評判の高い居酒屋が、必ずしも万人受けするわけではない。小さな店ほど、その店独自のテイストがあり、それが合う客は絶賛するが、合わない客は首をひねることになる。
月島の「味泉」はそうした微妙な居酒屋かもしれないが、酒と肴の旨さは誰もが認める人気居酒屋だ。

場所は、月島。地下鉄「月島」駅で8番出口を出たら(月島サマリア病院前)、道なりに進んで次の角を右折。そのまま250mほど歩いたつきあたりを左折すると、すぐ左側にある。

コンクリート打ちっ放しの外壁で、入口の右側と左下には、それぞれアールヌーボー調のアートっぽい看板があり、居酒屋としてはちょっと斬新な外観だ。
これだけ見ると、(株)竹馬の店(新宿で池林房、陶玄房、浪曼房、犀門、梟門などを経営している)と似た雰囲気。

店内は思ったより狭く、2人用のテーブルが4卓に、4人用が2卓、あとはカウンターに7席のみ。
中は白木でまとめられた意外と普通の居酒屋。常に満席なので、けっこう賑やかだ。
スタッフは、店主である荒木さんとその友人のご家族で運営されている。外観は斬新だが、下町らしい家族経営の店なのだ。そこを理解しておかないと、この店は楽しめない。

カウンターの上部は、端から端まで日本酒の瓶が並べられ、それぞれの瓶の下に銘柄と値段を書いた短冊が下がっている。これがそのまま日本酒のメニュー。ただし、これ以外の銘柄が壁の貼り紙にも書かれているので、お見逃しなく。

マルで囲まれた価格は、小グラス(5勺)での値段。日本酒の値段のみ、外税なので注意してほしい。
純米を中心にした本物の酒ばかりで、特に王禄豊盃天の戸という渋い銘柄が一押しらしく、それぞれ3種類以上揃っていた。価格は、700~800円が多く、1合での最高値は「瑠璃色の海」の1,000円まで。それ以上のものは小グラスによる提供で価格を抑えている。

ほかには、十四代、黒龍、飛露喜、醸し人九平次、磯自慢、義侠、村祐、東一、鶴齢、菊姫、大七、天遊淋、山桃桜、松倉、萬代芳、綿屋、龍力、渡舟、亀の尾、陸羽132号、…等々、30銘柄はあったと思う。

焼酎も24種類あり、600~800円。「百年の孤独」でも800円というのは良心的だろう。内19種類は、ボトルキープできる。
ビールはエビス中瓶600円、同じくエビスの樽生550円(小)、650円(中)。

ほかの壁には、魚の名前と「刺身」「焼き」といった調理法を書いた紙がベタベタと貼ってあり、これが即ち魚料理のメニュー。これを見て、食べたい魚を注文する。魚は日替わりのためか、「1,000~2,000円」と大雑把な値段が掲げられ、個別に書かれているものは少ない。1,000円と2,000円とじゃ大違いだと思うのだが…。

その他の定番は、テーブルに置かれたメニューで確認できる。価格はやはり千円オーバーが多いので、居酒屋としては高めだ。だが、どれもが美味い。
名物は、「薩摩揚げ」と「煮穴子」。

薩摩揚げは、野菜がたっぷり入っていてとても柔らかい。大きいので、3~4人でも1つで足りそう。
煮穴子は、1度煮た後で軽く焙ってあり、柔らかさと香ばしさが一体となっている。こちらは少々時間がかかるので、早めに注文しておくといい。
もっとも、ここは荒木さん1人で調理しているため、料理に時間がかかることは多いようだ。

普通に飲んで食べて1人5千円以上、贅沢すれば1万円近くかかる店なのだが、美味さで納得してしまうという人が多い。
これで接客サービスがもう少し良ければ、嬉しいのだが…。常に満席で忙しいとは思うが、説明が少なくて、せっかくの美味しいメニューが活かされていないのが残念。料理にもお酒にも、もう少し親切な説明がほしいところだ。

それでも連日常に満席なのが大したもの。よって、予約は必須だ。

→肴や 味泉
http://www.gurume-tsukishima.com/shop/021_ajisen.html