千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2008年06月

うまい地酒に、うまい魚。新板橋「ST」 (08/6/28)

手頃な値段でおいしい日本酒が飲めて、おいしい魚が食べられる。自分にとってこれは至福の時なのだが、こういう店が簡単なようでなかなかない。だが、昨夜訪れた新板橋の「ST」はドンピシャだった。

場所は、都営三田線「新板橋」駅A3出口を出て、中山道を渡ると、ラーメン屋さんの隣にある。
店内は、11席ほどあるカギ型のカウンターのみ。以前は魚料理の「喜三郎」という店だったため、カウンターの雰囲気もどことなく寿司屋さんに似ている。黒い石造りのカウンターで、奥の一段高くなっている部分も幅がある。その内側は、長いまな板のような木が渡してある。
椅子は、赤い面を黒い枠が囲んでいるちょっと目立つデザインで、なかなかオシャレだ。

店主の中西正勝さんは、銀座のすっぽん料理店や、牛込神楽坂の「つず久」で修行した経験を持っており、この店の魚料理わさびめしには、それが活かされている。
店にメニューはなく、その日ある主な日本酒の名前が、カウンター上の切り株(?)に7種類前後貼り付けられている。料理は通常、黒板に書かれているが、コースのお客ばかりの日はそれもないことがある。

日本酒は美味しいものばかりで、価格は600円~850円ほど。(多いのは700円台)ほとんど純米か純米吟醸で、無濾過生原酒や山廃も含まれている。量は大きなぐい飲みに1合あるので、これはお値打ちだ。
よく置いてあるのは、鶴齢、美丈夫、奈良萬あたり。秀鳳、出羽桜、菊姫、蓬来泉、十四代あたりは時の運。
何も言わなくても、日本酒に仕込み水を付けてくれるのは嬉しい。

料理は、刺身盛り合わせ(1,500円)、穴子白焼き・または天ぷら(600円)、青もずく(800円)、長芋漬(500円)、ホヤ(300円)あたりが定番。もずくは、ホタテ貝の殻の中の熱湯にくぐらせて食べる。
あとは季節の魚が600円~800円くらいで食べられる。昨晩は、サザエ(700円)や亀の手(700円)、のど黒(2,500円)などもあった。〆のさわびめし(600円)は、辛さと旨さで涙が出る。
おまかせコースは5,000円だが、かなりいい魚貝類が出されるので、絶対おすすめ。魚好きにはたまらない。
なお、ここはお通しも魚介料理が出される。

近所の地酒専門店・新井屋酒店と共同で地酒の会(○○を飲む会)もよく催している。蔵元の方の話をききながら、その蔵の地酒をフルラインナップで楽しめ、一般に流通していない限定酒も飲める。肴付き2時間3,000円で、用意したお酒がある限り飲み放題。これはもうムチャクチャお得としか言いようがない。

なお、ランチ(11:30~13:30)もやっていて、こちらもボリュームたっぷりだ。

→食べログ:ST
http://r.tabelog.com/tokyo/rvwdtl/572419/

激戦区・銀座で人気急上昇のフルーツバー「ORCHARD」 (08/6/26)

日本一のBAR激戦区である銀座で、いま人気急上昇中のBARがある。1年ほど前、6丁目にオープンした「BAR ORCHARD GINZA」だ。
「ORCHARD」は英語で果樹園のこと。その名の通り、カウンターにはフルーツバスケットが置かれ、旬のフルーツが盛られている。

場所は、外堀通りをソニービルから新橋方面に歩き、左側にあるカフェ「みゆき館」手前のビル。
エレベーターで7階に上がると、シックな木のドアがあり、横の壁に店名が書かれている。

扉を開けると、正面が7席ほどのカウンターになっている。椅子は肘掛のついた革製で、ゆったりと座れる造りだ。左手に6人用と2人用のテーブル席もあり、そちらの椅子も革張り。入口の横には、タワー型のワインセラーが置かれている。
シックな応接室のような雰囲気は、銀座らしい落ち着きだ。

カウンターに座ると、向かいの正面には横長の鏡が飾られている。その手前にずらりとボトルが並べられており、下部はガラス張りの冷蔵庫。グラスなどが冷やされているようだ。

店のスタッフは3名。オーナー・バーテンダーの宮之原拓男さんと奥様の寿美礼さん、ほかに若い男性バーテンダーがいた。
宮之原さんはホテルオークラ神戸の出身で、立ち居振る舞いにも品格を感じさせる。まだ30代前半だが、下手をすると客の方が気後れしてしまいそうなほど。そこを寿美礼さんの柔らかさが補ってくれ、居心地の良い空気を感じさせてくれる。

