千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2009年12月

今年、残念だった店 (09/12/30)

早いもので、もう新年を迎える。
今年も、恒例の「今年残念だった店」の話題で締めることにしたい。

例年のように、訪れた店で紹介できなかった店は今年もたくさんある。その中で、今回は八重洲「水喜」を挙げたい。
この店は、川崎や築地の魚市場で仲卸をしている(株)水祥の直営店。従って、当然魚が売りだ。

場所は、東京駅の八重洲地下街の16出口(神田寄り)から出てすぐと、すこぶる便利。地下の店だが、内装もちょっとオシャレで、女性にも受けそう。日本酒や焼酎の品揃えも、常時80種以上と豊富だ。
メニューでは一見安めに見える価格だが、1杯の量がグラスで100mlくらいなので、実際は少し割高。立地を考えればやむを得ない面もあるし、純米酒中心の豊富なカップ酒(840円均一)を選ぶ手もあるので、この点は大目に見たいと思う。

お燗をつけてもらえる日本酒が1~2種類に限られているが、そういう店は珍しくないので、これも許容範囲。問題だったのは、メニューに黒龍の「九頭竜」がありながら、これをお燗にできないことだ。

九頭竜」 は、黒龍酒造が最高の燗酒を目指して造り上げた吟醸酒だ。通常の吟醸酒は冷やで飲んだ方が美味しいが、燗上がりする吟醸酒もある。特に「九頭竜」の場合、お燗以外では提供しないという店も珍しくないのに、ここではお燗にできない…!

もしかすると、この店は酒屋が勧める日本酒を仕入れているだけで、スタッフは日本酒を知らないのではないだろうか?せっかく旨い酒をたくさん揃えていても、適した提供の仕方を知らないのでは魅力も半減だ。
燗酒に関心のない人にとっては、どうでもいいことかもしれないが、自分の売っている商品に対してしっかりした知識を持たないのなら、せめて価格を格安にするくらいの謙虚さがあるべきだと思う。

→ぐるなび「水喜」
http://r.gnavi.co.jp/a480300/

お燗つながりでもう1店、本来の意味での残念な店を挙げたい。
自分が密かに東京三大燗付け名人の1人に挙げていた今悟さんの店「善知鳥(うとう)」が、26日(土)の営業をもって閉店した。「善知鳥」は、店主の出身である青森を象徴する鳥の名であると同時に、あの「田酒」の蔵が醸す大吟醸酒の銘柄でもある。

建築設計士から転職して99年に店を開いた今さんは、その燗付けの見事さでたちまち業界にその名を知られることになった。日本酒専門居酒屋という的を絞った営業スタイルながら、酒の旨さを最大限に引き出す腕に魅せられた客が、夜ごと阿佐ヶ谷に集ったものだ。その技術は、グルメ雑誌などで紹介されることもしばしば。閉店の理由は定かではないが、本当に残念だ。
新しい店をもう少し都心寄りにオープンしてくれることを、2010年の年頭に願いたい!

→善知鳥
http://utou.sblo.jp/

川口で地酒と魚がうまい店「どうどう」 (09/12/24)

荒川を隔てて東京都に接する川口は、近年高層マンションが次々と建ち、人口は50万人を超える。3月にも、川口駅から徒歩4分の場所に、31階建ての「イーストゲートタワー川口」が竣工する予定だ。
その予定地のすぐ手前に、地酒を備えた居酒屋がある。その名も「魚すこぶる 酒すこぶる どうどう」。

場所は、JR川口駅東口の駅前デッキを、正面の「キャスティ」右手の階段から降りて六間通りを直進。1つ目の信号を右折して、最初の左角にあるビルの1階だ。

木の引戸を開けると、右側に8席ほどのカウンター、左側に4人用テーブルが2卓、突き当たりに小上がりがある。小上がりは掘りごたつ式で、半個室(2~15名)や完全個室(35~50名)として使うことが可能だ。総席数は60席ある。
田舎家風のインテリアだが、程よく抑えられた照明と、BGMのJazzが快適で、並の居酒屋よりは雰囲気はいい。

