新・卯波この掲載は旧店舗の記事だが、嬉しいことに「卯波」は2010年2月下旬、すぐ隣のビルの地下1階で営業を再開した。昔のひなびた風情はないけれど、すっきりとキレイな和風店舗には、以前とはまた違った魅力がある。値段がちょっと高めになったようで残念だが、機会があればぜひ足を運んでみたいと思っている。(上の写真が新店舗、下の写真は旧店舗)

銀座のある老舗居酒屋が、もうすぐその灯を消す。
俳人であり、瀬戸内寂聴の小説「いよよ華やぐ」のモデルにもなった鈴木真砂女さんが、50年前に開店した「卯波」である。

「卯波」は、銀座1丁目の並木通りから幸稲荷神社の角を入った路地裏にある。間口1間少々の古びた店で、知らない人なら見過ごしてしまうかもしれない。

かつては真砂女さん自身が料理から接客までこなしていたが、2003年に96歳で亡くなり、現在はお孫さんの今田宗男さんが引き継いでいる。
今田さんは、顔に似合わず(失礼!)ロックおたくで、新しい物好きというキャラでもある。余談だが、母親(真砂女さんの長女)は、文学座の現役ベテラン女優・本山可久子さんだ。

旧・卯波格子の引戸を開けると、中には9席のカギ型カウンターがある。奥には4畳と3畳の小上がりが襖で仕切られており、襖をはずせばぶち抜きにもなる。ここで句会が開かれることもよくあり、角川春樹さんなども利用していたようだ。
小上がりの手前に極小のカウンター(対面で2席)があるのがユニーク。

今田さんはカウンター内で料理を担当し、接客はバイトの女子大生たちが受け持っている。
料理は和食。種類は十数品ほどで、季節によって献立が変わる。
昨日は穴子の煮こごりと濃厚な風味の揚げじゃが芋をいただいたが、いずれも美味しかった
ほかにも、お造り、野菜の炊き合わせ、衣被(きぬかつぎ) 、鶏団子鍋…など、家庭的なお惣菜が揃っている。
特製メニューに、たたきあげ(トビウオ、アオムロなどの魚を使って作る式根島の名物科理)があるらしい。
価格は700円~1200円くらいが中心。

日本酒は、「白鷹」本醸造と「あさ開」純米酒が基本で、燗につけてもらえる。冷酒用で神亀八海山もあるが、こちらはいずれも千円以上と少々お高い。(グレードは不明)

まるで昔の映画に出てきそうな古い居酒屋で、決してきれいとは言えない店内なのだが、ほっとするような居心地の良さがある
いかにも上品そうな年配のご婦人が一人で杯を傾けていたりするのが、実に自然に馴染んでいるのだ。
店には作家の村松友視や嵐山光三郎らも訪れたと聞いている。

ちなみに、店名の「卯波」とは、旧暦四月(卯月)頃の風の強い日に立つやや高い波のことで、夏の季語。真砂女の代表作「あるときは船より高き卯浪かな」から取った店名だ。「卯浪」では字画が悪かったため、「卯波」としたそうだ。

来年には、この店の地主さんが土地を売却し、跡地にビルが建つらしい。
これまで魚の注文が入ると、その都度焼いてもらっていた隣の魚屋さんも、8月に閉店した。
最終営業日は、2008年1月25日とのことだ。(12月30日~1月6日は休業。)

→卯波
http://www.h7.dion.ne.jp/~unami/