宮之原さんはフルーツ・カクテルの達人。ホテル時代からその評判は非常に高かったので、ここではぜひフルーツ・カクテルを試してもらいたい。
カウンターに置かれたフルーツの籠から、美味しそうなものを見繕ってもいいし、スタッフと相談して「こんなカクテルが飲みたい」と伝えれば、ぴったりのフルーツ・カクテルを提案してくれる。

ソムリエ資格も持っているためワインも充実、おまけにモルトウィスキーもマニアらしい。更に、隅の方には「魔王」「森伊蔵」といった焼酎の逸品まで置かれている。(残念ながら日本酒はない。)

海外で直接買い付けて来た銘柄も多く、ほかの店ではまずお目にかかれないようなボトルが出てくるのも楽しい。
ウィスキーの価格は、12年物で1,260円~1,575円、17・18年物で1,575円~2,205円、20年を超えると2,625円~といった目安だ。

BARとしては邪道と言う人もいるかもしれないが、この店は食事の美味しさでも評判が高い。特に、「48ヶ月のパルメザン・濃厚カルボナーラ(1,890円)」は、人気がありすぎて品切れになることもしばしば。チーズも常時18~20種を揃えている。
まずはさっぱりしたカクテルを最初にいただき、ワインでも飲みながら食事、その後でゆっくり洋酒を楽しむ…といった贅沢な時間を過ごすこともできるのだ。

フルーツはもちろん、牛肉や塩にまで、凄いこだわりを持って揃えられているので、そうした話を聞きながら飲むのも楽しいだろう。

銀座には8丁目に「BAR RAGE」というフルーツバーもあり、インテリアはそちらの方が流行っぽくて店も広いのだが、ORCHARDはまったく違う家庭的で上品な雰囲気を持っている。
全てにおいてクォリティの高さを感じさせてくれながら、ご夫婦バーテンダーならではのアットホームさも感じさせてくれる、まさに上質のBARだ。

→バーナビ:BAR ORCHARD GINZA
http://www.suntory.co.jp/gourmet/bar-navi/shop/0X00067627/index.html

R&Bの新女王、アリシア・キーズ (08/6/24)

昔から才色兼備と賞賛される女性は少なくないが、いまR&Bの話題でこの言葉が使われたら、アリシア・キーズのことと思って、まず間違いない。

アリシア・キーズは、ニューヨーク生まれのR&B女性ヴォーカリスト。1981年生まれの27歳だ。
母親はアイルランドイタリア人、父親はジャマイカなので、北国と南国の血を併せ持っていることになる。

7歳でピアノを始め、クラシックからジャズ、ソウルと音楽遍歴を重ね、14歳で「バタフライズ」を作曲。この曲は後のデビューアルバムに収録されている。
学業でも早熟さを発揮し、16歳で高校を卒業、マンハッタンにあるコロンビア大学に入学する。
同大学は、87人という世界最多のノーベル賞受賞者を輩出する世界有数の名門大学だ。(昨年度の合格率はアイビーリーグでも最難関の8.9%!)

しかし、彼女は音楽活動に専念するため同大学を中退し、2001年にデビュー・アルバム『ソングス・イン・Aマイナー』を発表する。
ソウルフルなボーカルにHip-Hopのリズムを融合させたオーガニック・ソウルの流れを、高い音楽センスで結実させたこのアルバムは、全米ヒット・チャート初登場でいきなり第1位を獲得。売上枚数は1千万枚を超え、グラミー賞で5部門に輝くという、強烈すぎるデビューを飾った。

2003年にはセカンド・アルバム『ダイアリー・オブ・アリシア・キーズ』をリリース。これまたグラミー賞の4部門を制覇する。

ソングライターであり、プロデューサーでもあり、ライブではピアノも弾き語る彼女は、美貌にも恵まれ、昨年は映画「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」や「The Nanny Diaries」に女優としても出演。
チャリティー活動にも熱心で、「Keep A Child Alive」という曲の収益を全て慈善団体に寄付したり、チャリティー・イベントを主催したりもしている。

そんな多くの才能に恵まれた彼女だが、やはりソウル・シンガーとしての素晴らしさは群を抜いている。
2007年、約4年振りとなるオリジナル・アルバム『アズ・アイ・アム』が発売され、これまた全米初登場1位となった。これで、デビュー以来4作連続でアルバム・チャート1位を記録したことになる。

