今日から仕事始め。そろそろお屠蘇気分から脱する頃だ。
ところで、本物のお屠蘇を飲んだことのある人は、関東では少ないのではないだろうか?

お屠蘇は、正月に、無病長寿を願っていただく酒のことだ。
もともとは中国で始まった習慣で、日本には嵯峨天皇の頃に宮中の正月行事として始められ、江戸時代に一般に広まったとか。

東日本では、単に正月に飲む酒を「お屠蘇」と称する場合も多いが、本来は日本酒に本みりんを加えたものに、屠蘇散を7~8時間浸して作るものだ。
屠蘇散とは、漢方薬に使われる生薬を5~10種類配合したもので、薬局などで入手することができる。

屠蘇散には、白朮(ビャクジュツ)の根、山椒(サンショウ)の実、桔梗(キキョウ)の根、肉桂(ニッケイ)の樹皮、防風(ボウフウ)の根などが含まれていて、胃腸の働きを盛んにし、血行をよくし、風邪を予防する効果があると言われている。ただし、正月にお屠蘇をちょこっと飲んだくらいでは、効果は期待できない。

自分で作るのが面倒な人は、お屠蘇を購入する手もある。
たとえば、奈良の春鹿が出している「延寿 屠蘇酒」(300ml・735円)。
春日大社の御神酒造りを千年来担ってきた「春鹿」の蔵元と、平安時代の創業以来、春日大社の警護や奈良市中の治安を守る家柄であった菊岡漢方薬。この2社の奈良の老舗が協力して造った、由緒あるお屠蘇だ。

そう言えば、お屠蘇をいただく際に使われる、取っ手が上についた急須のような形の酒器はお銚子と呼ばれる。
「お銚子」は、元々は神前結婚式の三々九度の時、巫女がお神酒を注ぐのに用いる柄杓のような酒器が原型。急須のような酒器は、本来「提(ひさげ)」が正式名称なのだが、普及するにつれて江戸前期頃からこちらも「お銚子」と呼ばれるようになったらしい。
よく、燗徳利のことを「お銚子」と呼ぶ人がいるが、あれは酒器の名称を混同した結果で、本来は誤用。自分は居酒屋でも必ず「徳利」と呼ぶようにしている。

この際、本物のお屠蘇とお銚子で新しい年をスタートするというのも、日本の正月らしくて良さそうだ。

今西清兵衛商店/春鹿