少し前、ある居酒屋で、隣にいた大学生らしき若い男性3人組が、日本酒について話していた。
1人が「吟醸酒って、結局どういうお酒なの?」と、シンプルな質問をしたのだが、相手は「高級な日本酒でしょ?」というくらいしか答えられなかったようだ。

自分は、横から口を挟みたい衝動を抑えるのに苦労していたのだが、確かに良く飲んでいる割に何だか分からない人がほとんどだと思う。
というわけで、今回は吟醸酒について簡単に紹介したい。

吟醸酒は、その名の通り「吟味されて醸造された日本酒」のこと。
どのように吟味されているのかというと、まず原材料が吟味されている。
日本酒の醸造に使われるお米は食用のものとは違い、「酒造好適米(醸造用玄米)」と呼ばれる品種を使うのが一般的だ。
吟醸酒の場合は、その中でも特に素晴らしい味を期待できる最高品種、具体的には「山田錦」などを使うことが多い。(ほかには、五百万石、美山錦、雄町、八反錦…などが有名)

しかも、その米粒の外側部分を40%以上、多くは50%くらいまで削って捨ててしまう。
米粒は、外側に近い部分ほどタンパク質や脂肪などが多く含まれていて、これらはお酒の質を低下させる原因になるためだ。
削った後に残る割合を「精米歩合」と言う。吟醸酒の場合は40%以上削るため、精米歩合は60%以下になる。これが50%以下になると「大吟醸」と言われる。
鑑評会用の吟醸酒だと、精米歩合は35%前後。買ったお米の3/2近くを捨ててしまうわけだ。

食用のお米だと精米歩合は約92%、普通酒の場合で75%くらいなので、これがいかに贅沢なことか分かるだろう。
50%精米するには約3昼夜かかるので、原材料費だけでなく、手間も相当かかることになる。

次に、吟醸造りと呼ばれる高度な技術で醸造される。専用の酵母を使い、低温で長期間発酵させる造り方だ。
酒造りでは、発酵温度が高ければ早く発酵するが、味わいは荒くなりやすい。逆に発酵温度が低ければゆっくりと発酵し、繊細な味わいとなる。
通常のお酒は、15度前後で2~3週間発酵させるが、吟醸酒の場合は10度以下で1ヶ月以上かけて発酵させる。

醸造後、醸造アルコールを添加する場合も、吟醸酒は米の重さの10%以下に制限されている。
醸造アルコールとは、でんぷん質を糖化したものや、廃糖蜜(サトウキビやテンサイなどの糖蜜から砂糖を結晶させた後に残る液)を発酵・蒸留して造られる95%のエチルアルコールのことだ。吟醸酒の場合は、香りやキレを出すために添加される。
これを添加しない場合は、「純米吟醸」または「純米大吟醸」と呼ばれるが、それで美味しい吟醸酒を造るのは、より高度な技術が必要となる。まぁ、化粧せずにスッピンで勝負するようなものだ。

こうして、手間もお金も掛けて造った吟醸酒は、吟醸香と呼ばれるフルーツのような甘い香りを持ち、すっきりとした味わいの淡麗な日本酒に仕上がる。

お米を水に浸すにも秒単位、温度調整も0.5℃単位で管理する、まさに真剣勝負で造られた酒。
ぜひともじっくりと味わいましょう!