千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2010年09月

元祖ハヤシライスは、やっぱり王道の味。丸の内「M&C Cafe」 (10/9/27)

最近の読者はご存じないかもしれないが、このブログではごくたまにお酒の店以外もご紹介している。多くはカレーかハヤシライスの店なのだが、これは自分が「お酒を飲んだ翌日に食べたくなる料理」だという理由からだ。
ということで、お酒目当ての方には恐縮だが、今日は久々にハヤシライスの店をとり上げたい。

これまで、京橋のモルチェDozen Roses、銀座の煉瓦亭資生堂パーラー、六本木の東京ハヤシライス倶楽部などをご紹介して来たが、今回はハヤシライスの元祖とも言われる「丸善」だ。

一説に、ハヤシライスの考案者と言われているのが、「丸善」の創業者である早矢仕有的(はやし・ゆうてき)だが、実は当の丸善もはっきりと認めていない。
早矢仕有的は元は医師だったが、福沢諭吉の門下生として英語を学び、西洋の医学書を翻訳したりしていた人物だ。やがて横浜に書店「丸屋商社」を開業して、洋書の輸入販売をしているうちに事業が拡大し、そちらが本業になってしまった。これが現在の「丸善」になる。

「丸善」は1952年に、戦災で焼けた日本橋の本社屋を新築し、2年後に屋上でレストランを開業した。そこで昔、有的が発案して栄養失調の患者や周囲の人たちに振舞っていた料理を、「早矢仕ライス」と名付けて提供したのが、そもそもの発祥と言われている。
一方、有的が通っていた神田の洋食屋「三河屋」で出していた「ハッシュ・ビーフ」が人気で、それをライスと合わせて出しただけという主張もある。「発祥の店」については、ほかにもいくつかの説があるようだ。

真偽のほどは定かではないが、いずれにせよ丸善では当時からずっと「早矢仕ライス」を看板料理にしている。
本店は2004年9月14日、再開発のため丸の内「OAZO」へ移転し、日本橋の社屋はその後、2007年3月9日に「日本橋店」として生まれ変わった
現在、「丸善」の丸の内本店では、4階の「M&C Cafe」で「早矢仕ライス」が食べられる。厳密には「丸善」の経営ではないため、味やサービスがどの程度継承されているのか不明だが、とりあえずは「元祖」に敬意を表して食べてみた。

場所は、東京駅の丸の内駅前北側の線路沿い。OAZOに入っている「丸善」のエスカレーターを4階まで上がると、正面に「M&C Cafe」がある。
もちろん、メニューはハヤシライス以外にも色々あるのだが、やはりこれが一番人気。現在、スタンダードな「早矢仕ライス」(1,000円)以外に、「早矢仕andカレー二色盛り」( 1,150円 )、「早矢仕オムライス」(1,200円)、「サーロインステーキ早矢仕ライス」(1,800円 )…など、いくつかのバリエーションがある。

自分が食べてみたのは、「カマンベールチーズ早矢仕ライス」(1,300円)。「プレミアム早矢士ライス」というのもあるが、具の量が多いだけという噂を聞いたので、二の足を踏んでしまった…
ラグビーボール型のご飯にデミグラスソース、それに白カビ部分も付いたものと、ソフトな内側部分だけのカマンベールチーズ2切れが添えられていた。

ハヤシライス自体は、値段相応の美味しさがある。やや甘酸っぱいソースは万人受けしそうで、ハヤシライスの王道といった感じ。
軽すぎず重すぎずというボリューム感や、熱々でないところも自分には有り難かった。女性や年配のお客も多いところに配慮したのかもしれないが、逆に食欲旺盛な男性などには物足りないかもしれない。
付け合わせもないシンプルな一皿だが、正直言ってカマンベールチーズとの相性は今ひとつ。「ボンディ」のカレーのように、ソースのコクを増すためのチーズかと期待したのだが、そこまで一体化したものではなかった。これなら野菜の早矢仕ライスの方が自分の好みったかも…

店はキレイだし、書店の一角ということもあって落ち着いた雰囲気だ。窓際の席だと、目の前が線路と八重洲ビル群という眺めもなかなか。午後のひと時をゆったり過ごすには、おすすめの店と言えるだろう。

→ぐるなび/M&C Cafe 丸の内店
http://r.gnavi.co.jp/a186425/

噂にたがわぬコストパフォーマンス!下高井戸「まきたや」 (10/9/21)

下高井戸で酒が旨い居酒屋と言うと「おふろ」が有名だが、ほかにも魅力的な店がちらほらある。ワインで「おふろ」に勝つのは難しいが、こと日本酒なら、すぐ先にある「まきたや」が断然おすすめだ。

場所は、京王線・下高井戸駅の西口を出て、日大通りの商店街を左へ直進し、「おふろ」と松沢小学校を通り過ぎると、人気居酒屋「たつみ」の隣にある。黒い格子の外観が目印だ。

