千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2010年08月

年に1回、お勘定おまかせの日!銀座「ちゃぼうず」 (10/8/30)

居酒屋も場所が銀座だと、少々高くつくのが普通だ。銀座一丁目にある、ちょっと隠れ家っぽい居酒屋ちゃぼうず」もその例に漏れないが、ここにはユニークな魅力がある。

場所は、プランタン銀座の裏の道を1丁目へと歩き、「升本」の2軒先のビルの2階。入ると正面が8席のカウンターで、その奥に4人用テーブルが2卓。一見、狭い店に見えるが、実は階段の右側にあたるスペースがすべて座敷になっている。普通の座卓と掘り炬燵式の席とがあり、席数は約40席。

この店がユニークなのは、まず銀座でありながらカップ酒が主体だということ。30種類ほどあって、価格はすべて980円均一のようだ。カップ酒にしては高めだが、銘柄は厳選されている。
訪れた日にあった銘柄は、男山・生もと純米、飛良泉・山廃本醸造、若戎・純米忍者カップ、御代桜・パンダカップ、酒呑童子・辛口本醸造、西の関・純米、久寿玉・純米、秋鹿・純米酒「千秋」バンビカップ、越後鶴亀・純米、天明・純米生、大山・特別純米、鍋島・特別純米、正雪・純米、・特別純米、万齢・純米、乾坤一・純米、開春・超辛口純米、鷹来屋・特別純米、澤屋まつもと・純米、日高見・純米、るみ子の酒・純米、羽陽一献・山廃特別純米、磐城寿・純米、国権・純米、来福・純米、南部美人・特別純米、初亀・純米、佐久の花・純米、篠峯・純米。

カップ酒を主体にしたのは、狭い店内に多くの日本酒を保管するためだ。場所を取らず、開栓後の味を心配する必要もない。店ではカップ酒のスタンプラリーもやっているらしい。
メニューに×印がついているものは品切れで、訪れた日は菊姫、南、村佑など9種類が品切れだった。

カップ酒以外の地酒では、越の柏露・特別本醸造と、黒帯・特別純米(各680円)の2種類がある。ほかに日替わりで上質の日本酒を入れていて、訪れた日は獺祭・純米大吟醸50(980円)があった。日本酒は、鉢のように大ぶりの片口に、たっぷり1合出される。

オープンは2004年9月。社長以下、スタッフは30歳前後が多いようだ。現店長は、あごひげが特徴的な槇尾敦矢さん。日本酒の仕入れは彼のセンスで決められる。ほかに、ホール2名、カウンター内に2名いた。

日本酒以外も、限られた種類ながら、なかなかこだわったセレクトをしていて、ビールはエビス樽生(580円) 、サッポロラガー赤星(580円)、ギネス(700円)の3種類。焼酎(480~780円)は十数種類あった。

料理も質で勝負している感じで、大体580円~880円くらいが中心だ。日替わりメニューも多く、手書きコピーで卓上に置かれている。岩ガキの海水ジュレ添え(1個680円)、インド鮪とアボカドのタルタル仕立て(780円)などを頼んでみたが、ビストロと見紛うような味と見た目で、並の居酒屋より明らかに上だ。

サービス面でもソツがない。空いた皿は速やかに片付けたり、チェイサーがなくなれば素早く注いでくれたりと、いろいろ気配りしてくれる。常に笑顔を絶やさず、1人客だった自分にも忙しい合間を縫って話しかけてくれたり。

訪れた日は、たまたま焼酎オール500円の日。ほかにも日本酒が安い日やワインが安い日など、月に何回もイベントがある。
特に、9月6日(月)は開店6周年記念で、マグロの解体ショーなどのほか、恒例の「お恵み企画」を実施する。勘定はお客が払いたいだけ置いていってくれればいい、という思い切った企画だ。既に満席かもしれないが、問い合わせてみる価値はありそうだ。

姉妹店として、09年6月に「串揚げx鉄板焼き ちゃぼうず」が、10年6月に「串揚げx立ち飲み ちゃぼうず」が同じく銀座にオープンしている。

→酒菜庵 ちゃぼうず
http://www.nakazato-c.com/

蕎麦には日本酒、燗ならなお良し!伊奈「蕎麦きり さいとう」 (10/8/23)

自宅からほど近い伊奈町に、旨い日本酒が飲める蕎麦屋があると聞いて、足を延ばしてみた。
ニューシャトル・伊奈中央駅を降り、高架下を横切る道を左に進むと、「伊奈中央駅入口」交差点の右手前にあるコンクリート打ちっぱなしの店が、「蕎麦きり さいとう」だ。

