千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2008年10月

店自体が酒の肴!? 根岸「鍵屋」 (08/10/31)

老舗の有名居酒屋は都内に何軒もあるが、正直言って普通はあまりお勧めしない。老舗はたいてい古い店構えで、昔の映画に入り込んだかのような情緒は味わえるが、料理やお酒は古臭いだけ、という店が多いからだ。
根岸の有名な老舗居酒屋「鍵屋」も、それは例外ではない。だが、秋が深まって冷えてくると、ここのカウンターで燗酒をやるのも、魅力的に思えてくる。

創業は安政3年(1856年)。まだ新撰組もなかった幕末の頃だ。
当初は酒問屋だったが、戦後、居酒屋に転じたらしい。創業時の建物は、戦災をまぬがれ、現在は小金井市の「江戸東京たてもの園」に移築保存されている。(1970年頃の店内を復元してある。)
現在の店舗も大正時代のもので、こちらも相当な年季ものだ。

店は裏路地にあるため、最初は分かりづらい。鶯谷駅の南口を出て、凌雲橋からそのまま言問通りを渡って左折、寛永寺陸橋のたもとにある古書店の角を右折して、最初の路地を左に入ると、右側にある。
店先の置行灯は、なかなか歴史を感じさせてくれる。

白い暖簾をくぐって店に入ると、見事なまでに古めかしい店内。造りが古いだけでなく、調度品やポスターなどもレトロな品々で統一されているため、さながら博物館のようだ。
正面にある楓のカウンターに10席。カウンターの背後には、店名ゆかりの品と思える、江戸時代の鍵や錠前がいくつか飾られている。
店の左側には小上がりがあり、6人用の座卓が2つ置かれている。

カウンターの中では、ご亭主の清水さんが燗銅壷で燗を付けている。(写真は、ちょっとブレてしまいました~)この店では、夏でもお酒は燗酒が当たり前という珍しい店だ。もちろん常温でも頼めるが。
ただ、日本酒櫻正宗、大関、菊正宗の3種類しかなく、すべて上撰というのが残念。やはり少しでも純米酒が欲しい。値段はいずれも500円だ。冷酒も櫻正宗の小瓶(910円)のみ。ビールはあるが、サワーの類は一切ない

メニューは、横長の細長い板に筆書きされたもの。ところてん(390円)、冷奴(490円)、鶏もつ焼き(510円)、もずく(510円)、かまぼこ(510円)、味噌おでん(510円)、煮奴(550円)、たたみいわし(610円)、さらしくじら(710円)…など、いずれも味のある昔ながらの酒肴ばかり約20品。しっかり食事を取りたいなら、別の店にした方がいい。

驚くのは、女性だけ入店できないこと。この店に来ようという女性グループもなかなかいないと思うのだが、今時この硬派ぶりは珍しい。
それでも、男性に連れられて来る女性は結構いる。若い女性は、たいてい店内の写真を撮っているので、物珍しさから足を運ぶのだろう。確かに、ここは飲める博物館だ。

店自体が酒の肴になるという、レトロで硬派な店。
酒飲みを自認する人なら、店が健在なうちに1度足を運んでみるのも一興だろう。

→食べログ/鍵屋
http://r.tabelog.com/tokyo/A1311/A131104/13003743/

店はアジア風、料理はイタリア風、お酒は和風。池袋「和花(あえか)」 (08/10/26)

女性に人気の店が、池袋にあると聞き付けて行ってみた。肩の凝らないイタリアン居酒屋ながら、和風果実酒をたくさん取り揃えている「和花(あえか)」だ。

店は、池袋駅東口(西武側)を出て、明治通りを区役所方面にまっすぐ進み、首都高の下の六又交差点を渡るとすぐ左側。駅から7分ほどのはずれだが、歩くのが苦になるほどの距離ではない。

外観からは、普通の洋風居酒屋かカフェのように見える。店のホームページの店内写真を見ると、確かにアジア風のインテリアで、広そうに思えるが、実際はそれほど広くない
店に入ると、すぐ左側にお酒のボトルを置いた棚があり、それがフロアとの仕切りにもなっている。正面にサービスカウンターがあって、左手がフロア。2人用と4人用の木製テーブルがいくつか並べられており、席は全部で28席ほどだ。訪れた際は気付かなかったが、個室もあるらしい。

