千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

2007年06月

銀座の地酒好きが、こぞって通う和酒バー「庫裏」 (07/6/25)

これまた狭い店なので、ご紹介をためらってしまうのだが…既に雑誌などにも掲載されてもいるようだし、ここを紹介せずに銀座・新橋の日本酒を語るわけに はいかない。
銀座の和酒バー「庫裏(くり)」だ。

元は、元麻布にあった地酒に強い酒販店「さかや栗原」の次男が、店の向かいの蔵の2階に開いた有料試飲バーが前身。店名は、おそらく店主のあだ名と、門前町だった元麻布らしさ(「庫裏」は、寺の居住区域を意味する。)をミックスしたネーミングだろう。
2004年10月1日に銀座に移転すると、たちまち界隈の酒好きたちの絶大な支持を集めた。

場所は、数寄屋橋阪急の裏の道を新橋方面に進み、銀座ベルビューホテルのやや手前のビル2階にある。
店はカウンター5席にテーブル3卓。
なにせ店主の栗原広信さんが一人で切り盛りしているので、この広さでも手一杯だ。泥酔状態で来店したり、大勢で騒いだり、迷惑をかけることのないようにしたい。

席に座ると、おしぼり、お通し3点(800円)、水のボトルが置かれる。
メニューは分厚く、「尾瀬の雪どけ」をはじめとする酒蔵のビール各種、100種近くの日本酒と60種ほどの焼酎が載せられている。無濾過生や原酒が多 く、古酒の多さも特徴的。梅酒はあるが、洋酒やサワー類、ソフトドリンク等はないので、注意してほしい。

日本酒の量は、小(60cc)、中(120cc)、大(180cc)の3通りから選択できる。これは、「試飲」という意図が活かされているためだろう。特に指定しなければ冷やで提供されるが、頼めば燗につけてもらうこともできる。
日本酒はいずれも1本限りのため、なくなった銘柄からどんどん入れ替わっていく点もユニークだ。

原価の1.5倍程度という値段の安さもありがたい。おいしい日本酒ばかりが集められているが、「小」なら200円ほどから提供してもらえる。吟醸・大吟 醸クラスでも、「小」なら450円くらいから飲めるのだ。
種類にこだわらない人には、「おすすめ2合セット」(1,800円)も3パターンほど用意されており、いずれも6種類の日本酒を60ccずつ楽しむこともできる。

料理は、BARらしく酒の肴に限られているので、本格的にお腹を満たすようなものはない。ただ、和風ソーセージ、鮭の薫製、ばくらい(ほやの塩辛)、 鮎一夜干し…といった全国の珍味や乾き物が揃えられているので、酒飲みなら不満はないと思う。逆に、しっかり食べたい時には、向いていない。

なお、日本酒は香りも大切な要素なので、この店では煙草と香水を控えめにしていただくことをお願いしているとのことだ。

狭い店なので、電話で空席を確認し、予約してから来店してほしい。初めて来店する場合は、当日予約のみ受付けている。人気の店だが、比較的空いてい るのは雨の日なので、まさにこの季節は狙い目と言えそうだ。

庫裏(くり)

多忙につき・・・

このところ、仕事で配置転換などがあり、お酒を飲みに行く暇も、ブログを更新する暇もありません・・・・。
多少は落ち着いて来ましたんで、もうすぐまた記事を掲載したいと思います。今少々お待ちください!

裏ワザでお酒を楽しめる、銀座「鮨 かねさか」 (07/6/13)

銀座の寿司屋は、旨さでは日本一かもしれないが(六本木「兼定」を除く)、決定的な欠点がある。
値段の高さは仕方がないとしても、客が食べながら呑むことを嫌う店が多いのだ。「ウチの寿司は、酒の肴にされるほど安くねえ」というのが本音のようだ。
そのため、お酒の品揃えが少ない店がほとんどだし、握るペースが速くてゆっくり飲めない店が目立つ。
もちろん、中には例外の店もあるのだが、腕の立つ職人の店ほど、こうした傾向が強い気がする。

確かに居酒屋ではないのだから、銘酒をズラリと揃えろというのは無理な注文だろう。だが、自分のように料理なら寿司、酒なら日本酒が一番という人にとっては、両者を組み合わせて至福の時を過ごしたいと思うのは当然だ。