日本酒は小皿を敷いたグラスで提供される。量はおそらく一合強というところ。
地酒は、「本醸造」「純米」「吟醸、純米吟醸」と、3つに分けてメニューに掲載されている。

「本醸造」は全て580円だが、八海山の普通酒も含まれているので、「本醸造以下」と考えるべき。銘柄は、八海山、雪中梅、上喜元・辛口本醸、天狗舞「天たか」、浦霞・本仕込、三千盛、酔鯨・特別本醸造の7種類。

「純米」は、580円、680円、780円の3段階がある。580円は、・濃醇辛口80と、一ノ蔵・特別純米超辛口。680円は、鳳凰美田「剱」、乾坤一・特別純米辛口、田酒・特別純米、越乃景虎「名水仕込」特別純米、鷹勇・特別純米。(鷹勇はメニューの「純米吟醸」に記載されているが、50%精米とは言え正しくは特別純米。)780円が、菊姫・山廃純米と神亀・純米辛口の2つだ。

吟醸酒は、車坂「魚に合う吟醸酒」(580円)と、出羽桜「桜花吟醸酒」(680円)、黒龍・吟醸「いっちょらい」(680円)の3種。純米吟醸酒はすべて780円で、「ときしらず」、喜楽長・辛口純米吟醸、醸し人九平次「件の山田」の3種だ。

これらと別に、「喜楽長」の喜多酒造製のオリジナル銘柄「どうどうの樽酒」(680円)と、熱燗用の「東北泉・辛口本醸造(480円)もある。お燗はお願いすればどの銘柄でもつけてもらえるようだ。
ちなみに、焼酎・泡盛も36種類を数える。

料理は定番メニューと日替わりメニューが半々。毎日築地より鮮魚を仕入れているということで、魚が売りだ。
お刺身は10点盛(値段は季節による。先週は1,980円)と4点盛(1,480円)があるが、もちろん1種類から頼むことができる。
訪れた時は、たかべの塩焼き(2尾680円)、かすべの煮付け(780円)、鯨の胃袋(980円)、はたはたの一夜干し(580円)、本白子のポン酢または天ぷら(780円)…などが、日替わりの中でも目を引いた。地元以外ではなかなか見ない魚も揃えてあるのは、魚好きには嬉しい限りだ。鯨料理もいくつかある。お通し代は350円。

ただ、仕方ないかもしれないが、マグロの質は今ひとつ。値段を抑えているので、むしろ高級魚は避けた方が無難かもしれない。
魚以外の料理も多彩だ。「とろとろ牛すじ煮込み」(680円)の味付けは、まるでデミグラスソース。しかもガーリックトーストまで付いてくるから、もつ煮の名店「山利喜」の亜流と言われても仕方がなさそう。シチューボウルに入ってくるので、見た目は本家より上品だけど。

全体的に価格は手頃な範囲だし、これだけの日本酒が揃う居酒屋は、川口では貴重だ。
ただ、メニューの酒名に誤字が目立つのが残念。「越乃景虎」が「越乃影虎」、「壱乃醸」が「壱乃譲」あたりまでならまだ笑えるが、「神亀」が「新亀」というのは、ちょっと笑えない…。

→ぐるなび:どうどう 川口店
http://r.gnavi.co.jp/gavp802/

神楽坂の隠れ家、和酒BAR「風雅」 (09/12/17)

これまでにも、「隠れ家」と言うのにふさわしい路地裏の店をいくつも紹介してきた。大宮の「0760」、六本木の「imoarai」、新橋の「烏森醸造」、渋谷の「bar bossa」、神田の「眠庵」…等々。今回新たにご紹介するのは、隠れ家だらけの街と言っても過言ではない、神楽坂の和酒BAR、「風雅」だ。

