千の酒と、千の店

利き酒師、ワインエキスパート、フードアナリスト等、様々な資格を持つ酒好き会社員が、全て自腹で訪れた東京~埼玉の
数千軒の中から、美味しいお酒の店を選んでご紹介。約380店を最寄駅で検索できる「記事の索引」や、お酒コラムもあり!

旨いお酒を安く飲むなら、門前仲町「S&S」 (07/3/21)

門前仲町は江戸情緒の残る街だけあって、日本酒の充実している店が実に多い。
それだけに、紹介する店には迷うところだ。
今さら「浅七(※1)」や「魚三(※2)」では有名すぎて新鮮味がないので、ここは穴場の居酒屋「S&S」を紹介したい。

場所は、飲み屋ひしめく永代通りの南側ではなく、北側の深川公園寄りエリア。
門前仲町交差点から永代通りを木場方面に進み、1つ目の信号(門前仲町2丁目)を左折、最初の路地を左に入るとすぐ右手にある。
正直、間口は広くないし、店の造りもパッとしない大衆居酒屋だ。飛び込みで入ろうと思う人は少ないだろう。
だが、おいしいお酒を安く飲みたいと思ったら、この店はベストの選択と言っていい。

店内はカウンター風の細長いテーブルが手前から奥へと延びていて、その両側に腰掛ける形式。14席程で一杯になるが、実は店の作業スペースを抜けた奥に小上がりがあって、そちらに2つほど座卓がある。(トイレは更にその奥。)かなりユニークなレイアウトだ。

酒は、長野の「川中島」と岩手の「月の輪」が中心。
「川中島」の酒蔵の限定酒「幻舞」も置いてあるが、これが飲める店はなかなかない。
「幻舞」を醸しているのは、千野酒造場の18代目杜氏・千野麻里子さんで、社長夫人でありながら、全国新酒鑑評会で金賞を受賞している新鋭だ。吟醸造りの技術では、全国でもトップクラスと言われている。
「幻舞」は生産量が少ないため、地元・長野でもなかなかお目にかかれない、文字通り幻の酒だ。

これらのお酒は、純米吟醸や無濾過原酒、果ては鑑評会出品用の非売品まで含めて、ほぼ450円~800円で収まるのだからありがたい。(ただし通常はグラス150ml。100mlも可。)ご主人が蔵元まで直接出向いて仕入れているおかげかも。

料理もお酒以上に安いくらいで、大半は500円台。安いものだと200円台からあり、高い鍋料理でも1,300円程度だ。
骨付きのまぐろ中落ちが名物だが、コロッケやおでんなど、メニューはけっこう幅広い。食材にもこだわっているようだ。
コースは2,500~3,000円。ランチは丼物にミニ麺類がついて500円。この安さは感泣モノだ。

欠点は、お酒の冷蔵庫の温度設定が0℃ということ。
生酒などの劣化を気にしてのことのようだが、これはちょっと冷やし過ぎ。
日本酒は冷やし過ぎると、せっかくのいい香りも分かりにくくなってしまう。
ここでは1杯目にビールと日本酒を頼み、日本酒が適温(5℃以上)になるまでビールを飲んでいた方が良さそうだ。

※1 浅七/銘酒居酒屋として名高いが、お酒を飲めない人や外で飲んで来た客はお断り、お酒や肴のやりとり禁止など、貼紙が少々うるさい。
※2 魚三/元・魚屋の大衆酒場で、魚料理の旨さと激安価格で有名。行列があたり前なのと、女性店員のイバリすぎが欠点。加えて店内禁煙。


●S&S
17:00~23:00

竹林を肴に一杯、吉祥寺「金の猿」 (07/3/20)

日本酒好きなら、誰もが「和風テイストの和める店で飲みたい」と思っているはずだ。
最近は凝ったインテリアの店も多いので、雰囲気のいい環境で飲める機会も多くなった。
そんな中でも、一味違った環境を提供してくれるのが、吉祥寺の「金の猿」だ。

