日本酒業界も低迷しているが、ウィスキー業界もかなり厳しい状況が続いている。最近は強いお酒が敬遠される傾向にあるから、度数の高いウィスキーは分が悪い
それが昨年度、前年対比10.6%もの販売増に転じたのは、某メーカーの「ハイボール販促キャンペーン」のたまものだろう。ほとんど死語と化していた「ハイボール」を復活させるとは、けっこう思いきったキャンペーンだ。

だが、ハードなお酒の愛好者も、少ないながら間違いなくいる。最近、イチローズ・モルトを見かける機会が増えてきたのも、潜在需要があるからこそだろう。(イチローズ・モルトは、度数の強い原酒が多い。)
ハードな酒が嫌いじゃないという人に、おすすめのバーボンがある。それが、「ジョージ T スタッグ」だ。

製造は、ケンタッキー州のバッファロー・トレース蒸溜所。1999年6月までは「エンシェント・エイジ蒸溜所」という名前だったと言えば、ご存じの方も大いはずだ。
同蒸溜所の創業は1869年だが、酒造り自体は小規模ながら18世紀末から始めており、実質は220年近い歴史がある。樽熟成には、優に百年を超えるレンガ倉庫も、いまだ現役で使われているという。

アメリカの禁酒法時代でも、薬用として製造を認可されていた数少ない蒸溜所のひとつであり、近年ではイギリスの「ウイスキー・マガジン」誌から「2005年No.1蒸留所」に選ばれている。
昔から「エンシェント・エイジ」や「ブラントン」で評価が高く、自分も20代の頃によく飲んだ。
ここから2002年度以来、ほぼ年1回のペースで限定発売されるプレミアム・バーボンが「ジョージ T スタッグ」だ。

同社の無数にあるバーボン熟成樽の中から、木目の詰んだフレンチ・オーク樽で15年ほど寝かされた、その年最高の1樽が選ばれる。それを、カスク・ストレングス&ノンチルフィルター(濾過も加水もしない原酒)でボトリング。従って、度数はその年により異なるが、ここ5年ほどは70度を超えるものばかりで、2007年物などは72.4度という強烈な度数になっている。

だが、アルコール度数のみならず、その旨さもまた強烈だ。重厚感のある濃厚な味わいで、ほのかな渋みと甘みが心地よい。これまで自分が飲んだバーボンはいいとこ60~70種程度だと思うが、少なくともその中ではベストの味と感じた。ちなみに、飲んだのは2006年物だ。
ただ、なんせウィスキーとして世界最高の度数なだけに、飲みすぎにはくれぐれも気を付けてほしい。(実は自分も、これを飲んで旨さに感激した後の記憶が飛んでいる…。

年にわずか300~400本という超限定品のため、本国アメリカでもなかなかお目にかかれない。日本の価格でボトル2万円前後が相場だが、年度によっていはその倍近い値段が付けられていることもある。
ショット・バーでの価格は、シングル2,000~2,500円といったところ。確かに高価だが、もし見つけたら1回飲んでみる価値はある。参考までに、各年度の度数を挙げておこう。

・2002年/68.8度
・2003年/71.35度
・2004年/65.9度
・2005年/ロットA=65.45度、ロットB=65.9度、秋物=70.6度
・2006年/70.3度
・2007年/72.4度
・2008年/70.9度
・2009年/70.7度

2009年度はまだ発売されたばかりだ。
なお、同蒸溜所の看板商品は、蒸留所と同じ名前のバーボン「バッファロー・トレース」で、こちらも人気が高い。そのほか、「ロックヒル・ファーム」「ハンコックス・リザーブ」「イーグルレア」、ライ・ウィスキーの「サゼラック ライ」や「トーマスHハンディー」、ウォッカの「レイン」…なども作っている。

→バッファロー・トレース蒸溜所(英語)
http://www.buffalotrace.com/