入ると、右手にカギ型のカウンター12席、左手に4人と2人用テーブルが各1卓、その奥の小上がりに座卓が2つある。
ここは、経堂の「らかん亭」で店長を務めていた牧田佳丈さんが、独立して2008年10月10日にオープンした店。スタッフは牧田さんを含めて4名だ。

日本酒は20種ほどで、すべて日替わり。価格は隣の「たつみ」の方が少し安いかもしれないが、銘柄の素晴らしさでは追随を許さない。
グラス1杯140~150mlくらいの量で、価格は600円前後だ。半分の量の小グラスも選べて、価格もレギュラーサイズのぴったり半額になる。

訪れた日のラインナップをレギュラーサイズ価格で紹介しよう。
やや安めのものでは、武勇・本醸造が540円。GOZENSHU 9 NINE・純米夏生、早春・純吟生、焚火・特別純米、立山・純米が580円。
やや高めのものでは、大那・純吟、宗玄・純米八反錦無濾過生原酒が640円。龍力・特別純米無濾過生、日置桜・特別純米生、悦凱陣・純米オオセト無濾過生、墨廼江・純吟中垂れ、まんさくの花・純吟生原酒が680円。
ほかは全て600円で、・純吟、華鳩・純吟生、不動・純吟無濾過生、大倉・純吟直汲み無濾過生、月の輪・特別純米生、石鎚・純吟、鶴齢・純米山田錦、・純吟があった。

相当な地酒好きでも、このラインナップがこの価格で飲めるなら、まず文句は出ないだろう。また、たとえ生酒だろうが吟醸酒だろうが、頼めばすべて徳利で湯煎してくれる。

焼酎は、森伊蔵、佐藤佐藤・黒、一尚、農家の嫁、富乃宝山、吉兆宝山の6種類(550~680円)、梅酒も7種類が揃っている。ただし、サワー系はレモンサワーとウーロンハイ程度なので、飲まない客は「ゴメンナサイ」という感じだ。

肴は鮮魚系がともかく美味しく、しかもお手頃。カウンターには、氷と保冷剤で冷やすタイプの、魚が乾きにくい木製保冷庫が備えられている。
骨せんべい(200円)からあわび蒸し(980円)まで、料理は50~60種あり、こちらもほとんどが日替わりだ。中心価格帯は580円くらい。刺身、焼き、揚げ、煮物とバリエーションも豊富で、ボリュームも充分。安くておいしい「なめろう」は特に人気がある。刺盛も、二点盛(580円)、三点盛(830円)、四点盛(1,200円)、五点盛(1,500円)とさまざまなサイズが揃っている。

魚に比べると珍味系や肉・野菜料理が手薄な感もあるが、日本酒にはやはり魚が一番合うと思うので、個人的には全く不満はない。内容を見れば、価格的にもかなり満足できるはずだ。
京王線沿線に足を延ばす機会があれば、途中下車してでも立ち寄る価値のある店だと思う。ブログが毎日更新されているのも嬉しい。

→酒と魚と今日のまきたや
http://ameblo.jp/makitaya/

こんなところに本格派のショットバーが…!浦和「SAKAMOTO」 (10/9/13)

駅前通りから1本入った路地裏で、ひっそりと営業しているショットバー。こういう店は、当たりかハズレか、はっきり二つに分かれるものだ。浦和の「AUTHENTIC BAR SAKAMOTO」は、貴重な当たりの店

場所は、浦和駅西口を出て、県庁通りを300mほど直進し、ファミリーマートさいたま高砂店の角を左折すると、右側4軒目にある。
扉を開けると、リビングルームのように落ち着いたフロアにテーブルが4つ。1段高くなった奥に7席ほどのカウンターがある。

オーナー・バーテンダーの坂本俊之さんは、高輪プリンスホテルでバーテンダーとしてのキャリアをスタートした。10年を過ぎる頃には、カクテルコンテストで3回の入賞、3回の優勝を果たすまでに腕を上げる。
飲料部門の責任者になっていた2000年、勤続20年を機に同ホテルを退職。中学の同級生だった奥様と、2人の地元である浦和にこの店をオープンした。今年でちょうど開店10年目を迎える。

決して広い店ではないが、この立地なら十分だろう。お酒の品揃えも、その名の通りオーセンティックながら、ワインや焼酎などもいくつか置かれており、様々なニーズに応えるだけの幅広さは備えているようだ。

バーとしては、決して種類が多い方ではないものの、セレクトはなかなかいい。グラスでいただいたワインも美味しかったし、「ピートが利いている癖の強いシングルモルト」とリクエストして出してもらった「ラフロイグ・クォーターカスク」(通常より小さい樽で寝かせることで熟成を促進したもの)も、ドンピシャだった。

カクテルやウィスキーは1杯1,000円くらいから。ザ・マッカラン12年で1,260円 、17年で1,680円だ。テーブルチャージは一人950円(お通し込み)と、浦和にしてはちょっと高め。
フードメニューも大体1,000円~1,500円くらいが中心。バーなので、軽いものが中心だが、フライやピザなども用意されている。