残念ながら、「最高の寿司」と「最高の酒」の両方を提供してくれる店は、まだ銀座で出会えていない。
だが、銀座8丁目の「鮨 かねさか」なら、裏ワザを使うことで、それに近い気分が味わえる。

「鮨 かねさか」は、「久兵衛」で修行した金坂真次さんが、独立して2000年に開店した店だ。
場所は、銀座の中央通りから「資生堂ザ・ギンザ」の角を昭和通り方面に折れ、2つ目の角を右折すると、右側2~3軒目の地下にある。

階段を降りて格子戸を開けると、店内は幅の広い檜のカウンターが左手奥へと続いている。入口の右手に、1卓だけだがテーブル席もある。
ご主人を含めスタッフの年齢が若いのは、いい意味で銀座の寿司屋っぽくなく、好ましい。

寿司の味については既に評判なので、あえて紹介する必要もないだろう。
噂では、小泉元首相もここの寿司がお気に入りとか。特に、マグロとアナゴの評価は高い
自分としては、握りのシャリが少ないのはいいとして、少々柔らかすぎる印象があったが…。

夜のおまかせ握りは15,000円だが、ランチ(11:00~13:00LO)は5,000円、10,000円、15,000円の3種類がある(税別)。銀座としては標準価格だが、やはり特別な日でなければ、なかなか利用できない。
飲み物は、ビール(キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、キリンプレミアム生)が600円、グラスワインが1,500円(白)と1,800円(赤)。
日本酒は、越の影虎、想天坊、菊正宗など5種類ほどで、ほとんどが1,000円。(大吟醸のみ2,000円)。焼酎は富乃宝山、ばくらい、八重桜など6種類があった。

さて、肝心の「裏ワザ」だが、「かねさか」では、お酒の持ち込みがOKなのだ。1本3,000円の手数料で、何でも好きなお酒を持ち込める。もちろん1升瓶でもOK。これは、銀座の寿司屋ではかなり珍しいと思う。

銀座で美味しい寿司を食べながら、お気に入りの日本酒に舌鼓を打つ。これはちょっと魅力的だ。
持ち込む際は、淡白な寿司の味に合うよう、大吟醸といった香りの強い酒ではなく、生酒など爽やかなタイプの日本酒をおすすめしたい。

Yahoo!グルメ/かねさか
銀座 鮨かねさか「絶品アナゴ煮」販売サイト

昭和初期のお屋敷で会席料理!さいたま「二木屋」 (07/6/12)

贅沢な店はいくらでもあるが、和風好きにはこの上なく贅沢な店が、さいたまにある。
会席料理の「二木屋」だ。

場所は、北浦和駅西口から埼大通りを直進し、ロイヤルホストの信号を左折して約200m。
左側に現れる由緒ありげなお屋敷が「二木屋」だ。

店は、第3次鳩山内閣で厚生大臣を務めた、故・小林英三氏の旧宅を改装したもの。かつて高松宮様も訪れたという屋敷で、2002年10月には国登録有形文化財に指定されている。
造りは和洋折衷で、洋室と和室、小さな個室もある。

手入れの行き届いた日本庭園は、日が暮れるとかがり火が焚かれる。
庭は自由に歩けるので、余裕があればちょっと散歩してみるといい。人魚の彫像がしつらえられた池や、百年を優に越えたザクロの古木、屋内外にさり気なく配置された著名な芸術家の作品など、料理以外でも楽しめる。

肝心の料理は、鹿児島牛の最高峰のざき牛の素焼きステーキをメインとした会席料理。「素焼き」というのは、塩も胡椒も油も使わずに焼く方法で、それをワサビ醤油でいただくのが二木屋流だ。

ディナーは、6,300円、8,400円、10,500円、13,650円の4コースがあり、単品のみの注文はない。
ランチは、4,000円、5,000円、6,000円の3コースと、ぐっと手頃なため人気がある。

肉は通常80gで(頼めば60~80g追加してもらえる。+\2,800~)、一口大にカットされている。量は軽いが、10品前後あるコースの一部なので、ボリュームに不満は感じない。味付けがシンプルな分、肉本来の美味しさが楽しめる。ただ、ソースを使ったステーキに慣れている人には、少し物足りなく感じるかもしれない。

