千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2009年08月

純米酒好きが集う店、上野の日本酒Bar「夜行列車」 (09/8/28)

「日本酒BAR」は都内に何軒かあるが、その中でも全然BARらしくないのが、上野の純米酒Bar「夜行列車」だろう。

場所は、JR上野駅の広小路口を出て、線路の高架沿いの丸井側を歩き、最初の十字路の手前左側にある。間口が狭いので、うっかりしていると通り過ぎてしまうかもしれない。

昭和の上野駅をほうふつとさせるような店名だが、事実、開店は1957年と半世紀以上前。当初は普通のカクテルBARだったが、2000年に現店主の坂田粋白さんが、創業者の三富三喜夫さんから店を引き継いだ際、純米酒Barへと変貌を遂げた。

年季の入った店は、鰻の寝床のように奥へと続くカウンターのみ。席数は12席なので、夕食時には満席のことも多い。
席の背後には下町っぽいグッズや冊子などが無造作に置かれており、カウンターの背後には銘柄の短冊がずらりと下がる。Barと言うより、どう見ても下町の居酒屋なのだが、静かに酒を楽しむ客が多いということと、BGMがジャズというところが、かろうじてBarっぽい。

この店は、完全な家族経営でもある。年配のご亭主とその奥様、息子のてっちゃん、としちゃんの4人が、入れ替わり立ち替わりで店に立つ。

「純米酒Bar」を標榜する通り、お酒は純米酒と純米吟醸酒ばかりが約20種類。全国15蔵からすべて直送されているそうだ。店のイチオシは、宇多田ヒカルもお気に入りだという山形の「出羽桜」で、3種類ある。

中でも、カウンターの左隅に小樽がある純米吟醸「軽ろ水(かろみ)」生酒が一番人気だ。アルコール度数13.8度とワイン並みの軽さなので、最初の1杯にピッタリ。量り売りが原則のお酒のため、置いてある店は全国にも数件しかなく、都内では池袋の「酒菜家」と、新橋の「野崎酒店」くらいでしか見かけたことがない。

日本酒は冷酒中心で、価格は700円、800円、900円の3段階になっている。漆塗りの升に入れたグラスで提供され、1杯は1合にやや欠けるくらいだ。
銘柄は店のホームページで確認できるが、オーソドックスな銘柄ばかりなのがちょっと残念。どれも美味しい銘柄ではあるが、もうちょっと新進気鋭の蔵のお酒もあると、なお嬉しい。

料理は、その時食べられるメニューがカウンター左端に短冊として差し込まれている。品切れになると短冊が抜かれる仕組みで、全部埋まっていても16種と数は限られている。お通しは420円。

自家製もつ煮込(550円)、酒盗(550円)、自家製角煮(700円)、まぐろ山かけ(650円)…など、こちらも一見よくあるメニューばかりに見えるが、意外になかなか凝った料理が出てくるので、楽しめる

特に評判が高いのは、手づくり豆富(550円)と、馬刺し(750円)だ。手づくり豆富はデザートのようになめらかで、塩も醤油もかけずにそのままいただけるほど。

客層を見ると、平均年齢は高そうだが、けっこう女性も目に付く。客筋が良いので、女性1人でも安心して飲めそうだし、ヘルシーなメニューが多いのが魅力なのかもしれない。昼の11時から飲めるところも珍しい

息子さんは今時珍しいほど無愛想なのだが、話してみるとシャイなだけなのかも…。

常連が多いので最初は気後れするかもしれないが、雰囲気に馴染めばきっとまた足を運びたくなるだろう。

→純米酒Bar・夜行列車
http://www.yakou-ressya.jp/

紹介しないが、ちょっと面白い店 (09/8/21)

なるべく「いい店」で飲みたいと思っている自分だが、毎回そんな店ばかりではなく、オヤジの聖域みたいな大衆居酒屋や、どこの街にもあるようなチェーン居酒屋で飲むこともある。
そんな店が悪いわけではないし、決して嫌いでもない。ただ、このブログで紹介するタイプの店ではないというだけだ。

