なるべく「いい店」で飲みたいと思っている自分だが、毎回そんな店ばかりではなく、オヤジの聖域みたいな大衆居酒屋や、どこの街にもあるようなチェーン居酒屋で飲むこともある。
そんな店が悪いわけではないし、決して嫌いでもない。ただ、このブログで紹介するタイプの店ではないというだけだ。

平凡に見える店でも、思わぬ面白さが隠れていることもある。先日入った店では、特に目立った点はなかったのだが、女将さんのキャラクターが光っていた。

周囲がお盆休みだったこともあって、平日にも関わらずその店はほぼ満席の、てんてこまい状態だった。
店はカウンター10席、小上がりに座卓4つの、計26席。店を切り盛りするのは、女将さんと男性の料理人、若い女の子の3人だ。

お酒の種類も少ないし、料理もごく普通。特に目立つところのない、よくある街の小さな居酒屋だ。
料理担当の男性は、料理はともかく接客は苦手そうな感じ。若い女性も、まだ慣れていない様子で、女将さんのキャラだけが際立っていた。

一言でいうと、下町のおっかさんタイプ。てきぱきしていて、きっちり店を仕切っている。歯に衣着せぬ物言いなのだが、どこか温かみがあって憎めない。男性スタッフにも、お客の酔っ払いにも、言うべきことをピシッと言って、なかなか気持ちがいい。「一本筋が通っている」というのは、こんな性格を言うのだろう。

「ごめんね~、今日はすごい混んじゃってて。いつもこんなに混まないんだけど…」と、調理の手を休めないまま、料理が遅れがちなことを気にしてくれる。「これツマミながら、あと5分待って」と、軽い肴をサービスしてくれたり。

女の子を名前で呼んで遠慮なく叱りつけていたので、最初は女将の娘かと思ったのだが、聞けばまだ入って3日目のバイトの女子大生だった。
その子は、前の2日もたまたま忙しい日に当たってしまい、「これが普通なのかと思ってました」と苦笑していた。女将によると、やることがないほど暇な日もあるらしい。

常連がまた個性的だ。普段は無口なのに、酔うと普段の8倍も喋りまくる男性。70歳は超えていそうなのに、男性の前だとシナを作る婆さん…。
そんな客たちを相手にしながら、女将さんは全然負けていない。
今時は、こういうタイプの女将さんも珍しい。通いつめると、本当の母親みたいに親身になってくれそうだ。

客には年配のオヤジも多いので、酒が入るとバイトの子にセクハラまがいの話を振ってくる輩もいる。思わず固まってしまうような彼女が、女将さんの下でこの先どう鍛えられるか、それもちょっと見ものだ。

居酒屋というのは、色々な楽しみ方がある。
を楽しむ、料理を楽しむというのはもちろんだが、店主や常連客とのお喋りを楽しんだり、店が持っている雰囲気自体を楽しむというのもあるだろう。

テレビドラマにでも出てきそうなこんな店に足を運んで、登場人物の成長ぶりを見守るといった楽しみも、それはそれで面白そうだ。1人で飲みながらそんなことを想像して、思わずニヤニヤしてしまった。