アイルランドという国で連想するのは、IRAとかU2、お酒だとギネスビールあたりか。
「ウィスキー」という連想はあまり一般的ではないかもしれないが、実はウイスキー発祥の地がアイルランドなのだ。

中世の頃、イスラムの国々では錬金術が流行していた。錬金術自体は夢物語で終わったが、その研究は様々な科学技術の進歩に貢献した。
その成果の一つが、ガラス製の蒸留装置だ。4世紀頃からアラビア人たちはこれを利用し、花を潰して香水を製造していた。6世紀頃、中東を訪れたアイルランドの修道士がその技術を持ち帰り、大麦を原料にして酒造りに応用したのがウイスキーの発祥と言われる。
ただの金属を「金」に変えることはできなかったが、ビールを「ウィスキー」に変えることには成功したわけだ。

1171年、英国のヘンリー2世の軍隊がアイルランドに遠征したとき、人々が「ウシュク・ベーハ」(Uisce Beatha)なるアルコール飲料を愛飲していたと記録に残されている。
「ウシュク・ベーハ」とは、アイルランド語(ゲール語)で「生命の水」のこと。それが英国へ伝わり、16世紀半ばに今日の「ウイスキー」になったという。
水とピートに恵まれていた英国が、やがてウィスキーの一大産地となったのはご存知の通りだ。
ちなみに、ウィスキーを製造している国は、アイルランドと英国、アメリカ、カナダ、日本の5ヶ国しかない。

アイリッシュ・ウィスキーは、大麦麦芽、未発芽大麦、ライ麦、小麦などの発酵液を蒸留し、樽熟成を3年以上させて造る。通常はピート香をつけず、蒸留は単式蒸留器で3回行われ、85度前後まで蒸留することですっきりとした味わいに仕上げる。(現在は、スコッチのように2回蒸留のものもある。)

アイルランドの蒸留所は、ブッシュミルズ、クーリー、ミドルトンの3ヵ所。
中でもブッシュミルズは、1608年にジェームズ1世から酒造免許を授かったという、現存する世界最古のウイスキー蒸留所だ。


そこで造られる「ブラックブッシュ」は、80%のモルト原酒にグレーン原酒をブレンドした長期熟成品。
白ラベルの「ブッシュミルズ」(正確な商品名は「オリジナル・ブッシュミルズ」)もあるが、それよりモルト原酒の含有量が多く、熟成年数も長い、いわばプレミアム版だ。とは言え、1本2千円台の手頃な価格で買えるのが嬉しい。
重厚なコクと甘いシェリーの香り、スパイシーなモルト香が特徴の、魅力的なウィスキーだ。

手頃な価格で美味しいウィスキーを飲みたい人に、自信を持っておすすめできる。

BUSHMILLS(英語)