩煮(850円)、ホタルイカの煮干し(450円)、ホッケのトバ(450円)、漬け物(500円)…などが並んでいた。

置いてあるお酒は飲み応えのある銘柄ばかりだが、好みが合えば通いたくなること必至。お店の方も、本格派の日本酒が好きな客だけ来てもらえればいい、という姿勢を感じる。
日本酒好きが密かに通いたくなる、新橋の小さな隠れ家だ。

→宇木央