追加注文限定メニューとして「牛叩き」と「牛切落しビーフシチュー」があり、これがまた大変美味しいビーフシチューは、仏料理店などとは異なり、柔らかく煮込まれた肉がスープと一体化している。

お酒は、日本酒が久保田、八海山、十四代、桜正宗で、900円~1,300円。量は200mlと、1合以上あるので、まあ適正価格だろう。地酒3種の利き酒セットも、安く楽しめる。

ビール、焼酎、ウィスキーもあるが、一番充実しているのは、ワイン。赤・白それぞれ8種類が、ボトルで2千円台から揃えられている。(ほかにロゼとシャンパンもある。)1つだけシャトー・ラトゥール(70,000円)もあったが、普通は食事のコース料金と同額くらいで納まるはずだ。

更にこの店が凄いのは、年に数回催されるイベント。「アンリ菅野ディナーショー」「峰村好美佐の新内小唄の夕べ」「エピソードのあるワイン5種と会席料理」…等、いずれも半端ではないイベントを開催してきている。

開店2周年の秋からは、庭に能舞台を特設して、なんと日本最古の金春流の能と狂言を楽しむ「日本で一番小さな薪能」(60名限定)を開催。

よくあるドリンク1杯付きのライブショーが、子供のお遊びに思えてしまう店である。

会席料理 二木屋


安くてうまい!アイリッシュ・ウィスキー「ブラック・ブッシュ」 (07/6/11)

アイルランドという国で連想するのは、IRAとかU2、お酒だとギネスビールあたりか。
「ウィスキー」という連想はあまり一般的ではないかもしれないが、実はウイスキー発祥の地がアイルランドなのだ。

中世の頃、イスラムの国々では錬金術が流行していた。錬金術自体は夢物語で終わったが、その研究は様々な科学技術の進歩に貢献した。
その成果の一つが、ガラス製の蒸留装置だ。4世紀頃からアラビア人たちはこれを利用し、花を潰して香水を製造していた。6世紀頃、中東を訪れたアイルランドの修道士がその技術を持ち帰り、大麦を原料にして酒造りに応用したのがウイスキーの発祥と言われる。
ただの金属を「金」に変えることはできなかったが、ビールを「ウィスキー」に変えることには成功したわけだ。

1171年、英国のヘンリー2世の軍隊がアイルランドに遠征したとき、人々が「ウシュク・ベーハ」(Uisce Beatha)なるアルコール飲料を愛飲していたと記録に残されている。
「ウシュク・ベーハ」とは、アイルランド語(ゲール語)で「生命の水」のこと。それが英国へ伝わり、16世紀半ばに今日の「ウイスキー」になったという。
水とピートに恵まれていた英国が、やがてウィスキーの一大産地となったのはご存知の通りだ。
ちなみに、ウィスキーを製造している国は、アイルランドと英国、アメリカ、カナダ、日本の5ヶ国しかない。

アイリッシュ・ウィスキーは、大麦麦芽、未発芽大麦、ライ麦、小麦などの発酵液を蒸留し、樽熟成を3年以上させて造る。通常はピート香をつけず、蒸留は単式蒸留器で3回行われ、85度前後まで蒸留することですっきりとした味わいに仕上げる。(現在は、スコッチのように2回蒸留のものもある。)

アイルランドの蒸留所は、ブッシュミルズ、クーリー、ミドルトンの3ヵ所。
中でもブッシュミルズは、1608年にジェームズ1世から酒造免許を授かったという、現存する世界最古のウイスキー蒸留所だ。


そこで造られる「ブラックブッシュ」は、80%のモルト原酒にグレーン原酒をブレンドした長期熟成品。
白ラベルの「ブッシュミルズ」(正確な商品名は「オリジナル・ブッシュミルズ」)もあるが、それよりモルト原酒の含有量が多く、熟成年数も長い、いわばプレミアム版だ。とは言え、1本2千円台の手頃な価格で買えるのが嬉しい。
重厚なコクと甘いシェリーの香り、スパイシーなモルト香が特徴の、魅力的なウィスキーだ。

手頃な価格で美味しいウィスキーを飲みたい人に、自信を持っておすすめできる。

BUSHMILLS(英語)

昼酒を誘う、新橋最強ランチの店「ひろ作」 (07/6/10)

