千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2009年09月

おいしいお酒がひたすら安い!水道橋「酔の助」 (08/9/30)

どう見ても、よくある庶民的な大衆居酒屋なのだが、入ってみると意外に個性的なのが、神保町と水道橋にある「酔の助(よのすけ)」だ。どちらも店内は貼り紙だらけでなんともにぎやか!

昨日訪れた水道橋店は、JR水道橋駅の西口改札を出て左に進み、マクドナルドの角を左折したすぐ左側。駅から数10秒という近さだ。

店内はけっこう広いのだが、大小さまざまなスペースに区分けされている。そのどれもが古い洋画のモノクロ・ポスターだらけ。エリザベス・テーラー、オードリー・ヘプバーン、マリリン・モンロー、ジェームズ・ディーン…。
BGMも古いシャンソンというのが珍しい。店自体の古さもあって、年配の客には懐かしさを感じさせるような雰囲気だ。

もちろん、お酒や肴の短冊も所狭しと貼られている。目を引くのは、その銘柄と値段だ。
十四代・吟撰(890円)、醸し人九平次・純米吟醸(590円)、黒龍・純米吟醸(600円)、獺祭・純米大吟醸本生(590円)、田酒・純米(680円)、磯自慢・特別本醸造(650円)、飛露喜・特別純米(580円)、王禄・純米超辛口(580円)…など、約20種類(上記は日替わり銘柄)。

日本酒はいずれも升に入れたグラスで提供され、量はたっぷり1合ある。
これは、普通の(立ち飲みではない)居酒屋としては、都心最安の部類に入る価格ではなかろうか?
奥で注いだ升を持ってきてくれるので、瓶は見られないのだが、味は間違いない。
24年(水道橋店は22年)の老舗だけあって、よほどいい酒屋さんと懇意にしているものと見受けられる。

日本酒だけではない。焼酎なら、杜氏潤平(600円)、伊佐美(680円)、村尾(850円)、魔王(850円)、百年の孤独(870円)、森伊蔵(1,200円)…
ビールは、アサヒ・スーパードライ中生(330円)、ホルステンプレミアム(330ml・560円)、バスペールエール(330ml・560円)、ヒューガルデン(330ml・620円)、グロールシュ(473ml・730円)。
ワインもカルベセレクション、ピースポーター、ルフィーノキャンティ、ラロッシュシャブリ…など。
要するに、どんなお酒も数は程々だが、質の良いものがちゃんと置かれているのだ。

料理も大衆居酒屋らしいく、幅広いメニューを手頃な価格で揃えている。ほうれん草のおひたし(280円)から刺身3点盛り(840円)まで、どれもきちんとしていて、いい加減なものは出てこない。おすすめは、水道橋店オリジナルの「ガンダーラ古代岩塩のプレーンピザ(580円)」らしいが、昨日は1人だったのでこれは試せなかった。

ホームページもあって、店内の様子や、定番メニューを確認できる。店が広いので宴会にも対応でき、手軽に美酒を楽しむには打ってつけの大衆居酒屋だ。

→酔の助
http://www.yonosuke.jp/pc/index.html

日比谷の「街蔵」に行ってみた。 (09/9/25)

日比谷シャンテの斜向かいに、日比谷パティオというオープンスペースがある。よくミニイベントが実施されたりしているのだが、そこで今「街蔵」というイベントが開催されている。

菊正宗酒造創業350年を記念して行っているもので、神戸にある「菊正宗酒造記念館」から、いくつか歴史的な資料を運んで展示しているほか、菊正宗の「生もと(きもと)」原酒などが試飲できる。

自分も初めて知ったのだが、菊正宗は今月からほとんどの製品を生もと造りにしたそうだ。
「生もと」の「もと」とは、「酉」偏に「元」と書く酒造用語。文字通り、清酒造りで一番最初のベースとなるもので、別名「酒母(しゅぼ)」とも呼ばれる。具体的には、麹に水と蒸し米を加えて醗酵させたものだ。

このもとにはいくつかの種類があり、大きく「生もと系」と「速醸系」の2つに分かれる。
「速醸系」は、約100年前に発明された近代的な製法で、現在の日本酒のほとんどはこちらの方法で造られている。一方、「生もと系」は、古来の伝統的な製法で、労力も時間も多くかかるため、ごく一部の蔵が伝統技術の継承などを目的に造っていることが多い。