意外とカジュアルな雰囲気で、思ったよりくつろげる。店やテーブルがもうちょっと広いとなお良いのだが。
店のスタッフは、若い女性2人だったので、この広さでも満席になるとかなり忙しくなるようだ。(週末はたいてい予約で満席。)

料理はイタリアンながら、日本やアジアの素材を取り入れた創作料理風に仕上げている。メニューを見ると、圧倒的にお酒の種類が多く、料理の種類はさほど多くはない。
和風トマトサラダ(450円)、魚介の和花サラダ(950円)、鮮魚のカルパッチョ(750円)、ぼたん海老のスイートチリソース(650円)、あん肝のフリット(700円)、チーズとおもちのスティック(450円)、帆立貝のスパイシークリーム(1ヶ380円)などがいい肴になる。

パスタは、九条葱のピリ辛いトマトソース、岩中豚とキムチ(各950円)、サーモンと青野菜の白味噌クリーム(1,050円)、蟹と湯葉のクリームソース 柚子胡椒風味(1,100円)…など、オリジナリティのある和洋折衷メニューが多くて面白い。
古白鶏のソテーローズマリー風味(1,250円)や岩中豚のグリル(1,550円)といったボリュームのある料理は、ハーフサイズでもオーダーできるのが親切だ。スイーツ類は300円~450円。

カウンターの上の黒板に、その日の料理やワインがたくさん書かれているので、そこから注文する人が多い。ただ、奥の席だとちょっと見えにくそう。先週はウニのパスタが人気だった。
値段はどれも手頃だし、味も悪くない。女性に人気があるのもうなずける。

ここで飲みたいのは、やはりワインか果実酒。グラスワインは500円、デキャンタが1,500円。ボトルワインは2千円~4千円台くらいを中心に、10種類以上が黒板に書き出されている。
果実酒は、様々なフルーツから造られたものが豊富に揃えられており、その数は100種類を超える。チンザノ(500円)といった洋酒もあるが、梅酒を含めた和風のお酒が多い。
ビール(500円)、ウィスキー(600円~)、カクテル(500円)、サワー(500円)、それに種類は少ないものの焼酎(500円~)もあるが、日本酒はない。

予約時にHot Pepperのクーポンを使うと伝えれば、女性グループかカップルに限り、2,500円の「レディスコース」を注文できる。また、お会計15%OFFというクーポンもあって、どちらもかなりお得だ。ただし、いずれも使えるのは月曜~木曜限定

ランチタイムの11:30~15:30には、ランチボックス(900円)、ランチパスタ&ドリア(900円)、和花御膳(1,350円)などが日替わりで食べられ、こちらもかなり人気がある。

→ダイニング 和花(あえか)
http://www.aeka.jp/

「食べる」資格にチャレンジ (08/10/19)

20ヶ月にわたって多くのお店を紹介して来た自分だが、この夏に初めて「フードアナリスト」という資格があることを知った。

日本で初めての、レストランや料理飲食店を評価・分析・格付けする資格らしい。
4級~特級まで設定されているが、下の級から順番に受験しなければならないので、まだ1級と特級は試験自体が実施されていないようだ。
せっかくこういうブログをやってるんで、今日4級の資格試験を受けてみた

外国や日本の料理に関する知識は当然だが、それ以外に食事のマナーや歴史、原材料の知識、お酒やソフトドリンクの知識、格付けの歴史、食器や内装に関する知識、文学作品に登場する料理や、料理にまつわる名言、果ては果物やハーブの花言葉まで試験範囲になっている。
更に、4級ではレストランでの英会話が、3級ではフランス語会話が、2級では中国語会話まで問われるらしい。

単純に食べ歩きの経験が豊富なだけでは太刀打ちできない内容だが、食の世界全体に広い興味を持ってそれなりの研鑽を積んでいれば、4級の合格はそれほど難しくない。

受験者は、やはり女性が7割。男性は3割というところだった。
教本に載っていない問題がけっこう出たのには少々閉口したが、まあ問題ない出来だったと自分では思っている。(これで落ちたら恥ずかし~!

