現在、自分の職場は汐留。すぐ隣の銀座には、綺羅星のごとくいいBARが軒を並べている。
だが、自分がいま気に入っているBARは、銀座の中心部からはずれた、かつて木挽町と呼ばれていたエリアにある「bar cacoi」だ。

場所は、昭和通りの銀座7丁目歩道橋を越えて築地側に渡り、2つめの角(右側は料亭「吉兆」)を左折してすぐ右側。1日3組限定の料亭、銀座 朝川の2階にある。

入口を入って2階に上がると、右側が和食ダイニングの「メゾン・ド・アサカワ」で、左側が「bar cacoi」となっている。元は料亭の離れ座敷として使われていたスペースらしい。

「bar cacoi」は、メゾン・ド・アサカワでの食事の前後に一杯やるにはうってつけのスペースであり、逆に早い時間なら隣から料理を持ってきてもらうこともできるという、連携関係にある。

6~7人で満席となる「逆カギ型」のカウンターに、テーブルが2~3卓ほどの狭さだが、その隠れ家風の立地もあいまって、とても落ち着ける雰囲気になっている。照明の暗さに加え、バーとしては低めのカウンターも居心地がいい。

一見、こんな穴場に客が来るのかとも思うのだが、会社帰りに1~2人で寄る女性客、年配の旦那衆、静かに語り合うビジネスマンなど、客筋も実にいいのだ。

オーナ・バーテンダーの大場健志さんは、大学を卒業してから2003年までの4年間、富士通に勤務していたという変わり種。サラリーマン時代からお酒好きだったらしく、退職後、新宿のBARで働き、2004年に「bar cacoi」を渋谷にオープン。その後、建物の改築のため銀座に移転し、現在の場所でちょうど3年目を迎えたところだ。

「cacoi」という名前は、茶道から取ったらしい。その昔、一般の人々は広間を屏風で囲い、その中で茶会を開いたそうで、囲いは茶室の前身を指す用語だ。
それだけに、ここでは200種類以上のモルト、リキュール、ワインなどのほか、お茶もしっかり用意されている。

渋谷の頃から、うまい酒が揃っていると評判だったらしいが、もちろん銀座でもそれは健在。
ここで教えてもらった旨い酒は本当にたくさんある。イチローズ・モルト(07/04/07掲載)もクライヌリッシュ(07/08/08掲載)も、最初に飲ませてもらったのは、実はここなのだ。
価格は銀座の中心にあるBARに比べ、明らかに安い
とは言え、逸品もけっこう混じっているので、不安な時は確認した方がいいだろう。

つまみは、やはり軽いものが中心だが、チーズにせよチョコにせよ干しブドウ(枝つき)にせよ、洋酒によく合う物が揃えられている。
たまに、ユニークなイベントも企画してくれるのだが、自分は残念ながらまだ参加したことがない。

隣の「メゾン・ド・アサカワ」もちょっと面白い店で、昔の洋館を思わせる和風インテリアながら、ワイン会席を提供している。エントランスのウィンドウに飾られた有名ワインやシャンパンのボトルには、ちょっと惹かれてしまう
だが、値段が少々高めという印象があって、こちらはランチしか試していない。

銀座の中心からちょっと離れた裏通りだからこそ、花街の香り漂う落ち着いたBARが似合うのだろう。
こんな隠れ家が職場のすぐ近くにあるのだから、自分は酒場に関してだけは、本当に運がいいと思っている。

※「bar cacoi」は朝川の改築に伴い、2009年5月29日(金)に閉店。大場さんは古巣の渋谷に戻って、「cacoi」を営業している。場所は、公園通りの「渋谷東部ホテル」の少し先の右側にあるCOENビルの5Fだ。

~歴史と人事は夜動く~『元bar cacoi annex』