この最新アルバムでは、様々なジャンルの音楽を独自のスタイルで融合させた彼女のサウンドが存分に楽しめるのはもちろん、多くの才能にあふれたプロデューサーたちとのコラボレーションを実現し、高い音楽性とエンターティメント性を両立させている。

お酒のBGMとしても、まず文句のない1枚として推したい。

アリシア・キーズ オフィシャルサイト

種類は少ないが精鋭揃い、東大宮「丸源」 (08/6/22)

東大宮駅の西口は、駅を出て右側(蓮田方向)に飲食店が多く集まっている。特に線路際は、角をはさんで大衆居酒屋が3~4軒連なっているのだが、面白いのはそこで隣り合っている「鉄砲屋」「丸源」「末広」が、いずれも串焼きを売りにしていることだ。

老舗の「末広」や、宮原店の支店として最近オープンした「鉄砲屋」は、いずれも大衆的な串焼き店だが、角にある「丸源」はちょっと違う。

同店は、大宮や首都圏で「煉」「らった」「DINING P」「0760(07/8/7紹介)」…など、ユニークな飲食店を20店ほど経営する(株)TPD出身の店長が、昨年の10月31日にオープンした。

店は、西口駅前広場の線路際の角。褐色の木造の外装の上に、大きく「MARUGEN」という派手な看板が目立つ。店頭には一升瓶やメニューが置かれていて、酒飲みを惹き付けてくれる。

店を入ると、中央にやや大きめのテーブル席、奥にカウンター席。テーブルに6~8人ほど、カウンターに5人で一杯だ。
左手の壁には、大画面の液晶テレビが掛けられ、アーティストのライブ映像などが流されている。店の大きさに比べ、アンバランスなほどのサイズ。スピーカーはJupity301だ。音も画面も悪くない。

店のスタッフが若いこともあって、客層も若者が目立つ。女性客も珍しくないようで、フレンドリーな接客がいいのかもしれない。

カウンターには、焼酎の瓶がズラリと並べられている。
黄色い椿、風光る、鷲尾、克、黒騎士、宇佐むぎ、青焼酎…などがあった。
魔王」はともかく、「三岳」まであるのには驚いた。こうした入手困難なものも、普通の値段で出してくれるのが有難い。

日本酒は4種類程度だが、置いてある銘柄は素晴らしい。端麗好きの人は口に合わないかもしれないが、肴に合うしっかりした味を好む人ならまず文句の無い品揃えだろう。
おとといあった銘柄は、全国で最も小さな蔵元、兵庫の太陽酒造赤石」純米無濾過生原酒(650円)をはじめ、「臥龍梅」斗瓶囲い(800円)、「谷川岳」純米吟醸(700円)、「遊穂」純米無濾過生(800円)というラインナップ。見た瞬間「全部ください!」と言ってしまった。

「臥龍梅」は最後の1杯で、口開けから時間が経ってしまったということで700円にしてくれた。良心的なところも嬉しい!
量も、蕎麦猪口のような大き目のぐい呑みに、ほぼ1合ちゃんとある。
1本飲み切りのため、銘柄は毎日のように入れ替わる。「今度、十四代も入れようと思ってます」と言っていた。

料理も、串焼き、もつ煮、刺身など、どれも酒に良く合う。「うずら」の卵の串焼きが殻ごと焼かれているのは初めてだった。串焼きは150円くらいから、他の料理も700円前後で、高いものはほとんどない。

両隣の店もそれなりに固定客を掴んでいるようだが、少なくとも美味しいお酒を飲みたい人なら、たぶん迷う余地はないだろう。

呑み歩きの達人女将が営む店、築地「ねこ屋」 (08/6/19)

 ※残念ながら、ねこ屋は2013年2月22日(猫の日)22時22分に閉店した。

前回に引き続き、今回は日本酒系通いたい店。狭い店ということもあってあまり紹介したくなかったのだが、6/17の「日刊ゲンダイ」に掲載されてしまったので、この際紹介してしまおう。

ねこ屋_ラスト外観店は、築地の聖路加病院近くにある「ぎょれん」ビル向かいの「ねこ屋」。駅からの道順は少々ややこしくなるので、詳しい場所は店のホームページを参照してほしい。(この記事の掲載後、09年4月7日に京橋築地小学校の向かいへ移転した。)

黒塗りの建物の1階は激盛りお蕎麦の「SO-BAR Sakuma」(この店もいずれ紹介したい!)で、その2階にある。写真の行灯が目印だ。入口は、建物裏手の階段を昇ったところ。

