このところ真夏日が続いており、いよいよ夏本番だ。
こういう日にはビール!…という方も多いだろうが、冷たく冷やした生酒なんぞも似合うものだ。

ところで、一言で「生酒」と言われるものに、実は3種類あることをご存知だろうか
それは、「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」「生詰酒(なまづめしゅ)」「生酒(なまざけ)」の3つ。これらは一緒くたにされがちだが、実は意外と違う

日本酒は通常、冬に醸造された後しばらくの間、タンクに貯蔵して熟成させる。それによって味に丸みや深みが出て、より美味しくなるからだ。その際、貯蔵する前と、貯蔵が終わって瓶詰めする前の2回、火入れと呼ばれる低温加熱殺菌が行われる。(普通は65度前後)

1回目の火入れは、主に酵母の活動を止め、雑菌を殺して酒質を安定させるために行われる。
2回目の火入れは、お酒が出荷された後に変質(劣化)するのを最小限に留めるためだ。
ただ、昔はともかく、冷蔵技術や冷蔵庫が普及した現代では、ちゃんとした貯蔵・保管さえ行えば、火入れは必須の工程ではない。

そこで、1回目(貯蔵前)の火入れを行わずに出荷された日本酒を「生貯蔵酒」、2回目(瓶詰め前)の火入れを行わずに出荷された日本酒を「生詰酒」、両方とも行わなかった日本酒を「生酒」と呼んでいるのだ。

生貯蔵酒は、きちんとした温度管理や衛生管理ができる醸造所での火入れは省略するが、販売後の変質は最小限に留めたいということだろう。
生詰酒は、火入れをして酒質を安定させてから熟成させ、秋には美味しくなったお酒をそのまま届けたいということ。こちらは「冷やおろし」とも呼ばれる。これは、涼しい酒蔵で貯蔵したお酒を、火入れせずに冷えたまま卸したという意味だ。
生酒は、醸造したお酒本来の風味をそのまま味わってもらおうというお酒だ。

生貯蔵酒はまだしも、生詰酒と生酒は購入後必ず冷蔵庫で保存し、できるだけ早く呑んでしまった方がいい。こうしたお酒は300mlの小瓶で提供されることが多いが、これは1回で全部呑みきってもらうためだ。

「生貯蔵酒」や「生詰酒」は、いずれも1回は火入れを行っているので、本来の「生酒」とは区別されるべき。本当の「生酒」(他の2種と区別するため、「本生(ほんなま)」とか「生生(なまなま)」と呼ばれることもある。)は、保存や流通にもコストがかかるため、販売価格にも影響する。
もし「生貯蔵酒」や「生詰酒」を「生酒」と省略表示している店があったとしたら、それは今はやりの不当表示に当たるので、すぐやめてほしい。

初物好きの日本人は「生」の文字に惹かれるかもしれないが、生酒が火入れをしたお酒よりいいかと言えば、それは別問題だと思う。
生酒は瓶の中でも醗酵し続け、炭酸ガスを発生させるため、口に含むと少し舌がピリピリする。当然だが、フレッシュな味わいがある一方、熟成が足りないという見方もできる。

だが、夏場はこのフレッシュさと微発泡が、涼しげな刺激を与えてくれるのも確か。自分も、夏はなんとなく生酒に手を伸ばしてしまう。
ビールもいいが、この季節は生酒にもぜひトライしてみてほしい!