新橋は、いわずと知れた飲兵衛天国の街だ。
特に、安く飲める店の多さは都心でもダントツ。立ち飲みブームを牽引したのはこの街と言っても、まず異議は出まい。

そんな新橋のこと、いい銘酒居酒屋も枚挙にいとまがない・・・かと言うと、そうでもない。
もちろん、地酒を揃えた居酒屋は多い。このところ焼酎に押され気味とは言え、それでもあちこちに「地酒」の看板は見つけることができる。
だが、自分好みの銘酒居酒屋と言うと、かなり心もとないのが現実なのだ。

「自分好みの銘酒居酒屋」としては、以下の7つの希望がある。

 1.有名銘柄だけではない、店のこだわりが感じられるラインナップ
 2.日本酒と相性のいい、イケてる肴
 3.オシャレである必要はないが、清潔感のある店内
 4.偉ぶらず、たとえ忙しくても手を抜かない、快適な接客
 5.かたよりすぎない客層(オッサンしかいないとか・・・)
 6.適度な音量のBGM。JAZZなどの落ち着いたものなら嬉しい。
 7.適正な提供価格

7つ全てを満たしているのが理想だが、そこまでいかなくとも近い線まで満たしていてくれている店が「自分好みの銘酒居酒屋」だ。そうなると、いかに新橋とは言え、かなり厳しくなる。

今のところ、この7つをほぼ満たしている店は、新橋で1軒しか見つけていない。
新橋駅の汐留側、日テレの手前あたりにある、「しんばし光寿」だ。
この店は魚柄仁之助さんの本で知り、この街に通勤することになった昨秋、真っ先に訪れた店でもある。

店はビルの地下にあり、入口も目立たないのだが、夕飯時などは予約しないと入店は難しい。
どれもこれも、こだわりを感じる日本酒の銘柄が約60種類。最初に訪れた時、一目見て、ぜひ飲んでみたい銘柄の数が自分の1日の酒量をはるかに上回っていることを悟った。

日本酒は、小(100ml)と中(170ml)の2サイズから選べる。
中サイズの価格で一部紹介すると、寿喜心(650円)、天の戸(680円)、亀泉(680円)、醸し人九平次・純吟雄町(720円)、墨廼江(720円)、篠峯(750円)、風の森・純吟(800円)、十四代・八反錦(850円)、天領の瀧(920円)…等々。

お品書きをにらみながら、その日に飲む銘柄を絞り込む「苦悩」と「喜悦」の二重奏・・・飲兵衛の脳内麻薬が、早くもスプリンクラー状態である。
更に、追い討ちをかけるような、酒好きのハートをかき乱す肴の数々。季節を感じさせる煮物、焼き物、天婦羅…。
ふぐ子のぬか漬け(480円)、親かなぎ(480円)、イカ肝ホイル焼(580円)…など、否応なくお酒が進んでしまう珍味類も、凡百の居酒屋とは一線を画するいい塩梅だ。
八寸っぽいお通し(880円)として前菜6品盛が供されるので、これだけでも1~2杯は行けてしまう。

もちろん、1日で納まるわけもなく、日をおかず再来したことは言うまでもない。

サワーの類は一切置いていないので、同伴者にも日本酒好きを選びたい。
あまりお酒の得意でない向きには、ビールや梅酒という手もあるが・・・(ウーロン茶もある)。

ここを超える銘酒居酒屋が新橋にあるだろうか。
新橋駅前ビルの立ち飲み屋では“銘柄”で太刀打ちできず、銀座に近い銘酒居酒屋「方舟」では“価格”で勝負にならない。
可能性があるとすれば烏森側だが、今のところここに匹敵する店は発見できていない。

かくして、今夜も、新橋探訪は続く・・・・

●しんばし光寿
http://www.kohju.com/