最近、スカイツリーで脚光を浴びている押上に、日本酒好きにはたまらない居酒屋がある。築50年以上の元酒販店を改装して、2010年5月21日にオープンした「酒庵・酔香(すいこう)」だ。

場所は、押上の十間橋通り商店街。 地下鉄・半蔵門線の押上駅からエレベーターでB3出口を出ると近いが、土地カンがないと道に迷いやすい。初めての人は、四ッ目通り沿いのB1かB2出口から出て、押上駅前交差点を右に曲がり、浅草通りをまっすぐ行った方が迷いにくいだろう。2つ目の信号の左側にある十間橋を渡ると、50mほど先の左手に杉玉の下がった軒が見える。駅からは、徒歩8分ほど。

ガラス戸を開けると、カギ型のカウンターに椅子が8席のみ。1段高くなったカウンターの中から、菅原雅信さん・智子さんご夫婦が出迎えてくれる。ご主人が接客と日本酒を、奥さんが調理と焼酎を主に担当する。

正面には現役の柱時計。両側の壁は天井まで酒瓶の陳列棚になっていて、約150種もの四合瓶や小樽が並べられている。棚には、「酒は現金」という金看板も目立っていた(カード不可)。奥の通路の左手にトイレがあり(猫のボードがユーモラス)、その向こうに小さな座敷もあるようだが、そちらは予約専用らしい。店内は禁煙

菅原さんは立命館大を卒業して、日経BP社に約21年勤務していた。『日経レストラン』など2誌の編集長を務め、2009年末に同社を希望退職。かねて念願の日本酒バーをオープンすべく下町を探し歩き、昭和の香り漂うこの店舗(2階は住居)に出会った。

レトロでシンプルな店内だが、実は棚もすべて一旦バラバラにして耐震構造に対応し、真っ白なぐい呑みも飲み心地を考えて作られたオリジナル・デザイン。それでも、あえて手を掛けているように見せないところがだ。

メニューの日本酒は、「冷や向き」「お燗向き」それぞれ20種類ほどずつが掲載されている。壁の棚に並んでいるお酒も注文でき、そのラインナップは一見の価値あり。全国の美味しい銘柄を厳選していながら、遊び心も忘れず、入手困難な限定品もさりげなく置かれている。酒好きなら、棚を眺めているだけでも酔えそうだ

日本酒は一升瓶から5勺のぐい飲みに入れて提供され、種類を問わず値段はすべて1杯400円。お燗に限らず1合での注文もできて、その場合は700円になる。小グラス3種の利き酒セット(1,000円)も好評だ。
好きな日本酒1杯に、肴5品が付くセット(2,000円)も用意されており、最初はこれを頼む人も多い。肴は季節によって変わるが、「いぶりがっこ入りポテトサラダ」と「鶏手羽先と半熟玉子の黒酢煮」は、ほぼ定番化しているようだ。

肴は軽いものがほとんどで、独自の一手間を加えたものが多い。クリームチーズの貴醸酒漬けレーズン和え (500円)、自家製鶏ハム(500円)、自家製くんせい盛り合わせ(鴨・ししゃも・チーズ/600円)、ベビー帆立のアンチョビバター焼き(600円)、馬肉ハンバーグ(700円)…など、お二人の出身地である秋田の食材も目立つ。

食事メニューは稲庭生うどん(600円)くらいだが、隣の海老寿司から出前も取れるとか。食後にはエスプレッソコーヒー(300円)も注文可能だ。

主なお酒や肴の種類、最新情報などはホームページに掲載されている。
早くもメディアの取材が多く、有名店になりつつあるので、予約は必須と思った方がいい。偶然だが、『東京人』の最新号も、この店が表紙を飾っている。(菅原さんが昔、取材したことのある大田和彦さんが、今度は逆に菅原さんを取材しに来たというのが面白かった。)

→日本酒バー 酒庵 酔香
http://www.shuan-suiko.com/