結果は3週間くらいのうちには出るそうだ。結果が出たら、合格・不合格にかかわらず、また報告したい。

最近は検定ブームということもあって、様々な検定試験の類があるが、食にまつわる資格もいろんなものが出てきている。自分はそうした「検定」やら「資格」やらには余り興味がない方だったのだが、一昨年取得した「きき酒師」と、この「フードアナリスト」は、あまりに自分に向いた資格だったので、取ってみる気になった

たとえ取ったところで、別にメリットは何もないんだけどね…。

→日本フードアナリスト協会
http://www.foodanalyst.jp/index.php

カキフライを食べるなら、銀座「南蛮 銀圓亭」 (08/10/16)

今年も、今週から銀圓亭にカキフライが登場した。10月中旬~3月までの限定メニューだが、この時期になると毎年訪れるというファンも多い。

銀圓亭は、銀座の昭和通り近くにあった高級洋食店だが、2006年12月に銀座5丁目のビルに移転した。あのレディタン ザ・トトキと並木通りを挟んで向かいにある。

エレベーターを7階で降りると、いきなり店の受付が向かいにある。出迎えてくれるのは、年配のご婦人。かつては老シェフと老支配人のコンビが名物となっていたが、最近亡くなられたそうだ。

店は、右奥がオープンキッチンとカウンター。カギ型のフロアには、2人用テーブルを並べた4人卓が、8卓ほど並んでいる。
窓は小さく、店内への光は控え目。照明も間接照明なので、昼間でも落ち着いた雰囲気だ。
木のテーブルにはクロスが無く、エスニック風のランチョンマットとナプキンがセットされている。シーリングファン(天井扇)ともあいまって、リゾート・ホテルめいた内装だ。同じ高級洋食店でも、資生堂パーラーよりカジュアルで居心地がいい。

「伊勢的矢産カキフライ(2,800円)」は、最高級の的矢のカキを、注文を受けてから殻をはずして揚げる。
待っている間に、まずスライスされたフランスパンが出される。ポテトチップのように薄く、カリッと揚げられており、うっすらチーズ味が付いたものだ。(2枚目の写真の奥にあるのがそれ。)
カキフライは1人前6個。衣は薄くて明るい色をしており、パン粉がとてもサクサクしている。油っぽくなく、とても軽い仕上がりだ。付け合わせは、さやいんげんと人参のソテー、それにフライドポテト。パセリとカットレモンも添えられる。
ライスやパンは別注文(300円)になるので、もし注文するなら、細かく刻まれた赤パプリカの入ったソテーライス(600円)がおすすめだ。

調味用に、REA & PERRINSのソースと自家製タルタルソースが提供される。REA & PERRINS(リーペリン)は、「ウスターソース」を開発した英国のメーカー。原材料に醸造酢、たまねぎ、ニンニク、アンチョビ、砂糖、塩、スパイスなどが使われていて、ちょっと魚醤っぽい味がする。香りも強いので、このカキフライに限っては、風味を損なってしまう気がする。
それに対して、自家製タルタルソースは素晴らしい刻まれた玉子がたくさん入った濃厚な味で、これをたっぷりカキフライに載せて食べると、一層味わい深くなる。

これだけの牡蠣だから、もちろんフライだけではなく、生で味わうこともできる(2,400円)。
亡くなられた萩本光男(はぎもと・てるお)シェフは、小川軒で腕を磨いた名シェフで、自らの料理を「究極のマンネリ」と評していたという。このレベルの料理を常に提供するというマンネリは、決して簡単なことではないだろう。高価な店だが、それだけの価値はある

カキフライだけでなく、もちろん他の料理も美味しい。ビーフシチューやハンバーグといった平凡な料理を、非凡な味で提供してくれる。
先週の流れで言えば、ハヤシライス(2,200円)もある。ここのハヤシライスは、丸く盛り付けられたライスの皿と、ソースポットで提供され、付け合せはなし。ルーは粘度が低く、ややスープっぽい感じ。具にはマッシュルーム、玉葱、牛肉がたっぷり入っている。マッシュルームは香り豊かで芳しく、玉葱は透明がかった飴色。牛肉は、生でも食べられるほど上質な肉を6時間煮込んであり、メチャクチャ柔らかい