「人に教えないで!」という声が多い店なのだが…皆さんの良心を信じてご紹介してしまおう。新橋最強のランチと評される、蕎麦懐石の「ひろ作」だ。

場所は、新橋駅の烏森口から、ニュー新橋ビルに沿って虎ノ門方向へ200mほど進み、マクドナルドの先にある和菓子屋「文銭堂」の路地を左折し、最初の角にある。

格子戸を開けると、すぐ左手に4人掛けのテーブルが1卓、正面のカウンターに4席。合計8人で満席という小さな店なので、2人程度での来店が望ましい。昼休みの時間帯に入れることは稀だ。(2階もあるという噂があるが、未確認)

年配のご夫婦お二人だけでやっているらしく、店もごく普通の和食屋に見えるため(壁際にはTVが置いてある)、夜は最低17,000円~と知ると驚いてしまう。
夜はとても来られないが、(かなりの食通でも驚くような、幻のメニューがあるとか…。)ランチは1,500円と手頃。おまけに内容は、採算度外視の高コスト・パフォーマンスなのだ。

この店はおまかせコースのみなのでメニューはない。座れば、まずお手拭き・お箸・お茶が置かれ、自動的にコースが始まる。
ランチは、突き出し、お造り、天ぷら、蕎麦、甘味という構成(天ぷらは別の料理になる場合あり)。内容は日によって替わるが、7日のメニューをご紹介する。

突き出しは、白身魚の素麺仕立て。卵黄と小海老が入っており、あっさりした淡白な味。柚子の香りが引き立っていた。
お造りはカマス。軽く炙られた皮目が香ばしい。上に松葉も散らしてあって、風味豊かだ。
天ぷらは、鱧とトウモロコシと空豆。揚げたての熱々が出される。いずれもちょっとずつだが、トウモロコシの凝縮された甘さには感激した。
次に、ウニをのせた蒸飯。これは、お茶を飲む茶碗でちょっとだけ出される。

メインのざる蕎麦は、1人前ずつ和紙にくるまれた自家製粉の蕎麦を茹で上げる。蕎麦はかなり細く、半透明にツヤツヤと光っていてキレイだ。味もおいしいが、昔気質の「ちょいとたぐる」量なので、男性は物足りないはず。600円を追加すれば、ざる2枚にできるので、最初にお願いしておく手もある。

蕎麦つゆは、つゆ茶碗と片口の2つで出され、片口の方は足りない場合の追加用。蕎麦湯は専用に作られたものらしく、お粥のようにとろっと白濁している。この蕎麦湯がもっと飲みたくて、蕎麦つゆも全部使ってしまう。
最後の甘味は白玉小豆だった。

この蕎麦懐石コースが1,500円(最近まで1,200円だった)はお値打ち。1度体験した人は、必ずファンになってしまうらしい。
欠点は、食べ始めると昼酒が欲しくなってしまうこと。(事実、ほとんどの客が飲んでいる。)

ただ、酒の選択肢は少ない。ビールはスーパードライ、冷酒は「浦霞」の禅(純米吟醸)としずく(大吟醸)、燗酒は「新政」、焼酎は「吉四六」といったところ。
たまに、焼酎で「佐藤」の黒や「伊佐美」が入ったりするが、お酒には残念ながらあまり力を入れていない。

お昼でも、予約すれば6千円くらいからコース料理を出してもらえるので、気に入ったらそちらにトライしてみても良さそうだ。

livedoor東京グルメ/ひろ作


十四種類の「十四代」が揃う、京橋「酒龍馬」 (07/6/7)

銀座1丁目から2~3分も歩けば京橋だが、特に用事でも無い限り、なかなか足を延ばすエリアではない。
だが、この店があるだけで、足を延ばす理由としては十分だ。東京メトロ・銀座線の京橋駅(6番出口)から徒歩1分の場所にある、銘酒居酒屋「酒龍馬」だ。

オープンしたのは、一昨年(2005年)の夏。
場所は、中央通りの「みずほ銀行」と「明治屋」の間の道を、昭和通り方面に向かって進み、50mほどの左側にある。
間口の狭い店だが、「十四代」の提灯が目印だ。

店内は、手前に4人掛けのテーブルが1卓あり、あとは奥まで14人程が座れるカウンターが続いている。
カウンターの中には、グレーのメッシュヘアーがお似合いのママと、小柄でキュートな女性の2人。