平凡に見える店でも、思わぬ面白さが隠れていることもある。先日入った店では、特に目立った点はなかったのだが、女将さんのキャラクターが光っていた。

周囲がお盆休みだったこともあって、平日にも関わらずその店はほぼ満席の、てんてこまい状態だった。
店はカウンター10席、小上がりに座卓4つの、計26席。店を切り盛りするのは、女将さんと男性の料理人、若い女の子の3人だ。

お酒の種類も少ないし、料理もごく普通。特に目立つところのない、よくある街の小さな居酒屋だ。
料理担当の男性は、料理はともかく接客は苦手そうな感じ。若い女性も、まだ慣れていない様子で、女将さんのキャラだけが際立っていた。

一言でいうと、下町のおっかさんタイプ。てきぱきしていて、きっちり店を仕切っている。歯に衣着せぬ物言いなのだが、どこか温かみがあって憎めない。男性スタッフにも、お客の酔っ払いにも、言うべきことをピシッと言って、なかなか気持ちがいい。「一本筋が通っている」というのは、こんな性格を言うのだろう。

「ごめんね~、今日はすごい混んじゃってて。いつもこんなに混まないんだけど…」と、調理の手を休めないまま、料理が遅れがちなことを気にしてくれる。「これツマミながら、あと5分待って」と、軽い肴をサービスしてくれたり。

女の子を名前で呼んで遠慮なく叱りつけていたので、最初は女将の娘かと思ったのだが、聞けばまだ入って3日目のバイトの女子大生だった。
その子は、前の2日もたまたま忙しい日に当たってしまい、「これが普通なのかと思ってました」と苦笑していた。女将によると、やることがないほど暇な日もあるらしい。

常連がまた個性的だ。普段は無口なのに、酔うと普段の8倍も喋りまくる男性。70歳は超えていそうなのに、男性の前だとシナを作る婆さん…。
そんな客たちを相手にしながら、女将さんは全然負けていない。
今時は、こういうタイプの女将さんも珍しい。通いつめると、本当の母親みたいに親身になってくれそうだ。

客には年配のオヤジも多いので、酒が入るとバイトの子にセクハラまがいの話を振ってくる輩もいる。思わず固まってしまうような彼女が、女将さんの下でこの先どう鍛えられるか、それもちょっと見ものだ。

居酒屋というのは、色々な楽しみ方がある。
を楽しむ、料理を楽しむというのはもちろんだが、店主や常連客とのお喋りを楽しんだり、店が持っている雰囲気自体を楽しむというのもあるだろう。

テレビドラマにでも出てきそうなこんな店に足を運んで、登場人物の成長ぶりを見守るといった楽しみも、それはそれで面白そうだ。1人で飲みながらそんなことを想像して、思わずニヤニヤしてしまった。

蕎麦、酒、酒肴のすべてが旨い!神田「眠庵」 (09/8/12)

神田界隈の蕎麦好きが、「やぶそば」「まつや」を素通りして通う店がある。普通の蕎麦屋ではない。路地裏で隠れるように営業している、酒・蕎麦・豆腐の店「眠庵」だ。

場所は、神田駅と秋葉原駅の中間にある、神田須田町交差点の裏手。詳しくはホームページに案内があるが、看板らしきものが見当たらないため、最初は通り過ぎてしまう人が多い。ビルの隙間に掛かる、写真の暖簾をくぐって入った正面の建物がそれだ。

大正時代に建てられた古民家をリフォームした店舗は、一見すると古いアパート風。玄関口で靴を脱ぎ、下駄箱に入れて店に上がる。
狭い室内には、4人用のテーブルが2卓と、2人用が1卓のみ。右手の厨房前に4席のカウンターもあるものの、全14席たらずだ。真空管アンプと手作りのスピーカーからは、小さくJAZZが流されている。

店主の柳澤宙(やなぎさわ・ひろし)さんは、元々は微生物学が専門という化粧品会社の研究員だった。偶然出会ったそば職人に刺激を受け、5年かけて蕎麦を研究し、この店を2004年12月24日に開業した。