外観も内装も、一見カフェかレストランのよう。中に入るとすぐ目の前に、8人掛けのテーブルが、右手に4人用のテーブルがある。正面奥が厨房になっており、蕎麦を打つスペースはガラス張り。横には石臼も置かれている。
左側は小上がりになっていて、4人用の座卓が2卓。向かいの棚には、蕎麦や日本酒の書籍類と、色紙3枚(漫画『そばもん』の山本おさむ氏、『夏子の酒』『蔵人』の尾瀬あきら氏、造り酒屋の四男でもある俳優の笹野高史氏)が飾られている。
フロアでは、女性と若い男性がサービスを担当していた。

この店は、元々「純手打そば一茶」として、もっと蓮田寄りの場所で23年間も営業していたそうだ。それを二代目の齋藤健司さんが継いで、2004年7月に現在の場所に移転した。
以前の店名からは、砂場、藪、更科に次ぐ蕎麦屋の老舗として名高い一茶庵系の店と推測されるが、確かめたわけではない。
蕎麦は石臼で自家製粉し、そば粉10に対して小麦粉2を混ぜた「外二」が中心だ。小麦粉を加えずに水だけで打った十割蕎麦も用意されている。

日本酒は純米酒のみで、すべて1合650円。定番は、辨天娘(べんてんむすめ)、神亀「ひこ孫」3年熟成、生もとのどぶ、小笹屋竹鶴・純米原酒というヘビー級の4銘柄。これに月替わりの「今月のお酒」が加わり、8月は旭菊の「綾花」となっている。
しっかりとした手応えがあって燗上りする酒の代表格ばかりで、お燗で飲んでほしいという齋藤さんの意図がありあり。「黒龍」や「十四代」といったすっきり系の酒が飲みたい人は、ほかの店に行ってくれという硬骨漢だ。冷やで頼んでも、日本酒は片口と杯(さかずき)で提供される。

蕎麦メニューはホームページで確認できるが、かけそば、せいろ(各650円)から穴子天付かけ(1,400円)まで16種類ほどがあり、全てのメニューは、100円増しで十割蕎麦にできる。
丼物は、天丼(800円)と上天丼(1,300円)の2種類、ほかに焼き味噌(300円)、鶏皮の味噌煮込み(600円)、玉子焼き(700円)、合鴨ロース(750円)、穴子の白焼き(800円)…といったおつまみが11種類ある。

自分は特に蕎麦っ喰いというわけではないが、この値段なら充分に納得できる美味しさだ。もり汁はかなり辛め。蕎麦は意外とボリュームがあるので、おつまみを幾つもつまんでしまうと、種物の蕎麦はきつくなるかもしれない。ランチはご飯物とのセットが4種類(900円~1,100円)ある。

店では2~3ヶ月に1回のペースで「十割蕎麦と純米酒を楽しむ会」を催しており、これがかなり魅力的だ(会費5,000円)。
第1回(09/7/20)のゲストは、「睡龍」久保本家の加藤克則杜氏と、大宮の純米酒専門店・池田屋酒店の池上徹氏。
第2回(09/10/18)のゲストは、「辨天娘」太田酒造場の太田義人社長と、浦和在住の漫画家・尾瀬あきら氏。
前回(10/7/10)のゲストは、神亀酒造の名物専務・小川原良征氏…という豪華さ。日本酒の仕込み時期である冬場はゲストなしだが、地酒ファンには気になるイベントだ。

→蕎麦きり さいとう
http://www.soba-kiri.com/

名物女将が揃える旨い酒と魚。木場「寿し炉端 つちや」 (10/8/17)

特別際立ったものがなくても、美味しいものが手頃な価格で楽しめて、気のいい女将のいる飲み屋が近所にあれば、通ってみたくなるのが人情だ。木場にある「寿し炉端 つちや」は、そんな普段使いにぴったりな店。

場所は、木場駅の1番出口を出て沢海橋を渡り、東陽町方面に進んでローソンの角を左に曲がった左角。店の間口は広くないのだが、1階から4階まであるので意外に人数は入る。

見た目は、下町の小料理屋といった感じだ。今年3月で20年を迎えたらしい。
1階は7席ほどのカウンターとテーブル2卓のフロアで、2階から4階は各2室ずつの座敷になっている。2階が12名+24名、3階が12名+32名、4階はカラオケ付きで12名+20名まで対応する。

1階のカウンターでは、板さん2~3人が刺身や寿司の調理にあたり、奥の厨房で火を使う調理をする。店内は下町らしい気の置けない雰囲気で、それなりの年季も感じさせる。切り絵風にデザインされた和紙で覆われた照明なども程良い暗さでいい感じ。BGMはジャズだが、これもけっこうマッチしている。
お客には常連さんが多く、一見して50~60歳代の男性が目立つ。これは、フロアを仕切っている女将の佐藤ユキミさんの人気もありそう。さしずめ年配男性のマドンナといったところだ。