こちらのママが、青森や高知の酒蔵を毎年訪ね、全て直取引で約40蔵の銘酒を揃えている。
メニューにはそれらがズラリと掲載されているが、ともかくトップに書かれた「十四代」のラインナップが目を引く。本丸、八反錦、八反錦織りがらみ、出羽燦燦、山田錦(純米吟醸/大吟醸)、雄町、美山錦、愛山(純米吟醸/純米大吟醸)、龍の落し子、吟撰、双虹、龍月と、ほとんどの「十四代」が揃う稀有な店だ。

ほかにも、臥龍梅、田酒、くどき上手、飛露喜、黒龍、南、亀泉、雁木、鶴齢…といった銘柄が並んでおり、そのこだわりのセレクトには感嘆する。
一番高い「双虹」と「龍月」こそ2,500円だが、概ね800円くらいからの妥当な価格で提供されている。
お酒を頼むと、ミネラルウォーターのペットボトルをつけてくれるのがありがたい。

ママは生酒に力を入れており、一般には生酒を販売していない蔵にもお願いして、火入れ前のお酒を仕入れさせてもらっているそうだ。
タイミングにもよるが、メニューに載っていない希少酒が臨時に入荷することもしばしば。
ちなみに、ママのお薦め銘柄は、青森の「豊盃」と「陸奥八仙」とのことだ。

なお、焼酎も10種類以上あり、こちらにも「十四代」の米焼酎や蘭引き、「魔王」「伊佐美」「森伊蔵」の3大芋焼酎に、「百年の孤独」、果ては八木酒造の八千代伝「熟柿」「黄色い椿」といった希少酒が置いてある(売切御免!)。
この品揃えにして、ママはなんと一滴もお酒が飲めないと言うから、にわかには信じられない。

料理の方は、最初に大皿でお通しが出される。刺身、冷奴、塩辛、胡麻豆腐、プチトマト等、9種の料理が少しずつ盛られており、これだけでもつまみとして結構もってしまう。
ほかにも、「鰹のたたき」「豆腐の味噌漬け」「栃尾の油揚」「久礼天」「へぎそば」「ほや塩辛」「岩のり」「つくね団子」…など、手の込んだ料理ではないが、いかにも酒に合いそうな肴が揃っている。
800円~1,000円前後の価格が多いが、どれもボリュームがあるので、高い気はしない。1人ではちょっとつらいが、何人かで取り分けると楽しめそうだ。

昼はランチも営業していて、煮込みハンバーグ、男爵コロッケ、メンチカツ、鯖の塩焼き、鯖の味噌煮といったメニューを、全て850円で提供している。いずれも、3種の小鉢、ご飯、味噌汁、漬物が付いていて、こちらもお得だ。

ちなみに、三鷹に「かぶら家」という姉妹店があり、そちらも同様の品揃えを誇っている。

酒龍馬

枠を超えたソウルシンガー・伊藤多喜雄 (07/6/6)

かつて渋谷に、「ジァンジァン」というライブハウスが存在した。
1969年~2000年まで、公園通りの山手教会の地下にあった、収容観客数200人に満たない前衛小劇場だ。(現在は喫茶店「ルノワール」になっている。)

20代前半頃だったと思うが、ここで伊藤多喜雄のライブを観た。
民謡という、自分にはおよそ縁のないジャンルの歌い手だったから、多分誰かに誘われたか、チケットをもらったか…といった動機だったと思う。
まったく何の予備知識もなく観たライブだったが、彼の「ソーラン節」には背筋が震えた。それは、「歌」というより、これまで聴いたことがないような「絶唱」だった。「民謡とはこれほど凄いものだったのか」という強烈な印象があったことを覚えている。

伊藤多喜雄は、1950年北海道苫小牧市生まれの民謡歌手だ。
そもそも「民謡歌手」という存在自体、彼を除いてほかに知らない。
彼が歌っているのはまぎれもなく民謡だが、その歌は既成の「民謡」と呼ばれるジャンルを超えているように思える。陳腐な表現かもしれないが、「日本ソウル・ミュージック」というイメージに近いのではないだろうか。
一時は民謡協会から破門されていたというが、それも今となっては勲章に思える。