店の日本酒全て静岡のお酒で、1合が入るグラスで提供される。(お燗も可)価格は420円~840円とかなり良心的なので、純米吟醸などの上質なお酒をぜひ楽しんでほしい。
メニューには振り仮名がつけられていないので、振り仮名つきで銘柄を紹介しよう。なお、お酒は時期によって一部入れ替わるが、酒蔵は静岡を代表する下記14銘柄で変わらない。

磯自慢(いそじまん)・しぼりたて本醸造(480円)、喜久酔(きくよい)・特別本醸造(530円)、國香(こっこう)・特別純米(580円)、萩錦・駿河酔 誉富士(はぎにしき・するがよい ほまれふじ)純米酒(630円)、初亀(はつがめ)・生酒吟醸 亀印(680円)、志太泉(しだいずみ)純米山田錦(680円)、臥龍梅・鳳雛(がりゅうばい・ほうすう)純米吟醸山田錦生原酒(680円)、杉錦(すぎにしき)生もと純米中取り原酒(680円)、高砂(たかさご)山廃純米 無濾過生原酒あらばしり(740円)、白隠正宗(はくいんまさむね)特別純米酒にごり(740円)、小夜衣(さよごろも)地酒工房 誉富士 特別純米酒(680円)、君盃(くんぱい)冷撰夏酒 純米生原酒(740円)、開運(かいうん)あさば一万石・純米吟醸(790円)、正雪・山影純悦(しょうせつ・やまかげじゅんえつ)純米吟醸(790円)…など、20種類ある。

ビールは、サッポロの赤星とキリンのハートランド(各中瓶・530円)、岩手の地ビールメーカー・ベアレンビールの小瓶が3種(740円~840円)ある。
焼酎は、芋が「紫尾の露(しびのつゆ)」、麦が「つくし全麹(ぜんこうじ)」、蕎麦が「十割(とわり))」(各630円)と、種類は少ないものの、こちらもかなりのこだわりようだ。

酒肴も約20種類。210円でわさび漬け、岩のり、味噌ピーが、320円で豆腐、おから煮、大根煮、さより干、うるか…がいただける。ほかに、煮豆腐(420円)や、自家製鴨くんせい(530円)等があり、一番高い「牛肉と大根のバーボン煮」で630円。
豆腐は長野の大豆・ナカセンナリを使った自家製で、塩が添えられるが、そのままでも大豆の濃厚な風味が美味しい。(お通しはおから)「牛肉と大根のバーボン煮」は、牛肉を水とバーボンで4時間煮て、2日寝かせたもの。味がしみ込んだ大根は真っ黒! なるべく日本酒に合うよう、ワインではなく麦が原料のバーボンで煮るところがユニークだ。

蕎麦は、「もり(840円)」と「二種もり(1,160円)」の2種類のみ。毎日異なる2箇所の産地から、蕎麦の実を丸抜き(外皮・そば殻を剥いた状態)で仕入れ、石臼で自家製粉している。年間では、全国数十種類のそば粉を仕入れるという。もちろん、それに合わせて挽き方や打ち方も毎回変える。元が研究職なので、時には電子顕微鏡で蕎麦粉を調べることまであるらしい。

蕎麦つゆはかなり濃く、好き嫌いが分かれそうだが、そば自体は香りが豊かですばらしい。蕎麦好きだと、この香りを楽しむため、つゆをつけずに食べる者もいるそうだ。
「そばがき」と「そば湯」も特筆モノ。絶妙な固さのそばがき(840円)は、蕎麦の香りと旨みに溢れ、ボリュームもたっぷり。そば湯は、白濁していて、かなりトロみがあり、どちらも美味しい

火、木、土のみ、ランチも営業している。
多くのグルメ雑誌などで紹介されたこともあって、昼も夜も満席のことが多い。休業予定や、夜の予約が満席の日はホームページに載るので、確認してから出かけた方がいい。

→眠庵
http://www.nemurian.net/

旨い酒しかない、大宮の角打ち「いしまる」 (09/8/4)

最近は「立ち飲み」の店もすっかり一般化した。立ち飲みの原型は、酒屋の店先で飲める角打ちにあり、それが居酒屋の原型でもある。
今でも下町方面や池袋などでは、角打ちを併設した酒屋を見かけるが、自分の地元・大宮にも、見逃せない角打ちがある。