両者の違いを一言で言ってしまえば、人工的に乳酸を添加するかどうか。「生もと系」の場合、蔵の空気中に存在する乳酸菌が、自然に乳酸を作り出すのを待つ。「速醸系」は、人工の乳酸を添加して造る。
当然、「速醸系」の方が速く造れるし、品質も安定している。しかし、「生もと系」の自然派とも言える造り方は、コクのある味わいと力強さをもたらし、支持する酒飲みも少なくない。熱燗や熟成といった変化にも強く、味が崩れない。
ちなみに、よく耳にする山廃というのも「生もと系」の一種で、「生もと」のやや簡略版の製法だ。

「上撰」(昔で言う一級酒レベル)以上の清酒を、全てこの「生もと造り」にしたという菊正宗。
しかし、菊正宗は、日本で第6位にランクする大規模な清酒メーカーだ。この手間のかかる方法で大量の酒を安く造れるわけはない。そのあたりを聞いてみると、長年のノウハウで生もと造りの自動化に成功したらしい。ただし、吟醸酒など上位のお酒は手造りだということだ。

自分はこうした大手の酒はあまり飲まないのだが、生もとの生原酒(1日100杯限定)を試してみたところ、思ったほど悪くない。これで上撰だそうだが、1杯200円で量は120mlくらいだ。
このほか、3種類のお酒がセットになった「Aセット」「Bセット」がある。
「Aセット」は、「菊正宗」本醸造・超辛口と、「嘉宝蔵」特撰本醸造、「嘉宝蔵」特別純米がセットになったもの(各60mlくらい)。「Bセット」だと、超辛口の代わりに「樽酒」となる。それぞれセットで300円と、格安だ。

上撰であれなら、本醸造や純米は更に期待できるかと、こちらも試してみたのだが…結果は少々残念。特撰本醸造は山田錦を、特別純米は兵系酒18号を原料米にしているらしいが、米と造りの良さを活かしているとは言い難い。ただ、300円という値段を考えればお得なのは間違いない。

お酒のほか、「酒蔵の酒カレー」や「美人酒風呂」という入浴剤など、お酒以外の商品も販売されている。酒造りのビデオなども流されているので、多少の勉強にもなる。仕事帰りに格安で1杯ひっかけるには、いいスポットだろう。開催は10月9日まで。

→菊正宗 酒ミュージアム「街蔵」
http://www.kikumasamune.co.jp/machigura/

美酒がひしめく横丁の大衆居酒屋、新宿「大黒屋」 (09/9/17)

戦後間もない1947年頃、新宿西口にできた闇市をルーツとするのが、今も線路沿いにある「思い出横丁」だ。細かく分けると、線路沿いの道が「やきとり横丁」で、1本奥の道が「思い出横丁」。いずれも戦後闇市の面影を残した、東京を代表する横丁の1つとして、今でも根強い人気がある。

現在、小さな焼鳥屋やモツ焼き屋を中心に80店舗が軒を連ねる。飲食店はそのうち62軒。
店の間が板1枚といった造りのため、10年前には火災で半分ほどの店舗が焼失したのだが(1999年11月24日)、それでもビルなどに建て替えることなく、横丁のまま復活したのはさすがだ。

安かろう、まずかろうという店ばかりと思っている人も多いが、そんなこともない。下手な銘酒居酒屋顔負けに、全国の美酒を取り揃えた店もある。
線路沿いにある「大黒屋」は、全国各地から取り寄せた地酒がなんと約150種類。銘柄が書かれた短冊で三方の壁が埋まっている。旨いと言われる銘柄のほとんどが揃うと言っても過言ではない店だ。

開店は闇市時代だから、もう創業60年。店はいかにも大衆的で雑然とはしているが、決して汚くはない。これは女性店主のおかげかも。
1階は天然木の形を活かしたテーブルが6卓ほどで、角にはテレビがある。
周辺にはトイレがない店も多いが(横丁の奥に公衆トイレがある)、この店にはトイレがあるのも有難い。2階は座敷で、座卓が7つほどある。
名物女将のほかに、厨房の料理人やお運びの女性など、全部で5人ほどで営業している。