店先の黒板には「とりあえず晩酌セット」が紹介されている。グラス1杯の生ビールに、日替わりの小鉢1~2品が付いて500円。お通し代わりと言えそうだが、これは確かにお得だ。自分は小鉢にまぐろブツ1品を選んだが、もっと軽いツマミなら2品付けることができる。

日本酒は、本醸造を中心とした定番(630円~893円)もあるが、注目すべきは女将がピックアップしている日替わり地酒の方だ。女将は日本酒や焼酎について勉強熱心で、常に美味しくて手頃な銘柄を探すことに余念がない。
新しく仕入れて来た銘柄は「女将のブログ」で報告されるが、かなりっぽい銘柄を入れてくれるので、酒好きにはたまらない
注いでくれる量もサービス充分。グラスを入れた1合升からも溢れるくらいなので、別にグラスを置くための皿まで用意してくれる。

訪れた日にあったのは、立山(580円)、千代菊・純米(600円)、加賀鳶・辛口純米(630円)、李白・特別純米(650円)、諏訪泉・純米(650円)、能鷹・特別純米(650円)、群馬泉・山廃特別純米(650円)、会津娘・芳醇特別純米(680円)、奈良萬・無濾過純米(680円)、佐久の花・純米吟醸無濾過生原酒(650円)、七田・雄町純米生(680円)、鶴齢・山廃純米(680円)、萩錦・蔵直純米吟醸(800円)、八海山・吟醸(893円)といった銘柄。

料理は、「寿し炉端」とあるように寿司と炉端焼きをメインにしているのだが、居酒屋で見かける定番料理はほとんどあって、しかも全体的に安めだ。
冷奴(399円)、まぐろぶつ(525円)、焼鳥各種(158円~)、カニクリームコロッケ(473円)、肉じゃが(504円) 、カキフライ(525円)、豚の角煮(578円)、MIXピザ(840円)、 茶漬け(のり・鮭・梅各420円)、ざるそば(420円)…など本当に多彩。にぎりや巻物は、1貫158~630円までネタによって色々だ。

お客のほとんどは毎日築地から入る旬の魚介類が目当てで、正直言って炉端焼きの方は分が悪い。この値段でこの内容なら、毎週通いつめる常連が多いのもうなずける。
「女将のブログ」も、女将の人柄をかいま見ることができて好印象だ。

→ぐるなび/寿し炉端 つちや
http://r.gnavi.co.jp/tsuchiya/

→女将のブログ
http://blogs.dion.ne.jp/misora/

すべての酒が大吟醸生酒!東十条「吟醸酒房 暖」 (10/8/10)

極上の日本酒に取りつかれている店と言えば、神楽坂の「酒 たまねぎや」や、東中野の「大政小政」が思い浮かぶが、この店も間違いなくその系列に入る。上記2店に比べると、ご夫婦でやっている分、頑固親父は少し低いようだ。店は、東十条にある「吟醸酒房 暖」。

JR東十条駅北口を出て、右側(東十条3~6丁目方面)へ降り、東十条商店街を直進、信号を2つ越えてソフトバンクの角を右折すると、最初の左側の角にある。駅からは歩いて7分ほどだ。
商店街から1本入っただけで、静かな住宅街といった趣になり、店も目立たない。知っている人以外はなかなか暖簾をくぐらないだろうことは容易に想像できる。

店内は、カウンター8席、4~6人用の座敷が2卓とテーブル1卓。半月盆が敷かれたカウンターは和風で、すぐ内側が真菜板になっている。脇の氷の上に敷かれた新鮮な魚を目の前で捌いて出してくれるのだ。
壁には、50種以上のぐい飲みが升目状にレイアウトされた棚や、「開運」の樽の菰(こも)などが飾られている。座敷は襖で仕切ることも可能だ。

ご主人は酒匠の資格(きき酒師の上位資格)を持つ、筋金入りの日本酒マニアだ。2009年7月16日に他界された日本三大杜氏の1人、波瀬正吉氏が自らの名を冠した、「波瀬正吉」とい大吟醸酒があるのだが、この生酒が17年前のものからズラ~ッと冷蔵庫に揃っているのを目にした時は、クラクラした

日本酒は20種類ほどあり、すべて蔵元直送大吟醸生酒ばかりという稀有な店だ。120mlグラスで1,600~2,500円という値段がほとんどなので、決して安くはないが、ハーフ(半額)で注文することもできる。最高の日本酒を楽しみたいなら、まずハズレがない店と言える。

