年末に景気のいい話を1つ。
大宮駅の東口から、南銀座を直進し繁華街を抜けかかる頃、右側にひっそりとたたずむ古びた店「あじろ」がある。

看板には「割烹」などと書かれているため、一見で入って来る客は稀だと思う。
昭和40年代に建てられた店舗は、今でも当時のまま。引き戸を開けると、1階は8席ほどのカウンターのみ。椅子も背もたれのないスツールで、表面もちょっとゴワゴワしている。
カウンターの中には、年配の女将がひとり。以前、看板娘がいたと聞くが、少なくとも昨晩はいなかった。奥で料理を担当しているマスターは、ほとんど気配を感じさせない。

ここは、割烹と言うより贅沢な居酒屋
壁にびっしりと貼られた短冊には、吟醸酒を中心にもの凄い逸品ばかり50銘柄ほどが並んでいる。
黒龍・石田屋、黒龍・二左衛門、初亀・亀、開運・波瀬正吉、幻・まぼろし、真澄・夢殿、英勲・一吟、出羽桜・手造大吟醸、久保田・碧寿、久保田・萬寿、十四代・愛山、千代の亀・銀河鉄道、達磨正宗、梵、墨廼江、磯自慢、山形正宗、常きげん、越の寒梅

価格は、安いもので1合1,500円。多いのは2,000~2,500円あたりだが、5,000円というのも少なくない。
さすがにこの価格帯だけでは気が引けるのか、かろうじて立山(800円)、〆張鶴(900円)、八海山・純米吟醸(1,000円)といった手頃なものも、わずかながら置いてある。

料理は15品ほどが黒板に書かれている。何種類かのお刺身、煮魚、ししゃも、珍味、蕎麦、お茶漬け…と、日本酒に合う料理ばかり。刺身の盛り合わせ以外は、ほとんど700円~1,000円で、お酒より安い。例外として、昨日の煮魚「なめたかれい」は1,700円、名物の「本からすみ」は3,000円。これで分かる通り、料理の質も日本酒に負けていない。

値段は気にせず、最高の日本酒と最高の肴で一杯やりたい、そういう時のための店なのだ。
そのくせ店の造りは古く、BGMも古い歌謡曲。ここで飲んでいると、地方の旅行に出かけて、ひなびた温泉街の飲み屋で一杯やっているような錯覚に陥ってしまう。

2階は宴会用らしく、詰めれば20人くらい入れるようだが、できれば6人くらいの少人数でゆったり使ってもらいたいという話だ。
時間も仕事も忘れ、昭和にタイムスリップした気分で、最高の酒と肴にひたる。
そんな贅沢も、たまにはいいがだろう?

Yahoo!グルメ/あじろ(※本日より年末年始休暇)