前回の「大政小政」も客を選ぶ店だが、今回はまったく別の意味で、更に客を選ぶ店だ。
まず、貝焼き専門店という時点で、かなり客層は絞られるはず。加えて、店が半端ではない程のチープさ。これは、店主が元々屋台出身のためか、海の家を模しているのかの、どちらかだと思う。

店は新富町の「祥音」。場所は、入船橋交差点から新大橋通りを八丁堀方面に進んで最初の信号を左折、すぐ右側だ。
ビル1階の前面にビニールシートが下がっており、その内側が店になっている。最初に訪れた時、店の入口がどこにも見つからずに戸惑った。店内で飲食している人がピニール越しに透けて見えるのだが、どう回り込んでも入口がない。自分でもアホかと思いつつ、店の前から電話して「入口どこですか?」と聞いたところ、「ビニールをめくって入って」とのこと。我ながら情けなかった。

店内は、ほとんど工事中のビルの中としか思えない。思わず「こんな場所で宴会してたら、工事の人に怒られるんじゃ・・・」という気になってくる。テーブルは板を渡しただけ、椅子も木箱やゴミ箱。天井はダクトがむき出しだし、壁は落書きで一杯だ。
おまけに、料理は、スーパーのパックに使われている白い皿で出てくる。お酒は使い捨ての透明コップなので、強く握るとつぶれてしまう。

このチープさを洒落で楽しめる人には、面白いお店。もちろん、貝が嫌いでないことは大前提だが。
メニューらしきものはないので、最初はコースメニューがいい。2000円で9品のコースが標準だ。ほかに1000円で5品のコースと、3000円のコースもある。
すべておまかせだが、自分が出されたのは、鳥貝、中国産蛤、ムール貝、白貝、熊本産蛤、マテ貝、さざえ、帆立貝、蛤の醤油焼といった感じだった。蛤が3回出てくるが、これは食べ比べということ。中国産と国産の違いを味わえる。

飲み物はオール500円。ビールは「ヱビス」と「ヱビスの黒」があり、ハーフ&ハーフもできる。
日本酒はすべて純米で、酔鯨、浦霞、越の影虎、天狗舞があった。500円でこの銘柄なら、使い捨てのコップでも許せるかもしれない。
焼酎は、黒伊佐錦、おはら、鬼殺し、里の曙あたり。スミノフのウォッカやワイン(ボトル2千円)もある。

店内こそチープだが、貝焼きはうまいことで評判。個人的には刺身も食べたいところだが、残念ながら焼き専門というのが基本だ。
旬の時には、牡蠣亀の手といった逸品も登場する。
実は貝だけでなく、裏メニュー的に野菜や魚もある。しかし、あるかどうかも含めて、これはタイミング次第。常連になると、事前にお願いしたりして、限定メニューを提供してもらえることもあり、この店は常連になってからが真骨頂という気がする。

この雰囲気は、やっぱり海の家。浜で夜までわいわい盛り上がっているような気分で楽しみたい。
ちなみに、ちょっと変わった店名は、店主・鈴木聡さんのお子さんの名前だそうだ。

●貝焼 祥音
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