場所は、吉祥寺駅から井の頭公園に向かい、公園入口の直前・左側。
店内はけっこう広く、掘りごたつ式のカウンター、納涼床風の板の間、座敷に個室・・・と、様々なシチュエーションで使い分けられる。おすすめは井の頭公園側の座敷。窓の外一面に井の頭公園の竹林が広がり、都会にいることを忘れさせてくれる眺めなのだ。
夜になると竹林がライトアップされ、雅というより妖艶な雰囲気すら漂わせてくれる。

料理はもちろん和食。メニューはホームページを参照してほしいが、コースだと5千円~だ。居酒屋としては少々高めだが、その分、店の雰囲気も味のレベルもそれに見合っている。
日本酒は、東北泉、鷹来屋、黒龍、飛露喜、田酒、伯楽星、奥播磨・・・など20種ほどが揃い、価格は850~950円、吟醸酒で1,000~1,200円。
近くにある銘酒居酒屋「須弥山」よりは、こちらの方が手頃だろう。
(「須弥山」は、「金の猿」以上に驚くほどの銘酒と肴が揃っているが、価格も高いものが多い。)

雰囲気と価格を考えると、男一人で飲むよりはデート向きという気がするが、客層はけっこう幅広く、女性同士や家族連れ、年配のグループもいる。
これで月でも見えれば、時間を忘れて飲み続けてしまいそう。
雰囲気を求める日本酒好きと一献交えるなら一度は行ってみてほしい店だ。

余談だが、「金の猿」のちょっと手前にあるドイツソーセージの専門店「ケーニッヒ」も、おすすめ。
テイクアウト中心ながら、ビールやワイン(冬はHOTあり!)に合わせてソーセージやサラミをつまむと、かなりイケる。

●金の猿
http://www.sometime.co.jp/kinsaru/index.htm

いいお店と、いいお客 (07/3/19)

このブログで紹介している記事では、なるべく写真を掲載するようにしているが、全部は行き届いていない。しかも、店内や料理の写真が1枚もないことが物足りない人もいるだろう。
それは、自分が本来は写真を撮らないタイプだからだ。

レストランなどの飲食店で、店内や料理の写真をさかんに撮っているお客というのは、正直、見ていてあまり気持ちのいいものではない。最近でこそ、店側も「ブログに載せるんだろーな」と想像が付くんで、大目に見てくれているようだが・・・実はライバル店の偵察という可能性だってあり得る行為だ。

店のスタッフや、常連たちにしてみれば、褒められるんだか、ケナされるんだか分からないブログに無断で載せられるのは、あまりいい気持ちではないはずだ。
もちろん、身分を明らかにして、店の人に承諾をもらった上で撮らせてもらうのなら別だが、そんな手順を踏んでいる人はほとんどいないだろう。
それ以前に、ほかのお客がいる店内で写真を撮るのは、マナーとしていかがなものか?・・・という気がする。

気にしすぎと言う人もいるかもしれないが、こうした理由から店内で極力写真を撮らないようにしている。
ずっと「いい店」にこだわって多くの店を訪れてきたが、店の方だって「いい客」に来て欲しいと願っているはずだ。
だから、「いい店」であればあるほど、自分も「いい客」でありたいと思う。
もし自分が迷惑な客だったら、その店を批評する資格はないのではないだろうか。

料理や飲み物の値段も、店内でメモったりしたくないので、せいぜい主なものいくつか記憶して書く程度に留めている。
ホームページを公開している店の場合は、URLを記載するようにしているので、詳しい情報はそちらを見てもらえれば分かるはずだ。

別に堅苦しく飲もうという気はさらさらない。要は、ブログに載せるために店を訪ねるのではなく、いい店を見つけたからブログに載せようか、というノリで行きたいだけだ。
やりたいことは、至極単純。

「いい店」にはどんどん行こう!そして、店に歓迎されるような「いい客」になろう!

