酒呑みと言われる人は、意外に吟醸酒をそれほど飲まない。
1杯ならまだいいが、何杯も飲み続けることを考えると、吟醸酒は意外に飽きが来てしまったり、予算的にもったいないところがある。
1本の酒を呑み続けるなら、呑み飽きしない上質な純米酒が一番、という酒呑みは多い。
言うのは簡単だがいざ探すとなかなか難しい。オススメを1つ挙げるなら、秋田の「白瀑(しらたき)」を挙げたい。

白瀑は、青森県境に位置する秋田県最北の町・八峰町にある、山本合名会社の銘柄。
世界遺産の白神山地と日本海とにはさまれた八森地区は、日本でも有数の自然に恵まれた地域だ。その世界最大のブナ原生林である白神山地のふもとに、山本合名会社はある。
酒の名前は、蔵の近くの薬師山の麓にある白瀑という滝から付けられた。

蔵では、その白神山地から湧き出る天然水を、自然の傾斜を利用した3Kmほどの自家水道で直接酒蔵まで引き込んでいる。それをろ過も加工もせず、仕込みを始めとする全ての工程にそのまま使用しているそうだ。こんな贅沢な蔵はほかにない。ブナ林が育んだきめの細かい天然の湧水は、鉄分が少なく酒造りに最適な水だという。

米も、地元の酒米(酒造好適米)にこだわっている。
「山田錦」「備前雄町」「美山錦」といった王道の酒米を使った酒も少数醸してはいるが、多くは「酒こまち」「めんこいな」「吟の精」といった秋田産の米を使っているのだ。
2008年からは、自家水道沿いの田7反で酒米作りを始め、自家製米での酒造りへの挑戦も始めた。
平均精米歩合は53%と、県内でも随一。醸造している酒は全て特定名称酒だ。

搾られた酒の加熱殺菌(火入れ)も、通常のタンクではなく、瓶詰めした後に火入れをしている。それを一気に冷水シャワーで冷まし、冷蔵貯蔵庫で瓶貯蔵しているそうだ。こうすることで、搾り立てのような華やかで新鮮な味わいを維持できるのだという。

この蔵では、近年酒造り体制を改革し、2006年には杜氏制を廃止。2007年から若き6代目・山本友文さんが杜氏を兼ね、酒造りに精魂を傾けている。その効果か、近年急速に酒質が向上しているように思う。
「どこにも負けない最高の日本酒を造りたい」という山本さんの情熱は熱く、今後が一層期待される蔵だ。

白瀑の酒はどれも間違いないが、最近飲んだのは純米の山田錦(四合・1,380円、1升2,625円 )。昔ながらの製法で丁寧に造られた酒は、ほのかに上品な香りがあり、まろやかな味わい。料理の味を引き立てながらも、つい「もう1杯」が止まらなくなる旨さだった。
価格も1升2千円台が中心で、たとえ大吟醸でも手頃な値段なのが嬉しい
家呑み用として、理想的な1本だ。

→山本合名会社
http://www.osake.or.jp/kuramoto/n161.html