400mほど離れた同じ並木通りの1丁目にある居酒屋三州屋も、カキフライ定食は人気メニューだ。こちらは1,100円で、牡蠣は5個。付け合せはキャベツ、キュウリ、トマト、ミカン、パセリが入ったサラダ。それに、白菜と胡瓜の漬物、ご飯、なめこの味噌汁、お茶がセットされる。
さすがに銀圓亭と比べるのは酷だが、気取らずにお腹を満たしたいなら、こちらもおすすめだ。

→銀座.info:南蛮 銀圓亭
http://www.ginza.info/S11337.html

驚異のコストパフォーマンス! 北千住「徳多和良」 (08/10/14)

北千住の名店「大はし」が、自分的には今ひとつだったと書いたが、ちょっとフォローしておきたい。
北千住の街自体は、いい居酒屋がいくつもあり、足を延ばす価値のある街だと思っている。例えば、立ち飲みの「徳多和良」は、都心から電車賃を払ってでも訪れるべき稀有な店だ。この店を訪れた客は、必ず口を揃えて絶賛する

「徳多和良」は、西口駅前通りを200mほど直進し、酒屋「東京リカーランド」を左折して、路地を約100mほど入った右側。潤徳女子高の裏にある。
道幅の狭い裏路地ということもあり、知らない人は素通りしてしまうことだろう。

店は立ち飲みらしい小さな構えなので、カウンターに6人、テーブル2卓に各4人として、14人も入れば一杯だ。
開店の5時から閉店の9時半まで、ほとんど満員状態なので、並ばないとまず入れない。

この店の人気の秘密は料理にある。店名の前に「割烹くずし」と掲げられているのだが、これが伊達ではない。
料理の品数こそ20余品に過ぎないが、どれを食べても旨い。しかも、値段はほとんどが315円!
先週訪れた際は、黒板に書かれた料理のうち17品が315円で、4品が420円、630円と735円が各1品ずつだった。

料理は、ほとんどが魚料理。売り切れたものからどんどん線が引かれ、閉店時には半分ほどがなくなっている。
だから、人気のある料理を食べたいなら、開店と同時に入店するくらいでないと難しい。
書かれるメニューも旬のものが中心なので、ちょっと経つとかなりの数が変わっている

年配のご主人は、実際に割烹で修行したという話だ。ほかに年配の女性と若い女性の3人がいるので、家族経営らしい。
ランチも営業していて、丼ものや刺身定食が600円で食べられる。

この店の残念な点は、お酒の種類の少ないことだ。ゆず酒(420円)を除いてすべて315円均一という価格は嬉しいのだが。
日本酒本菊泉のみ。生ビールヱビス樽生。芋焼酎は黒甕と、浜崎太平次。麦焼酎は黒壁蔵村正甕仕込み、おこげ(お湯割り専用)。ほかに黒千代香(くろじょか)売り。
サワー系は、焼酎(キンミヤ)の抹茶割り、ウーロン割、生レモンサワー、梅干サワーがある。
ウィスキーは、余市と、宮城峡。ウィスキーと梅酒をベースにした徳性ハイボールを加え、これで全て。

あと2~3種類でも純米酒を揃えておいてくれれば、言うことないんだが…。
店としては、ほかの店に行く前か後に、ちょっと寄ってちょっとつまむ、といった使い方に特化しているのだろう。この安さだと、本当に毎日寄る常連がいても不思議ではない。

常に混んでいるので、遅めの時間に訪ねるのは正解だが、閉店時間が9:30なのは忘れないようにしよう。この店は時間通りきっちり閉店するので、9:40には客が1人もいなくなるのだ。

→livedoorグルメ/割烹くずし「徳多和良」
http://gourmet.livedoor.com/restaurant/8317/evaluation/point/1/

下町の活気にあふれた大衆居酒屋、北千住「大はし」 (08/10/12)

「東京三大煮込み」のうち2店を紹介したので、残り1店が気になる方もいるかもしれない。
実は残り1店、北千住の「大はし」は、個人的に今ひとつ納得できず、紹介しないつもりだった。
しかし、気になる人のために、納得できなかった点も含めて紹介しておくことにしよう。