店は小さい。ドアを開けると右側がいきなりカウンターで、席は肩を寄せ合うように6席。おまけに背後のスペースも狭いので、誰かがトイレに立ったら背筋を伸ばす必要がある。(カウンターの背後にトイレがある。)
奥には小上がりの座敷があり、そこに4人席が2卓。

店内は、花魁でも現れそうな和風テイスト。壁は赤、柱は黒で、店名の通りあちこちに猫の置物や飾りが置いてある。

この店は、和服に割烹着の女将が1人で切り盛りしている。その可愛らしい見かけからは想像し難いのだが、実はオヤジ系居酒屋の飲み歩きでは、ネット界でも有名なまりみること市川真理さんだ。その凄さはブログを見ていただければ一目瞭然。
お酒好きが高じて、今年の3月4日、ついにこの店を開いてしまった。

彼女は現役の看護士でもあり、店が休みの日曜は病院で働いているという変り種だ。(聖路加病院ではない。)
もちろん大の猫好きで、今も自宅で4匹の猫と暮らしている。「黒い月」(08/6/16紹介)や「てまり」(07/12/14紹介)と違って、店に猫がいるわけではない。

この店の飲み物は、ビール、日本酒、焼酎、和リキュール(梅酒とゆず酒)のみで、サワーの類は置いていない
客の多くは、日本酒目当てだ。なにせ、この店にあるのは特別純米か純米吟醸だけで、しかも値段は通常850円まで。(グラス1杯=7勺くらいか?)
たまに、入手困難な限定酒が入るとこの限りではない。昨日は入手困難な「飛露喜」の鑑評会出品吟醸酒があって、5勺900円だった。(もう無いが。)

日本酒は日によって品揃えが変わり、大体10種類ほど用意されている。最近置いてあるのは、磯自慢・純米吟醸生詰(850円)、飛露喜・特別純米生詰(750円)、甲子 夏しぐれ・特別純米生原酒(700円)、天の戸・純米吟醸亀の尾仕込(750円)、日露宇くん・純米吟醸土佐宇宙酒(800円)…あたり。「死神」や「悪乃代官」といったユニークな銘柄もある。

そのほか活性にごりなどの発泡日本酒が6種類。
焼酎は、島美人、黒伊佐錦、里の曙、田苑・金ラベル、残波…など。
生ビールは600円で、たぶんアサヒだと思う。

料理は家庭料理だが、この春まで素人だったとは思えない。にゃんこ卵飯 (350円)、ハムポテトサラダ(400円)、新玉ねぎ肉じゃが(500円)、自家製水餃子(500円)、ねこ五目野菜さつま揚げ(500円)、和牛もつ卵入り煮込み豆腐(600円)、ずわい蟹身入りにら玉(600円)、ねこベーコンと酒盗ピザ(650円)、生まぐろとアボガドの山葵和え(700円)、刺身とあぶりまぐろ三昧(750円)…など、どれもイケる。お通し代は500円だ。

新橋の「うさぎ」(08/3/3紹介)と似たタイプの店だが、真理さんは「うさぎ」の理恵さんとも知り合いだそうだ。
狭い店なので、訪ねる際はなるべく電話で確認してからの方が無難だ。

→築地 ねこ屋

原点にして最高のBAR、渋谷「黒い月」 (08/6/16)

※2008年8月、「黒い月」は青山に移転した。場所は、青山通りから骨董通に折れ、一つ目の角を左折した右側、地下2階。

常に新しい店探しに余念のない自分だが、ここは通いたい!と心底思う店が、たま~にある。
生まれて初めてそう思い、事実しばらく通っていたのが、渋谷のBAR「黒い月」だ。
最初に訪れてから、たぶん20年くらい経つだろうか。

「黒い月」は、東急本店の向かいに建つ雑居ビルの3階にある。ビルの表にも中にも一切看板が無く、住所・電話番号も非公開。いわゆる隠れ家BARの走りだった。
かつては1階の郵便ポストですら、真っ黒に塗られているだけだった(「黒い月」が描かれていたのかもしれない。)のだが、最近は小さく店名が添えられているので、昔に比べれば見つけやすくなった。

3階に上がると、ブロンズ色の大きなドアだけがある。ここにも店名表示がない(実は、目に付かないが壁に店名表示がある)ので、入るには少々勇気が要るかもしれない。だが、いったんドアを開けると、実に和める不思議な空間が出迎えてくれるのだ。