生ビール(800円)は「ザ・プレミアム・モルツ」で、その他ベルギービールなど(1,000円~)も豊富に揃えられている。焼酎系も、十年古酒泡盛(1,050円)など、逸品が揃えられているようだ。

この酒に見合う料理を提供するのは容易ではないが、もちろんその点でも裏切らない。旬の魚介類をはじめ、人気の高いおでん(200円~)、 有機大豆の手造り豆腐(630円)、くじら料理(各種1,680円) など、多彩な美味が楽しめる。
おすすめは、大吟醸酒ハーフ2杯とお造りなど料理3品がセットになった4,200円のおまかせコースだ。内容の割に手頃な値段で、これだけでけっこう満足できる。足りなければ、これに追加していけばいい。

不定期のようだが、土曜日にメチャクチャお得な「飲み放題」の会も開催している。儲け度外視のプランなので、関心のある人は1度お店に伺って、次回の開催予定を確認してみるといいだろう。

→サントリーグルメガイド/吟醸酒房 暖
http://gourmet.suntory.co.jp/shop/0339278483/index.html

ネオンを尻目に焼酎三昧、渋谷「酒蔵 三」 (10/8/2)

若者であふれる渋谷にも、渋い大衆居酒屋はまだ残っている。特に焼酎党におすすめしたい店が、「酒蔵 三」だ。
この店は、昔ご紹介した、新橋ガード下の「串揚げ屋 三」の姉妹店。

場所は、道玄坂から百軒店商店街に入り、最初の角を左折したすぐ左側。風俗店やラブホテルも建ち並ぶディープなエリアだ。
余談だが、角を左折せずに直進すると、1926年開店の名曲喫茶「ライオン」や、1969年開店のロック喫茶&ライブ「B.Y.G」など、極めつけの老舗が軒を連ねる路地となる。特に「ライオン」の骨董化した店舗と、建築物と言えそうなほどの超巨大スピーカーは、もはや渋谷の文化財だろう。
路地の突き当たりには、こちらも昔に紹介したタナカクマキチ TOKYOがある。

「酒蔵 三」も、店舗こそ新しくなったが、昔ながらの大衆居酒屋の雰囲気をしっかり残している店だ。
この季節は、しばしば入口が開けっ放しにされている。各テーブルには団扇が備えてあるので、夏場はこれで煽ぎながら飲むという寸法だ。

店は狭く、おまけにかなり雑然としている。入ると、正面にほぼ1人用の小テーブルが2卓。左側にトイレとカウンターと厨房。ただし、カウンターは荷物置場と化している。右奥に4人用のテーブルが4卓ある程度。
壁はほとんど全て天井まで、メニューの短冊で埋め尽くされている。その相当数を焼酎が占めており、50種類くらいはありそう。銘柄は店のホームページに列挙されているので、そちらを参照されたい。(多少変動あり)

人気が高いのは、おすすめタップリ焼酎の二階堂(400円)や、一番搾りの生ビール大ジョッキ(500cc・490円)。この店の売りは、ケチケチしない気前の良さにあって、お酒はどれも量がたっぷり、アルコール分もたっぷり。酩酊一直線のノンべエが喜びそうだが、お酒に弱い人は要注意だ。(梅酒でも40度とかあるらしい。)

日本酒は10種類ほど。純米酒が4銘柄しかないのが残念だが、それなりに旨い酒をピックアップしている。こちらも優に1杯1合はあるだろう。銘柄は、鶴齢・特別純米(800円)、 浦霞・純米(800円)、吟醸・縄文能代(900円)、菊姫・にごり酒(600円)、本醸造酒で霊峰月山(600円)、 緑川(600円)、八海山(700円)、雪中梅(800円)、普通酒で立山(600円)といったところ。臨時入荷のお酒は店内に貼り出される。

はけっこうユニークだ。特にお通し(380円)が変わっていて、訪れた日は焼き魚1尾がポンと出てきた。
定番メニューは壁の短冊で確認し、その日のおススメメニューはホワイトボードで確認する。素朴な家庭料理といったメニューが多いが、それだけにハマってしまうお客も多いらしい。夏でも食べられる「和牛スジ煮込豆腐鍋」(580円)は人気メニュー。

価格は400~500円台が多いが、馬刺し(900円)などはちょっと高めだ。
ご飯物はないのだが、食べ応えのあるメニューはしっかり揃っているので、たぶん不満はないだろう。この料理に惹かれて、意外に女性客も来るそうだ。

渋谷のオシャレな店や軽薄な店に辟易したら、こういう渋い店で焼酎やホッピーを飲むのもホッとする。もっとも店が狭いので、入れるかどうか保証できないのが難点だが…

→酒蔵 三
http://www.hyakkendana.jp/shops_030.html

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