店は、北千住駅の西口駅前通りを直進し、ガストの角を右折して宿場町通り(旧日光街道)に入ると、100mほど歩いた左側。
看板には、店名の上に「千住で二番」と書かれている。「一番」は何かと言うと、お客さんということらしい。
創業1877年(明治10年)という老舗中の老舗であり、居酒屋の宝とまで言われる店だけあって、ここも
開店の4時半と同時にほぼ満席となる。現在の店舗は、2003年に建て替えられたものだ。

店内は、J字型の大きなカウンターに背もたれの無い腰掛けで21席、その右側の壁沿いに4人用テーブルは背もたれ付きの椅子で5卓ある。(一つは3人用に近い小さいテーブル。)
周囲の壁には、メニューが書かれた短冊が所せましと下がっている。
カウンターの向かいには、昔の日光街道を描いた絵も何枚かあり、ここに書かれた「名物にうまいものあり北千住 牛のにこみでわたる大橋」という歌が有名だ。

名物の牛にこみと肉とうふは、各320円。実は、この煮込みに納得できなかった…。
普通のモツ煮とは違い、内臓ではなく牛スジとカシラだけを使って、あっさり目の醤油味に煮込まれている。この「固めの肉だけ」というところが自分好みではなかったのだが、前にも言った通り煮込み自体をあまり食べないので、単に好みの問題かもしれないが。

ここは肉とうふの方が絶対いいと思う。特製の絹ごし豆腐に煮込みの出汁がよく染み込んでいて、美味しい。 メニューに書かれてはいないが、実は「豆腐ダブル」という注文もでき、これは肉がなく豆腐が2切れ出される。

他の肴も総じて安い。500円以上の料理は、とんかつ730円、かきバター焼き700円、本鯛かぶと煮650円、あなご白焼き580円、ひらめ刺身・かわはぎ刺身(肝付)各550円だけ(季節によって異なる)。これ以外の肴はすべて200~400円台だった。
おしんこ210円 チ-ズ260円、もずく400円、枝豆450円、自家製さつま揚げ450円、オムレツ420円、カニクリ-ムコロッケ450円、あんこう肝ポンズ480円…など、肴は約30種。

日本酒山形政宗(320円)のみ。山形正宗は悪い酒ではないが、選択の余地がないというのは、当ブログ的には残念賞。ただし、大吟醸(400円)や生酒(300ml・680円)も選べるのが救い。
焼酎は、下町の老舗居酒屋では定番とも言える「キンミヤ」。グラス250円、ボトル(1ヶ月)1,250円という安さだ。注文すると、氷・炭酸・梅シロップのセットが一緒に出され、後は炭酸だけをお代わりすれば済むという仕組みだ。

生ビールは中450円、小350円、グラス300円。瓶ビールはキリン・クラシックラガー(大500円・小400円)、黒ビール400円。 ウィスキーは、スーパーニッカのシングルが250円、ボトルが1,800円だった。

注文した皿は片付けられることなく、全て置きっぱなし。回転寿司のように、お勘定の際はこれが目安になるようだ。

現在、店を切り盛りするのは4代目・5代目親子だが、4代目の親爺さんがいかにも下町らしい威勢の良さで、テンポ良く声を掛けながら仕事しているのが、これまた名物になっている。逆に、このテンポに慣れないと楽しめないかも。
築地場内みたいで、見ている分には楽しいが、注文をゆっくり考える暇がないようにも感じる。
そうでなくても、席が空くのを待っている客が後ろに並んでいたりもするので、少々落ち着けないのもマイナス要因

あくまで安く呑む店なので、この雰囲気が嫌いでない人にだけ、おすすめしたい。

→水戸部酒造/今月の飲食店「大はし」
http://www.mitobesake.com/bars_restaurants/oohashi.htm

うまいハヤシライスその3・銀座「資生堂パーラー」 (08/10/10)

3店目は、銀座でも最高の洋食屋、「資生堂パーラー」だ。
洋食屋とはいえ、ここと「みかわや」は雰囲気がフレンチ・レストランに近い。
創業は1902年なので、こちらも煉瓦亭に次いで1世紀を超える老舗だ。