店は小さく、カウンターに2人用のベンチが4脚、テーブルが2卓。
照明は暗くてカウンター各席の前にスポットが当たるようになっている。壁はコンクリート打ちっぱなし。ドアと同様、店内のカウンターや棚も、金属で統一されている。

カウンターの中は、左半分がボトル棚になっているが、右半分は一面ブロンズ。実は、こちらにバックスペースへのドアがあり、裏にも数々のお酒がストックされているのだ。
店の右奥のスペースには、床にオーディオとCDが置かれている。かつてはモニターも置かれていて、古いモノクロ映画が流れていたりしたのが、今は女性だけになったためか、それはなくなっている。

店は正統派のバーだが、置いてあるお酒は非常に個性的。昔から、「知っている酒が1本もない!」と言われるほど、マニアックな酒ばかり揃えられていた。この店で、どれだけ美味しい酒を教えてもらったか数知れない。

自分が良く通っていた当時は、まだ「Milk Hall」から「黒い月」に替わって間もない頃で、オーナーの星さん、バーテンダーの相沢さんがバリバリだった。だが、お二人とも相次いで店を離れ、その頃アルバイトだった女の子が、今では立派な店長
それが、ソムリエールの新田さん。当時からお酒には詳しかったが、かなり前にソムリエ資格も取り、1人で店を守っている。昔の自分には少々とっつきにくい印象もあったのだが、今はすっかり柔らかくなって感じがいい。(おまけに…思わず「化け物か!?」と口走ってしまったほど、容姿が昔と変わってない…!)

この店にメニューはない。オーダーは、彼女と相談しながら決める。お酒は、ウィスキーで1,000円くらいから、カクテルは1,500円くらいから。チャージは1,000円。ただし、秘蔵のお酒も多いので、懐が不安な時は値段を確認してからオーダーした方がいい。
自分は昔、この店で思い切り飲みたいがために、某クレジット・カードを取得したという過去がある。現在は、VISAカードが使える。

つまみは乾き物やチーズが少しある程度で、料理はない。
昔と変わったのは、ワインの種類が増えたことだ。月2回、ワインの試飲会も開いているらしい。
あとは、新田さんの愛犬、ミニチュアダックスフンドの「古酒」が、お客さんの間を飛び回っていること。
とても良く躾けられていて、決して悪さはせず、お客さんに愛想を振りまく様子には、撫でずにいられない。

この店にいると、場所も時間も忘れてしまう。自分が信頼できる友人しか連れて来ない、真にお気に入りの店


恵比寿らしいオシャレな酒販店「紀伊国屋」 (08/6/12)

今回は、珍しく酒販店をご紹介したい。
酒屋さんも、いい店を紹介しているとキリがない。最近はディスカウント店やコンビニなど競争が激化している業界だけに、どこも特徴を出して生き残ろうと努力しているのだ。

今日ご紹介するのは、知る人ぞ知る恵比寿の紀伊国屋酒店だ。
場所は、JR恵比寿駅の西口を南側に出た駅前左前方。ガーデンプレイスとはちょうど反対側に当たる。

この酒屋は、まず店がオシャレ。昨年は、テレビ朝日のドラマ「警視庁捜査一課9係 season2」最終回のロケにも使われた。確かに入ってみたくなるような店舗デザインなのだ。

中に入ると、店の中央にレジを兼ねた四角形のカウンターがあり、その中にスタッフがいる。商品であるお酒は、その周囲を囲むように、壁全面の陳列棚に並べられている。

品揃えは、特別多いというわけではないのだが、セレクトがいい。
あらゆるジャンルのお酒がまんべんなく揃っていながら、種類が絞り込まれているため、店のセンスがよく出ている。店舗イメージ通りのオシャレなお酒が多いので、プレゼント用のお酒を探すには最適な店だ。珍しいお酒もけっこうあるし、包装もGOOD。

サービスも心得ていて、ワインのバースデイ・ヴィンテージも、注文の翌日には用意してくれるらしい。(日、祝日を除く)

更に、お酒まわりのグッズ(グラス、ソムリエナイフ、本…など)も色々置いてあって、これまた楽しめる。
自分は、ここで以前、サントリーのPR誌「クォータリー」を買ったが、かなり面白かった。

数年前はこのカウンターで何種類かのお酒を試飲できたのだが、この前行った時にはやっていなかったようだ。やめてしまったのだとしたら、大変残念なのだが…(料金的にはもちろん格安で、けっこういいお酒が試飲できた。