無人島に1枚CDを持って行くなら、キース・ジャレット (07/3/17)

たぶん、初めて聴いたのは19歳の頃の大晦日だったと思う。
十代の頃はFM放送を良く聴いていたのだが、その日偶然オンエアされたのが、キース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」パート1だった。

JAZZ好きな人にとっては伝説的なアルバムだが、それまで全くキース・ジャレットを知らなかった自分にとっては、かなり衝撃的だった。
無宗教の極みのようなタイプだったにも関わらず、聴いた瞬間に「音楽の神がこの人の指先を通してピアノを奏でている」と感じたのを、はっきりと覚えている。

後に分かったのだが、そう感じたのは自分だけではなく、このアルバムを聴いた多くの人が、全く同じ感動を覚えたらしい。

「ザ・ケルン・コンサート」は、タイトル通り、1975年1月24日にドイツ・ケルンのオペラハウスで行われたコンサートのライヴ・アルバムだ。
キース・ジャレットは“インプロヴィゼイション”と呼ばれるJAZZの即興演奏において、当代一の名手と言われている。
このアルバムのようなピアノ・ソロで有名だが、トリオを組んでの演奏も多い。

彼のスタイルは、既成の曲を独自のアレンジで弾くのではなく、ステージで感じたものをそのまま演奏するという、完全な即興演奏。従って、曲名もない。
彼が、その場所でその時何を感じたのがが、そのまま音になる。同じ場所であっても翌日にはまったく別の演奏が行われるという、特異なコンサートだ。

このアルバムでも、曲名は「ケルン、1975年1月24日 パートI」「同パートIIa」「同パートIIb」「同パートIIc」としか表記されていない。(全4パート)
「パートI」が最も長く、26分15秒あるのだが、演奏の最初から最後までほとんど暗記してしまうほど繰り返し聴いた。何度聴いても、最初に聴いた時の感動が蘇る。

特に、自分のお酒のBGMとしては究極とも言える曲なのだが、実際にこの曲を聴きながら呑んだことは数えるほどしかない。
なぜなら、この曲がかかるとほとんど呑むことも忘れて、ひたすら聴き惚れてしまうからだ。

●KEITH JARRETT/THE KOLN CONCERT
 POCJ-2524

日本酒とは、これほど旨い!「醸し人九平次〈別誂〉」 (07/3/16)

おいしい日本酒は多々あるものの、お酒には個人の好みもあるので、なかなか1銘柄だけ挙げるのは難しい。
古くは「越の寒梅」、割と最近では「久保田・万寿」「十四代」「黒龍」あたりが「うまい酒」の代名詞という気がする。
そんな中で、今回自信を持ってご紹介するのが「醸し人九平次〈別誂〉」
以前ご紹介した大塚の居酒屋「こなから」で呑み、余りの旨さにのけぞった酒だ。

このお酒が登場したのは、10年前(1997年)。愛知県名古屋市の酒造メーカー、株式会社萬乗醸造(ばんじょうじょうぞう)の銘柄だ。
同社は寛政元年(1789年)創業の老舗蔵元。現在15代目の久野九平治さんは、若い頃モデルや役者をしていたらしい。それが、父親と杜氏が共に倒れたことから、急遽蔵に戻って15代目を継いだという。
まるで、どこかのマンガのようないきさつだ。
杜氏には、同級生でエンジニアだった佐藤彰洋さんを抜擢。
畑違いの二人が協力し合って、「気品・優しさ・懐かしさ」をテーマに酒造りに取り組んでいる。

「醸し人九平次〈別誂〉」は、無濾過・無加水の純米大吟醸酒だ。
米は、酒造好適米として最高の「山田錦」、それも兵庫特A地区産を、なんと35%まで磨き上げている。
仕込み水は、長野の300年来の湧き水を調達。
限られた量を手間暇をかけて仕込まれている。

その味は上品で、芳醇な香りが魅力的。味わいに透明感がありながら、日本酒らしい旨みと甘みが広がる。ともかくバランスが良い。日本酒の初心者にも、通の人にも分かる明快な旨さ
これを堪能するには、逆に冷やしすぎない方がいい。

〈別誂〉は、パリの3つ星レストランでも、ワインリストに載せられている。
それも、最近東京に出店して話題沸騰のピエール・ガニエール氏の店や、フランス料理界の大御所アラン・デュカス氏の「スプーン」など、超一流の店だ。

さぞや高い価格と思いきや、1升で7千円台、4合瓶はその半額程度から入手可能。
この味がこの価格とは・・・安い!安すぎる!
日本人で、本当に良かった・・・・。

●醸し人九平次 純米大吟醸 別誂
使用米:山田錦35%精米
使用酵母:協会14号酵母
日本酒度 ±0
酸度 1.7
アルコール度 16.0~17.0

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