※虎の門の「鈴傳」は、08年4月25日をもって閉店してしまった。「安くて旨い酒」を提供してくれる店として、おそらく東京一の有名店だったが…誠に残念。四谷の角打ち「鈴傳」が残っているのが救いか。

日本酒好きの間では、おそらく東京一有名な立ち飲み屋が、四谷の鈴傳(すずでん)だろう。
この店は江戸時代から続く酒屋であり、店の一角でお酒を飲ませてくれる、いわゆる角打ちの元祖的存在の店だ。
1849年に酒屋として創業し、6代目の磯野元昭さんが、立ち飲み屋を始めたのがその100年後。現在は息子の真也さんが跡を継いでいる。
当時、四谷には大蔵省や東京陸運局があり、そこで働く役人たちがお得意様だった。1956年、大蔵省が四谷から霞ヶ関に移転したのに合わせて、虎の門にも居酒屋を開いた。こちらは立ち飲みではなく、簡素ながらテーブルと椅子があり、料理も四谷より多少は揃っている。

虎ノ門「鈴傳」の場所は、桜田通りから虎の門1丁目の信号を「虎の門病院」方面に曲がって約50m右側。
店は、古さを感じさせる大衆居酒屋のたたずまいで、決してきれいではない。それでも、店先で待っている人がいなかったら、ラッキーと思っていい。

店内は、細長い8人掛けのテーブルが左右に並んでいる。椅子は幅20cm程度の板か、丸椅子で、いずれも背もたれはない。テーブルも幅が狭いので、向かいの人と交互に座るようにしないと、お皿が置きにくい。右側の手前に4人席、左手奥にカウンター3席もあるが、全体的に狭くて人がびっしりという感じだ。全部で50席ほどはあるが、ほとんどは男性客だ。

壁には、50種類ほどの銘酒や料理の名札が貼られている。日本酒は、八海山、久保田、十四代、醸し人九平次、亀泉、黒牛、出羽桜、東北泉、七福神、八仙、成政、房島屋…など、日本酒通も納得の銘柄が並んでおり、目移りしてしまいそうだ。ただし、人気の銘柄は売り切れていることもしばしば。冷蔵庫があまり大きくないため、保管数は限られているのだ。

お酒はごく普通のビールコップで出され、受け皿などはない。どれも美味しい日本酒ばかりなのだが、雰囲気のせいか、本来の美味しさを発揮しきれていないような気も。一升瓶はきちんと冷蔵庫で管理されているし、回転もいいはずなので、もしかするとコップがあまり冷えていなかったせいかもしれない。

お酒はコップにはすりきり一杯入れてくれるので、ちょうど1合ありそうだ。
値段はほとんど500円~600円。なにせ、十四代ですら500円なのだ。都心で、これだけの銘酒をこれだけ安価に飲ませてくれる店は、ほかに知らない。
ちなみに、ビールは大が520円、小が400円だ。

料理は、いわゆる居酒屋メニューで、種類は少ないがやはり安い。ポテトサラダ、ざる豆腐、鳥串焼、焼とん、〆鯖、まぐろブツ、まぐろ納豆、おでん、肉豆腐、…など、大体200円~700円で納まり、中心は400~550円あたり。
味は正直、大衆居酒屋として普通のレベル。焼き物系あたりは比較的おいしいようだ。

昨日は金曜ということもあり、店の前で待っている人が途切れない満員状態が続いていた。3人の店員が、声をかけるのもためらわれるほどフル回転で働き回っていたが、それでも注文を忘れたりすることもなく、対応もいい。料理が出てくるのも早いし、お酒の質問にも的確に答えていた。さすが老舗の人気店だけのことはある。

おいしいお酒をともかく安く飲みたい人にとっては、天国のような店。ただの物珍しさや、話のネタで来るべきではないだろう。
場所柄、土・日・祝がお休みで、営業時間も17時~22時半という点だけ、注意が必要だ。

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