お酒好きなら、店内を眺めているだけでも楽しいはず。
恵比寿に行くことがあれば、ぜひ1度立ち寄ってみてほしい。

→渋谷LINKS/紀伊国屋酒店
http://www.shibuya-kushoren.com/contents/pickup/5.html

→紀伊国屋酒店 九州通信(ブログ)
http://sake-kinokuniya.seesaa.net/

昔も今も、いい店は変わらない。上野「夢や」 (08/6/10)

かれこれ15年以上前になると思うが、良く飲みに行った居酒屋が上野にあった。酒も肴も美味しくて、値段は手頃という以外に、店の女将が居酒屋らしからぬ洋装のお洒落な女性だったこともあり、友人と飲む時によく利用していたのだ。
久しく訪れていなかったのだが、先週たまたま店が健在と知って、件の友人と訪れてみた。

場所は、ABAB向かいの上野2丁目仲町通りを入り、100mほど歩いた左側2つめの角。地階への階段を降りたところにある「夢や」がそれだ。
店は奥に細長い造りで、右側にカウンター、左側にテーブルが並んでいる。奥には宴会用の席もあるようだ。

場所も造りも昔のまま。幾分年季が入って来たのは致し方ないが、客の入りも上々で、昔懐かしい思いで飲ませてもらった。
もちろん、店の女将も変わっていない。髪はだいぶ白くなったものの、昔と変わらぬ柔らかな物腰で接客に当たっている。カウンターの中には、熟練の料理人が2人、ほかにもっぱらビール担当の恰幅の良い男性。どうやら彼が、サントリー公認生ビールの達人らしい。

日本酒は、目新しさこそないが、美味しいものが押さえてある。
珍しいのは、越乃寒梅全種類そろっていること。1合で飲めるのが、白ラベル(840円)、純米(945円)、吟醸(1,050円)の3つ。ほかに、500mlで特別本醸造(2,835円)と大吟醸(7,350円)が、4合(720ml)で純米吟醸(7,350円)が飲める。
「越乃寒梅利き酒セット」というのもあり、白ラベル・吟醸酒・純米吟醸の3グラス(一合分)を、わずか1,008円で試せるのも面白い。

ほかにも、八海山(840円)、立山(735円)、梅錦(735円)、真澄純米(3,990円/720ml)、腰古井(735円/2合)…などがあり、季節ものも入荷する。(先週は「伝心」があった。)
生酒も、それぞれ300ml瓶で、腰古井(756円)、吉乃友純米(798円)、銀盤生吟醸(1,050円)と3種。
焼酎は、芋、麦、黒糖、泡盛が各種546円~630円ほどだ。

料理も、刺身を除けばほとんどが500~600円台。野菜や桜海老がゴロゴロ入っている「自家製さつま揚」(630円)や、トマトがまるごと入った「びっくりトマトコロッケ」(609円)、余りにも安い「大間の本マグロ刺」(1,050円)…などかなり幅広く揃えられていて、どれもお酒が進む

は築地か産地直送で仕入れ、化学調味料などは使用していないそうだ。 食事メニューもしっかりある。
宴会コースは2,625円から。飲み放題も2時間1,575円で付けることができる。

若い頃よくお世話になった店だが、山ほど居酒屋を味わってきた今見ても、全然悪くない店だ。
なお、自分も初めて知ったのだが、品川駅港南口に品川店もあるらしい。

→上野 居酒屋 夢や(上野店店長のブログ)
http://yumeyaueno.exblog.jp/

新橋オヤジが普通になごめる、「さんの蕗」 (08/06/05)

ごくフツーの居酒屋である。店は年配のご夫婦で切り盛りされており、年季も入っている。店に個性を求める人や女性には、あまり受けないタイプの店かもしれない。
新橋の「さんの蕗」は、そんな微妙な店ではあるのだが、特徴が3つほどある。

 1.お通しにお惣菜の3点盛りが出てくる。
 2.燻製メニューが10種類ほどある。
 3.地酒が40種以上揃っている。

このあたりが気に入ってか、みんなで草野球をやるのが楽しみなのか、意外と常連がついているのもこの店の特徴だ。

場所は、JR新橋駅の烏森口を出て左手の「新橋西口通り」をまっすぐ進み、2つ目の十字路(フジドラッグの角)を左折してすぐ右側地下

階段を下りて引戸を開けると(開けっ放しのことも多い)、すぐ前に7人ほど座れるL字型のカウンターがある。その左側に、6人用テーブル席が4卓、2人席が2卓。

お通しは、細長い皿に3品が盛られて出され、これだけでゆうに1合は飲める。
テーブル席の周囲の壁には、地酒の短冊がずらりと貼られており、その数は40種以上。価格は900円くらいが多い。