カクテルはもちろんだが、料理も美味しいので、バーとしては使い勝手がいい。洋酒好きが集まる少人数の飲み会に使われることもあるようだ。
奥様がいることで、普通のバーよりアットホームな雰囲気があるのも、このエリアには合っている。

駅前通りの賑わいからちょっと離れた路地裏で、こういう落ち着いたバーを知っていると、一目置かれそうだ。
余談だが、成美堂出版から発売されている『カクテル大事典800』には、ほかの2人のバーテンダーと共に坂本さんの作ったカクテルが写真に使われている。

→AUTHENTIC BAR SAKAMOTO
http://bar-navi.suntory.co.jp/shop/0488234039/index.html


居酒屋価格でこの美味しさはお値打ち!恵比寿「KIRAZ」 (10/9/4)

スペイン料理に日本酒というのは、一見まったく合いそうにない組み合わせに思える。自分も、実際に食べるまでは半信半疑だったのだが、これが全然違和感がないのに驚かされた。「和酒バル」を名乗るその店は、恵比寿と目黒の間の路地裏にある「KIRAZ」(きらず)だ。

「きらず」というのは、おからの別名。料理を作る際、切らずにそのまま使えることから付いたそうで、漢字では「雪花菜」と書くそうだ。店では、お客との縁を切らないといった意味も込めているらしい。

開店は2010年7月1日なので、約2ヶ月前。店主は、徳島の三芳菊酒造の蔵元馬宮亮一郎さんの妹・加奈さんだ。
以前、加奈さんは食の情報会社にいたこともあって、地方の優れた小規模生産者やメーカーに詳しい。現在は、「四国の地産と文化を伝える会 FourLinks」の代表も務めている。
そのネットワークを活かして食材を仕入れ、日本酒と欧州料理のマリアージュを提案し続けている。
「KIRAZ」も、店内で発酵食品などの食材を販売しており、夜18時半から「和酒バル」がオープンするシステムだ。

場所は、恵比寿と目黒のちょうど中間あたり。日の丸自動車学校裏の路地を入った住宅街にある。かなり分かりにくい場所なので、店のホームページで地図を確認した方がいい。駅からは歩いて10分も見ておけば充分だろう。

店は、和洋折衷といったインテリア。入口の硝子戸を引いて入ると、右側に4人用テーブルが2卓あり、その奥が厨房。左側は、食材販売用の棚の前に2人用のテーブルと、3人用の低いテーブルが置かれている。

ドリンクは、三芳菊を中心とした日本酒(400円~)が20種ほどと、梅酒(600円)、10種類ほどの日本酒カクテル(1,200円)、あとは「ヱビスビール」。それ以外は無いという潔さだ。
「三芳菊」という銘柄は、香り芳しく、色淡く、味美しい、という3つの意味を込めて付けられたお酒だと言われる。

自分は、この「三芳菊」雄町の純米吟醸・亀口直汲み無濾過生原酒をいただいたのだが…名にし負う圧倒的な香りの素晴らしさに驚かされた。口元に近付けただけで、バナナかメロンのような甘い香りがする。もともと吟醸酒には「吟醸香」と呼ばれるフルーツのような香りがあるものだが、ここまで華やかで香り高いものは珍しい。日本酒をあまり飲み慣れていない女性なら、リキュールと勘違いしてしまうのではないだろうか。

ほかには、三光正宗「克正」山廃純米・雄町・無濾過生原酒、小布施ワイナリー「ソガペールエフィスJ1」、「屋守」夏の直汲み純米中取り無調整生 、「一白水成」ささにごり、「豊賀」直汲み特別純米、「而今」特別純米・五百万石・九号酵母・無濾過生原酒、「陸奥八仙」華想い・純米大吟醸…などがあった。種類こそ多くはないが、垂涎のラインナップだ。

こうした美酒ばかりを揃えていながら、価格はワイングラス1杯(約120ml)で400円ほどというのは、信じがたい暴挙。安いのはお酒だけではなく、料理も同様だ。お通しといったものもない。
ここのメニューには、ドリンクも料理も一切価格が書かれていないのが欠点なのだが(変動するためらしい)、安いものばかりなので安心して頼める。

スペイン料理と言ってはいるが、それほどスペインらしさが濃厚なわけではない。メニューはホームページに掲載されているので、そちらをご覧いただくとして、自分はお一人様限定の「ワンプレート:M」(1,500円)をまず頼んでみた。生ハム、サルシッチャ、オリーヴ、ベビーリーフサラダ、サーモンディップといった、前菜の盛合せだ。よくあるオードブルではあるが、丁寧に作られていて美味しい。ほかに料理1品と、日本酒を4杯飲んで、お勘定は3,500円!このコストパフォーマンスには唖然としてしまった。

明日5日(日)は、19:15からウッドベースのライブを行うらしい(定員10名)。折りしも目黒の「さんま祭り」の日だから、さんまの後に、スペイン料理と日本酒とウッドベースというのも、かなりユニークな体験になるかもしれない。

■和酒バル KIRAZ
http://www.kirazu.net

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