今日は4月4日で、「オカマの日」・・・といったことを昔はよく冗談で言ったものだが、最近は「トランジェンターの日」と称するらしい。
「男と女」に二分しきれない性の多様性について、社会的に広く理解を深める日として、1999年に制定されたとか。時代が変わったなぁ・・・。

そういえば十代の頃、新宿でオカマに襲われそうになったことがあった。危ういところで難を逃れたのだが、その当時はほとんど新宿か渋谷で飲んでいたから、そんなアクシデントにもよく遭遇していた。

当時、とくに気に入っていた店が新宿ゴールデン街にあった。気に入っていたと言うより、生まれて初めて「酒場」たるものを教えてもらった、道場のような存在の店だ。
日本中(世界中?)のハードボイルド小説好きな男たちは、その店のことを聖地とも呼んでいる。店は、「深夜+1」。

超個性派の俳優・コメディアンにして、ハードボイルド小説の「おススメ屋」として有名な、日本冒険小説協会会長・内藤陳さんの店だ。
この店で飲んだ内外の作家は数知れず、馳星周などは一時ここでバイトしていた。
自分も昔、この店で議論していた相手が実は半村良さんだと、後で知らされたことがある。

店名は、ギャビン・ライアルのハードボイルド小説「深夜+1」から取っている。
そのため、店のドアには今、ライアルのインタビューが載った、新聞の切り抜きが貼り付けてある。これは最近、「映画がなければ生きていけない」の著者、十河進さんが、30年も大事に取っておいた新聞広告を陳さんにプレゼントしたものだ。

店は、冗談のように狭い。カウンターに6人くらい、奥の狭いテーブルに2人といったところが限界だろう。
古い店だし、店内も雑然としているので、ゴールデン街初心者にはちょっとキツい店ではある。

酒は、ウィスキーやスピリッツ類が中心。ほとんどの客は、それらのボトルを預けて飲んでいる。
この店では、ボトル・キープする際に、好きなキャラクター名をつけることができる。有名なキャラクター名は、ほとんど古い常連に取られてしまっているので、ネーミングにはかなり苦労するはずだ。ちなみに陳さん自身のボトルには、「フィリップ・マーロウ」と「ハーヴェイ・ロヴェル」と書いてあるようだ。

基本的に、ツマミなどというヤワなものは置いていない。日によってナッツやキスチョコ程度は置いてあったりするが、保障はできない。
陳さんは、いつも「ここで食べるのは、夢だけさ」と、のたまっていた。
そんな台詞ばかり吐いていて、ちゃんとカッコいいオヤジなど、そうはいない。
この店の客にとって、何よりのツマミは陳さんとの会話だ。
陳さんは、たいてい午後9時半頃から店に顔を出す。

昔は、陳さんが酒飲みの風上にも置けないような奴を店から叩き出す光景を毎日のように拝めたが、最近はさすがに減ったようだ。
実は自分も昔、酔った勢いで、その場にいない友人のボトルを勝手に飲もうとして、叩き出されたことがある。

最近は若い店主が増えてすっかり様変わりしたゴールデン街だが、店はいまだに健在
新宿で終電を逃すと、ついつい足が向いてしまうのだが・・・陳さんに「まだそんな呑み方しかできねェのか!?」とドヤされそうで、なかなか扉を開ける勇気が出ない。

こんな飲み屋が、1軒くらいあってもいい。

●深夜+1
http://www.aisa.ne.jp/jafa/shinya+1.html