オリジナル銘柄の日本酒「さんの蕗」は、純米吟醸にも関わらず500円と格安だが、これは品切れだった。一番高い「十四代」「久保田・万寿」クラスで1,200円。グラスに注がれるお酒は、1合には満たないと思われるので、正直もうちょっと安いと嬉しいのだが…。
ほかにも、黒龍、菊姫、八海山、〆張鶴、銀盤、秀よし…など、有名銘酒が並んでいた。

料理は様々な酒肴が揃えられているが、特に刺身や自家製の燻製がいい。
刺身も季節の魚が5~6種類はあるし、燻製もホタテ、チーズ、ソーセージからなんと大トロまで、10種類ほどが揃っている。価格も、450~600円くらいと、お酒より手頃。沖漬けや塩辛も人気らしい。

普通のメニューのほか、ホワイトボードにその日のメニューが掲示されているのだが、ボードの内容が豊富なので普通のメニューはほとんど開けないで済むほどだった。

気安く寄れる雰囲気の店で、美味しいお酒をちびちび飲みつつ、魚をつついていると、新橋オヤジが和んでしまうのも良く分かる。
BGMがラジオ野球中継というのも、今時むしろ貴重かも!

なお、この店の価格表記は外税なので、ご注意。

→日本居酒屋名門会/さんの蕗
http://www.netlaputa.ne.jp/~help/sannoji.htm


史上最高の天才・変人ピアニスト、グレン・グールド (08/06/03)

「天才ピアニスト」という言葉には独特の響きがある。かつてそう呼ばれたピアニストは多いし、現在でもよく使われる表現だ。
だが、グレン・グールドほどこの形容が似合う人物を、ほかに知らない。


グレン・グールドは1932年、カナダに生まれた。かつてピアニストを目指していた母親に、幼い頃からピアノの手ほどきを受けて育ち、トロント王立音楽院を最年少の14歳で卒業する。

その後、カナダで演奏活動を行っていた彼は、23歳の時ニューヨークで初アルバム、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』をレコーディングする。このアルバムは、古典であるバッハを全く新しい解釈で演奏して絶賛され、1956年のクラシック・レコード売上ベストワンを記録した。
クラシック界に一大センセーションを巻き起こした彼は、天才ピアニストとして世界的な名声を得る。

天才と変人は切っても切れないが、グレンの変人ぶりは際立っている。
彼は、父親に子供の頃作ってもらった椅子を終生演奏用に使い続けた。高さが極端に低く、顔と鍵盤がくっつきそうな演奏スタイルとなったため、常に批判の対象にさらされた。晩年、その椅子はボロボロになり、布もほとんど擦り切れて枠だけになっていたが、まるで意に介さなかったらしい。

また、彼は病的な病気恐怖症だった。風邪を引くことを恐れるあまり、真夏でもコート・マフラー・手袋を欠かさず、冬は舞台や楽屋に何台ものヒーターを並べた。あらゆる感染症から身を守るため、毎日数十錠のビタミン剤を飲み続け、世界中どこに行くにもポーランド産ミネラルウォーターを持参して現地の水を決して口にしなかった。

脚を組んだまま演奏したり、演奏中に鼻歌を歌ったり、片手で指揮をしたり…といった行儀の悪さも有名。
自らの演奏テンポに絶対の自信を持ち、著名な指揮者や作曲家自身の指示にすら従わず、幾度となく軋轢を起こしている。

そして1964年、コンサート活動を一切放棄すると宣言するに至り、その変人ぶりは伝説的となる。
理由は、彼の完璧主義から来る「ピアニストの失敗を待ち望む聴衆の前で演奏したくない」というものと、大衆の集まる演奏会場で何らかの病気に感染したくない、というものだ。
彼は当時、人気絶頂の32歳だった。以降、彼は終生レコードでの演奏発表を活動の中心とする。

グレンの長年の友人であった精神科医のピーター・F・オストウォルドは、著書の中で彼がアスペルガー症候群(知的障害がない自閉症)であった可能性を示唆している。

グレンのCDは数多くあるが、クラシックの素養がないと、正直言って真価は分かりにくい。他の演奏家と比較することで、初めて彼の独自性が分かるからだ。(この点、自分も完全に素養不足)