小室等、坂田明、佐藤允彦、溝口肇など、さまざまなジャンルのミュージシャンとの交流や共演も多く、代表曲である「ソーラン節」は、札幌YOSAKOIソーラン祭りにも使われている。
「民謡」の枠にとらわれず、新たな「民謡」の可能性を求めて独自の活動を続けている伊藤多喜雄だが、1989年と2003年に紅白歌合戦に出演し、全国的に知られるようになった。

とは言え、彼の歌が最も知られるようになったのは、『3年B組金八先生』の第5シリーズ(1999年秋~)以降で「TAKIO'S SOHRAN2」が挿入歌として使用されるようになってからだろう。このソーラン節は、1994年に第10回日本民謡民舞大賞も受賞している。
ちょっと意外だが、最近は洗足学園大学で客員教授も務めているらしい。

個人的には、かつて「ジァンジァン」で聴いたシンプルなアレンジの「ソーラン節」の方が、彼の歌唱力が活きているように思えて、気に入っている。
当時の歌に近いイメージで収録されているのが、自主製作版のCD「TAKiO SPIRIT」だ。
さすがに迫力ではライブに及ばないが、伊藤多喜雄の原点とも言える作品に仕上がっており、ファンの間でも人気が高い。

元々、音楽はジャンルにはこだわらず広く聴く方だったが、彼の歌を聴いて以来、「食わず嫌いはやめよう」との思いが一層強くなった。

ちなみに、彼が大好きなのは、お酒野球と聞いている。

伊藤多喜雄オフィシャルサイト

友人のアパートで飲んでる気分…「ビストロ・だるぶる」渋谷本店 (07/6/5)

渋谷にも横丁があることを、ご存じない若者が多い。
ハチ公前の交差点を109②の方へ渡り、ガードをくぐってすぐ左手にある「のんべえ横丁」だ。
山手線の高架沿いの路地で、100mも進めば宮下公園に突き当たる。その短い道路の右側に、数軒の小さな飲み屋が密集している。線路際という立地といい、店の小ささといい、裏手の共同トイレといい、新宿の「やきとり横丁」にそっくりだ。
女性が足を踏み入れるのは、ちょっと勇気が要るかもしれないが、女性にもぜひおすすめしたいビストロが、ここに1軒ある。「ビストロ・だるぶる」渋谷本店だ。

「ビストロ・だるぶる」は、青山や白金台にもあるのだが、3軒目のここがなぜか「本店」となっている。
店は驚くほど狭い。1階はカウンターのみ4~5席。(それ以上は表で立ち飲み)よくぞここで料理が作れると感心してしまう狭さだ。

2階へは靴を脱いで、階段に置いてから上がる。小さなテーブルに、座布団が6つ、ビールサーバーとミニコンポがある。窓を開けると、柳の向こうに山手線が走っている。まるで、友人のアパートにでも遊びに来たかのようにくつろげる部屋だ。

隅のハシゴを昇るとロフトがあり、そこで飲むこともできる。普通は2人がせいぜいだが、詰めれば4人まで入れるかもしれない。天井が近いので、頭が当たらないよう、注意が必要だ。こちらは天窓から山手線が見える。
2階以上はチャージ300円がかかるが、それだけの価値は十分ある、なごみの空間だ。

料理は14品ほどあり、名物はカスレ(1,200円)。白いんげん豆と肉類を煮込んで作る、フランスのラングドックやピレネー地方の伝統料理だ。本来は冬の料理だが、ここでは通年食べられる。
プロバンス風玉葱のピザ(1,000円)は、 玉葱とアンチョビの組み合わせが絶妙。
ダチョウのカルパッチョ(700円)も、意外とクセがなくておいしい。
ほかにも、夏野菜のキッシュロレーヌ(600円)や、うさぎのリエット(700円)、鶉のコンフィ(800円)など、「のんべえ横丁」とは思えない料理が味わえる。

お酒は、オーガニックのフランスワインが白赤各1種類あり、ピッタリ飲み頃の温度で提供してくれる。焼酎は芋の「三岳」、麦の「中々」、黒糖の「加那」など。ウイスキーは「山崎」「ラフロイグ」等、いずれもグラス700円となっている。