飲める銘柄を挙げてもキリがないのだが、一例を挙げると、・無濾過純米生(735円)、陸奥八仙・特別純米無濾過生原酒、遊穂福祝・特別純米(以上、各840円)、まんさくの花、奥播磨、綿屋、渡舟(以上、各945円)、醸し人九平次・純米吟醸(1,050円)、獺祭・純米大吟醸磨き三割九分(1,260円)、八海山、酔鯨、北雪・YK35(以上すべて大吟醸、各1,575円)、菊姫・大吟醸(1,890円)、天狗舞・古古酒吟醸(2,100円)…等、堂々たる品揃え。

お酒は、小皿にあふれた分も含めて、ちょうど1合くらいある。横丁としては値段が高いが、これだけの美酒を揃えた店は銘酒居酒屋でもなかなかない。相当な日本酒好きでも、まず気に入った酒に出会えるだろう。
自分が訪れた日には、女性のお客も3人いた。

料理では、これからの季節に人気の鍋料理や、自家製だし巻玉子(2人前1,365円)、揚げ出し豆腐(450円)などにも定評がある。
ほかに、冷奴(367円)、焼き鳥大串、レバー、自家製つくね(3本ずつ・各367円)、自家製もつ煮込み(451円)、肉じゃが(472円)、若鶏唐揚(525円)、茶そば(630円)、鮪・鰹・鰹たたき・白身などの刺身(各735円)、牛ロース新柳川鍋(840円)…など、意外にバラエティ豊か。

以前ご紹介した銀座「ささもと」の本店も裏にあるが、そちらは常に満席で入れたためしがない。東京一のモツ焼き屋という声もあるくらいなので、無理はないが…。

なお、今月一杯は、横丁全体でスタンプラリーを実施中。3軒利用してスタンプをもらうと、先着2千名まで「オリジナルてぬぐい(横丁の手描きMAP入り)」がもらえる。

→新宿西口商店街(MAP最上部中央が大黒屋)
http://www.shinjuku-omoide.com/

やみつきになる味、東大宮「やきとりや NOKAOI」 (09/9/8)

どこの街にでも、焼鳥屋は何軒かあるものだが、それだけに競争は激しい。客は旨くて安いことを期待しているから、それを満足させなければ、シビアに足は遠のくものだ。

地元の東大宮にも、焼鳥屋は何軒もあるが、客の入りはかなりの差がある。
西口側で大人気の焼鳥屋と言えば「やきとりや NOKAOI」だ。平日でも、開店5分で満席になることが珍しくない。

場所は、西口の駅前通りを直進し、突き当たりのY字路を左折したすぐ左側。駅から歩いて3分程だろうか。
以前は東口側にあったのだが、西口に引っ越して2007年10月12日にリニューアル・オープンした。

店は、オープンキッチンを囲むコの字型のカウンターが中心。一応、右奥の壁際にミニカウンターもあるが、それを入れても定員は15人ほどだと思う。店頭にミニテーブルが2卓出ているので、暖かい季節なら、あと4人くらいは何とかなる。

店名の「NOKAOI」は、ハワイの言葉で「一番」とか「最高」という意味。
休みの日は店から海に直行することもあるという、サーファーのマスターらしいネーミングだ。マスターは、大澄賢也に似ているという噂もちらほら。(一応、既婚)現在、手伝いの女の子も2人いる。

「やきとりや」とは言え、牛肉や野菜、おしんこなどもある。メニューの数は少ないが、ハツ、せせり、かわ、しいたけ、ネギ…など、1本100円のものが半分以上。ぼんじりとつくね(ちょうちん付)が150円、ちょうちん、ささみ串焼き、和牛レバ刺、おしんこが200円。一番高い「和牛ハラミ」で250円だ。

ちなみに、「ちょうちん」というのは、鶏のお腹に入っている卵の黄身のこと。(「キンカン」「玉ひも」などと言う店もある。)
普通の卵の黄身より小さめで濃厚なため、串に刺しても中身がこぼれないのだ。

壁にはメニューの札が掲げられており、品切れのものは赤字で掲示される。(作れるものは黒字)
一番人気は、和牛ハラミだ。「塩」と「ポン酢」とがあるが、人気が高いのはポン酢。数量限定のため、開店してから1~2時間で品切れになるのが普通だ。確実に食べようと思ったら、開店とほぼ同時に入店するくらいの意気込みが必要になる。

お酒の種類も少ないのだが、いい加減なものを置いていないところがありがたい。
日本酒は、埼玉の「神亀」のみ。ワインは、中央葡萄酒のグレイスヴィンテージ甲州
焼酎はいくつかあるようだ。時には、地ビールや地サイダーなどが置いてあったりする。

人気店だけに予約をした方がいいが、予約は午後5時~6時の1時間のみの受付となる。その場合も、席だけの予約で、料理は予約できない。(「和牛ハラミ」がなくなっちゃうからね。)
1度食べたら病みつきになる客が続出なので、要注意!