場所は、銀座8丁目・中央通り沿いの、資生堂ビル4~5階。4階のエレベーターを降りると、まず受付があり、左手がフロアになっている。
5階まで吹き抜けになっているので、広々としていて高級感もあふれている。スタッフも大勢おり、お客の目配りに余念が無い。

フロアの中央にはボトルワインが何本か置かれていて、昼間からワイングラスを傾ける紳士淑女もちらほら見える。さしずめ銀座の若旦那衆あたりか。

ハヤシライスは、3,000円(サービス料・消費税を含めると3,465円)というすごいお値段。同じ銀座の「みかわや」や「銀圓亭」ですら2千円台前半なのだから、洋食屋としてはここが「最高」と言ってまず間違いないだろう。ハヤシライスにサービス料が付く、という洋食屋もここぐらいでは。

ソースは、珍しい丸型のソースポットで出される。ライスがテーブルでサーブされるのはちょっと驚いた。好みの量を伝えて、お皿に盛ってもらう。もちろん、後でお代わりもできる。
付け合せは、福神漬・ラッキョウ・焼玉葱・ミカンの4種類が銀のトレイで提供される。

ルーの色は茶色で、それほど深い色あいではない。いかにもハヤシライスといった教科書的な味で、こちらも老舗だけあって真っ当な味に仕上げているようだ。
特別な点があるとすれば、それは牛肉だ。ルーには、5mm程度に細切りされた玉葱と薄切りの牛肉が入っているのだが、この牛肉は質・量ともにハヤシライスの常識を超えているステーキにしてくれと言いたくなるような肉なのだ。これを口にすれば、おそらくこの値段の意味が納得できることだろう。
ただ、ハヤシライスにこれ程の肉が必要なのか…という素朴な疑問は残る。

「資生堂パーラー」には「資生堂パーラー/SALON DE CAFE」という姉妹店があり、銀座本店の3階にも入っている。ハヤシライスはそちらでも食べることができるが、ちょっと歩いた汐留の資生堂(日本テレビの隣)の「SALON DE CAFE」では、ランチタイムに限り1,500円でハヤシライスのセットが食べられる。(サービス料なし・消費税込み)セットはスープ、サラダ、コーヒーまたは紅茶が付く。

さすがに3,000円のものと同一ではないが、味はかなり近いので、こちらを楽しむのも悪くない。牛肉が普通のバラ肉になるのは致し方ないところ。付け合せもこちらは福神漬と焼玉葱のみだが、コスト・パフォーマンスは格段にいい

→資生堂パーラー
http://www.shiseido.co.jp/parlour/html/index.htm

うまいハヤシライスその2・銀座「煉瓦亭」 (08/10/08)

銀座は、名だたる洋食屋がひしめいているため、店の選択は難しい。紹介するのもおこがましい超有名店ではあるが、ここは銀座らしく、「最初の店」と「最高の店」を紹介することにしよう。まず今日は最初の店

日本の洋食を語る時、「元祖」として必ず紹介されるのが、創業113年の「煉瓦亭」だ。
場所は銀座3丁目、アップルコンピュータの裏手に当たる。(やはり有名な老舗キャバレー「白いばら」の隣)

今の店舗が建てられたのは、1964年。その名の通り、煉瓦造りの建物で、間口は広くないものの地下から3階まである。
1階は厨房があるため3卓しかなく、待っている人もいて少々落ち着かなそう。地下と2階はテーブル席で、2階の方が窓もあって広い。3階はなんと座敷席になっている。(下の写真は2階)

トンカツも、エビフライも、カキフライも、オムライスも、ハヤシライスも、すべてこの店から誕生したと言うから、半端ではない。

ただし、エビフライの発祥には諸説あり、ハヤシライスも日本橋「丸善」が元祖として知られている。ドミグラスソースを使ったのはここが最初なので、「元祖」を主張しているようだ。逆に、オムライスは大阪心斎橋の「北極星」の方が現在のオムライスに近く、煉瓦亭では卵がライスに混ぜられている。