初めて彼のCDを聴いてみるなら、2枚組の「images(イマージュ)」をお勧めしたい。1枚目が彼の十八番であるバッハの楽曲、2枚目は彼が傾倒していた現代音楽などバッハ以外の楽曲で構成されており、彼の業績の全貌が俯瞰できる。

もちろん、名声を確立した55年の『ゴールドベルク変奏曲』もいい。音がモノラルで古いのは致し方ないが、それが気になるなら、『バッハ:ゴールドベルク変奏曲 1955年のパフォーマンス』という変わり種もある。これは音楽テクノロジー企業、ゼンフ・スタジオによる再演版。
ヤマハ社製Disklavier Proという、全長約2.7mの「超高性能自動グランドピアノ」を使い、55年のアルバムを、最新テクノロジーで完全再現したCDだ。その精度は実際の演奏と寸分違わないため、「再演」と冠されている。

グールドは1982年、50歳の若さで脳卒中に倒れ、1週間後に他界する。
奇しくもその前年にデビュー・アルバムと同じ『ゴールドベルク変奏曲』を再録音しており、不朽の名盤と評されている。同じ演目を滅多に再録音しなかった彼だが、自分の原点であるこの曲を、更に進化した解釈と最新の録音技術でレコーディングしたかったのだろう。
55年のアルバムと聞き比べてみて、26年の歳月が天才ピアニストにどんな変化をもたらしたのかを探って見るのも、また面白い。

福島の蔵が醸す国産マッコリ「虎マッコルリ」 (08/6/1)

昔はよく焼肉屋に出かけたものだが、最近は自宅近くのおいしい焼肉屋が次々と姿を消してしまったこともあって、焼肉屋とはだいぶ疎遠になってしまった。
焼肉やホルモンの店には韓国系の店が多いので、お酒にマッコリが置いてあることがある。

マッコリは韓国の大衆酒で、日本のどぶろくに似ている。どちらも米を主原料とし、簡単な濾過しか行わない酒なので、発酵されなかったでんぷんや糖が残って白く濁っているのが特徴だ。
「どぶろく」を含む日本酒には米麹が使われるが、通常マッコリには麦麹が使われる点が最大の違い。
サツマイモ(コグマ)を原料に使うものもあり、その場合は「コグマ・マッコリ」と言うらしい。

マッコリのアルコール度数は6~8%なので、ビールより少し強い程度だ。甘口なこともあって、グイグイ飲めてしまうので、うっかり飲み過ぎないよう気をつけたい。
マッコリは「マッカリ」または「マッコルリ」と言う場合もある。

日本人には今ひとつ馴染みのないマッコリだが、最近は焼肉屋を中心に徐々に人気が出て来ている。
その中でも、ひときわ美味しいのが「虎マッコルリ」というレアな銘柄だ。

「虎マッコルリ」は、福島県の有賀酒造で作られている、国産マッコリだ。
そのためか、通常の麦麹ではなく、日本酒と同じ米麹が使用されている。
古来の製法を守って一切添加物を使わず、純粋に米と米麹だけを原料として作られていて、加熱殺菌処理をせず生のまま搾って出荷されている。従って、保存は冷蔵が必須。

瓶の中で発酵が進むため、毎日味が変わっていく面白さがある。
注ぐとポコポコと表面がはじけ、乳酸菌が活きているのが分かる。
ビタミン群、必須アミノ酸、タンパク質が含まれているので、体にも良さそうだ。

こうした活性の濁り酒を開ける際は、ゆっくり瓶を引っくり返して軽く混ぜてから、少しづつ時間をかけて開けるようにしなければならない。いきなり開けると噴き出してしまうからだ。
「虎マッコルリ」はほかのマッコリと違って甘味がなく、さっぱりとした味わいで、いくらでも呑めてしまう。

ただ、出荷量が限られているため、都内でもあまりお目にかかれない。販売している店が1軒だけあると聞いたのだが、残念ながら自分もどこなのか知らない。
焼肉・ホルモンの店だと、たまに置いてあることがある。特に、マッコリに力を入れている店なら、お目にかかれる確率も高くなるだろう。

例えば、元Jリーグ大分トリニータの選手だった李久和(リ・クファ)さんが、八重洲に昨夏オープンした炭火焼ホルモンの店ぐぅは、そのひとつ。
ほかにも何軒かあるので、マッコリが好きという人や、試してみたいという人は探してみて欲しい。
マッコリの甘さが苦手という人でも、「虎マッコルリ」なら、きっと気に入ってもらえるはずだ。

→有賀醸造合資会社
http://www.arinokawa.com/

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