→やきとりや NOKAOI
http://www.nokaoi-jno1.com/higashi.html

ランチも晩酌も人気!虎ノ門「花たろう」 (09/9/2)

ランチタイムになると、虎ノ門のビジネスマンやOLが列を成す。手頃な価格で味わえる家庭的な料理が受けているのだが、夜も銘酒を揃えた店としてしっかりファンを掴んでいる。虎ノ門から愛宕に向かう裏通りにある居酒屋花たろう」はそんな店だ。

場所は、地下鉄銀座線・虎ノ門駅の1番または4番出口を出て、桜田通りの1本裏手(新橋寄り)の路地に入り、約200m歩いた右側。
新橋駅からだと、烏森通りを600mほど直進して西新橋交番前の交差点を渡り、最初の信号を左折すると、すぐ右手の角にある。こちらは少々遠いが、このくらい歩く価値はあると思う。

店の入口は、更に横の路地を入った奥。入ると、10席ほどのコの字型のカウンターがある。その向こう側にテーブル席が2~3卓。カウンターの右側が厨房になっているのだが、その更に右側にもテーブル席のフロアがある。厨房をはさんで、店が左右に分かれているような造りだ。

決して新しくはない店だが、手入れが行き届いていて、小きれい。とても開店して30年経つようには見えない。こういうきちんとした店は好感が持てる。
スタッフは女将とご主人のほか、料理人やフロア係の女性など、5人位いるようだ。

日本酒は50種類以上あり、価格は一部の限定品を除いて525~840円。1杯の量は、グラスからちょっと溢れて150ml~160mlくらいだろうか。内容と場所を考えれば、かなり良心的な価格設定だと思う。
銘柄や料理の紹介は店のホームページに書かれているが、更新はほとんどされていない状態なので、店で直接確かめた方が確実だ。

銘柄を少しだけ紹介すると、525円で飲める銘柄は、男山・秘造りと、一ノ蔵
630円では、まんさくの花、八海山、越乃寒梅、神亀、澤乃井、真澄、呉春、春鹿、賀茂泉、五橋…など。
735円が、田酒、出羽桜、乾坤一、〆張鶴、久保田、緑川、磯自慢、黒龍、菊姫、天狗舞、小鼓、酔鯨、梅錦…など。
840円が酔楽天・限定大吟醸、羅生門、龍力・米のささやきだ。

〆張鶴、久保田、菊姫、天狗舞あたりは、ちょっとした臨時入荷品が隠れていたりする。先週も、菊姫の「B.Y.大吟醸」など、珍しいラベルがいくつも置いてあった。
「おすすめ3杯コース」というセットが4通りあり、本醸造、純米、吟醸、大吟醸のお酒をそれぞれ3種類ずつ飲み比べすることもできる。

焼酎も20種類近く。こちらも天狗舞の吟醸清酒粕で仕込んだ米焼酎「次郎冠者」など、他店であまり見かけない品が置いてあった。

女将さんもご主人も、誠実で気さくな人柄の上、きめ細かい心遣いをしてくれる。
「お酒は半分の量でご注文いただいてもいいんですよ」とか「お料理も量が少なめの方がいいですか?」とか、こちらの好みを察して気配りしてくれるのだ。
場所柄もあってか客筋も良さそうで、人品卑しからぬ風体の客がちらほら見受けられた。年配の男性客が多いが、若い女性客も少なくないようだ。

大勢で飲むなら近くの「升本(虎ノ門店)」もいいかもしれないが、少人数ならこちらをおすすめしたい。家庭的でありながら、決して馴れ馴れしくもない、ほどよい距離感が居心地良く感じさせてくれる。
随筆家山本夏彦が愛した店として、雑誌『BRUTUS』(631号)でも、大きく紹介されている。

→花たろう
http://www.hanataro.co.jp/

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