ル・コフレ_看板安めのお店が続いたので、このあたりでたまには高めのお店もご紹介しておこう。

客単価がおそらく1人2万円前後ではないかと思える店だから、高いことは間違いないのだが、ある分野に限っては「銀座どころか世界でも最安では…?」と噂されるフレンチ、銀座「ル・コフレ」だ。

銀座4丁目の交差点から歩いて100mほどの路面店でありながら、探してもなかなか見つからない「隠れ家」っぷりもユニークだ。
場所は、銀座4丁目交差点から晴海通りを数寄屋橋方面に約50m歩いて、右側にある「グッチ」と「和光ゆふきやビル」との間に入る。人がやっとすれ違える程度のビルの隙間だが、ここを50mほど歩くと右側に店がある。
地下鉄銀座駅からなら、エレベーター出口「B2」を使うと、直接この路地に出る。

ル・コフレ_外観店の扉を開けると、1階に2~4人用のテーブルが4卓、2階に3卓、合計26席という狭さだ。
豪華な造りではないが、ワインカラーの壁とクロスのかかったテーブルは、隠れ家フレンチらしい趣がある。
2階は原則的に4~8名での貸切を前提としており、食事は全員コースに限られる。(コース8,000円。サービス料・税別)アラカルトで注文するなら、1階を予約しよう。

ここを訪れる客の目的は、1つしかない。それは、グラン・ヴァン。ワイン好きなら1度は飲みたいと思うようなビンテージ・ワインが、ここには勢揃いしているのだ。それも、下手をすると市販価格より安いような価格で。

ボルドーの格付けワインや、ブルゴーニュの特級ワインを中心としたラインナップは、マニア垂涎。それも、完璧な状態で数十年寝かせた飲み頃ばかり。
それだけに1万円未満のワインはほとんどないが、13,000~20,000円ほどで驚くような有名ワインが味わえる。
もちろん、メニューに記されているのはストックのごく一部。スタッフに尋ねれば、誕生年のワインでも奥から出てくることは間違いない。

ワインが余りにも素晴らしいため、料理が凡庸と言われることもあるようだが、ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ(イベリコ豚の生ハム)と、コースに含まれるトリュフ料理(夏は白トリュフ)は絶品と言われている。

ル・コフレ_店内オーナーの武居征吾さんは、ワインを愛する歯科医の家庭に育ち、筋金入りのワイン・コレクターとなった。
趣味が高じて、2000年に高輪のマンションの一室で、この店の前身にあたる「ラ・シュエット 」をひっそりとオープン。看板もない店だったが、「最高のワインが最低の価格で飲める」という噂が口コミで広がり、毎夜ソムリエが勉強がてら門をたたく店となった。その後、店は多少の変遷を経て、2004年に銀座「ル・コフレ」として生まれ変わる。

武居さんは現在、姉妹店として「ラ・シュエット 」の名前を引き継いだ店も六本木で経営している。更に2006年、サンフランシスコに開いたフランス料理店「EL PASEO」は、開店4年目にしてミシュランの1つ星に輝いた。そこで日本人女性として初めて星を獲得した高橋啓子シェフは、なんと武居さんの奥様だ。しかも、料理の修業を始めたのは結婚後だというから、その努力は称賛に値する。

現在、全店で所蔵するワインは約12万本。
「ル・コフレ」は夜1時まで営業しているので、深い時間にはソムリエとゆっくりワイン談義を交わせることもある。
美味しいワインに魅了されるあまり、つい散財してしまうこともあるので、あらかじめ好みと予算を伝えて、オススメを選んでもらうのが賢い利用法だ。

ワインに興味のない人には価値がないが、ワイン好きにとっては悪魔のいる天国のような店である。

→ル・コフレ