場所は、神楽坂上交差点の裏手。JR飯田橋駅からだと、神楽坂を上って大久保通 りに出たところで左折、最初の角(「ぶ吉」の看板の所)を左に折れ、季節料理 「渡津海」の脇道を左に入った突き当たりだ。一見、民家にしか見えないことも あり、知らなければBARとはまず分からないだろう。

築70年の民家を改装した店は、2008年8月25日にオープンした。昭和の洋風家屋といったイメージのモダンな内装で、いかにも「隠れ家」っぽい。
狭いながらも3フロアあり、これをわずか3人ほどで切り盛りしている。

入口を入ると、狭い三和土(たたき)のようなスペースがあるが、別に靴は脱がずにそのまま上がって良い。ただ、ハンガーが入口左手にあるため、1階で飲む場合は、上着をここで掛けておくといいだろう。荷物は店内で預かってもらえる。

入口の正面が階段になっていて、上階に行く場合はそのまま昇る。2階は、2人用テーブルが3卓、4人用のソファ席が1卓ある。3階は1日1組限定の屋根裏部屋で、大テーブルが1つ(8席くらい?)。ここには液晶テレビもある。

「和酒BAR」とある通り、ビール、日本酒、焼酎、ワイン、リキュール、ウィスキーなど、約80種のお酒すべてが国産ブランドで揃えられている。しかも、知名度にこだわらず、味と個性を重視したセレクトなのがいい。料理やお酒のメニューは、サイトに掲載されている。

日本酒は、半合のグラスで500円~750円、1合だとその倍額になる。グラスの価格で紹介すると、春鹿・超辛口(500円)、墨廼江・特別純米(500円)、出羽桜・一耕純米(550円)、酔鯨・鯨海酔候(600円)、大七・生もと純米(600円)、南部美人・にごり酒(600円)、田酒・特別純米(600円)、越乃景虎・名水仕込み(600円)、開運・ひやづめ(650円)、雅山流・翠月(グラス750円)…など。店ではお燗もおすすめしている。

店の一押しは、ちょっと意外だが一ノ蔵「すず音」(グラス900円・300mlボトル2,000円)。シャンパンのような微発砲性の飲みやすさとオシャレなボトルから、最近は女性だけではなく 男性にも人気があるようだ。酒棚の一番上の段は、すず音のボトルがずらりと並べられている。

生ビールは、初めて見たが、ガージェリーエステラ(900円)だった。
キリンビールの社内ベンチャー企画として選ばれ、2002年7月に独立した(株)ビ アスタイル21が造る飲食店専用プレミアム・ビールだ。店から注文を受けた数だけを即日樽詰めし、翌日チルド配送で直送するという、徹底した鮮度管理が特徴。専用のデザイングラスも魅力的だ。

1階のカウンターに立つ銭谷友美さんは、北海道の某ホテルのBARからスタートし、都内のダイニングBARなどで修行して、この店の立ち上げに参加した。バーテンとしてのキャリアはもちろん、和酒に関する知識も豊富だ。女性バーテンということもあり、女性客1人でも気軽に立ち寄れる。

料理も、「鯛わた塩辛」(700円)などの珍味から、「上州とことん豚黒胡椒焼き」 (1,200円)といった料理まで、BARとしては充実している方だ。軽めのものでは「できたて汲み上げ豆腐」(900円)、しっかりめでは「自然生の麦とろ飯 」(1,000円)あたりが、店のおすすめメニューだ。

お忍びデートや、仲間内でプレイベートBARのように使うには、打ってつ けの隠れ家。今度は誰を連れて来ようかと、思いを巡らす楽しみを与えてくれるに違いない。

→和酒BAR 風雅
http://www.bar-fuga.com/

上燗がおいしい銀座の個室居酒屋「麹の宵」 (09/12/7)

