肥土伊知郎(あくと・いちろう)さんの実家は、埼玉県羽生市の「東亜酒造」という老舗酒造会社だった。
日本酒だけでなく地ウイスキーも手掛ける酒造メーカーで、国内では珍しく自社で銅製ポットスチルを持ち、スコットランドの伝統的な手法でシングルモルト・ウイスキーを造っていた。
しかし、主力だった日本酒部門の業績が悪化し、2004年5月に東亜酒造は他メーカーへ売却される。
そのメーカーはウイスキーを扱っていなかったため、熟成中の原酒は危うく廃棄されるところだったという。

伊知郎さんは、その原酒を引き取って、郡山の「笹の川酒造」に一時預かってもらう交渉をまとめる。
そして勤務していたサントリーを退社し、奥さんと2人で(有)ベンチャーウイスキーを設立。預けていた原酒のボトリングを開始し、2005年4月9日、「Ichiro’s Malt」と名付けて世に送り出した。

イチローズ・モルトを代表するラインナップが、トランプのカードをラベルのデザインにしたカード・シリーズ。原酒をホグスヘッド樽に貯蔵した後、最後の数ヶ月間だけ別の種類の樽に移し替えることで、原酒に複雑さと深みを与えたウイスキーだ。

これまでに発売されたのは、スペードのエース、10、キング、ハートのエース、9、クイーン、ダイヤの3、キング、そしてクラブの2とジャックの10種類。
いずれも加水、濾過、着色なしのシングルモルトで、価格は1本4,600~18,200円。短いもので6年、長いものだと22年熟成されている。

写真の「ツー・オブ・クラブ」は、カード・シリーズの中では2番目に熟成が短い7年物で、価格は5,985円(700ml)。ただし、製造された318本は既に完売しているので、モルトウイスキーの充実したBARで探すしかない。(300本以上販売されたのは2種類のみで、スペードのエースなどは122本しかない。)
2番目の樽として国産ミズナラが使われており、まろやかな甘みと渋みのバランスが素晴らしい。できればストレートで味わってほしいが、アルコールが56%とかなり強いので、少し水を加えてもいい。

今年度の「ワールド・ウイスキー・アワード」ジャパニーズ・シングルモルト12年以下の部で、この「ツー・オブ・クラブ」は1位を受賞した。サントリーとニッカ以外で1位を受賞したメーカーはほかにない。今月18日には、日本代表として世界大会に出品される。

●MALT DREAM(肥土伊知郎さんのサイト)
http://homepage3.nifty.com/venture-whisky/index.html

●ワールドウィスキーアワード日本部門結果発表
http://www.whisk-e.co.jp/news/2007022301.html