店長の三浦さんは、ヒゲが似合っていて、いかにもビストロのシェフという感じ。
狭い店なので満席ということも多いが、こんな店で飲んでいると、時間が過ぎるのを忘れてしまいそうだ。(おかげで、昨夜の帰宅ははタクシーに…。)

ビストロ・ダルブル

銘酒が(たぶん)都心で一番安く飲める!虎の門「鈴傳」 (07/6/2)

※虎の門の「鈴傳」は、08年4月25日をもって閉店してしまった。「安くて旨い酒」を提供してくれる店として、おそらく東京一の有名店だったが…誠に残念。四谷の角打ち「鈴傳」が残っているのが救いか。

日本酒好きの間では、おそらく東京一有名な立ち飲み屋が、四谷の鈴傳(すずでん)だろう。
この店は江戸時代から続く酒屋であり、店の一角でお酒を飲ませてくれる、いわゆる角打ちの元祖的存在の店だ。
1849年に酒屋として創業し、6代目の磯野元昭さんが、立ち飲み屋を始めたのがその100年後。現在は息子の真也さんが跡を継いでいる。
当時、四谷には大蔵省や東京陸運局があり、そこで働く役人たちがお得意様だった。1956年、大蔵省が四谷から霞ヶ関に移転したのに合わせて、虎の門にも居酒屋を開いた。こちらは立ち飲みではなく、簡素ながらテーブルと椅子があり、料理も四谷より多少は揃っている。

虎ノ門「鈴傳」の場所は、桜田通りから虎の門1丁目の信号を「虎の門病院」方面に曲がって約50m右側。
店は、古さを感じさせる大衆居酒屋のたたずまいで、決してきれいではない。それでも、店先で待っている人がいなかったら、ラッキーと思っていい。

店内は、細長い8人掛けのテーブルが左右に並んでいる。椅子は幅20cm程度の板か、丸椅子で、いずれも背もたれはない。テーブルも幅が狭いので、向かいの人と交互に座るようにしないと、お皿が置きにくい。右側の手前に4人席、左手奥にカウンター3席もあるが、全体的に狭くて人がびっしりという感じだ。全部で50席ほどはあるが、ほとんどは男性客だ。

壁には、50種類ほどの銘酒や料理の名札が貼られている。日本酒は、八海山、久保田、十四代、醸し人九平次、亀泉、黒牛、出羽桜、東北泉、七福神、八仙、成政、房島屋…など、日本酒通も納得の銘柄が並んでおり、目移りしてしまいそうだ。ただし、人気の銘柄は売り切れていることもしばしば。冷蔵庫があまり大きくないため、保管数は限られているのだ。

お酒はごく普通のビールコップで出され、受け皿などはない。どれも美味しい日本酒ばかりなのだが、雰囲気のせいか、本来の美味しさを発揮しきれていないような気も。一升瓶はきちんと冷蔵庫で管理されているし、回転もいいはずなので、もしかするとコップがあまり冷えていなかったせいかもしれない。

お酒はコップにはすりきり一杯入れてくれるので、ちょうど1合ありそうだ。
値段はほとんど500円~600円。なにせ、十四代ですら500円なのだ。都心で、これだけの銘酒をこれだけ安価に飲ませてくれる店は、ほかに知らない。
ちなみに、ビールは大が520円、小が400円だ。

料理は、いわゆる居酒屋メニューで、種類は少ないがやはり安い。ポテトサラダ、ざる豆腐、鳥串焼、焼とん、〆鯖、まぐろブツ、まぐろ納豆、おでん、肉豆腐、…など、大体200円~700円で納まり、中心は400~550円あたり。
味は正直、大衆居酒屋として普通のレベル。焼き物系あたりは比較的おいしいようだ。

昨日は金曜ということもあり、店の前で待っている人が途切れない満員状態が続いていた。3人の店員が、声をかけるのもためらわれるほどフル回転で働き回っていたが、それでも注文を忘れたりすることもなく、対応もいい。料理が出てくるのも早いし、お酒の質問にも的確に答えていた。さすが老舗の人気店だけのことはある。

おいしいお酒をともかく安く飲みたい人にとっては、天国のような店。ただの物珍しさや、話のネタで来るべきではないだろう。
場所柄、土・日・祝がお休みで、営業時間も17時~22時半という点だけ、注意が必要だ。

Yahoo!グルメ/鈴傳

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