1895年に創業した木田元次郎さんがこれらの料理を考案したそうだから、歴史を創った店には違いない。そもそも、ライスを茶碗ではなくに盛って最初に出したのがこの店だとか…。
現オーナーである明利さんは、四代目に当たる。

ハヤシライス(1,500円)は、丸いお皿に平べったく盛られたライスと、ソースポットで提供される。この店ではハヤシライス以外は全てライスが別注文になるそうだ。
ソースはクリーミーなデミグラスソースで、トマトの酸味が効いている。玉葱は白くてシャキシャキしているのが特徴的。ソースも牛肉も玉葱も、量がたっぷりあって、お代わりできそうなほどだ。「元祖」のせいかもしれないが、どこか懐かしいような味だ。
福神漬けとラッキョウは、よくある蓋付きの薬味入れで添えられて来る。

店の入口を男性が開けてくれる点を除けば、店の雰囲気も料理も、意外に庶民的な洋食屋。店の古さを歴史として見られるかどうかで、評価は変わりそうだ。料理も、いかにも元祖洋食屋という感じなので、過大な期待を抱くと肩透かしをくらうかもしれない。
だが、「ちょっと美味しいメシでも」という感覚で利用できるところが嬉しい。

値段がもっと安い洋食屋がいいなら、「スイス」の方をおすすめする。
いずれにしても人気の高い洋食屋は、ランチタイムに行列ができる。ランチタイムを少しはずした方が、待たずに入れるはずだ。

→煉瓦亭
http://www.ginza-rengatei.com/index1f.html

うまいハヤシライスその1・京橋「モルチェ」 (08/10/6)

日ごとに涼しくなり、だいぶ秋らしくなってきた。
このくらいの季節になってくると、カレーの代わりにハヤシライスというのもいい。
ということで、珍しくハヤシライスの美味しいお店なんぞを紹介したい。

職場の都合により、場所は京橋~銀座界隈。
今回ご紹介する店は京橋のビヤホール。「明治屋」地下にある「モルチェ」だ。
明治屋の横にある地下鉄京橋駅へ降りる階段の途中にあり、まさに駅から0分という近さ。

店は、ごく普通の「下町のレストラン」といった感じ。階段からフロアに降りると、右手にビアホールのカウンターがあり、テーブルがたくさん広がっている。照明も明るい。店のスタッフは、年配の人も多く、ちょっと昔のデパートのレストランみたいなイメージがある。

ハヤシライスは、この店のランチで出される人気メニューのひとつ。驚くほど美味いというほどではないが、950円という価格を考えれば、充分お得な味だ。
お皿のライスの脇に、付け合せのインゲンとニンジンのソテーが載せられ、ルーはソースポットで出される。色は深い茶色で、良く煮詰められていることが分かる。万人受けする味なので、誰の口にでも合うのではないだろうか。
ここでは、ハンバーグやチキンカレーなども人気がある。

京橋と言えば、7月9日にご紹介した「ダズンロージス」も近くにある。ここのランチ・メニューは3品とも非常に評価が高いが、「特製ハヤシライス」(1,575円)もその1つだ。1日10食限定というところにもそそられる。

こちらのハヤシライスもかなり黒っぽいルーで、「モルチェ」以上に相当煮込まれている模様。事実、味も濃厚だ。
具は、米沢牛のヒレ肉、玉葱、マッシュルームが入っているが、米沢牛がレア状態なのか、ちょっと生っぽい香りがした。こってりとしたデミグラスソースが好きな人にはたまらない味のはずだ。

気取らない雰囲気の「モルチェ」と、評判の高いビストロ「ダズンロージス」では、店の雰囲気がかなり違う。
同じ京橋のハヤシライスではあるが、気分や用途によって使い分けるのがおすすめだ。

→ついてるグルメ/京橋 モルチェ
http://www.tsuiteru.com/gr/kyoubashi-mortier/

究極の“古き良き居酒屋”、月島「岸田屋」 (08/10/1)

