日比谷シャンテの斜向かいに、日比谷パティオというオープンスペースがある。よくミニイベントが実施されたりしているのだが、そこで今「街蔵」というイベントが開催されている。

菊正宗酒造創業350年を記念して行っているもので、神戸にある「菊正宗酒造記念館」から、いくつか歴史的な資料を運んで展示しているほか、菊正宗の「生もと(きもと)」原酒などが試飲できる。

自分も初めて知ったのだが、菊正宗は今月からほとんどの製品を生もと造りにしたそうだ。
「生もと」の「もと」とは、「酉」偏に「元」と書く酒造用語。文字通り、清酒造りで一番最初のベースとなるもので、別名「酒母(しゅぼ)」とも呼ばれる。具体的には、麹に水と蒸し米を加えて醗酵させたものだ。

このもとにはいくつかの種類があり、大きく「生もと系」と「速醸系」の2つに分かれる。
「速醸系」は、約100年前に発明された近代的な製法で、現在の日本酒のほとんどはこちらの方法で造られている。一方、「生もと系」は、古来の伝統的な製法で、労力も時間も多くかかるため、ごく一部の蔵が伝統技術の継承などを目的に造っていることが多い。

両者の違いを一言で言ってしまえば、人工的に乳酸を添加するかどうか。「生もと系」の場合、蔵の空気中に存在する乳酸菌が、自然に乳酸を作り出すのを待つ。「速醸系」は、人工の乳酸を添加して造る。
当然、「速醸系」の方が速く造れるし、品質も安定している。しかし、「生もと系」の自然派とも言える造り方は、コクのある味わいと力強さをもたらし、支持する酒飲みも少なくない。熱燗や熟成といった変化にも強く、味が崩れない。
ちなみに、よく耳にする山廃というのも「生もと系」の一種で、「生もと」のやや簡略版の製法だ。

「上撰」(昔で言う一級酒レベル)以上の清酒を、全てこの「生もと造り」にしたという菊正宗。
しかし、菊正宗は、日本で第6位にランクする大規模な清酒メーカーだ。この手間のかかる方法で大量の酒を安く造れるわけはない。そのあたりを聞いてみると、長年のノウハウで生もと造りの自動化に成功したらしい。ただし、吟醸酒など上位のお酒は手造りだということだ。

自分はこうした大手の酒はあまり飲まないのだが、生もとの生原酒(1日100杯限定)を試してみたところ、思ったほど悪くない。これで上撰だそうだが、1杯200円で量は120mlくらいだ。
このほか、3種類のお酒がセットになった「Aセット」「Bセット」がある。
「Aセット」は、「菊正宗」本醸造・超辛口と、「嘉宝蔵」特撰本醸造、「嘉宝蔵」特別純米がセットになったもの(各60mlくらい)。「Bセット」だと、超辛口の代わりに「樽酒」となる。それぞれセットで300円と、格安だ。

上撰であれなら、本醸造や純米は更に期待できるかと、こちらも試してみたのだが…結果は少々残念。特撰本醸造は山田錦を、特別純米は兵系酒18号を原料米にしているらしいが、米と造りの良さを活かしているとは言い難い。ただ、300円という値段を考えればお得なのは間違いない。

お酒のほか、「酒蔵の酒カレー」や「美人酒風呂」という入浴剤など、お酒以外の商品も販売されている。酒造りのビデオなども流されているので、多少の勉強にもなる。仕事帰りに格安で1杯ひっかけるには、いいスポットだろう。開催は10月9日まで。

→菊正宗 酒ミュージアム「街蔵」
http://www.kikumasamune.co.jp/machigura/