場所は、大宮駅西口からDOMの裏を北へ歩き、大栄橋(西)の交差点を左折して約100mの右側。「神亀」の大きな看板が目印の「石丸酒店」だ。

今時珍しいほど古い店構えの酒屋なのだが、実力本位の美味しい日本酒と焼酎を揃えていることでは大宮でも屈指の店だ。
看板を掲げる埼玉の銘酒「神亀」や、同じく埼玉の注目蔵「花陽浴(はなあび)」はもちろん、遊穂、いづみ橋、花垣、分福、織星、白瀑、七田…日本最小の酒蔵・太陽酒造のお酒まで、その品揃えを見て頬がゆるまない酒呑みはいないだろう。

ここにある銘酒を出してくれる居酒屋があったら…と思う人は多いが、残念ながらそんな店はなかなかない。そこで、店の左隣にある蔵を改造して、角打ちとしてオープンしたのが、2006年の秋だ。

営業時間は、5時から10時まで(ラストオーダー9時半)の5時間だが、実際の開店は5時半近くと思った方がいい。
店に入ると、右手にロフト風の2階へ昇る階段があり、その下がカウンターになっている。左側の壁にも、狭いカウンターがあるので、詰めれば10人くらいは入れそう。奥にトイレもある。2階には大きめのテーブルが1つあり、こちらも最大10人ということになっているが、座って快適に飲めるのは6人くらいまでではないだろうか。

古い蔵を改造したので、納屋のような雑然さは残っているが、まあ、それも味のうち。ノートパソコンにつながったスピーカーからはJAZZが流れている。

カウンターに長方形の小皿が置いてあり、ここに代金を入れる。立ち飲みによくある、キャッシュオンデリバリー方式だ。
お酒はすべて日替わりで、壁の短冊に書かれて下げられる。もちろん、隣の店舗で販売されている酒ばかりだ。冷やがおすすめのお酒と、燗がおすすめのお酒、それぞれ10種類くらいずつある。

日本酒は100mlほどのグラスにすり切り一杯で出され、値段の目安は純米酒で350円、純米吟醸で450円くらい。普通酒や本醸造はそれより安く、純米大吟醸はそれより高いというイメージだ。立ち飲みとしては安い方ではないが、旨い酒ばかりなので、ここで飲んでしまうとほかの居酒屋に行けなくなるという人も多い。
芋焼酎や梅酒は、70mlで300円。(芋焼酎原酒は50mlで400円)。ビールもギネスやベアードビール(沼津の地ビール)などがある。

おつまみも、種類こそ多くないが、刺身や焼き魚、珍味など、ちゃんとした肴がつまめるのが嬉しい。
つくね串(1本150円)、谷中生姜(150円)、冷奴(200円)、真鯵の開き焼き(200円)、うるめ炙り(200円)、枝付き枝豆(250円)、栃尾揚げ焼き(250円)、朝とれトマト(300円)、サバ味噌漬け焼き(350円)、珍味三品盛合せ(350円)、手羽元あっさり煮(400円)、自家製塩辛(450円)、青森マグロ、北海道時鮭刺身(各600円/ハーフ300円)、刺身盛合せ(5種1,000円/3種800円)…など、こちらも日替わりで20種類ほど。あくまで肴中心で、食事はない。

店のマスターは、若いのにちょっと偏屈っぽいところが面白い。壁にこんな張り紙があったりする。
【当店には「辛い酒」「辛口の酒」はありません。】【「旨い酒」ばかりです。】【「辛い酒」が飲みたきゃ唐辛子でも入れてください。】…張り紙だけ見ると怖そうだが、話してみるとそんなことはない。
由衣さんと翔子さんという女の子が日替わりで入っており、2人の「取り扱い説明書」も貼られている。

隣で買ったお酒を持ち込むこともできるが、持ち込み料はお酒と同額(つまり倍)と、こちらは少々高い。

→石丸酒店
http://www.ishimarusaketen.com/

記事検索
livedoor プロフィール