あまりにも有名な居酒屋シリーズ・その2。 前回ちらっと書いた、月島「岸田屋」を紹介する。
日本酒の日(10月1日)にご紹介するのにふさわしい店かもしれない。

今更紹介するのもアホらしいほど、半ば伝説化しつつある名店である。『美味しんぼ』第1巻では、フランス人の有名シェフをうならせる肉料理として、この店の煮込みが登場した。
大衆居酒屋界のカリスマ・太田和彦さんは、この店を「東京3大もつ煮」の1店に挙げ、更に「日本3大居酒屋」にもランクインさせている。

ちなみに、「東京3大もつ煮」の残り2店は、北千住の「大はし」と、前回紹介した森下の「山利喜」。これに、立石の「宇ち多゛」と門前仲町の「大坂屋」を加えて「5大煮込み」と言われることもある。
また、「日本3大居酒屋」の残り2店には、大阪・阿倍野の「明治屋」と、和歌山・南紀白浜の「長久酒場」を挙げている。
彼の好む居酒屋というのは、古い・安い・渋いといった癖がけっこう強いので、万人向きでないことは付け加えておく。

店は、もんじゃ屋が立ち並ぶ西仲通商店街の外れ近くにある。
大江戸線・月島駅の10番出口を出て、清澄通りを勝どき方面に100mほど進み、信号を右折。二つ目の角がアーケードのある西仲通り商店街なので、そこを左折して4番街に入ると、少し先に「酒」と大書きされた暖簾が左手にある。おそらく、店の前の行列で分かると思うが…。
距離的には、隣の勝どき駅からの方が近いかもしれない。

戦時中に立飲みの国民酒場として賑わい、今の建物になったのが1957年だそうだから、それからだけでも優に半世紀を越えている。
さすがに、この大暖簾は風格がある。今時こんな暖簾はまず見ないだろう。
開店前から店の前には行列ができ、5時と同時に満席となるのが普通。9時近くにならないと、並ばずに入れることは少ない。(ラスト・オーダーは9時半)

格子戸を開けて中に入ると、外観を裏切らない古くて渋い店内。奥の厨房との境には、店名が書かれた年代物の看板が掲げてある。壁には、大相撲の番付表や、レトロなポスター。入口の上端には、テレビ
コの字をした檜のカウンタ-の周りに10席、右側の壁に沿ったカウンターに5席が定員だが、ちょっとオーバー気味のグループ客や、1人客の場合は、壁カウンターの両端に椅子を置いて、詰め込んでもらえることもある。

噂の牛煮込み(450円)は、ほぼモツのみ。「ネギは入れますか?」と聞かれるので、頼めばたっぷりネギを添えてくれるが、敢えて入れないのがここでは主流らしい。味はもちろん美味しいが、東京で3本の指に入るかどうかは、モツに疎い自分には判断できない。ただ、ここのモツ煮に「感動した」という客が多いことは事実だ。

むしろ、肉とうふ(600円)の方が旨い、という客もいる。あなごの煮付け(500円)も人気だ。ほかにも、シラス(250円)、ぬた(400円)、うるめ丸干し(400円)、エイの軟骨(400円)、くさや(500円)、干鱈(500円)…といった、渋い肴が目白押し

お酒は、菊正宗(360円)、百万両・冷用生酒(300ml・620円)、菊正宗・冷用生酒(300ml・850円)、吉野杉・樽酒(850円)、清酒・新泉(330円)、川亀・純米吟醸生酒(300ml・950円)、澤乃井・純米大辛口(380円)。普通酒が多いのは致し方ないところ。川亀は純米吟醸生だが、ちょっとすっきりしすぎていて、自分には澤乃井の方が性に合う。
ビールは、生中(560円)、キリンラガークラシック大瓶(630円)ほか、各種サイズがある。

接客担当は、かつてのご主人の奥さんと娘さん2人。この娘さんを、これまた「居酒屋3大美女」に挙げる人も多い。
常に大忙しにも関わらず、こちらが恐縮するほど気を配ってくれる、素晴らしい接客ぶり。
この店の最大の価値は、渋い古さでも、旨いもつ煮でも、キレイな娘さんでもなく(いや、それらもあるが、)この気配りにこそあると思っている。

「居酒屋に並ぶなんてアホか!」と思っている自分だが、この店だけはアホになる。

→食べログ/岸田屋
http://r.tabelog.com/tokyo/rstdtl/13002239/

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