いよいよ忘年会シーズン。だが、宴会向きの居酒屋は、地酒の品揃えが寂しいことがほとんど。そこで、宴会向きだが、地酒がバリバリに充実している店を紹介しよう。

銀座4丁目交差点から晴海通りを晴海方面に進み、2つ目の角を右折した右手のビル4階にある「麹の宵」だ。
エレベーターを降りるといきなり下駄箱なので、ちょっと面食らう。ここで靴を預けて右手の入口を入ると、奥への廊下に沿って左右に掘りごたつ式個室が14室並んでいる。一番奥にあるカウンターは、2席ずつ仕切られた12席。総席数は77席ある。

開店は2005年3月15日。チアーズ銀座ビルのオープンと同時に、他の8店舗と共に開店した。
個室は1室4~6人用だが、組み合わせることで最小3名から最大30名まで対応可能だ。インテリアは和風だが、廊下の端がガラス貼りになっていたり、トイレがデザインされた洗面台だったりと、ちょっとだけオシャレ。BGMには、ジャズやポップスが流れている。

日本酒の種類は常時80~100種が揃っており、主要銘柄は「ぐるなび」で確認できる。そのほか臨時入荷の銘柄も多い。
量は一応1合ということになっているが、けっこう多めに注いでくれたりする(保証はしないけど)。値段設定がやや高めなので、最初は銀座価格?という気もするが、この気前の良さなら悪くない。

日本酒はすべて錫製チロリに入れられて来る。錫は温めやすく冷やしやすいので(金に次いで比熱が小さい)、お燗はもちろん冷やすにも適しているのだ。おまけに無害・無味・無臭で腐食にも強い上、酒をまろやかな美味にしてくれるという。まさに酒器として理想的だ。

「冷や」の場合、透明の大きな升いっぱいにクラッシュアイスが詰められ、そこに1合の錫製チロリが入れられて来る。ちょっと冷やし過ぎという気もするので、せっかくだが升から出しておいてもいいかもしれない。
「常温」と頼むと、氷のない透明の1合升に、1合の錫製チロリが入れられて来るので、冬はこれで十分だと思う。日本酒はすべて冷蔵庫で保管されているので、これでも最初は冷えている。

「お燗」は、店自慢のオリジナル燗付器に2合の錫製チロリが入れられて来る。燗付器は、電源スイッチ以外はボタン2個だけのシンプルなものだ。左のボタンが1合の時、右のボタンが2合の時だが、それも店のスタッフが押してくれる。1分半ほどして(1合の場合)赤いランプが消えれば、ぬる燗(約40℃)の出来上がりだ。そのまま更に1分ほど放置しておくと、店おすすめの上燗(45℃前後)となり、再度ボタンを押せば熱燗(50℃前後)になる。最高でも飛びきり燗(55℃~)以上にはならないようにできている。
お燗を頼むと、杯やぐい飲みが5種類くらい入った籠を持ってきてくれる。

料理は標準的だが、見た目のハッタリが利いている。刺身など、氷を一杯に入れた大型の鉢で運ばれてくるので、最初は驚く。おでんを売りにしているため、煮物も美味しい。必ず勧められるのが鯛めしだが、さすがにこれは1人で食べるのは荷が重い。

個室が中心なので、このシーズンは少々やかましいが、お燗好きは燗付器で色んな飲み方を試してみたりして楽しめる。
また、3軒先に、姉妹店「しゃくしゃく」もある。こちらもよく似たタイプの店だが、お酒の品揃えはやや少ない(それでも十分だとは思うが)。逆に、「麹の宵」よりちょっとオシャレな雰囲気なので、女性には「しゃくしゃく」の方がいいかも!(2枚目の写真は、「しゃくしゃく」のエントランス)

→ぐるなび:麹の宵
http://r.gnavi.co.jp/kojinoyoi/

→ぐるなび:しゃくしゃく
http://r.gnavi.co.jp/shaku/

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